さて、一週間後は期末試験だ。実技試験はダンジョン探索で、大魔法使いがトラップを仕掛けたダンジョンで魔法の石を持ち帰る課題が課せられた。
わたしは、アラン様、メアリ様と組むことになった。
「カタリナ様、だいじょうぶかしら。」
メアリ様は心配顔だ。
「ジオルドもいるし、大丈夫だろう。」
「それが心配なのですわ。」
わたしは、苦笑するしかない。
「さて二人とも行こう。」
「「はい。」」
ところどころ明かりが設けられているとはいえ薄暗い通路だ。四科戦のワンダリングコリダーに雰囲気はよく似ているが、無人でどこに罠があるかがわからないのが大きな違いだ。
「あら?」
メアリ様が石のようなものに躓いた。
「どうした?」
「なにかつまづいたようで...」
とメアリ様がいいかけたとき、ごろごろと石が転がってくるような音。
「!!」
「近づいてくるぞ!」
通路の奥がだんだん黒ずんでおおきくなっていくとともに岩が転がる音が近づいてくる。
「アラン様!メアリ様!こっちに通路があります。」
岩は、わたしたちが避難した通路の前を6~7秒後に横切って転がっていった。
「ふう、助かりましたわ。」
「間一髪だったな。」
わたしたちはしばらく歩いていく。
前のほうの通路がいやに明るく光っている。近づくにつれて熱くなってくる。
「なんだ?」
「火が燃えさかっています。」
「これを通れってことか」
「そのようですわね。」
「メアリ、行くぞ」
アラン様が呼び掛けてメアリ様がうなづく。
「フロッド!」
洪水が火を吹き消す。
しかし、消した火の中から1mくらいの小型の真っ赤なドラゴンのようなワニのような生き物が4匹現れ、威嚇してきて火を吐いてくる。サラマンダー・インファントというらしい。
「フロッド!トーレント!」
サラマンダー・インファントは洪水にもまれて死ぬものの、水はじわじわと引いていき、その遺体はたちまち炎に包まれる。
「トーレント!」
「ブリザード!」
「アイス・ヴォルテックス!」
通路が凍らされ白っぽくなって冷やされた感じだが、壁が濡れてきて、黒ずんでくる。天井からはぬるま湯の雫がしたたり落ちはじめた。また熱くなりそうな気配だ。
「今のうちに通るぞ」
「「はい。」」
わたしたちは、燃え盛る通路だった場所を安全に通過することができた。
「!!」
しばらく歩いていく。数分後たまたまアラン様が触れた壁がへこんだような気がしたと思ったら10数本はあろうか、ひゅうひゅうと音をたてて火矢が飛んでくる。
「「ウォーター・ボール!」」
アラン様とメアリ様が火矢を消していく。
わたしたちはまたしばらく歩いていく。
通路の先の右の壁の一部からぼんやりと光が漏れている感じだ。近づいていくと通路か部屋が分岐しているように思われた。
わたしは、その部屋をみるとなんと机のような台の上に小さな燭台に雫状の赤い宝石があるのが見えた。
「メアリ様、アラン様、あれは?」
「魔力を宿す石ですわ」
「これで持ち帰れば合格ですね。」
メアリ様が燭台から「宝石」を取り上げた瞬間、「宝石」はたちまちくすんだかと思うと砂のように崩れ、床が少しづつ揺れ始める。アラン様が異変に気付き、
「二人とも走れ」
と叫んだかと思うと揺れはますます激しくなって床が崩れ始める。
やや遅れたメアリ様が床にうずまりそうになるのをアラン様が飛び出して救い上げる。
「わたしとしたことが...。」
メアリ様がおっしゃる。
「すみませんでした。わたしが...。」
「いいえ、あれはだれがどう見てもそう感じますわ。」
「そうだ、気にするな」
「しかし、ほんとうに危険なテストなんですね。」
「ああ、パーティを組ませるとか上級生に見張らせるとか安全はある程度は考えているんだろうが油断ならないな。訓練の意味があるとはいえこんな危険な場所に学生を放り込むとは...。さて歩くぞ」「??」
しばらくいくと行き先に何人か集まっているようだ。
近づくにつれてそれが見知った顔であるのに気が付く。
「何か集まってるな...。」
「ニコル様ですね。」
「ジオルド様たちのパーティですわ。」
ニコル様とジオルド様のパーティが何やら話し合っている。
「何かあったのか?」
「火矢などの罠に対処していたらカタリナが行方不明になってしまって、ニコルにあったので出会っていないかきいていたのです。」
「俺もあってはいない。」
「義姉さん、どこへいってしまったんだろう。」
「私、すごく嫌な予感がするのです。今朝の悲しい夢に関係あるような..内容はほとんど覚えていないのですがカタリナ様がいなくなるような夢なんです。」
「どこに行ってしまわれたのですか...カタリナ様あ~~~」
メアリ様が叫び、ダンジョンの廊下に声が響く。
はっとニコル様が気が付く。
「そうか...カタリナの声を拾う。」
「どうするのですか?」
「!風の魔力か」
「そうだ。風の魔力で音を拾うことができる。どの方向にいるかわかるはずだ。」
ニコル様が両腕を開き、目を閉じ小声で詠唱をはじめる。
竜巻のような風が起こる。ホィール・ウィンドだ。
「私も手伝います。」
ソフィア様も静かに詠唱をすると二人分のホィール・ウィンドが大きくなる。
そのときだった。ニコル様が何かに気が付いたようだ。ソフィア様も一斉に同じ単語をつぶやく。
「「キノコ」」
「キノコってなんだ?」
「義姉さん、まさかキノコを...」
「確かにカタリナの声だ。方角もわかった。むこうだ。」
わたしたちは、ダンジョンを下の方へ下っていく。
最初にカタリナ様を見つけたのはソフィア様のようで、二人がダンジョン中央の円形広間最下層にいた。カタリナ様が落ちそうになっているところを助けようとしたらつむじ風が起こって上層から陥落しないですんだのだという。
「とにかく無事でよかったな。」
「今年はこんなに危険な目にあったんだからちょっと試験内容を見直すよう教師方に話そうか?」
わたしは、光るものにきがついた。
「あの...光るものはなんですか?」
「あ、あれこそ魔力を宿す石ですわ」
「発見できたのか?どうしてこんなところに」
「ああ、あれはキノコをとろうとおもってナイフ代わりに使ったのよ。結局これしか採れなかったけど...」
ドレスから取り出して見せたそれは紫色の毒々しいものだった。
「義姉さん...。」
「お前なあ...。」
アラン様が笑い出す。
「カタリナ様らしいですわ。」
メアリ様もほほえむ。
「カタリナらしいですね。」
ジオルド様も笑みを浮かべた。
わたしも皆さんに合わせて苦笑が浮かぶ。とにかくカタリナ様とソフィア様が無事でよかった。
ちなみにメアリ様は庭師に、カタリナ様も庭師のトムさんに件のキノコについて聞いたところ二人とも口をそろえて「毒じゃ。死にはせんが、1個食ったら当日は下痢で、たくさん食ったら3日くらい寝込むぞ」
と言ったという。