ただ走りたいだけ   作:リョウ77

42 / 70
ガチャはシービー実装まで我慢すると言ったな?あれは嘘だ。
イナリワンとタマモクロスの新衣装とか引くしかないんだよなぁ。
結果は、すり抜けが多くて吐きそうになったものの、140連引いて新タマモ×2に加えてニシノ、晴着ウララ、パーマーを新規ゲット、すり抜けはしつつも星3二枚抜きも2,3回あったんで十分勝ちでしょう。
まぁ、欲を言えば2体目の新タマモを新イナリにしてほしかったですが。(強欲)


誰にも私を止められない

クラシックレース初戦、G1皐月賞。とうとうその日がやってきた。

不思議と、思っていたよりも不安や緊張は感じない。まったくないってわけじゃないけど、それらを興奮や昂揚が上回っている、って言った方が正しいか。

 

「調子はどうだ、ハヤテ」

「ん。問題なし」

 

控室では、須川さんが私の脚を最終チェックして、イッカクが私の蹄鉄を調整してくれている。

ちなみに、備え付けられているテーブルの上にはバナナやパンケーキの残骸が積み上がり、空になったペットボトルが転がっている。

レースに向けて1週間かけてガッツリ減量して、その分レースの前にガッツリエネルギー補給を済ませておいた。

これなら、間違いなくベストコンディションでレースに臨める。

 

「念のため、おさらいをしておくぞ。皐月賞は中山レース場で行われる右回り・芝2000mのレースで、バ場は良。条件は昨年の葉牡丹賞と同じだな。スタート直後とゴール直前にある急坂が肝だ。また、カーブも小回りでスピードが乗りづらい。加えて、中山レース場は他と比べて最終直線が短い。お前が皐月賞で勝つ()()()()は、最終直線までに先頭にいること。欲を言えば4,5バ身はリードが欲しい。でなければ、ラストスパートに捕まる可能性がある」

 

まぁ、この辺は葉牡丹賞の時と変わらないね。

 

「最後に、不測の事態に備えておきたい」

「って、言うと?」

「例えば、スタート直後に先頭が取れなかったり、バ群の中に埋もれたりした場合だな。もちろん、そういう事態は無いに越したことはないが、備えない理由にはならない」

 

それもそうか。

もしかしたら、何かの拍子にうっかり出遅れちゃったり、他がハイペースでそれに捕まる可能性だってあるわけだしね。

 

「とはいえ、いちいち全部の可能性を考えるのも面倒だ。もし不測の事態が起きた場合、2つ覚えておいてほしい。

1つ目は、冷静に自分の走りをすること。焦って無理に先頭に立とうとするといたずらにスタミナを消耗することになるし、場合によっては進路妨害をとられるような走りになりかねない。先頭が取れなかったからと言って、ムキになる必要はないってのを覚えておいてくれ。

2つ目は、相手に自分の有利な土俵を押し付けること。どのウマ娘にも、自分にとって有利・不利な条件ってのがある。つまり、有利な条件で走ることができれば、それは他のウマ娘にはないアドバンテージとなり、その差が勝負を分けることもある。それを見極めて、勝負所を探ってくれ」

 

・・・??

 

「・・・まぁ、とはいえだ。お前にそんな器用なレースができるとは思ってないし、俺も無理強いをするつもりはない。ハナをとって逃げ切れるなら、それでいい」

「はぁい」

 

ごめん、ちょっと頭がオーバーヒートしていた。

まぁ、その場その場でどうにかするしかないか。

 

「さて、皐月賞は『最もはやいウマ娘が勝つ』と言われるレース。条件で言えば不利だが、記者会見であんだけ啖呵きったんだ。そんなジンクスなんて関係なく勝ってこい!」

「オッケー!んじゃ、行ってくるね!」

 

イッカクから蹄鉄を付けた靴を受け取って、それを履いて私はパドックへと向かった。

このレースが、私と言う物語の第一歩だ。

 

 

* * *

 

 

パドックでのアピールを終えた私は、ゲート前でストレッチを始める。

今回、私の枠番は4枠7番。逃げの私にとってはまぁ可もなく不可もなくって位置だけど、中山レース場はカーブが小回りだから、外枠の方がスムーズにカーブに突っ込めるっていう利点もあるし、枠番だけで有利不利を測るのは少し難しい。

んで、そんな外枠の6枠12番にはサートゥルナーリアがいる。これが吉と出るか凶と出るか、それはレースが始まるまでわからない。

 

「クラマハヤテ」

 

そんなことを考えていると、心の中で話題にしていたサートゥルナーリアが話しかけてきた。

 

「サートゥルナーリアさん。こうして話すのは記者会見以来だね」

「あの時は、最後にあなたの発言ですべて持っていかれたけど・・・それでも、勝つのは私だ」

 

・・・はは、やっぱりいいね。

目の前にいるサートゥルナーリアはもちろん、ここにいる誰もが、今までデビュー戦やOPレースとは比較にならない気配を漂わせている。

これが、G1のレベルか。

 

「ははっ、いいね。でも、私だって勝ちを譲るつもりはないから。ここでこれ以上言葉を重ねても意味はない。後は、走ってでどっちが強いかを証明するしかないよね」

「っ、たしかに、それもそうか。なら、私も全力を尽くさせてもらう」

 

そう言って、サートゥルナーリアはゲートへと向かっていった。

さて、私もそろそろゲートに入りますか。

 

『さて、各ウマ娘が出そろいました』

 

ゲートに入り、周囲の視線を遮るとスッと意識が澄み渡る。

あとは、ゲートが開くのを待つだけ・・・

 

『クラシックレース、G1皐月賞。今・・・スタートしました!』

「ぶぇっ!」

 

あっ、やべ。

 

『おっと!7番クラマハヤテが出遅れてしまいました!』

 

 

* * *

 

 

『おっと!7番クラマハヤテが出遅れてしまいました!』

「あっ!ハヤテちゃんが出遅れちゃってますよ!?」

「ちょっ、これ大丈夫なんですか?」

 

クラマハヤテが見事に出遅れた場面は、関係者席から見ていた須川とイッカク、グランアレグリアもばっちり目撃していた。

ちなみに、グランアレグリアが須川やイッカクと並んで関係者席にいるのはほとんど彼女の我が儘のようなものだ。

一応、グランアレグリアが関係者席に混じってレースを観るだけなら、まぁできなくもないことではあるのだが、他チームないし他トレーナーと観戦など軽くスパイ行為なため、あまり褒められることではない。あるとしたら、見られる側とよっぽど仲がいいウマ娘が来る場合か、もし見られたとしても問題ないと判断できる事情か実力差がある場合くらいだ。

そして、幸か不幸かグランアレグリアは両方当てはまる。

同じクラス・同じ寮で普段から仲がいいのは言わずもがな。そして、クラマハヤテが中長距離路線なのに対して、グランアレグリアは短距離マイル路線なので基本的に同じレースに出ることはない。

なので、「ハヤテと仲いいしクラシックレースくらいなら・・・」と須川と東条も渋々許可を出した。

あるいは、彼女も先週行われた桜花賞でレコードを出して勝ったため、そのご褒美のようなものかもしれない。

 

「いやまぁ、大丈夫ではないな。あいつ、勢い余ってゲートにぶつかるとか・・・テンション上がり過ぎじゃないか?」

 

クラマハヤテが出遅れた原因は、今須川が言った通りクラマハヤテがスタートの際にゲートにぶつかったためだ。

不幸中の幸いなのは、ロスは少なめで最後方とはいえバ群に埋もれず離されてもいないというところか。

 

「こうなると・・・かなり厳しくないですか?」

「普通に考えれば、厳しいどころの話じゃないな。一応、逃げウマ娘が出遅れても1着をとったケースはあるにはあるが、よほどレース慣れしていないと無理だ」

 

代表的なのは、キタサンブラックの天皇賞秋だろう。

彼女もまた 逃げウマ娘でありながら出遅れたが、不良バ場の最内を突っ切ることで最終直線で先頭に出て勝った。

だが、それはシニア級の時の話だ。

 

「じゃあ、ハヤテちゃんはこのまま・・・」

 

考えたくはないが、目の前の現実にグランアレグリアも表情を暗くし、イッカクも目を伏せた。

だが、それでも須川の表情はまだあきらめていなかった。

 

「いや、まだ可能性はある」

「本当ですか!?」

「まず第一に、バ群に埋もれるという最悪の事態は回避している。自分のペースで走れるなら、まだ可能性はあるはずだ。

それに・・・ハヤテはまだ冷静だ」

 

目の前を通った時に一瞬だけ見えたクラマハヤテの表情。

ゲートをぶつけた部分をさすっていたが、その瞳に動揺の色はなく、静かに前を見据えていた。

 

「ハヤテを信じろ。あいつならあるいは、俺たちの想像を超える走りをしてくれるはずだ」

 

 

* * *

 

 

「いてて・・・」

 

うぅ、勢い余ってゲートにぶつかっちゃった・・・。

う~ん、自分じゃちゃんと集中してたつもりだったんだけどなぁ・・・我ながら緊張してたのか、テンションが上がってたのか、どっちだろう。

おかげで、すっかり出遅れて現在最後方に居座ることになっちゃった。

幸い、ぶつけた部分はちょっとヒリヒリするだけで、皮膚が裂けて出血とかはないっぽい。

とはいえ、どうしたものかな・・・。

意外にも、出遅れたにも関わらず今の私は落ち着いたままだ。なんというか、自分事のはずなのにどことなく他人事のように感じる。

おかげで、こんな状況でも後ろから冷静にレースを俯瞰することができる。

サートゥルナーリアは、他の上位人気ウマ娘と一緒に前寄りの中団を走っている。

ペースは、早くも遅くもない、ハイ寄りのミドルペースってところかな。私が先頭に立ってハイペースになるのと考えていたのか、先頭の方は少し戸惑い気味だ。

とはいえ、考えれる時間は少ない。

ウマ娘からすれば、2000mという距離は長いようで短い。だいたい2分前後で走れる距離だ。

さて、どうしたものか・・・

 

「・・・想定外のことが起きた時、考えることは2つ。1つ、自分の走りをすること。2つ、自分の土俵を相手に押し付けること」

 

1つ目の、自分の走りは問題なくできている。あとは仕掛けるタイミングだけだ。

問題は2つ目、自分の土俵を相手に押し付けることだけど、まず自分にとって有利な条件は何か。

1つは、言うまでもなく豊富なスタミナ。もう1つは、山で走ってきた坂の経験値。

中山レース場・芝2000mの最大の特徴は、スタート直後とゴール手前に存在する急坂。これを使わない手はない。

そして、私が皐月賞で勝つ最低条件は、最終直線までに先頭に立っていること。

なら、私が仕掛けるタイミングは・・・

 

「ここ!」

『ここでクラマハヤテが早くも第2コーナーから仕掛けた!大外を回って徐々に前へと迫っていく!』

 

中山・芝2000mは、スタート直後に坂がある都合上、第2コーナーから下り坂が始まる。これを利用して加速しながら先頭を狙っていく。

普通ならこんな早い段階でスパートとかできないんだろうけど、私はしょっちゅう大逃げからロングスパートをかけているし、なんなら今回は出遅れて最後方からレースを始めたおかげで、微々たるものだけど足には溜めがある。こっからスパートをかけても、十分ゴールまでもつはずだ。

同時に、追い抜きながら圧力をかけて掛からせ、全体的にペースを上げさせる。ここで私だけ消耗しても最終直線で厳しくなるから、私以外にも消耗してもらおう。

第2コーナーを抜けて坂が終わる頃には、サートゥルナーリアの後ろくらいまで進出することができた。

とはいえ、小回りのカーブで無理やり加速するために大外ぶん回した分のロスはあるし全体のペースは上がっているから、まだ油断はできない。

このまま、私はペースを上げ続ける。できれば、第4コーナーに入るまでには先頭に立ちたい。

 

『向こう正面から、クラマハヤテは徐々に徐々に先頭と差を詰めていく!第3コーナーに差し掛かった現在のタイムは1分10秒7、徐々にペースが上がってきています』

 

今の実況で、私が圧をかけてペースが上がっていたのに気づいた先頭がわずかに速度を緩めた。

なら、さらにここで仕掛ける!

 

『おっと!クラマハヤテがさらにペースを上げた!あっという間にサートゥルナーリアをかわして先頭を目指していく!先頭ランスオブプラーナも粘るが少し厳しいか!第3コーナーで先頭がクラマハヤテに変わった!』

 

とりあえず、須川さんから言われていた私の最低限の勝利条件にこぎつけた。

とはいえ、慣れない追い込みから超ロングスパートを仕掛けたせいで余裕はそこまで残っていない。

あとは、ここまでの戦略で他のウマ娘がどれだけ消耗したか、この最終直線で私の脚がどこまで伸びるかにかかっている。

脚はまだかろうじて残っているけど、加速分はすでに吐きだしつつある。

なら、足りない分は根性で回しきる!

 

『さぁ第4コーナー回って最終直線!先頭に立ったのはクラマハヤテ!その後ろからはサートゥルナーリア、ヴェロックス、アドマイヤマーズが迫ってくる!さらに内を突っ切るのはダノンキングリー!クラマハヤテは厳しいか・・・いや!まだ逃げる!先頭は渡さないと言わんばかりにさらに突き放す!』

 

背後からは、僅かな動揺の気配を感じる。

最終直線に入れば、そこからすぐに急坂が始まる。

後ろから圧をかけてペースを上げさせたのは、急坂の利を最大限に生かすために、急坂を上がるだけの余力をできる限り削るため。

そして、山で坂を走り慣れた私なら、中山の急坂でもロスなく、最大限の効率で走りきれる!

 

『一歩先に中山の急坂を登ったのはクラマハヤテ!後ろからサートゥルナーリアが猛追してくるが、クラマハヤテまだ逃げる!そのまま半バ身差逃げ切って、ゴォール!見事、クラマハヤテが無敗で皐月賞を制しました!』

「ッ、ハァ、ハァ、ハァ・・・」

 

ゴールと同時に、観客席からは爆発音のような歓声が響き渡る。

えっ、勝った?私が?坂を上りきったあたりから必死過ぎて何がどうなったのかよく覚えてない・・・。

減速しながら足を止めて掲示板を見ると、7番の数字が一番上にあった。

それを見て、ようやく私が勝ったというのを認識した。

 

「・・・~~~~ッ、っしゃあ!!」

 

体の内から沸き上がる熱に身を任せ、私は拳を突き上げて思い切り咆えた。

出遅れた時はどうなるかと思ったけど、結果的に勝てて本当によかった。

 

「クラマハヤテ」

 

すると、横からサートゥルナーリアが声をかけてきた。

その表情は、どこか悔し気だ。そりゃそうだ、負けたんだから悔しいに決まってるか。

 

「・・・正直に言って、あなたが出遅れた時、私は自分の勝ちを確信していた。だけど、あなたにあんな走りができるなんて思わなかった。まさか、後ろからすべてのウマ娘を掛からせてペースを操るなんて、ね。

私の完敗だ。たしかにあなたには、素質がある。最強のウマ娘になれる素質が」

「はぁ・・・」

 

なんか、急にデレたね?

 

「だが、このまま負けっぱなしではいられない。次は日本ダービーだ。次こそ必ず、あなたを越えてみせる」

 

そのまま言いたいだけ言って、サートゥルナーリアはその場を後にした。

何をしたかったのかな?って思ったけど、観客席のコールを聞いて早いうちに身を引いたんだってことに気付いた。

そっか、自分で言うのもなんだけど、今は私が主役なんだ。

観客席に向かって手を振ると、私を祝福してくれるかのように沸き上がった。

えっと、この後はウィナーズサークルでインタビューがあって、ウィニングライブもして、でもライブの前に須川さんとイッカクのところに戻らないとね。

・・・改めてみると、世界が変わったように見える。

これこそが、G1ウマ娘が見る景色、なんだろうね。

これからどうなるかはわかんないけど、この景色を見られるならこれからも頑張っていこう。




とうとう皐月賞制覇です。
いやぁ、とうとうここまで来ましたか・・・皐月賞までくればダービーもすぐそこですね。
そして、ようやくあの2人も・・・。

ちなみに、自分の好きな皐月賞はゴルシです。
何度見てもゴルシワープが綺麗すぎてリピートしちゃいますし、菊花賞も含めて走り方がミスターシービーみたいにエンターテインメントなところがあるのが好き。
なんで、個人的にゴルシはクラシック期が一番好きですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。