シービーでUF9までいったんで、UEも現実的になってきました。
あと、無課金でSSRエル完凸しました。メイさんも2凸なんでまだまだ伸びしろはありますね。
ちなみに、今回は繋ぎというか、ハヤテ復活後の方針決め的な話です。
このあと2回くらい日常回を挟んでから、阪神大賞典って感じですかね。
わりと情報量が多かったURA賞の授賞式が終わってからは、あっという間に時間が過ぎていった。
というのも、年明けからは屈腱炎のリハビリが続いたからだ。
菊花賞から約3か月間ずっと走っていなかった分、体の衰えは尋常じゃなかった。だからこそ、その衰えを取り戻すためのリハビリに明け暮れる羽目になった。
私はそこまで体が頑丈っていうわけじゃなかったから高負荷のトレーニングはかなり控えめだったけど、それでも回復力の方は高かったのと、症状自体は軽くて早い段階で車いすや松葉杖から脱却したこともあって、担当医が感心したくらいのスピードで戻っていった。
そして、春のG1レースの話題が出始める2月の終わり頃。
「というわけで、完全ふっかーつ!」
「おかえりなさい、ハヤテちゃん」
「お疲れさまでした、ハヤテ先輩」
いぇーいとピースを掲げる私を、イッカクとコントレイルが拍手で迎えてくれる。
いやぁ、あったけぇわ。
「リハビリお疲れさん、ハヤテ。さっそくで悪いが、今後のことについて話すぞ」
軽く浮ついた雰囲気を取り払うかのように、須川さんが真面目な顔で手を叩きながらホワイトボードにペンを走らせた。
「幸いにも春シーズンには間に合ったわけだが、それはそれとしてギリギリなスケジュールなことに変わりはない。ハヤテの適性なら次の目標は春天になるわけだが、いくつか課題がある」
「諸々のブランク、だよね?」
「間違ってはいないが、60点くらいだな」
おぅ、意外と低い。なら、残りの40点はいったい何だと言うのか。
須川さんもそれを説明するつもりなんだろうけど、まず先に私が言った諸々のブランクの問題についておさらいし始めた。
「ウマ娘にとって、数か月のブランクは大きい。夏と年明けのシーズンで休養を挟むのはよくあることだが、ハヤテの場合は菊花賞直後に屈腱炎を発症した分、他のウマ娘よりもさらに2か月のブランクが開いている」
もっと言えば、年明けからやっていたリハビリはあくまで体力を元に戻すためのものだから、走りのブランクはさらに長くなる。
それで走り方を忘れるような間抜けではないけど、それでも細かいモーションや効率は落ちている可能性が高い。
それを、春天が開催されるまでの1ヵ月半で取り戻さないといけない。
「レースに関しては、3月後半の阪神大賞典を調整に使う。とはいえ、ここを万全の状態で走るのはまず無理だ」
「目安は?」
「どれだけ頑張っても8割は超えない。ハッキリ言って、負ける可能性も十分にある」
むしろ頑張れば8割近くまで戻せることに驚くけど、それは多分コンディションを犠牲にしたウルトラハードスケジュールを実行した場合だろうね。まぁ、実際は良くて7割前後ってところかな。最悪、6割を下回る可能性だって十分にある。
「とはいえ、春天には8割まで戻すつもりだ。というか、お前は元々スタミナですりつぶすタイプのステイヤーだから、春天までは多少スピードを犠牲にしてスタミナに重点を絞ってトレーニングする手もある。長期的に見れば、ブランクはまだ解決できる範疇だ。問題は、あと一つの方だ」
須川さんの前置きに、私は思わず姿勢を正した。
って言っても、ブランク以外に何があるのか、私にはとても思いつかない。
何のことなのか頭を捻っていると、須川さんがホワイトボードに『逃げ・先行・差し・追い込み』と脚質を書き並べていった。
「今までのお前は、出遅れた皐月賞を除けばすべて逃げでレースをしてきた。ダービーも限りなく先行に近い逃げと言っていいだろう。だが、阪神大賞典からは脚質を変える。具体的には追い込みだな」
「ん?」
「は?」
「え?」
須川さんの命令に、私だけでなくイッカクとコントレイルも思わず動揺の声が漏れた。
「んーと・・・脚質を追い込みに変えるって、マジ?」
「大マジだ」
「できなくない?」
「普通はな」
脚質って言うのは、基本的に容易く変えられるものじゃない。というかまず変えられない。逃げと追い込みみたいな極端な脚質は特に。
理由は、そうしないと走れないから。
逃げも追い込みも、多くはバ群の中で走れない気性難のウマ娘が仕方なくやる走り方だ。でも、どちらも能力が足りていないとまず勝てない。逃げは全力で先頭を走り続けてもゴール前でスタミナが尽きてしまうし、追い込みは最後方から気を伺ってスパートを仕掛けたところで距離が開きすぎると先頭に届かない。
だからこそ、強い逃げや追い込みのウマ娘は根強い人気を誇るわけだけど。
そういうわけで、差しと先行を行ったり来たりすることはあっても、逃げと追い込みをとっかえひっかえするなんてまずない。
それこそ、私の皐月賞みたいに事故で出遅れた時くらいしか・・・
「・・・あー、言われてみれば出来るような気がしてきた」
「いや、どうしてそうなるんですか!?」
私の手のひら返しにコントレイルがツッコみを入れた。
「考えてみれば、私が逃げで走ってたのって最初は須川さんの指示があったからだけど、あとは基本的に自由に走ってることの方が多かったなって」
あの大逃げが最たる例だ。あれは須川さんの指示を全力で無視して好き勝手した結果であって、別にそうしないと走れないっていうような事情はない。スピードとパワー不足で囲まれたらやばいって事情はあったけど、今となってはそこまで気にすることでもない。
一応、ダービーはゲートが最外だったこともあって須川さんの指示に従った走りをしたけど、好きに走れと言われた菊花賞は今までで一番の走りだった。
それに、私の中にいるあの子たちの存在を自覚したわけだけど、その脚質だって様々だろう。
つまり、今の私はたぶん
だからといって、どうしていきなり追い込みを指定されたのかまでは分からないけど。
「にしても、なんで追い込み?先行でも差しでも、なんなら大逃げじゃない普通の逃げでもいいけど」
「そうだな。お前が言うなら、たしかにそれもできるだろう。それでも俺が追い込みを選んだのは、万全を期すためだ」
「どういうこと?」
「先に結論だけ言うぞ。もし菊花賞と同じ走りをした場合、高い確率でお前の脚は壊れる」
須川さんの唐突でストレートな指摘に、部屋の中が凍り付く。
とはいえ、私はそう言われて納得がいった。
「あの時のハヤテは、
「「はぁ~・・・」」
パソコンに菊花賞の映像を出しながら解説した須川さんの説明を聞いて、イッカクとコントレイルは感嘆の息をこぼした。
なるほど。たぶん、私の足が両利きなのもこの走りに関係しているのかな?
ともかく、須川さんの言いたいことは私にもわかった。
たしかに、そう何度もこんな走りができるはずもないか。というか、強すぎる力によって故障したウマ娘も多くいる中で、こんな無茶苦茶な走りをしておきながら時間がかかったとはいえ復帰できた私は恵まれている方だ。
だけど、それもそう何度も続かないだろう。というより、須川さんが言うように次はない可能性だってある。
「仮に同じ走りをしたとして、どのくらいの確率で再発するかな」
「まず間違いなく再発すると考えていい。2400mを一回くらいなら耐えれるかもしれないが、わざわざ博打にでる必要はない」
「だからこその、追い込みへの脚質変更ってことね」
最後方からのロングスパートなら、大逃げからロングスパートをかけるよりは負荷もだいぶマシのはず。
となると、今後の方針としては・・・
「併走でコントレイルに前を走ってもらって、前半に足を溜めることを覚えるのが、ひとまずの目標って感じかな」
「必要なら、リギルやスピカに併走を頼んでもいいだろう。だが、まずは落ちたスペックを戻すところからだ。リハビリ中でも出来ることはやったとはいえ、今のハヤテのスペックは菊花賞と比べて3割ってところだ。これを6割まで戻す。併走はその合間にだな。欲を言えば、差しや先行もできるようになれば戦術の幅が広がるが・・・それは早くても春天が終わってからだな」
「やることが多いなぁ」
リハビリ明けとはいえ、予定がすでにギチギチに詰まっている。
あと、追い込みへの脚質変更は周りにバレないようにした方がいいかな。それなら、併走は個人的な範囲で頼んだ方がいいかもしれない。
それに、コントレイルも皐月賞が迫っているから私の方ばかりに構ってもらうのも悪い。
ひとまず、スピカの先輩たちにこの辺のことを話して協力してもらおうかな。頼れるとしたら・・・隠し事ができそうな先輩に心当たりがないな。いや、隠し事ができるウマ娘も希少ではあるけども。
会長は割と出来る方だけど、存在自体が隠すのが難しいから最終手段として取っておこう。
いや、ゴルシ先輩とオルフェ先輩はそもそも他のウマ娘が寄り付かないから、ある意味では適任かもしれない。いやでも、それはそれとして目立つからやっぱり難しいか・・・。
うん、併走のことは後回しにしよう。まずはスペックを元に戻すことに集中しないとだ。
あと、菊花賞までみたいなスペックのごり押しはできないから、その辺の新しい戦術も考えておかないと。
・・・いや、本当にやることが多いな。