ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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今回は予告なしの投稿です。
バイトがクソ忙しくて疲れていたので忘れてしまいました。
ちなみに、サポガチャ100連回して三凸だったラモーヌを完凸させました。高いのか安いのかようわからん。
でもまぁ、ハーフアニバ分は残したから結果オーライということで。


借りてきたネコというか、他所に移されたウマというか

会長が言うには、私が今年の年度代表ウマ娘に選ばれたという。

最初聞いた時、「え?マジで?うそでしょ?」って思った。私の中では完全に海外G1を含んだG1レースを3勝したリスグラシュー先輩が選ばれるもんだと思ってたし。

だけど会長の言ったことはマジだったみたいで、後日URAから正式に私が最優秀クラシック級ウマ娘と年度代表ウマ娘に選ばれた旨が書かれた書類が送られてきた。

それを見て、「あっ、これはマジだ」と悟るしかなかった。

ちなみに、コントレイルが最優秀ジュニア級ウマ娘に選ばれた書類も同封されていた。

まぁ、もちろんそのことは嬉しかったけど、私は自分のことが信じられなくて呆然としたままだった。

んで、

 

「うへぇ・・・すごい豪華」

「ですね」

 

今日はURA賞の授賞式が開かれるということで、その式典パーティーにコントレイルと参加していた。

今日のパーティーはURAが主催の格式あるパーティーということで、参加者にはドレスコードが設けられている。

もちろんURA賞を受賞する私たちウマ娘も同じで、今はレンタルしたドレスを着ているんだけど、これがまぁ落ち着かない。

見るからに高そうとか、そういうのもないわけじゃないけど、こういう雰囲気が根っから庶民の私にはどうにも慣れない。

これから頑張って慣れるしかないのかな・・・。

 

「にしても・・・コントレイルもそうだけど、グランも慣れてる感じだね」

「あはは、家の方で慣れてるからかな」

 

ちなみに、グランも最優秀ティアラウマ娘に選ばれてここに呼ばれた。

知り合いが2人いるのが唯一の救いだよ。

 

「でも、そういうハヤテちゃんもそこまで緊張してるように見えないけど」

「いや、これでもガチガチに緊張してるんだけど」

「そう言うわりには、すごい食べてますよね?」

「これは緊張を紛らわせるために必要だから」

「普通は緊張すると食欲がなくなると思うんだけどね・・・?」

 

いや、私の緊張はとにかく食べることでほぐれるものだから。

オグリ先輩からも「パーティーには美味しいご飯がたくさんあるから、ぜひともハヤテにはいっぱい食べてほしい」って言われたし、ドレスを着るのに支障が出ない範囲で食べまくろう。

 

「やぁ、楽しんでいるかな」

 

そんな私たちのところに会長がやってきた。

なんでいるのかと聞かれたら、会長だからとしか言いようがない。影響力やばすぎでしょ。

ちなみに、ディープインパクトさんも来ているらしいけど、まだ見ていない。というより、別の場所でいろんな人に囲まれているから見えようがない。

 

「クラマハヤテはこのような場に慣れていないだろうから緊張しているんじゃないかと心配していたが、大丈夫なようだ」

「まぁ、そうですね」

 

あんたも緊張の種の一つだよ、とは言わないでおこう。会長は意外とそういうところを気にするし。

それにしても・・・

 

「・・・会長、ドレスすごい似合ってますね」

「ありがとう。君たちもよく似合っているよ」

 

会長はそう言って褒めてくれるけど、それがお世辞でないとわかっていてもお世辞に感じてしまうくらい、会長のドレス姿は様になっていた。この人本当に学生か?と思ったけど、前に会長を辞める機会がないって嘆いてたし、年齢については突っ込まないのが吉だ。ウマ娘は不思議生物、それでQED。

 

「それにしても・・・まさか私か年度代表に選ばれるなんて思ってませんでした。リスグラシュー先輩とか、オーストラリアのコックスプレート含めたG1を3勝してますよね?最優秀シニア級にも選ばれてましたし、てっきりそっちが年度代表になると思ってたんですけど」

「私も詳しくは聞いていないが、かなり意見が分かれたようだ。だが、ディープインパクト以降最も無敗のクラシック三冠に近かったと言っても過言ではなかった走りが、天秤を僅かでも君に傾けるきっかけになったのかもしれない」

「そんなものですかね」

「そんなものでも、だ」

 

自分じゃよく分かんねーってのが本音だけど、そんなものだと納得しておこう。

まぁでも、分かんないものを分からないままにしておくのも良いことではないから、自分なりに頭を回して理解してみようと試みてみる。

だから、っていうほど言い訳するようなことじゃないけど、後ろから近づいてくる気配に気づくのが一瞬遅れた。

 

「なに?僕の話をしてた?」

「うひゃい!?」

 

いきなり後ろから声をかけられて、思わず悲鳴を上げて飛び上がってしまった。

慌てて後ろを振り向くと、そこには小柄な青鹿毛のウマ娘が立っていた。身長は私よりも少し大きいくらいだけど、全体的に見ればかなり小柄な部類だ。

吸い込まれるような青鹿毛を腰まで伸ばしたそのウマ娘を、私は知っていた。こうして会うのは初めてだけど、この世界で知らない人なんてよほどの変わり者じゃない限り存在しない。そう断言できる。

なにせ、そのウマ娘の名は、

 

「でぃ、ディープインパクトさん・・・」

「初めまして、だね。クラマハヤテちゃん」

 

いやー!名前覚えられてるぅー!

とはいえ、コントレイル絡みで覚えられてそうだし、そうでなくてもこうして年度代表に選ばれるくらいには今の私は有名人だ。知ってて当然かもしれない。

にしても、夏のドリームトロフィーリーグの時はあくまで遠目だったけど、こうして間近で見てみると半端ないね。

見てくれは人畜無害で人懐っこい愛らしいウマ娘だけど、内包している存在感は会長にも引けをとらない。というか個人的には会長以上に目が離せなくなる。

“英雄”“深い衝撃”“近代日本ウマ娘の結晶”。改めて、それらの二つ名に一切誇張がないことを実感する。

 

「グランアレグリアちゃんも久しぶり。コンちゃんは、夏ぶりかな」

「そう、ですね。ディー、さん」

「よろしい」

 

人前だからフルネームで呼ぼうとしたのを頑張って愛称で呼んだコントレイルが、ディープインパクトさんに頭をなでなでされる。人前でも愛称で呼ぶようにと決められているんだろうか。

あぁ、照れているコントレイルが可愛い。いっそ私もコンちゃんって呼んでみようかな。いや、なんか柄でもない感じがするからやっぱなしで。

 

「久しぶりだね、ディープインパクト。このような場でしか話す機会がないのは、私個人としては残念ではあるが、やはりそちらは忙しいか?」

「会長も久しぶり。うん、ちょっと大変、かな。でも、家の人も頑張って走る時間を作ってくれるし、不満なんて言うつもりはないよ」

「そうか・・・いつかのように自由に走れる日が続くことを願っているよ」

「あはは、ありがとう」

 

・・・質問:無敗のクラシック三冠ウマ娘同士の会話とかいう激レアイベントを目の前で見せられている私の気持ちは?

結論:こんなん脳焼かれるに決まってる。

会長が他の三冠ウマ娘と話している光景は、まぁ見れなくもない。そもそもリギルとか生徒会が三冠ウマ娘の巣窟みたいなものになっているとすら言えるわけだし。

でも、無敗の三冠ウマ娘を達成したのは目の前にいる2人だけだ。しかも、二人共それぞれ異なる理由で多忙の日々を送っている。

そんな二人が同じ場所に現れる機会なんてそうそうない。

それこそ、金を払ってでもその瞬間を目撃したがるファンがいてもおかしくないだろう。

・・・仮にそういう番組を組もうとしたとして、ギャラとかどうなるんだろ。ちょっと気になるような気もする。

 

「それはそうと、ちょっとクラマハヤテちゃんを借りてもいいかな」

「うぇぁ!?」

 

そんな邪なことを考えていた時に、いきなりディープインパクトさんから指名されてまた変な声が出てしまった。

ていうか、前にも会長に似たようなことをされたな。無敗のクラシック三冠ウマ娘っていうのは私をドナドナする習性でも持ってるの?

あぁ、今度はガッシリ肩を掴まれて連行されていく。お皿によそったご飯がまだ残ってるのに・・・。

とはいえ、私も伊達に何回も連れ去られたわけではない。

 

「んじゃ、いってきま~す・・・」

「えっと、はい・・・」

 

今回は大人しく脱力してコントレイルたちに手を振りながら連れていかれることにする。

まぁ、会長と比べたらビジュアルが可愛い系だからそこまで緊張しないっていうのもあるのかもしれない。

適当に人だかりから離れたところまで連れていかれて、そこで改めて私はディープインパクトさんと向かい合った。

 

「さて、それじゃあ改めて。僕はディープインパクト。よろしく」

「クラマハヤテです。こちらこそよろしくお願いします。それで、話ってなんですか?」

「話って言うよりは、お礼かな」

「・・・コントレイルのことですか?」

「そう。コンちゃんは僕のことを目標にするくらい慕ってくれていているけど、正直に言えば僕に縛られずに自由に走ってほしいって思うんだ」

「はぁ・・・」

 

それはけっこう無茶な話では?

あの偉大な英雄が可愛がってくれるんだから、憧れるのも当然だと思うし、目標にするのも自然な流れだ。たぶん、私もコントレイルと同じ立場だったらディープインパクトに憧れて無敗のクラシック三冠を目指していたかもしれない。

とはいえ、それを目指して今と同じになれたかと言われたらそうはならなかっただろうけど。

 

「だからね、コントレイルが君のことを先輩として慕っている姿を見て、すごく嬉しくなったんだ。僕たちが注目していたウマ娘を、コンちゃんが選んでくれたことが。それこそ、僕がコンちゃんを見つけた時と同じくらい運命的なものだったのかもしれない」

「・・・ん?僕()()?」

 

なんかいきなり複数形になったけど、誰と一緒になってた?

いや待て、まさか・・・

 

「あれ、聞いてなかった?会長と一緒に、僕も君の中央移籍に賛成していたんだよ」

「マジですか」

「マジだよ」

 

初耳なんですが?つまり、私がコントレイルと会ったから気になってたんじゃなくて、コントレイルと会う前から注目してた中でコントレイルと会っていたのか。

 

「最初に持ち掛けてきたのは会長だけどね。僕に電話でレース映像を見てほしいって言ってきたから、それで知ったんだ」

「そっかぁ・・・」

 

こんなん脳が溶けてしまう。

推しに認知された認知厨オタクの気持ちが分かりそうなそうでもないような気がする。

 

「でも、何でですか?わざわざ私じゃなくても、実力ならアーモンドアイ先輩とかもいるじゃないですか」

「僕はね、コントレイルに自由に走ってほしい。でも、それと同じくらい強くもなってほしい。そして、君は自由に走る中で強くなるウマ娘だ。それこそ、あの菊花賞のようにね。だから、僕個人としてはコントレイルには君を見て走ってほしいんだ」

「はぁ・・・そういうものですか」

 

自分で言うのもなんだけど、私自身としてはそこまで自由に走っているっていう感覚は薄い。私の中にいるあの子たちのために走ろうっていう意識が少なからずあるっていうのもそうだけど、走っている最中に自由だとかなんだとかって考えながら走っているわけじゃない。

いや、あるいはそれこそが自由に走るってことなのか。走りたいから走る、その考えこそがディープインパクトさんにとっての“自由”なのかもしれない。

そんなことを考えながら会場に備えられた時計を見てみると、もうすぐ授賞式が始まるところだった。

 

「あ、やっべ、そろそろ表彰台に向かわないと」

「もうそんな時間だったんだ。早く行かないとだね」

 

そう言って、ディープインパクトさんは人が集まっているところへと戻っていった。

にしても・・・私はディープインパクトさんはドリームトロフィーリーグで見た姿しか知らないけど、こうしてみるとマジで愛玩動物にしか見えないなぁ。許されるならひたすら愛でたいものだ。

さて、私もそろそろ行かないと。

すると、ディープインパクトさんが人だかりから再び私のところへと戻って来た。

 

「そうそう、言い忘れたことがあったんだ」

「なんですか?」

 

まさか、授賞式のアドバイスか何かだろうか。

 

「僕はこれから君のことはハヤテちゃんって呼ぶから、君も僕のことをディーって呼んでほしいな」

 

それだけ言って、ディープインパクトさんは人だかりへと戻っていった。

唐突にそんなことを言われた私は、ただ呆然とするしかなかった。

ちょっと人懐っこすぎというか、気に入った相手への距離感がバグってないか?あの愛玩動物。

あっ、愛玩動物だからか。

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