ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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水着スズカがエッすぎて変な声が出そうになりました。
別に壁でもいいじゃないか、くびれと鎖骨とうなじが拝めるなら。


それは聞いてないんだが?

前の会見から数日後、今日はホープフルステークスが開催される日だ。

だけど今、私の近くに須川さんとイッカクはいない。

というか、いつもの関係者席にすらいない。

 

「どうぞ、クラマハヤテ。頼まれたカフェオレだ」

「あ、どもです」

 

今日は、なぜか会長に特別席へと連行された。

いや、本当は須川さんたちと一緒に観たかったんだけどね?なんか会長から「クラマハヤテと話したいことがある」ってことで連れていかれたんだよね。

須川さんも須川さんで「そうか、なら行ってこい」ってすぐに私を差し出したし、イッカクも苦笑いこそしてたけど引き止めずに見送ってたし、どういうことなの?

ちなみに、前日に松葉杖からもおさらばして年明けにはサポーターも外れる見込みなんだけど、それでも会長からは怪我人認定されたままだった。

いや、会長が優しいのは百も承知なんだけど、それはそれとして畏れ多すぎるのよ。

生徒会にもリギルにも所属してないウマ娘が会長に飲み物を持ってきてもらうとか、そんな経験をしたウマ娘なんて学園内でも数えるくらいしかいないんじゃなかろうか。いやでも、会長なら他の娘にも同じようなことやってそうな気もするし、どうなんだか。

少し前までなら恐縮しっぱなしだっただろうけど、湯治中に突撃された上にあの噂関連について協力してもらってからは割と自然体でいられるようになった。

まぁ、それはそれとして言いたいことはあるけども。

 

「それにしても、まさか会長に連行されるとは思いませんでしたよ。最近の会長ってサプライズにハマっているんですか?」

「む、迷惑だっただろうか?」

「別に嫌だとか迷惑ってわけじゃないんですけど、唐突なんですよ。事前の連絡くらいは欲しいです」

 

いやもう本当にいきなりは心臓に悪いからやめてもらいたい。

会長が何かをしてるってだけで注目されるんですから、そこに巻き込まないでほしいっていうのはある。

 

「ちなみに、話ってなんですか?」

「私は今からでも構わないが・・・君の後輩が出てきたぞ」

 

そういう会長の視線の先を見ると、コントレイルがパドックに出てきてパフォーマンスをしているところだった。

今朝に会ったときからそうだったけど、今日のコンディションは絶好調のようだ。

 

「さて、今日のレース、クラマハヤテから見てどうなると思う?」

「コントレイルが勝つんじゃないですか?」

 

会長からの問い掛けに、私はパドックから視線を逸らさないまま答えた。

私の一切の逡巡がない回答に、会長は少し驚いたようだった。

 

「随分と自信気のようだが、何か根拠が?」

「コントレイルの強みは高い水準でまとまったバランスの良いステータスです。特別優れた、っていうより尖ったものはないですけど、その能力はセオリー通りの王道展開で真価を発揮します」

「ふむ。逆に言えば、『セオリーから外れた展開になれば崩れる』と言っているようにも聞き取れるが?」

「なりませんよ。少なくとも、このレースは」

「随分と自信があるようだ。何か根拠でもあるのかな?」

「ん~、根拠って言われると難しいですね・・・強いて言うなら、直感、みたいな?」

 

これも菊花賞での一件がきっかけなのか、子供の頃からあった直感がより鋭くなっているような感じがする。というより、具体的なイメージをもって頭の中にリアルに思い浮かぶようになった。

とはいえ、それを言葉で説明するとなると難しいけども。

 

「なんて言うんでしょう・・・天気予報、みたいな感じですかね。ニュースでやっているような奴じゃなくて、民間的なやつみたいな」

「ふむ、朝焼けがあると雨が降りやすい、みたいなものだろうか」

「ですね。例えるなら、雲とか、風の流れとか、空気の湿り具合とか、そういうので雨が降りそうだなーって分かる時があるじゃないですか。そんな感じです」

 

もちろん、実際の天気だけの話じゃない。

ウマ娘たちの佇まいや浮かべる表情、放たれる戦意や闘気の類、そういうのを感じ取って、そのレースの展開をなんとなく予想することができる。

そんな私の荒唐無稽な話を、会長は笑いながら肯定してくれた。

 

「ふふっ、そうか。どうやら君は私が思っていたよりも独特で、私の想像の遥か先を行っていたようだ」

「どうも・・・?」

 

褒められ・・・てるよね?“独特”って言い回しが褒め言葉なのかどうかは置いておくとして。

少なくとも、会長から認められているのは間違いないはず。

そんなことを話している内にも、ターフの上では今日走るウマ娘たちがゲートの中に入っていく。

そして、全員がゲートに入った少し後、ゲートが開いた。

全体的に揃ったスタートの中、先頭に出た9番のパンサラッサをさらに2人が追う形になり、コントレイルはその後ろの4番手先団に控えた。

 

「なるほど、いい走りだ。たしかに、あの中では頭一つ抜けているかもしれない」

「位置取りもいいですね。あそこからなら簡単に抜け出せる。これなら、コントレイルの勝ちですね」

 

私にとってはすでに勝敗が決まったようなレースだけど、それでもコントレイルの、私の後輩の晴れ舞台だ。僅かほども目を逸らさないようにしながら会長と受け答えをする。

 

「レースは何が起きるかわからない、と言いたいところだが、さっき君が言ったことが本当なら、実際にそうなるのかもしれない」

「ですけど、個人的には先頭を走っているパンサラッサが気になりますね」

「それは、同じ逃げ脚質としてのシンパシーかな?」

「どうでしょうね。どちらかと言えば、単純な実力だと思います。遅咲きの未完の器、ってのがしっくりきますね」

 

今はまだまだ、ジュニア級ってこともあって逃げ切るのに必要な能力が備わっていないようにも見える。

だけど、今はまだまだ“未完の器”で、次のクラシックがコントレイルのものだったとしても、きっといつか私たちにも引けを取らないような偉業を成し遂げる。そんな風をあのパンサラッサから感じる。

まぁ、パンサラッサのことも気になるけど、それはそれとして今は目の前のレースだ。

パンサラッサを含めた前3人の逃げは・・・最後まで続かなさそうかな。コントレイルも前に行きたがっているように見えるけど、上手く抑え込んでいる。

あの調子なら、前の3人が垂れてきたところをコントレイルがハナを取って、そのまま最終直線でコントレイルが後方を突き放して終わりだ。

そんな未来が会長にも見えたのかは知らないけど、私にこんなことを尋ねてきた。

 

「さて、クラマハヤテ。このままコントレイルが無敗の三冠に挑むとして、君はそのことについてどう思っているのかな?」

「別に、どうってことの程はないですよ。素直に応援するだけです。まぁ、本当にできるかどうかは別ですけど」

 

クラシックレースには、ジンクスがある。

皐月賞は“最もはやい”ウマ娘が勝つ。

日本ダービーは“最も運のある”ウマ娘が勝つ。

菊花賞は“最も強い”ウマ娘が勝つ。

私には、運がなかった。だからダービーで負けた。

もちろんそれだけで負けたわけじゃないけど、運を味方につけたロジャーバローズに負けたのは疑いようのない事実でもある。

クラシック三冠とは、つまりこの3つすべてのジンクスを踏み倒せるほどの実力を備えた怪物にこそ与えられる称号だ。だからこそ、それを達成したウマ娘は僅か7人しか存在しないし、その7人はレースの歴史に永遠に刻まれるほどの栄誉を手にした。

正直に言って、私からすればコントレイルはそんな怪物には見えない。

私やディープインパクトさんに憧れるのは、決して悪いことじゃないけど、憧れで達成できるほどクラシック三冠の称号は甘くない。無敗ともなればなおさら。

だから、もしコントレイルがクラシック三冠を達成したとすれば、別の理由が存在する。

公で語られることはほとんどなく、だけど暗黙の了解として存在してしまう、どうしようもない残酷な理由が。

あるいは、私が思わずパンサラッサのことが気になった理由も、そこにあるのかもしれない。

だけど、私はそれをコントレイルの前で言うつもりはないし、誰かに言わせるつもりもない。

だって、私はコントレイルのことが好きだから。こんな私を先輩として慕ってくれる、かわいい後輩だから。

もちろん、それはそれとしてレースでぶつかり合うことがあれば手加減は一切しないけどね。

そんなことを話している内に、パンサラッサを追っていた2人のウマ娘は次第にバ群に埋もれていき、最終直線で2番手に浮上したコントレイルが勝負を仕掛けた。

一気に先頭に立ったコントレイルの後ろからはオーソリティが迫っているけど、最終直線前で出来上がった位置取りの差を埋めるほどのスピードは持っていない。

コントレイルはそのままオーソリティに差を詰めさせないまま、ゴール板を駆け抜けた。

実況は勝者のコントレイルを称え、無敗でホープフルステークスを制したことで私の代わりに無敗のクラシック三冠達成を期待した。それは観客も同じで、G1とはいえジュニア級レースとは思えないほどの歓声の坩堝が巻き上がっていた。

その様子を、私と会長は特別席から静かに眺めた。

 

「どうやら君の後輩は、世間からも他のウマ娘からも注目される存在になったようだね。今年の最優秀ジュニア級ウマ娘は、おそらく彼女になるだろう」

「・・・どうにも手放しで喜べない気はしますけどね」

 

コントレイルがここまで注目されているのは、おそらくコントレイルがディープのウマ娘で私の後輩だから、っていうのが大きい。事実、そんな声が多く聞こえる。

逆に言えば、コントレイルという個人を見てその発言をしている人は、たぶんそこまで多くない。

まぁ、コントレイルがそのことに気付いているかは置いといて、私からそのことは言わないようにしておこう。

それはそうとレースも終わったことだし、そろそろ本題に入ろう。

 

「それで結局、私を呼んだ理由ってなんですか?」

「そういえば、まだ話していなかったね。私から話さなくても近いうちに伝わることなんだが、私から伝えて構わないと先方から連絡がきてね。それで、私から言うならこの場がふさわしいと判断した」

「そうなんですか」

 

ふぅん?いったい何のことだろう。

レースに関係することなら別にこの場で言うこともないはずだし、強いて言うならホープフルステークスで勝ったコントレイルがURA賞に受賞されるかもしれないってことくらい・・・

 

「えっと、まさか・・・?」

「クラマハヤテ。今年のURA賞において、最優秀クラシック級ウマ娘ならびに年度代表ウマ娘に君が選ばれたそうだ」

「うそでしょ」

 

なんでぇ?

アーモンドアイ先輩とかリスグラシュー先輩どこいった?

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