ちょっと心身共にボロボロになりつつあるので・・・。
とりあえず、今のところ精神的に死なないギリギリを攻めながら頑張っていますが、今月の半ばには終わるんで、それまでの辛抱や。
「んぁ~・・・」
夏合宿から、早2週間。
なんとなく合宿前よりもパワーは付いてるような気はするけど、今のところそれくらいしか得たものがない。
一応、砂浜でも暗闇の世界に入れるようにはなったけど、それ以上の進展がないのは変わらず。
あーでもないこーでもないと頭を悩ませても、一向に解決策が思い浮かばない日々。
というわけで、今日はトレーニングは休みだから浮き輪の上で何も考えずにプカプカと波に揺られることにした。
今の私は、さながら波に漂うだけのクラゲのよう。
ちょっと、いやだいぶ離れた砂浜にはうっすら須川さんとイッカクの姿が見える。
一応監視のために来てるはずだけど、ぶっちゃけネットの範囲内ならどこからでも泳いで戻ってこれるから、溺れたりクラゲに刺されたりでもしないかぎり問題ない。
とりあえず、最近は頭を使ってばっかりだったからこうして何も考えない時間を作ってみたんだけど、思ったよりいいね。
前にグランと遊びに来たときは思い切り泳いだけど、こうして浮き輪の上で浮かんでいるだけってのも悪くない。
・・・あるいは、それだけ思い詰めていた、ってことかもしれないけど。
「・・・んぇぁ~・・・」
あ~、ダメだダメだ。すぐに余計なことまで考えちゃう。
でも・・・やっぱり、考えずにはいられないんだよなぁ。
なにせ、前世の自分の名前と転生したという事実しか知らなかった自分のルーツに近づくことになるかもしれないんだから、どうしてもいろんなことを考えちゃう。
とはいえ、何か重要なことを思い出したからといって、態度を一新するつもりはない。
あくまで、自分の中に存在するあの人影と向き合うために必要ってだけで、普段の生活にまで影響が出るなんてことは、たぶんない。
まぁ、それもこれも、全部思い出してからだ。
・・・どうせなら、あの夢の中に出てくる映像について、ちょっと考えてみようか。
何も考えない時間を作るための休暇だけど、やっぱり何もしないってのもそれはそれで落ち着かない。
でも音声はノイズが激しいし映像も全面モザイクかかってんのかってくらい何も見えないし、得られる情報がほとんどない。
とはいえ、なんとなくパターンがいくつかあるのは分かってる。
一つは、最初に見た『誰かが自分に対して何かを話しかけている』映像。話しかけているってよりは、呼びかけているってのが近いかもしれない。何かしら必死そうなのは伝わってきた。
あとは、『やたらと視点が低い』映像と、逆に『やたらと視点が高い』映像。
そして、『緑の道のようなものが映っている』映像。
主にこの4つが、私が見ている映像の中でも特徴を掴めるものだ。
最後のは、たぶんレース場みたいなものなんだろうけど、前世の世界にはウマ娘なんていないはず。
なら、あそこはいったい何なんだろうか・・・?
なんというか、こう、大事なことを忘れているというか、何か重要な情報が抜け落ちているというか、どうにもそんな感覚が・・・
「アバババババババ!?」
ぎやあ!またなんか刺されたぁ!?
「・・・しっかり海水で洗い流して、タオルで拭き取ったな?じゃあ、後は軟膏を塗ってしっかり冷やしておけ」
「は~い・・・」
あの後、私の異変を察知したイッカクが速攻で泳いで助けに来てくれた。
あの時の私は考え事をしてたせいで気づかなかったけど、どうやら知らないうちにネットの近くまで流されてたみたいで、その近くにカツオノエボシの姿を確認したとのことだった。
ヒトなら下手したら死んでた可能性もあったけど、そこは不思議生物ウマ娘。持ち前の毒耐性のおかげで痛い程度ですんだ。
いや、その痛さがやばいんだけどね。マジで電気が流れたんじゃないかってくらいの激痛が走った。
ウマ娘でこれなんだから、ヒトだったらいったいどうなってたことか・・・。
「にしてもお前、去年も刺されてたよな?クラゲと縁でもあるのか?」
「いやな縁だなぁ。今日のはただの不注意だって」
「それはそれで良くはないが・・・少し珍しかったな。あそこまで流されてたのに気づかなかったとは。考え事でもしてたか?」
「ん~。してたり、してなかったり?いっそ何も考えずにボーっとしてたかったけど、どうにも落ち着かなくて」
「そりゃ難儀だな」
私を見る目にわずかな同情が宿り、だけどそれはすぐになくなった。
須川さんから具体案を出せない以上、下手な憐れみや慰めはむしろ心を切り裂く凶器になり得る。僅かでも表に出したのは普通に問題だけど、私ならちょっと程度は大丈夫だとでも思っているのだろうか。
「じゃあ、落ち着かないなら過去のレース映像でも見るか?特にドリームトロフィーリーグとか、ほとんどが
「うん、そうする」
基本的に
なら、気休め代わりにドリームトロフィーリーグ鑑賞会でもしますか。
* * *
「んぁ~・・・」
ドリームトロフィーリーグ鑑賞会を終えて、今日も今日とて温泉に浸かって思い切り脱力する。もはや合宿を始めてから毎日やってるルーティン的なものになってる。
ぶっちゃけ学園寮の浴場でもできないことはないけど、こういうのは温泉でやるからこそ意味があるように思う。
にしても・・・ドリームトロフィーリーグ、やっぱすごいなぁ。
他の映像もいくつか見たことはあるけど、どれも超一流のウマ娘しか映っていない。
参考にすべき走りもいろいろあるけど、やっぱり注目すべきは
これは会長の
おかげで、映像越しだとなんかごちゃごちゃしててよくわかんなかった。やっぱ生で見た方がいいのかな。
・・・そういえば、もうすぐ夏のドリームトロフィーリーグが開催されるはずだ。
須川さんに観に行けるか聞いてみようかな。あーでも、チケットとかもう販売終了してるか・・・。
いっそ、知ってる人が出走するならその関係者枠にねじ込ませてもらって・・・いや、それはそれで迷惑かけちゃうか・・・。
どーしよっかな~。
「ハヤテちゃん、どうしたの?」
そんな私の視線の先では、特に必要はないはずなんだけどイッカクがマッサージをしてくれている。
もうね、こうなると旅館のサービスなんじゃないかと勘違いしそうになる。
「いやね~、せっかくだから生でドリームトロフィーリーグ見たいなって思って、でも難しいかな~って」
「あ~・・・チケットの抽選、毎回倍率がすごい高いもんね」
ウマ娘のレース場でレースを観戦するには、コンサートのようにチケットの抽選が必要になるんだけど、G1レースの倍率は二桁を越えることが多いのに比べて、ドリームトロフィーリーグは三桁を越えることすら普通にあるという。
そんなレース、よっぽど運がいいか相応のコネがないと観に行けるはずもない。
「知り合いの誰かに頼むとかは?」
「いや~、さすがに先輩相手に私のわがままに付き合ってもらうのは申し訳ないって。あんまり迷惑かけたくないし。それに、頼るとしたら他のチームでしょ?スピカ・・・は意外とノリでOKしてくれそうだけど、それはそれでなんか迷惑になりそうだし、リギルはもってのほかだし」
というか、こういうところでスピカに頼る癖は付けない方がいいし、それは会長にだって同じだ。
会長はただでさえ模擬レースでお世話になったんだから、ドリームトロフィーリーグまでねだるのはさすがに失礼がすぎる。
だから、さすがにないとは思うけど、今回ばかりは会長から個人的に誘われても断るつもりだ。
「まぁ、ダメもとで須川さんに聞いてみようかな~」
「あぁ、それなら観に行けるぞ」
「マジで?」
聞いてみたら、まさかのOKが出た。
え、なに?どういうこと?
「実は、
「須川さんはいいの?」
「ハヤテとコントレイルがドリームトロフィーリーグに出走できるようになればいいだろ?」
「しれっとハードル上げたなぁ」
須川さんはできないことは言わない方だけど、にしたって期待値が高すぎない?
「開催されるのは、ちょうど来週だな。コントレイルにはすでに連絡してあるから、集合場所とか決めておけ」
「はーい」
願ったり叶ったりの展開に、思わず頬が緩む。
さっそく、どんなウマ娘が出走するのか確認しよう。
ついでに、もし知り合いがいたら応援のメッセージも送っておこう。