ただ走りたいだけ   作:リョウ77

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え?デアリングタクトってリギルなの?
えっ、どうしよ・・・。
まぁ、コンちゃんがいないなら無敗牝馬三冠とったデアリングタクトがリギルに行くのもおかしくはないんですが。こっちは出てくる想定してなかったとはいえ、pvでもスピカにいなかったですしね。
というわけで、こっちはコンちゃんがいる時空なんで原作だと本当はコンちゃんがリギルに行く予定だったけど二次創作パワーでハヤテのいるチームに行ってデアリングタクトはリギルがコンちゃん勧誘する前にスぺに勧誘されてスピカに所属したってことにしておいてください。(早口)

今回は阪神大賞典回ですが、リハビリ感覚で軽めです。
春天と皐月賞に向けてレース描写の感覚を戻しておきたいので・・・。


これが私の復活劇よ

「ふぅ~・・・」

 

とうとう、この日がやってきた。

阪神大賞典。つまり、菊花賞以来の復帰レースの日。

リハビリの間も、うん、いろいろあったけど、概ね予定通りまで仕上げることができた。とはいえ、あくまで7割弱って感じだから全快からは程遠いけど。

それでも勝つために出来ることは全部してきたし、せめてURA賞授賞式の時にもらった()()に恥じない走りをしてみせないとね。

G2とはいえシニア級だから、勝つには事前に用意した策がどれだけ通じるかにかかってる、ってところかな。

 

「ハヤテ、入るぞ」

「はーい」

 

ちょうど体操服に着替えてゼッケンをつけ終えたタイミングで、外から須川さんが声をかけて中に入ってきた。

 

「調子は・・・良さそうだな。少し緊張しているようだが」

「あはは、まぁね」

「とはいえ、適度な範疇だ。まったく緊張していないよりかはずっといい」

 

今回のレース、菊花賞以来のクラシック明け復帰レースにも関わらず、私が一番人気に推された。

今更「ファンの期待がー」なんて言うつもりはないんだけどね、それはそれとして具体的な数字に出されると緊張しちゃうのよ。

 

「まぁ、俺の方からはもうあれこれ言わん。こう言ったらトレーナーの立つ瀬がないんだが、お前はお前の好きなように走った方が強いし、それがお前の魅力でもある。久しぶりのレースだ、楽しんで来い」

「楽しむくらいの心構えでいいの?」

「お前は嫌か?」

「まさか、私もその方が好きだよ」

 

いろんなあれこれに縛られるよりは、そんなことを考えずに走る方が好きだし、その方があの子たちのためにもなるだろうからね。

・・・まぁ、それはそれとしてやっぱり勝った方が気持ちいいのも事実だけど。

 

「・・・そろそろ時間かな。それじゃ、行ってくるね」

「おう」

 

さて、菊花賞でガラリと変わった私の走りがどこまで通用するか、確かめるとしようか。

 

 

* * *

 

 

「あっ、須川トレーナー。こっちです」

「おう、待たせたな」

「ハヤテ先輩の調子、どうでした?」

「コンディションはいい感じだ。スペックに関しては出来る限りのことはしたが・・・その辺りはハヤテがどう走るか次第だな」

「・・・やっぱり、そうなるんですか」

 

事情を知らない人間が聞けば「クラマハヤテのことを突き放している」とも感じ取れるような言い方に、イッカクとコントレイルは複雑な表情を浮かべる。

「自由に走らせる方が強い」と断言する須川の考えも十分理解できるし、なんなら2人も自由に走るクラマハヤテの姿が好きだから文句を言うつもりは欠片もないが、それはそれとして言葉選びに難があったり、その方が向いているからと躊躇なく放任気味になったりと、“トレーナーとしてどうなんだ?”と思う部分があるという事実はどうしても捨てきれない。

担当の故障をきっかけにベテラントレーナーからあることないことを噂でばらまかれたから中央トレーナーとして排斥されていったと話には聞いているが、実は担当の故障がなくてもいつか担当ウマ娘との間で問題を起こしていた可能性が高かったのでは?という考察はクラマハヤテも含めた3人の総意だった。

あるいは、常人と異なる感性を持っているという点で言えば、かつて天才と呼ばれていたのも納得できなくもなかった。

そんなことを考えている内に、続々と出走ウマ娘たちがゲートへと入っていく。

 

「ハヤテちゃんは5番ですよね」

「あぁ、良くも悪くもってところだな。阪神の内3000mは京都と比べて高さは低いが、下り坂からの急勾配を2回繰り返すことになるタフなコースだ。ハイペースからのスタミナ勝負に持ち込めれば、ってところだな」

「・・・でも、ハヤテちゃんは最後尾からなんですよね?」

「だな」

 

以前であれば、クラマハヤテが先頭に立って思いのままにペースを作ることができたが、少なくとも今年の春シーズンは追い込みで走るように厳命されている。つまり、自分でペースを作ることができないということだ。

 

「・・・大丈夫なんですか?」

「こればかりはな・・・はっきり言って、追い込みで走らせるのは“勝つため”じゃなくて“足を壊さないため”だ。そもそも追い込み自体が脚質としては弱いからな。そこにスペックの低下も合わされば、とてもじゃないが勝てる勝負とは言えない。というか、負ける可能性の方が高い」

「そんなことで大丈夫なんですか?!」

「俺だって出来ることはやった。あとは、ハヤテがどう走るか次第だ」

 

『さぁ、阪神大賞典が今、スタートしました!』

 

イッカクとコントレイルが不安を抱く中、とうとうゲートが開いてレースが始まった。

 

『おっと、キセキとクラマハヤテが出遅れてしまったか、後ろからのスタートとなりました!』

「須川トレーナー、これ・・・」

「あぁ、わざとだな。出遅れたように見えるが、ロスなく最後尾からスタートできる絶妙なタイミングだ」

 

本来であれば、追い込みであっても出遅れ癖でない限りはスタートをしっかりと決めて後ろへと下がる動きをする。

だが、今のクラマハヤテは身体能力が菊花賞と比べて著しく下がっている状態であり、復帰戦と言えど年度代表ウマ娘に選ばれているため他からマークされる可能性も高い。そのような状態であからさまな脚質変更を見せれば、間違いなく警戒されるだろう。

だからこそ、それを避けるためにクラマハヤテは敢えてスタートのタイミングを半テンポずらすことで『リハビリ明け故に本調子ではなく出遅れてしまった』という体をとった。

現に、周囲はまんまとそれに騙されている。

観客席からは悲鳴に近いどよめきが走り、他のウマ娘たちもまさかの出遅れに一瞬困惑しながらもこれを好機と捉えて前に出させまいとペースを上げる。というより、クラマハヤテが無理やり前に行くような素振りを見せることで強引にペースを引き上げた。

 

「にしても、今回はキセキがどれくらいのペースで逃げるか冷や冷やしてたんだが、出遅れた上にかなり掛かってるな。今日は調子が悪いのか?」

「もうすでに前まで行きましたけど、あの調子だと途中で潰れそうですね」

「ハヤテ先輩、ここにいても感じ取れるくらいプレッシャーを振りまいてますけど・・・どこであんな技術を学んだんですか?」

「会長殿のレース映像からだな。ずいぶんと熱心に見てると思ったら、もうここまでモノにしてるのか。会長殿と比べるとまだ粗があるが、最後方から先頭まで届かせている時点で大したもんだ」

 

本来であれば最初の3コーナーを過ぎれば完全にペースダウンすることが多い阪神3000mだが、現在はクラマハヤテによって第4コーナーまで加速させ続けられていた。さらには、強引に先頭集団にまで接近したキセキによって普段よりペース感覚が鈍っていたことも相まって他のウマ娘たちはそのことに気付かなかった。

そして、2周目の第3コーナーでスパートをかけ始める段階で気づいた時には、すでに手遅れだった。

 

『ここで5番のクラマハヤテが仕掛けてきた!第3コーナーの下り坂を外からじわじわと前に上がっていく!』

 

スパートをかけ始めたクラマハヤテに反応する形で他のウマ娘たちも最終直線に向けて位置取り争いを始めようとしたところで、ようやく自分たちが想定以上にスタミナを削られていたことに気づいた。

現在は下り坂のため影響はそこまで大きくはないが、最終直線には急坂が待ち構えている。

そこが、勝負の分かれ目となった。

 

『さぁ最終直線!キセキが先頭に立つか、後ろからはクラマハヤテも迫っている!いや、残り200mでクラマハヤテが一気に先頭に躍り出た!間から隙をついてユーキャンスマイルも抜け出すが僅かに伸びない!クラマハヤテ、半バ身抑えて今ゴール!菊花賞の故障から、見事に復活を果たしました!!』

 

皐月賞を思わせるかのような逆転劇に、観客席は大いに沸き立つ。

そんな周囲を余所に、須川たちは立ち上がって控室へと向かう。

その道中で、須川はコントレイルに問いかけた。

 

「さて、コントレイル。まだ春天を控えて完全ではないとはいえ、あれがお前の目指しているウマ娘だ。おそらくは、現最強ウマ娘のアーモンドアイにも匹敵しうるだろう。それでも、お前はハヤテに挑むか?」

 

その質問の意図をコントレイルは理解できなかったが、それでもその答えはハッキリと口にできた。

 

「はい」

 

たった一言、たったそれだけだったが、須川にとっては十分だったらしい。

口元に笑みを浮かべながら、コントレイルの意思に応える。

 

「そうか。なら、今年のジャパンカップだな。そこまでにお前を最高のウマ娘に仕上げてやる」

「須川トレーナー、それって・・・」

「コントレイルがハヤテに挑むって言うんなら、俺はそれに応えるまでだ」

 

通常、同じチームのウマ娘が同じレースで争うことはあまりない。

どちらかが勝ってもどちらかが負けるという結果を残ってしまったり、レースが終わった後の交友関係に影響が出るのを嫌がったりといった事情があるが、どちらにせよチームとしてのメリットはないに等しい。

それでもなお、同じチームでありながら同じレースで争う理由があるとすれば、憧憬にせよ対抗心にせよ、当人たちに何が何でも譲れない想いがあるということだ。

 

「とはいえ、まずはクラシックレースだな。ハヤテにディープインパクトが憧れとはずいぶんと欲張りだが、モチベーションは多いに越したことはないし、目標も高ければ目指し甲斐がある。あの2人を目指すなら、まずは三冠くらい取らねぇとな」

「っ、はい!」

「けっこう。なら、さっさとハヤテのところに向かうぞ」

 

 

* * *

 

 

「・・・聞こえちゃったなぁ」

 

いや、ね?わざとじゃないんだけどね?

ウマ娘はけっこう耳がいい。それこそ、足音だけで誰が来たか判別できる程度には。だから、入り組んでいるとはいえちょっと距離が離れている程度の会話なら余裕で聞き取れちゃうわけで。

にしても、コントレイルがね・・・これが、挑まれる側ってことか・・・

 

「・・・ははっ」

 

うん、いいね。

どうやら、私は挑むよりも挑まれる方が性に合っているらしい。

それに、もし本当にコントレイルが私たちと並べるだけの格と実力を身につけた上で挑んでくるんだとしたら、どれだけ楽しいレースになるんだろうね。

今年のジャパンカップか・・・たぶんアーモンドアイ先輩と走れる最後の機会にもなるだろうし、私もそれまでに万全の状態にまで仕上げておかないとだね。




今回書いてて思ったのが、シングレの奈瀬パパってよくあんなズレた感性でトレーナやっていけたなぁと。
誤解は少なくてもスレ違いは多そうですよね。
というか、しばらく日本じゃなくて海外で活動してた描写があったのって、実は学園で何かあったり・・・?
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