ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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ほら、まとめてかかって来いよぉ!(震え声)

例の乙名氏さんの取材から1週間経ち、予定通り皐月賞の記者会見が開かれる運びとなった。

ちなみに、アーモンドアイ先輩は見事ドバイターフを勝利して帰国してきた。

お土産はパ◯チ?とかいうお店のチョコをいただいた。有名なお店らしいけど、ぶっちゃけ知らん。めっちゃ美味しかったけど。

んで、今回の記者会見は皐月賞に向けたものということで、勝負服で参加することになっている。ついでに、記者会見が開かれるビルまでは学園が手配してくれた車で向かった。安全対策とかめちゃくちゃ気を遣ってるのがわかる。

にしても、記者会見なんて中央に移籍するときに会長と一緒にやって以来かな。久しぶりすぎて緊張してきた・・・。

 

「・・・今のうちにリラックスしておけ、ハヤテ。これからはレースの前後に記者会見をする機会がグッと増える。あまり無茶な質問は飛んでこないだろうし、この前の取材と同じ感覚で臨めばいい」

「それって、一部乙名氏さんみたいな記者もいるってこと?」

「あそこまでのは稀だ。というか、あの類は質の悪いゴシップ記者を除けば乙名氏記者以外めったにいない。それに、今回は権威あるクラシックレースで、なおかつ未来有望なウマ娘を相手にするものだ。当然、参加できる記者の審査は相応に厳しい。よほど問題になるようなことはないだろうさ」

 

須川さんがそういうなら、そうなのかな。

ちなみに、今回の記者会見は事前に行われたファン投票で上位5人に選ばれたウマ娘を対象にしてるんだけど、私はその中でも一番人気に支持されている。

ハハッ、やべー。これで今回の記者会見に出る他の4人のウマ娘だけじゃなくて、皐月賞に出走するすべてのウマ娘からマークされるのが決まったようなもんじゃん。

 

「念のために確認しておくが、今回はそれぞれに控室が用意されていて、そこで記者会見の準備をする。勝負服に着替えるのもそうだが、メイクもしてもらう」

「メイクもするんだ」

「公の場に出るわけだからな。少しでも見栄えは良くしておくに越したことはない。まぁ、ハヤテの場合はそのままでも十分顔が整っているから、軽めになるだろうな」

「そ、そう?私ってそんなに可愛い?」

「だいたいのウマ娘に言えることではあるけどな」

「・・・」

 

いや、それはそれで事実かもしれないけどね?どうせならちょっとくらい自分の担当を褒めてもいいと思うんだ。

 

「記者会見の内容も、あくまでちょっとした質問を繰り返す程度のものになるはずだ。とはいえ、お前は世間にも注目されているから、おそらく記者の本命はお前のことになるだろうな」

「うへぇ・・・やっぱりそうなるんだ」

 

うんまぁ、それは乙名氏さんの取材でもなんとなくわかってたけど、今回は他にも一緒に皐月賞を走るウマ娘もいるわけだから、また取材のときとは違った感じになるんだろうなぁ・・・。

 

「・・・ちなみに、あの記事みたいな『最強を目指す』発言って、どういう印象になる?」

「端的に言って、宣戦布告だな」

「同期とかアーモンドアイ先輩に対して?」

「お前以外すべてのウマ娘に対して」

 

マイガッ。

 

 

* * *

 

 

しばらくして、ようやく記者会見をやるビルにたどり着いた。

ただ、タイミングが良かったのか悪かったのか、今回の記者会見に参加するだろう記者団と鉢合わせた。

さすがに今はそういう時じゃないって弁えてるのか、向こうから話しかけられるようなことはなかったけど、やっぱり私のことは知っているみたいで視線を向けられはした。

う~ん、これは今回もイッカクを留守番にして正解だったかもしれない。ただでさえ白毛で目立つし、私とセットのところを写真に撮られでもしたらプライベートでゆっくりできなくなる可能性もあったかも。

それに、イッカク自身すでに競争ウマ娘としてのキャリアは捨ててるから、悪目立ちするのは望んでいない。

これからの展開次第にはなるだろうけど、普段の練習風景の取材以外はイッカクは留守番でいいのかもしれない。まぁ、その辺のことはまた帰ってから本人と話し合おう。

控室には受付から係員さんに案内してもらって、今回お世話になるメイクアップアーティストの人とあいさつしてから勝負服に着替えてメイクをしてもらった。メイクって言っても、須川さんが道中で言った通り、本当に軽めだったけどね。

 

「須川さ~ん、どう?」

「いいんじゃないか?いっそのこと、普段から意識してもいいと思うくらいだ」

「う~ん、でもちょっと面倒だしなぁ・・・」

「そんな、もったいないですよ!せっかく可愛いんですから、化粧を覚えた方がいいと思います!」

 

メイクアップアーティストさんからも力説されるけど、本当に必要かぁ?

自分で言うのもなんだけど、私って身長142cmの上から76・52・75のロリスタイルだから、化粧とか変に大人ぶってる感じがしちゃいそうなんだよね。

・・・いざとなればイッカクに頼むのも一つの手ではあるけど、肌と髪と尻尾の手入れは最低限してるからそれで許して。

それからは、控室を後にして記者会見の会場へと向かう。

その道中でもやっぱりすごい見られているのが分かる。

 

「それじゃあ、俺はここまでだ。後のことはわかってるな?」

「ん、一応」

 

私は会場の手前側の方の扉に待機して、ファン投票の人気が低い方から順番に呼ばれて登壇することになっている。それからは、記者からの質問に答えるだけだ。

 

「んじゃ、あまり緊張しすぎないようにな」

「はーい」

 

そう言って、須川さんと別れた。

にしても・・・扉越しとはいえ、すでにざわつく声が響いているのが聞こえる。今回の記者会見、どんだけ集まったんだろうね。

 

「ねぇ」

「ん?」

 

不意に、横から声をかけられた。

そこに立っていたのは、今回の記者会見に参加する黒鹿毛のウマ娘だった。

 

「えっと・・・サートゥルナーリアさんだよね?」

「・・・私のこと、知ってるんだ」

「まぁね」

 

サートゥルナーリア。今まで何度も話してきた、今回のクラシックにおける私の最大の対抗バだ。

メディアでも『無敗のウマ娘による一騎打ち!』みたいな感じで散々取り上げられてるし、何より普段は話さないけどクラスメイトでもあるから、そりゃあ顔と名前は知ってる。

 

「それで、なに?」

「別に。ただ、私の他に無敗の皐月賞を期待されているのがどういう娘なのか、それを見に来ただけ」

 

それだけ言って、サートゥルナーリアはさっさと離れていった。

・・・なるほど。向こうにいるアドマイヤマーズもそうだけど、一足先にG1レースを勝ってるだけあって、肝が据わっている。サートゥルナーリアはホープフルステークスから直行で間にレースを挟んでないからトップコンディションじゃないだろうに、それでもあの自信とは、恐れ入った。

まぁ、私だってOpとはいえレースレコード叩きだしてるから、気後れするようなことはないけどね。

 

「お待たせいたしました!ただいまより、皐月賞出走ウマ娘記者会見を始めさせていただきます!」

 

あ、記者会見が始まった。

 

「ではさっそく、皐月賞に出走するウマ娘に登壇していただきましょう!まずは5番人気、ファンタジスト選手!4番人気、ダノンキングリー選手!」

 

最初の2人が司会の言葉で壇上に上がると、傍から見ても分かるくらいにカメラのフラッシュがたかれた。うわ、めっちゃ眩しそう。

 

「続いて3番人気、共同通信杯では2着となりましたが、無敗で朝日杯FSを制したアドマイヤマーズ選手!2番人気、3戦3勝の無敗でホープフルステークスを制し、無敗の皐月賞制覇が期待されているサートゥルナーリア選手!」

 

続いてアドマイヤマーズとサートゥルナーリアが壇上に上がると、さっきよりもさらにカメラのシャッターを切る音が聞こえてきた。やっぱり、無敗でG1レースを勝ってるってポイントが高いんだなぁ。

 

「そして、最後に1番人気!現在4戦4勝!地方から現れ、圧倒的な大逃げで他を寄せ付けない圧勝劇を繰り返してきた、今最も注目のウマ娘、クラマハヤテ選手!」

 

最後に満を持してという風に私が壇上に上がると、さっきまでのが嘘みたいにカメラのフラッシュが激しくなった。

思わず「うおっ、眩しっ」って手をかざしそうになったけど、どうにか堪えた。思わず眩しそうに目を細めちゃったのは大目に見てほしい。

とりあえず、ポーズとしてマフラーをバサッと後ろに翻した。

 

「サートゥルナーリア選手とアドマイヤマーズ選手の勝負服はそれぞれのG1レースでお披露目となりましたが、他3人の勝負服は今回が初お披露目となります!」

 

・・・なんか落ち着かないなぁ。一応、今回で2回目になるけど、こうも大勢の人に注目されるのはどうにも慣れない。

目線だけを動かしてると、取材者席とは違うところにある関係者席らしき場所に須川さんと4人のトレーナーさんが座っていた。

須川さんも私の視線に気が付いたのか、思わずといったように苦笑した。

 

「それでは、これから各ウマ娘の意気込みを聞いていきます!G1レースに対する想いなど、まずはファンタジスト選手からお願いします!」

 

それからは、インタビューというかウマ娘の意気込みを聞く時間になった。

ファンタジストは朝日杯の雪辱を晴らすこと、ダノンキングリーは初めてのG1レースでも負けないということ、アドマイヤマーズは無敗ではなくなったがそれでも皐月賞で負ける気はないということ。まぁ、3人とも皐月賞に関する無難なコメントだった。

でも、サートゥルナーリアは違った。

 

「では、サートゥルナーリア選手、お願いします!」

「私は、このまま無敗で皐月賞を制覇します。そして、私がクラマハヤテよりも上であるということを証明してみせます」

 

サートゥルナーリアのコメントに、会場はわずかにざわついた。

そりゃあ、まさかレースじゃなくて個人、それも私を名指しして宣戦布告したんだから、誰でもちょっとくらいは驚くよね。彼女のトレーナーもこのことは聞いてないのか、思わず立ち上がろうとしたのを須川さんに止められていた。

とはいえ、サートゥルナーリアの気持ちが分からないわけじゃない。

あくまで多分だけど、無敗でホープフルステークスまで勝ったのに、メディアやファンの間で話題になってるのは地方から来た私。私も無敗ではあるけど、G1どころか重賞すら出ていないんだから、その辺で何かしら思うところがあるのかもしれない。

 

「・・・へぇ」

 

・・・まぁ、私にとってはちょうどいいスパイスになったけどね。自分でも思わず口角が吊り上がっていくのを感じる。

自分じゃ見えないけど、司会とサートゥルナーリア以外の3人がちょっとギョッとしたあたり、今の私はさぞ獰猛な笑みを浮かべていることだろう。

 

「そ、それでは、最後にクラマハヤテ選手、お願いします!」

 

ふと我に返った司会が、私に話を振った。

マイクを受け取りながら、私はチラリと視線を須川さんに向けた。

視線を向けられた須川さんは、「好きにしろ」と言わんばかりに肩を竦めた。

うん、私もね、あんなこと言われて大人しくしていられるほど行儀良くないからね。許可をもらったんなら、もう好きにしちゃおう。

 

「あはは。まさかこの場で名指しで宣戦布告されるとは思いませんでした。まぁ、私も初めての重賞、初めてのG1ですけど、そのことについてあれこれ言うつもりはありません」

 

そして、一息ついてから、口を開いた。

 

 

 

「私は、私が最強であるという()()を皆さんにみせます。ただ、それだけです」

 

 

あえて、まるでこの4人のことは見ていないというように、傲慢に、不遜に、そして大胆に言い切った。

そのどよめきは、先ほどのサートゥルナーリアの発現に対するものとは比較にならない。

そりゃそうだ。さっきのサートゥルナーリアみたいな、私個人への宣戦布告とは違う。

それこそ、同期どころか私以外すべてのウマ娘全員に喧嘩を売ったようなものだ。

とはいえ、反省も後悔もするつもりはない。

せいぜい、私が楽しむための糧にさせてもらおう。

 

 

 

 

 

記者会見が終わってから帰りの道中、めっちゃ吐きそうになった。

ついでにめっちゃ反省も後悔もした。

ほんと、なんであんなこと言っちゃったのかなぁ私はぁ!!




基本的にハヤテは慣れないことに関しては緊張しやすいですが、戦闘狂(先頭ではない)とは言わずとも戦闘好き(先頭ではない)ではあるので喧嘩を売られると即買います。
あと、その場のノリと勢いで話すことが多いですが、それで失敗しても反省して活かすことができないポンコツです。
こんなんだから、衆目に晒される黒歴史とか量産しそう。

今回、史実の人気を参考にするなら5番人気はヴェロックスになるんですけど、こっちの世界線では主にハヤテのせいで勝ちレースがメイクデビューだけになって若葉ステークスでギリギリ2着に入って出走権をもぎ取った形になるので、その辺を整合性をとるために人気を繰り下げました。ていうか出走取消すらあり得るレベルなんだよなぁ。
ヴェロックスは犠牲になったんだ。クラマハヤテによる史実改変、その犠牲にな。

ロリスタイルとは言ってもイナリワンとかゼンノロブロイあたりの例外を除けば低身長組の中ではまだ胸は大きい方なんだよなぁ。2人とも身長140cmもないのにBが85とか89ってうっそだろおい。
ちなみに参考までに、サイズはすべてダイイチルビーのものよりも1小さい数値となっております。バラバラのキャラを参考にしながら決めたのにこうなるとか、実はダイイチルビーのスタイルは自分好みの完成された数値だった・・・?
なお身長はハヤテの方が1㎝高いんですけどね。
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