さて一方は、期末の学科試験、学力テストだ。またジオルド様が1位だ。しかも今度は満点だ。
「ジオルド様、すごいですわ。今度も一位、しかも満点じゃないですか」
「手を抜く必要を感じませんでしたから。」
さらっというが、ちらりとわたしを見る。
カタリナ様がにやりと笑う。
「ほんとはどうなんですか?」
「ほんとってなんのことですか?」
「手を抜かなかったんじゃなくて、手を抜けなかったんじゃないかってことです。」
後で聞いた話だが、こういう時のカタリナって鋭いですと溜息をついてジオルド様が話してくれた。確かにカタリナ様は、わたしの気持ちも見破っていたこともこの話の直後に知ることになる。
「それは、ジェフリー兄さんもスザンナ様に中間試験でトップを取られた時は期末で取り返して生徒会長になったし、イアン兄さんも一位でしたから、僕だけがトップでなくなるのは王族としてもまずいとおもったからです。」
「「王族としてもまずい」ですか?「王族として」?」
カタリナ様の目がきらりと光った。
「わかりました。ここで僕が負けたらマリアさんがまた嫉妬の対象になるからということも考えなくはなくて、手を抜けなかったんです。彼女は努力家で皆の大切な友人で、カタリナの大切な友人ですから。」
「マリアは単純にジオルド様はすごい、わたしも負けないようにしなければって努力してたんでしょう?二人とも中間試験よりも点数が高いうえに肉薄してるもの」
「はい、そうです。」
わたしは、顔を赤くしてもじもじとしてしまった。
カタリナ様の前世では、この試験結果も「ふぉーちゅん・らばー」という世界で、わたしとジオルド様がむすばれる「いべんと」の一つらしい。
期末試験が終わったら一週間後にニコル様の卒業式。わたしは、大変な悩みがあった。卒業パーティに着ていくドレスがないのだ。せっかく生徒会の皆様と仲良くさせていただいているのに行けないのはつらかったが皆様に恥をかかせるわけにいかない。
三日前、カタリナ様、メアリ様、ソフィア様と食堂で昼食をいただいているとき思わずため息がでてしまった。
「マリア、どうしたの?」
「マリアさん、元気がないですわね」
「心配事でもあるのですか?」
「実は、卒業パーティに出たいのですが出れないのです。恥ずかしながら着ていくドレスが...。」
皆さんは、顔を一瞬見合わせ、数秒後にうなずくと
「今度ドレスを皆で買いに行きましょうか?」とカタリナ様が口火を切った。
「よろしいですわね。わたしもアクセサリーを欲しいと思っていましたし。」
「私も、最近読んだロマンス小説の令嬢のようなドレスを選びたいと思っていたところです。」
「マリア~、予定決めるからみんなと一緒に行こう。」
カタリナ様と、メアリ様、ソフィア様は、だいじょうぶだ、一緒に行こうとうなづいている。カタリナ様の顔が迫ってくる。
「カタリナ様、近いです。」
「ごめん、ごめん」
カタリナ様は笑顔で謝ってきた。
後で聞いたのだがあのあと、キース様、アラン様、ニコル様、ジオルド様に相談したようだ。二コル様は、「平民が魔法学園に入学することはまずないから、奨学金制度はあるが、卒業パーティのドレスまでは予算で出すわけにいかないなぁ。しかしそのくらいの配慮があってもいいなぁ。人数多いわけじゃないし。」とぼやいたそうだ。
「ただそれだと貴族令嬢たちに嫉妬を買うからなくても仕方ないと思いますわ。お兄様。それよりもみんなでプレゼントするほうがたのしいです。」
「ソフィアの言うように、マリアの学園での思い出になるようにみんなで出し合った方がいいと思うの。みんなのプレゼントということであれば負担を感じないで受け取ることができると思う。」
「賛成ですわ。だからこうしてマリアさんのいない時間で相談しているのですから。」
「王族として責任感じますね。わたしが全額だしましょうか。」
「おれとジオルドで折半するか?」
「それだとマリアさんがジオルド様とアラン様に負担を感じてしまいますわ。この場合
特定の方に恩を感じるのではなくて、学園での思い出のプレゼントと感じられることが重要なのですわ。」
「そうだな、これは金額の問題じゃなくて気持ちの問題だからマリアが気兼ねなく受け取れる工夫が大事だな。」
「わかりました。皆さんこの金額にしましょう。これなら彼女にふさわしい最高のドレスが買えるはずです。」
翌日の放課後、
「マリア~、ドレス選びに行くわよ。」
皆さんに連れられて行ったのは、リーゼロッテ商会というお店だ。
「いらっしゃいませ」
店員さんから上品にお声がけいただく。
「ここよ、ここ、買い物してみたいと思っていたのよね。」
「品揃え豊富ですわね。わたしでも目うつりします。」
「こんなにドレスそろっているところはじめてみました。」
「マリアなら何着ても似合うと思うけど、やっぱり品ぞろえ豊富なところで選ぶのが楽しいかなって」
「乙女心がくすぐられます。」
「さすがカタリナ様です。マリアさん、さっそく選びましょう。」
「ありがとうございます。カタリナ様、生徒会の皆さん。」
一瞬皆さんの肩が震えた気がした。バレテーラっていう感じの反応。「マリアのドレスを選び隊」を結成していてくれていたのだろう。大親友のカタリナ様、メアリ様、ソフィア様はいわば実行部隊だ。
「マリアさんに学園生活でのいい思い出をつくってほしいからですわ。」
メアリ様がドヤ顔でいいつくろうけれど、これほど真心と誠意のこもったドヤ顔はないだろう。
「ねえねえ、このお菓子の家の文様のドレスとかどうかしら。マリアはお菓子作りが得意だし。」
「カタリナ様がそうおっしゃるのなら...。」
メアリ様はため息をつかれた。その視線がカタリナ様とわたしを見比べてちょっぴりあきれたようなものになる。
(だめだこの子は...)という感じ。
「カタリナ様、卒業パーティは、フォーマルな場です。場違いなドレスでは、マリアさんが悪目立ちしてしまいますわ。」(カタリナ様、思い出してください。)
「わたしも、そう思います。おもしろいとは思いますがロマンス小説的にも、ここはフォーマルなかんじのものがいいです。」
「う~ん、それじゃあ、この花柄のドレスはどうかしら。」
赤いバラや黄色いひまわりや様々な色の花が咲き誇っている感じのドレス。
「悪くはないと思いますが、マリアさんの髪は美しい金髪ですので、色合いがけんかしている感じが余計目立つ感じがします。もっと控えめな色がいいかもしれません。」
「そうですね。」(またしょうもない令嬢たちの標的にされても)
「確かに...わたしには派手かもしれませんし、あまり目立つと...。」
カタリナ様は、「そうね。いわれてみればそうかも。」(めんどくさ~)
「よく見ると「しょうわじだいのまほうびん」のようね。ほかのにしましょうか」
何の暗号だろう...
「この白とピンクのドレスはどうでしょうか?色が淡くて、上品で、かわいい花がアクセントになってます。清楚かつひかえめで主張しないところがマリアさんに似合うと思うのですが」
「ほんとそうね。上品ですてきだわ。どう、マリア?試着してみる?」
「そうですね。わたしも、とっても気に入りました。試着してみます。」
試着室からでてきたわたしをみて、メアリ様、カタリナ様、ソフィア様の顔が輝き、うっとりする。
「すてきですわ。」
「よく似合ってます。」
「ほんとここまで似合ってるなんて。」
「控えめで、すずらんのように清楚です。」
ソフィア様が顔を赤らめている。
「ソフィア、ロマンス小説のお姫様をおもいうかべてるんでしょう?」
「そうです。でもカタリナ様やメアリ様だって...」
「えっと、わたしたちは、ねえ...」
「確かに好きですが、ソフィア様のように具体的なタイトルが浮かぶわけではないですから。でもマリアさんほんとに素敵ですわ。よく似合ってます。今日来てよかったですわ。」
「ということで、生徒会のみんなとわたしからのプレゼント。みんなからの感謝の気持ちよ、マリア。」
「ありがとうございます。うれしくて...。」
わたしは涙がこぼれた。