ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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有馬記念イクイノックスいぇーい。
父親繋がりで推してるんでホント嬉しい。


“領域”を体感してみた

「え~、というわけで、完全復活ってわけじゃないけど、頭は冷えました」

「そうか。それはよかった」

 

タマモ先輩やコントレイルたちのおかげで、どうにか調子を取り戻すことができた翌日、須川さんに改めて自分から大丈夫になった旨を伝えた。

まぁ、今度はタマモ先輩とオグリ先輩から聞いたゾーンってのが頭から離れなくなってるけど、自分から無茶をするような心理状態からは脱却できたから良しとしよう。

なんだけど・・・

 

「なので、この重り外してもいいですか?めちゃくちゃ動きづらいんですけど」

「それはダメだ」

 

現在、私は足や手首、胴体に重りを付けた状態で筋トレをしている。

いや、胴体につけてるやつはまだいい。パッと見ても重りだってわかる見た目してるし。足、というか靴につけてる重りも、見た目は蹄鉄だけど金属だしそういうのがあっても不思議じゃない。

問題は手首につけてるリストバンドだよ。アンクルウェイトって言うらしいけど、見た目や質感はただのリストバンドなのにめちゃくちゃ重いんだけど。たぶん1個10㎏くらいあるんじゃない?どうやって作ったんだよこんなの。

そして、こんなものを付けて走らせるとかひどくない?私はそう思う。

 

「お前なぁ、コントレイルが倒れたって聞いた時の俺の気持ちがわかるか?」

「いや、倒れてないじゃん。ちょっと疲れてただけだって聞いたけど?」

 

ちなみに、今日はコントレイルは休みになってる。

なんかお好み焼きを作り終えたあたりで寮の部屋に運び込まれたらしいけど、そんな疲れ果てるようなことなんてあったかな?

 

「ちょっとどころじゃねぇよ。聞いたぞ?オグリキャップ共々お好み焼きを喰いまくったらしいな。そして、そのお好み焼きはタマモクロス、コントレイル、イッカクに作ってもらったとフジキセキから聞いたが」

「うん。とてもおいしかったよ」

「そうか、それは良かったな。だが食い過ぎだ。初めての体験だったとはいえ、コントレイルが燃え尽きるとかどんだけ食ったんだお前ら」

「さぁ?覚えてないや」

「その結果が、あのアホみたいに増えた体重だからな。その体のどこにあれだけの質量が詰まってるんだ・・・?」

 

それは私も聞きたいかなー。でもまあ、質量保存の法則的には食べた分増えるのは当然のことだろうし、だったらそんなもんかなって思わなくもない。

ウマ娘は不思議生物だからね。見た目より重くなることがあっても不思議じゃないし、胃の中にブラックホールがあるオグリ先輩だっているから、そんなもんだって割り切ろう。

 

「まぁ、それはそれだ。しばらくはこのままダイエットメニューを続けてもらうとして、近いうちにリギルと模擬レースをしてもらう。具体的な日付はまだ決まってないが、併走自体は決定事項だ。詳細が決まったら追って連絡する」

「はーい」

 

リギルかー。もうお馴染みになってきたなぁ。

いつもはグランかアーモンドアイ先輩と併走をやってるけど、今回もそんな感じかな?

いやでも、たしかアーモンドアイ先輩は安田記念で走ったばっかだし、ちょっと難しいか。

 

「ちなみに、相手って誰?」

 

そう尋ねると、須川さんはニヤリと笑ってその名前を口にした。

 

「会長殿、シンボリルドルフだ」

「・・・マジ?」

 

シンボリルドルフ。

もはや改めて語ることがないほどの、伝説とも言える存在だ。

なにせ、日本で初めて無敗のクラシック三冠に加えて、G1レース7勝なんて記録を残した、正真正銘の“皇帝”。

後に2人目の無敗三冠となったディープインパクトが現れて世間からは若干影が薄くなった部分もあるかもしれないけど、現在でもトレセン学園の生徒会長をやっているだけあって影響力は大きい。

当然、そんな会長と併走をしたいっていうウマ娘は多い。けど、同じチーム内でもそれは難しいらしい。

カリスマがやばすぎて誘いづらいとか、ネームバリューが凄すぎて余計な諍いが起こる可能性もあるとか、いろいろと理由はあるけど、一番の理由は会長自身が自重しているかららしい。

会長は基本的に善性な存在であるウマ娘の中でも、さらに善性が突き抜けている存在だ。なにせ、今でも本気で「すべてのウマ娘を幸せに」という目標を目指しているのだから、もはや偉人というか聖人に近い。

そんな会長だから、一度でも併走とか模擬レースの誘いを受け入れたら、他の誘いもズルズルと引き受けてしまう可能性がある。というか、たぶん会長自身がそれを一番自覚している。

だからこそ、その辺のスケジュールは東条さんによって徹底的に管理されていて、リギル内ならともかく他所のウマ娘やトレーナーからの依頼は滅多に受け付けないらしい。

ただ、今回は須川さんから頼み込んで特別に許可をもらったんだと。

 

「よくもまぁ、東条さんがOKを出したね」

「俺としては、会長殿を指名したわけじゃないし、何なら断られる前提でスピカの方にも行こうと思ってたんだけどな。ここ最近のハヤテの状況を説明したら、珍しく会長殿から『やらせてほしい』って申し出たから、おハナも今回だけ特別に、ということで許可を出してくれた」

「そっかぁ。そんなにひどかったんだ・・・」

「あぁ、それはもうひどかった。だから反省しろよ」

 

「いやそこはフォローしてよ」って言いそうになったけど、思い返してみるとマジでひどかったから素直に反省しておく。

ちなみに、須川さんの言う「ひどかった」は、トレーニング中の態度のことかな?それともコントレイルのことかな?

尋ねたら藪蛇になりそうだから、ここはあえて聞かないでおこう。

 

「そういうことだから、ダイエットはしっかりこなせよ。いつになるかわからないとはいえ、太り気味のまま会長殿と併走なんてさせるわけにはいかないからな」

「別に太ってないですー。ウエストはいつも通りですー!」

「体重だけはしっかり増えてるだろう。それとも重量気味と言った方がいいか?」

「・・・太り気味のままでいいや」

 

ストレートに重いって言われたら、それはそれで傷ついちゃいそう。

 

 

* * *

 

 

模擬レースの日程は、須川さんから話を聞いたおよそ2週間後ということになった。

というわけで、来たる模擬レースに備えて本番ほどじゃないにしても身体を仕上げることになった。

ちなみに、完全に復活したコントレイルに会長との模擬レースの話をしたらめっちゃ羨ましがられた。

まぁ、さすがにデビュー戦にも出てないジュニア級のウマ娘を参加させることはできないから、今回は大人しく観戦してもらうけど。

模擬レースの内容は、私と会長を含めた9人立てで会長以外は今年のクラシック級の希望者から東条さんが選ぶことになった。私と2人だけってなると、変な噂が流れないとも限らないからね。まぁ、一部はすでに会長が個人的に私のことを気にかけてるって知ってるし、なんなら移籍するときのインタビューの時点で一部からそういう噂は流れたけど。

レース条件は芝2400mの左回りで、高低差を除けば日本ダービーと同じだ。

なんか私の精神を抉りにきているように見えなくもないけど、私の他にもダービーに負けたり、なんだったらダービーに出ることすらできなかったウマ娘も参加するかもしれないと考えたら、私だけの問題じゃないんだから変に捻くれた思考は持たないようにしよう。

希望者に関しては、現クラシック級限定とはいえめちゃくちゃ殺到したらしい。会長と模擬レースできる機会なんてそうそうないし、当然と言えば当然だけど。

そして、模擬レース当日。

模擬レースを行う学内の練習用コースの周囲には大勢の観客が集まっていた。ウマ娘なら会長が走ってるところは是が非でも見たいだろうし、トレーナーだって会長に限らずそれに対抗する私たちの走りも気になるんだろう。

 

「うへぇ。人数はともかく、密度は本番のレースにも負けず劣らずじゃん。会長すげー」

「ですけど、ハヤテ先輩もそれなりに注目されてますよ。ダービーだと、その、負けちゃいましたけど、それでも今のクラシック級で頭一つ抜けてますし」

「・・・そういえば、ロジャーバローズはいないね」

 

ダービーのことを言われて、そう言えばと思い出した。

日本ダービーでレコードを叩きだしたロジャーバローズは、なんと凱旋門賞に挑戦することが発表された。

私はたぶん洋芝は適正外だから挑むつもりはないけど、あれだけの走りができるなら可能性はあるかもしれない。

だからこそ、会長と走れる機会なんて逃すはずがないと思うんだけど・・・。

 

「ロジャーバローズなら、長めの休養をとっている。今のところ何か故障が見つかったという話は聞いてないが、あれだけの走りだ。万全を期して凱旋門賞に挑むためにも、下手に走らせるよりは休ませた方がいいと判断したんだろう」

「へぇ~」

 

まぁ、私にできることなんてないけど、せめて無事に凱旋門賞に出られるよう祈っておくくらいのことはしておこう。

 

「にしても、私もねぇ」

「ダービーで3着だったとはいえ、ダノンキングリー共々タイム差なしで実質レコードホルダーのようなものだ。それに、元がステイヤーだから菊花賞の最有力候補であることに変わりはないからな。『クラマハヤテならあるいは』、と思う者も少しはいるだろう」

「それで、その、実際はどうなんですか?」

「ん~、まぁ普通に考えれば無理だよね」

 

だって、あの会長だよ?“皇帝”なんて言われてるウマ娘だよ?勝てるって思える方が頭おかしい。

とはいえ、勝ち筋が全くないのかって言われると、別にそうでもないわけで。

 

「総合力はダントツで負けてるけど、それでもスタミナだけで言えば私に分がある。まぁ、そのアドバンテージもあってないようなものだけど」

 

現在、無敗の三冠ウマ娘は会長とディープインパクトの2人だけど、この2人の走り方はけっこう違う。

会長は緻密な計算を戦略でレースを掌握する、いわばレース巧者とでも言うべき走りをする。何回か実際のレース映像を見たことがあるけど、徹底マークや心理攻撃に関しては“天才”の一言しか浮かばない。ただ1人でレースの展開を操ることができる、まさに“皇帝”の名にふさわしいウマ娘だ。

ただ、逆を言えばかく乱やら徹底マークを受けない大逃げであれば、会長の戦略の影響を最小限に抑えた上で実力勝負に持ち込むことができる。

タイマンならそれも難しいけど、他にも7人の壁ができるなら、可能性は決してゼロじゃない。

まぁ、ゼロじゃないだけで実際は1%にも満たないだろうけどね。会長を相手にするには決定的にスピードが足りない。

 

「まぁ、ダービーは2番手で好きに走れなかったし、そもそも皐月は出遅れちゃったし、久々の大逃げを満喫する程度で考えておこうかな」

「そんな心構えで会長殿とレースをするような奴なんてお前以外に・・・いや、いなくもないか」

「いるんですか」

「あぁ、サイレンススズカだ」

「あ~」

 

そう言えば、あの人ってもっぱら『先頭民族』とか言われてたね。

あれ?もしかして同類?

 

「やぁ、クラマハヤテ。今日の調子はどうかな?」

 

そんなことを話していると、会長がこっちに話しかけてきた。

さっきまで模擬レースに出る他の娘たちと話してたと思うけど、我関せずな感じで準備をしてた私たちが気になったらしい。

 

「まぁ、普通って感じですねー。本当は絶好調の状態で挑みたかったんですけど、ダイエットと皿洗いの罰則の最中なんで」

 

ダイエットはなんとか1週間ちょっとで最低限のラインまで絞れたけど未だに継続中だし、皿洗いに至っては自然と挨拶をかわす程度には馴染んでしまって終わるタイミングを見失いつつある。

いや、現役だからさすがにどこかのタイミングで切り出されるだろうけど、うっかり言い忘れる可能性もなくはないのが普通に怖い。

・・・まぁ、それはそれとして領域(ゾーン)とか黒い人影に頭を悩ませているってのもあるけど。むしろそっちの方が本命だけど。

 

「そうか。できることなら、万全の君と走ってみたかったものだが・・・」

「まぁ、普通なら普通なりに頑張ります。それに、やることは変わらないですしね。ていうか、皐月とダービーはいつも通りに走れなかったんで、その鬱憤を会長にぶつける勢いで走ります」

「ふふっ、そうか。なら、今日の君の走りを楽しみにするとしよう」

 

そう言いながら微笑むと、会長は東条さんのところへと戻っていった。

う~ん、本当にイケメン。一歩間違えるとマジで惚れそう。

てかフジキセキ先輩とかもそうだけど、リギルにイケ女が集まりすぎでは?伊達にファン感謝祭で執事喫茶を伝統にしているわけではないってことか。

 

「先輩?」

「今度のファン感謝祭は執事の会長にちやほやしてもらおう」

「はい?」

「あ、ごめん。なんでもない」

 

ちょと欲望が口から漏れちゃったけど、ただそれだけだから。模擬とはいえちゃんとレースに集中するから。

だからイッカクもそのジト目をやめてね?須川さんもため息ついてないで止めてくれない?

 

「まぁ、それはそれとして、さっき言ったみたいに逃げまくればいいんだよね?」

「露骨に話をそらしたな・・・あぁ、他にできることもないだろうしな。ハンデもあってないようなもんだし、全力で逃げ切れ」

 

枠ちなみに、順に関してハンデとして会長が最外になってる。まぁ、9人立ての最外ならそこまで劇的な変化は現れないだろうけど、形だけでもあった方がいいってことかもね。

ちなみに、私は最内だ。一応、会長以外はくじ引きで決めたってことになってるけど、須川さんから申し込んだ模擬レースで狙ったように私が最外だと変な勘ぐりをしちゃいそう。まさか私を徹底的に叩きのめす準備とかしてない?

 

「んじゃ、いってくるね。応援はほどほどで」

「おう・・・ハヤテ」

「ん?」

「シンボリルドルフとのレース、その景色をしっかりその眼に刻んでおけ」

「? ん、わかった」

 

須川さんの忠告が具体的にどういうものなのかはわからなくて思わず曖昧に頷いちゃったけど、須川さんがそう言うってことは重要なことなんだろう。

あるいは、会長とのレースで何かを掴め、ってことなのか。

そんなことを考えながら、練習用ゲートの中に入る。

いつもならここで周囲の視線や気配なんかは遮断されるんだけど、会長の気配だけはゲートの中にいても感じたままだ。

それだけ私が会長のことを意識しているのか、あるいは会長がそうなるように仕向けているのか。

気にならないと言えばウソになるけど、考えたところでしょうがない。

不要な情報はすべて切り捨てて、スタートに備えて集中する。

最外の会長が最後にゲートに入った瞬間、まるで時間が止まったかのような場を満たし・・・ゲートが開いた。

スタートは完璧。会長は・・・中団の好位置に陣取った。

 

「ッ!!」

 

次の瞬間、会長から容赦ない威圧がまき散らされた。

可哀そうなことに、会長の隣と前で走っている2人はすでに会長の空気に呑まれてしまっている。あの様子だと、最後までスタミナが保つか怪しいところだろう。

私は、初手から飛ばして距離をとっていたおかげで一瞬ビビった程度で済んだ。

いやまぁ、すでに10バ身近く離れてるはずなのにそれでもビビる会長の威圧も十分馬鹿げてるんだけど。

なるほど、あれが“皇帝”のプレッシャーか。あくまで映像越しで見た程度だけど、あんなの受けながらまともに走ってるドリームトロフィーリーグのウマ娘ってやっぱり普通じゃないんだなぁ。

にしても、ちょっとくらい手加減は・・・するわけないか。

あの会長でも・・・いや、会長だからこそ、たとえ模擬レースであっても真剣勝負であれば手を抜くはずがない。それこそ、強者か弱者など関係なく、等しく潰しにかかってくるに決まっている。

なら、私もそれに全力で応えるまで。

自分を奮い立たせるためにも、早い段階でスパートをかける。

たぶんトップスピードは圧倒的に私の方が劣っている。

なら、最終直線でスパートの余力を残すよりも、ゴールまでに私のスタミナを吐ききる方が勝率が高いはず。

グングンと速度を上げていき、後ろとの差は足音で判別がつきにくいほどに離れていく。

それでも、会長はまだ仕掛けない。いっそ不気味なくらいに、中団から私を見据えている。

向こう正面を過ぎて、差はたぶん20バ身くらい、私が第4コーナーに差し掛かった・・・そのタイミングで会長が仕掛けてきた。

あわよくば進路を妨害しようとした動きもあったけど、会長のプレッシャーにひるんだ隙を突かれてどんどんと上がってくる。

どんどんと会長の足音が迫ってくる感覚からして、最終直線には10バ身差まで詰められるだろうけど・・・それだけあれば、十分だ。ギリギリのラインだけど、ハナ差くらいまでなら押さえつけられるかもしれない。

このまま最終直線に入る。

このまま、このままいければ・・・!

 

「・・・クラマハヤテ。この光景を、その眼に、その魂に刻むといい」

 

ふと、会長の声が聞こえた気がした。

ウマ娘の耳でも足音で掻き消えそうなほど小さいのに、なぜか耳に残って・・・

 

「ッ、え・・・!?」

 

次の瞬間、私の視界いっぱいに雷霆が迸った。いや、それだけじゃない。雷鳴もとどろいている。

でもおかしい。今は晴れだ。ごくまれにそういう現象が起こるって聞いたこともあるけど、レースの最中、それも最終直線にたまたま偶然起きるものなのか?

なら、あれは気のせい?いやでも、たしかにあの時、私は雷霆を、雷鳴と稲光を感じた。

まるで、私の目の前の景色(せかい)が塗りつぶされたかのように・・・

 

「ま、さか・・・」

 

私がその可能性に思い至ったのとほぼ同時に、雷霆を身にまとった会長が私の前に出た。

私も負けるものかと前に踏み出そうとして、すぐにやめた。

諦めた、っていうわけじゃない。ただ、あまりにも衝撃的だった。

同時に、理解した。これこそが、会長が見せようとしたもの、そして、模擬レースを計画した須川さんが私に見せたかったものなんだと。

結局、会長はそのまま駆け抜けて3バ身ほど差をつけてゴールした。私も追いつく気力は湧かなかったものの、ペースを落として抜かされるなんて醜態を晒さないように走りきって2着になった。

 

「はぁ、はぁ・・・今のが、領域・・・」

「そうだ。まさか、すでに知っているとは思わなかったけどね」

 

そう言う会長の顔は、なんとも涼し気だ。あれだけの走りをしておきながら、まだ余裕を残していたらしい。いや、本当に化け物だなこの人。

 

「領域、あるいはゾーン。超集中状態とも言われるそれは、その領域に入った者のポテンシャルを100%以上まで引き上げる。だが、ウマ娘の領域(ゾーン)はそれだけに当てはまらない。想いを糧にすると言われるウマ娘がゾーンに入った時、自分自身のイメージ、心象風景を周りのウマ娘にも伝播させる。そして、時として世界を自分自身の領域で上書きすることすら可能になる」

 

「まぁ、あくまでウマ娘相手に限った話で、ヒト相手だと難しいが」と付け加えたけど、あまりにも衝撃的な話だった。

つまり、ウマ娘にはそれだけの可能性が秘められている、ということだ。

 

「君がゾーンの壁に当たって悩んでいるだろうことは、須川トレーナーから聞いた。私から言えることは多くないが・・・もし先に進めず行き詰ったら、自分自身の心の中の風景、そして自分自身の走る意味と理由を思い出してほしい」

「・・・はい。ありがとうございます」

 

会長からのアドバイスに礼を言うと、会長はフッとほほ笑んで東条さんのところへと戻っていった。

そっか、あれが領域(ゾーン)か・・・。

目指すべき目標を前にして、私の中のモヤモヤが晴れたような気がした。

もしかしたら気のせいかもしれないけど・・・それでも、手探りだった闇の中に一筋の光が現れたのは確かだった。




オグリとスズカを足して1.5くらいで割った存在がクラマハヤテ。とりあえず食って走れればいい。
なんなら割ってない可能性すらある。

前回ゼミが忙しくて遅れるって言ったばかりですが、卒論で忙しくなるのでこれからも頻度は遅くなります。
息抜きに執筆することはあるかもしれませんが、「月に1,2回投稿できればいいなー」くらいの感覚になるかもしれません。
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