ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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結論:コミュ難ではないけど走ることしか考えてない先頭民族スズカがなんとかなってるからヨシ!


コミュ難でもG1ウマ娘って務まりますか?

さて、無事に若葉ステークスに勝ったことで、私は皐月賞の出走権を得ることができたんだけど、G1レースに出走するウマ娘は勝とうが負けようが、上澄み中の上澄みであることには変わりなくて、世間やメディアからの注目度は限りなく高い。

ということはつまり、ここからは本格的にメディア露出が増えてくるというわけで。

 

「ハヤテ。近々取材があるから心の準備をしておくように」

「ごめん。その日はお腹が痛くなる予定だから・・・」

「バカを言うなと言いたいところだが、お前の場合はマジでそうなりそうなのがな・・・」

 

いやだって、取材を受けるってことは、そこで私が話したことが余すことなく世間様の目に留まるってことでしょ?やだやだ失言怖い圧迫取材怖いアンチ怖いやだやだやだ。

 

「あのなぁ、最強のウマ娘を目指すんだろ?シンボリルドルフの過去の雑誌とか見てみろ。マジでいくつの雑誌に出たのか数えきれないくらいだぞ」

「いやいやだって、あの会長だし・・・」

「現役だと、リギルのとこのアーモンドアイもいろんなところから引っ張りだこだぞ。現URA最強としてな」

「ヴッ・・・それを言われると」

 

そう。去年はわりと自分のことで精いっぱいだったけど、アーモンドアイ先輩は昨年トリプルティアラを達成して、その後に出走したジャパンカップではレコードを叩きだした。それも、レースレコードとか日本レコードをコンマ数秒更新したとかじゃなくて、芝2400mワールドレコードを1秒以上も縮めた。世界的に見てスピードコースと言われている日本のレース場とはいえ、イカレたタイムで走りきったんだから驚きだよね。

その成績が認められて、アーモンドアイ先輩は昨年度の最優秀ティアラウマ娘ならびに年度代表ウマ娘に選ばれた。

私?話題になっているとはいえデビューとPreOP勝っただけで表彰されるはずがないんだよなぁ。ちなみに最優秀ジュニアウマ娘に選ばれたのはアドマイヤマーズとダノンファンタジーってウマ娘だった。

そんなアーモンドアイ先輩は現在、海外交流戦であるドバイターフに出走するということで現地で調整してる。すごいよね、ドバイだよドバイ。お土産買ってきてくれるらしいけど、何をもらえるかな。ドバイって何が有名なのか知らないけど。

 

「そう言うわけだから、お前も慣れろ」

「それは、まぁ・・・」

「安心しろ。さすがにトレセン学園だって無茶ぶりはさせん」

「どういうこと?」

「これを見ろ」

 

そう言って、須川さんは取材の資料らしき紙束を渡してきた。

えっと、今回取材を受けるのは月刊トゥインクルって雑誌らしい。

いや、らしいっていうか、めちゃくちゃ有名だけどね、この雑誌。

ウマ娘を特集する雑誌は数多くあれど、その中でもダントツの規模のシェアを誇っている、ウマ娘自身はもちろん、ウマ娘に少しでも関わりがあれば知らない人はいないほどの大手だ。

もし初めての人にウマ娘を勧める場合、まず最初にこの雑誌を渡すという人も多いらしい。

あとは、取材の時にする予定の記者の名前とか質問が並んでいる。

 

「この月刊トゥインクルがなんなの?」

「月刊トゥインクルは、トレセン学園がバックについている。トレセン学園が全面的にネタを提供することで、出版社の需要を満たすと同時に生徒を守るようにする。シニアやクラシックはもちろん、ジュニアまで幅広くやってるのもそういう理由だ」

「なるほど」

 

つまり、ウマ娘を怪しい取材記者から守るための協力関係ってことだね。

逆を言えば、やっぱりそういう怪しい記者がいるからこその取り決めだろうけど。

あるいは、月刊トゥインクルで取材に慣れさせてから、審査もした上でできるだけ外部の記者を呼ぶことにもなるんだろうね。

 

「まぁ、さっきは確定事項のように言ったが、別に断ることもできるからな。トレセン学園はあくまでウマ娘第一。極論、一度も取材を受けずに過ごすこともできなくはない。それはそれで問題は出てくるだろうが、学園が見放すようなことはないだろうさ」

「いや、さすがに受けるよ。さっきあんな話をしたら無視することはできないって」

 

私が最強のウマ娘を目指す以上、これは避けて通れない道だ。

なら、学園の補助が手厚いうちに経験させてもらおう。

 

「それじゃあ、インタビューは受けるってことでいいんだな」

「うん、お願い。あ、そういえば、インタビューの時ってイッカクはどうなるの?」

「別にどうにもならんと思うが。一緒に出たいのか?」

「いや、イッカクって白毛で目立つでしょ?可愛いし。だから、イッカクにもそういう話がいってたりするのかなって」

「そ、そんな、可愛いなんて・・・」

 

イッカクは頬を押さえながら照れてるけど、普通にめちゃくちゃ可愛いからね?しかも珍しい白毛だし、イッカクが目当ての人が出て来てもおかしくないと思うんだけどなぁ。

 

「イッカクはあくまでアシスタント、裏方だ。普段の練習風景の取材を受ける時に一緒に映ることはあるだろうが、あくまで主役はお前だからな」

「だよね」

 

そりゃあ、レースで走ってるのは私なんだから、そうなって当然か。

 

 

* * *

 

 

あれから数日経って、段取りが整ったってことで取材を行う場所に向かった。

取材をするのは学園の中の一角ってことになってる。こっちに配慮してのことなんだろうね。

服装も勝負服じゃなくて学生服だ。勝負服は皐月賞の方で記者会見をするから、そこでお披露目するってことになってる。

ちなみに、その記者会見の日程も昨日届いた。今回の取材の1週間後だってさ。ハハッ、なんか一気に有名人みたいなスケジュールになってんじゃん。すでに有名人か。

取材内容に関しても、基本的に前もらった資料の通りにするとのことだから、わりと気は楽だ。これでいきなりアドリブ有りとかだったら胃がやばいことになりそう。

 

「インタビューの内容は頭の中に入ってるな?」

「うん。徹夜しない程度に読み込んだ」

「そこまで濃い内容じゃなかったと思うが・・・」

 

そうでもしないと落ち着かなかったんだって。

ちなみに、今回はイッカクはお留守番してる。なんか、裏方なのに取材に同行するのは落ち着かないんだって。

そんなことを話しながら歩いていると、指定された教室に着いた。

ドアをノックすると中から「どうぞ」と声が返ってきたから、ドアを開けて中に入る。

中で待っていたのは、ラフなスーツを上に羽織って長い黒髪を後ろで結んでいる女性だった。あの人が今回の取材を担当する記者さんかな?

中は椅子と机が対面形式で設置されていて、記者の机の上にはメモ帳と筆記用具が置かれている。

 

「初めまして。私、乙名史悦子と申します。取材へのご協力、ありがとうございます」

「クラマハヤテです。こちらこそ、よろしくお願いします」

「気を楽にしていただいて大丈夫です。どうぞ、こちらにお座りください」

「・・・ありがとうございます」

 

緊張してるのがバレたかな。

なんというか、乙名史さんの目、どこか須川さんと似てる気がする。

さすがにトレーナー業の経験があるわけじゃないだろうけど、よほど多くのレースやウマ娘を見てきたのか、観察眼というか審美眼というか、並のトレーナーよりもよっぽど見る『眼』があるように思える。

須川さんから「この記者は界隈でも有名だ」って聞いてるけど、その評判に偽りはなさそう。

・・・須川さんが微妙そうな表情をしてたのは気になるけど。

そんなことを考えていると、乙名氏さんはさっそくボイスレコーダーを取り出して電源を入れた。

 

「では、これからインタビューを始めさせていただきます!」

 

おやぁ?ちょっと素でテンション上がってない?

あぁ、この人あれか。ウマ娘が好きすぎて記者になっちゃったタイプか。

にしても、私にまでそんなテンションを上げてくれるなんて、ちょっと照れちゃう。

 

「まず始めに、地方から中央に移籍することになったきっかけを教えていただいてもいいですか?」

「あ~、きっかけはトレーナーからのスカウトですね」

 

一応、会見やインタビューの場では須川さんのことをトレーナーと呼ぶようにすることにした。

別に名前呼びがダメってわけじゃないんだけど、やっぱり少数派だし、理由が理由だから拡大解釈されても困る。

 

「最初にトレーナーと会ったのは、浦和トレセンでの実習で試走をした時なんですよね。でも、その時は他と比べてダントツで遅くて、『あ、これダメだ』ってなったんです。そこに、トレーナーが来て私をスカウトしたんです」

「なるほど・・・ですが、そのような状況でスカウトされて、不信感のようなものはありませんでしたか?」

「ガッツリありました。なんなら、『中央のトレーナーを名乗ってる怪しい人』ってのが正直な第一印象でした」

 

そう、あの時の不審者みたいな第一印象が強すぎて、未だにトレーナーじゃなくて名前で呼んじゃうんだよね。

もちろん、もうすぐ1年経つ今となっては須川さんのトレーナーとしての腕前は疑ってないけど、でもなんとなく名前呼びが染みついちゃってる。

 

「まぁ、試走の時はダートの超短距離で、適正外もいいところだったっていう事情もあるので、そんな状態で私の適性を見抜いてスカウトしてくれたトレーナーには感謝してもしきれません」

 

そういう意味では、須川さんは私の恩人だ。

 

「なるほど、ありがとうございます。続いて、地方出身ながら無敗での皐月賞制覇がかかっていますが、意気込みはありますか?」

「正直な話、つい最近まで山の中で走り回ってた感覚もあって実感が湧かない部分もありますけど、こうしてクラシックG1の舞台に立った以上、私は自分が最強であることを示すつもりです」

「なるほど!では、皐月賞で他に注目しているウマ娘はいますか?」

「無敗でジュニアG1を勝った、サートゥルナーリアとアドマイヤマーズです。ですが、私の脚質が逃げであること、私自身が最強を証明するのを目標としている以上、特定のウマ娘だけを警戒するのではなく、他すべてのウマ娘を警戒して走るつもりです」

 

ウマ娘のレースは、強いほど勝ちにくくなるというジンクスが存在する。

強ければ強いほど、他のウマ娘にマークされやすくなり、自分の走りがしにくくなる。

逃げや追い込みなら他のウマ娘の影響は受けづらいけど、逃げはスパートを出し続けるタフネスと抜かされないスピード、追い込みは冷静に状況を見続けるメンタルと最後方から抜かしきる突破力がないと成立しない。

だからこそ、本当に強いウマ娘というのは稀なのだ。

そこまで言うと、乙名史さんはプルプルと体を震わせ・・・

 

「す、す、素晴らしいです!!」

「お、おおぅ?」

 

思い切り体を乗り出し来た。勢いあまって椅子まで倒してる。

いや、突然すぎて思わずのけぞりながら素の声が出ちゃったよ。

 

「地方から現れた、あのオグリキャップさん以来とも言われる傑物!そして、そのオグリキャップさんが成し得なかったクラシック制覇を目標にしていると!」

 

うんまぁ、オグリ先輩とは普段から仲良くしてもらってるし、目標にしている部分ももちろんあるけど、そんなにたいそうな感じではない、かなぁ?というか、まだレースしてるところ見たことないから『ちょっと天然が入ってて一緒によくご飯を食べる先輩』ってイメージの方が強いんですけど。

 

「さらに!ここまで無敗で皐月賞への切符を手にしながらも謙虚さを忘れず、トレーナーのことを全面的に信頼しているとは、素晴らしい関係です!」

 

えっと、須川さんのことを信頼してるのは否定しないけど、謙虚・・・謙虚かなぁ?むしろ他のウマ娘をまとめて踏みつぶす気満々で挑むつもりなんですけど。というか、今までのレースでもけっこうまとめて薙ぎ倒してきましたけど。

 

「そして!最強を目指しながらも他のウマ娘へのリスペクトも忘れず、三冠をとれるかもしれないと噂されていながらも冷静に地に足を付けて目標と向き合うその姿勢!まさに世間やファンからの期待に応えるウマ娘そのものの姿です!」

 

ごめん、そこまでは考えてない。

そりゃあ最強を目指すとは言ったけど、三冠にそこまでこだわりがあるかって言われると、う~んってなる。もちろん負けるつもりはないけど、周囲に期待されているほど楽観視してないし、自分にその器があるかって聞かれても『ある』とは答えられないんだよね。

ついでに、世間やファンから注目されてるって自覚はあるけど、レースになっちゃえば関係ない、というか普段からそんな意識してない。今のところ私のスタンスは『推したければ推せ。私は知らん』を貫くつもりでいるから、そんな高尚なウマ娘と思われても、その、ちょっと困る。

完全にヒートアップしてる乙名氏さんを横目にチラッと須川さんの方を見ると、諦めろと言わんばかりに小さくため息をついて首を横に振った。

なるほど、こういうタイプの面倒くさい人だって知ってたから、最初に微妙な表情になってたのね。

乙名史さんのヒートアップはこの後数分続いたけど、一度冷静になってからはちょっとプライベートなことも含んだ雑談混じりの取材をして、おおよそ30分くらいでインタビューは終わった。

にしても、あーいう人が書く記事って、大丈夫なのかな・・・?

 

 

 

後日、私の取材が載った記事が発売されたってことで買って読んでみたところ、過大評価とは言わずともめちゃくちゃ称賛されててめっちゃ恥ずかしくなった。

ていうか、これ知り合いに見られるって、もはや軽く地獄では?

・・・とりあえず、こういうのにも慣れていかないとダメかぁ。




絶対シービー実装されるって思ってたのに・・・文句とまでは言いませんが、気合入れすぎたせいで肩透かしが半端ない・・・。
あと、風モチーフで若干キャラが被りそうですが、距離と性格は違うのでセーフってことで。
シービーが実装されるまで石貯蓄は続行ですが、思わず引きたくなりそうになるくらいにはキャラが良すぎねぇかアストンマーチャン・・・。
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