「へえ、たしかに生徒会で食べたマリアさんのお菓子はおいしかったけど、すごい評判だね。」
「ラファエル様もいかがですか?」
カボチャのお菓子をめしあがる。
「...!!」
「カボチャの臭みが消えていてさつまいものようだね。おいしい。」
「はい。あの臭みは好き嫌いがあるので、甘みを引き出せるよう工夫しました。」
「うん、これならカボチャ嫌いの子どもでも嫌がらずに食べられるね。」
「あの、これください。」
お客さんがきた。
「はいただいま。」
そうこうしているうちに完売。
「もうあと1時間ぐらいで生徒会劇の時間じゃないかな。」
「そうですね。完売できてよかったです。」
「お店たたむの手伝うよ。」
「ありがとうございます。」
生徒会劇の舞台袖に行くと大騒ぎになっている。配役でいじわるな義姉の役をやるシェナ様が少々の体調不良くらいでと出演しようとしたら、つまづいてねんざしてしまい、舞台に立てなくなってしまったのだ。
「シェナは舞台に立てないですね。どうしましようか?」
しばし沈黙が流れた。
「カタリナ様がいいと思います。」
「カタリナ様なら納得すると思います。」
「カタリナ様が舞台に立つのを見たいです」
との声が出た。カタリナ様のファンの令嬢たちだ。
ジオルド様がほほえんで、
「カタリナ、セリフはそれほど多くありませんからなんとかなるんじゃないですか?」
台本をカタリナ様に渡す。
「わたしもカタリナ様にお願いしたいと思いました。ぜひお願いできませんか?」
舞台監督のソフィア様。
「カタリナ様、一緒に思い出をつくりましょう。」
わたしの頭の中はカタリナ様と舞台に立てるうれしさで頭がいっぱいで思わず叫んでいた。
カタリナ様は落ち込んでいた。たしかに突然の交代で大変かとは思うが、メアリ様やソフィア様もいる。試験の時も平均点をとっていらっしゃった。劇ぐらいはなんとかなるんではないか、試験じゃないんだからセリフのメモをもっていたっていいんだし。
と考えていたらセリフのメモを用意されているようだった。
「カタリナ様、いかがですか?」
「マリアはどう?主役はたいへんよね...」
「確かに楽とは言えませんが、練習は十分やってきましたから、あとは本番で頑張るだけです。」
「さすがマリアね。頼もしいわ。」
「カタリナ様と舞台に立てるなんて本当にうれしいです。片身のお品もお借りできましたし。」
「わたしのお古で申し訳ないわ。」
「カタリナ様、何かありましたらわたくしが全力でサポートいたしますわ。」
「ありがとう。メアリ」
いよいよ舞台がはじまった。
幕が上がる。
主人公マリアンヌ畑で作業をしている。
お城をながめて、
「ああ今日もお城が美しい。いつかいってみたいものだわ。」
「マリアンヌ、今日も元気だね。」
「いつもありがとう。これ採れたばっかりな新鮮野菜よ。」
どっさり農民の青年キース(様)にわたす。
「こんなにたくさん。ありがとう。」
「ああ、いそがしい、いそがしい」
畑仕事が終わると今度は家の掃除だ、
「マリアンヌ、ここにまだ汚れがあるじゃない。何やってもダメな子ね。やりなおしなさい。」
「はいお
継母メザリンドがわたしの掃除をけなす。
「あら、舞踏会の招待状だわ。一週間後だそうじゃない。キャザリーナ、キャザリーナはどこにいるの?」
いそいそとカタリナ様ふんする義姉キャザリーナが現れる。なんだかカタリナ様はきょろきょろされた。メアリ様とわたしは気がつく。
セリフを書いた紙がどこかへいってしまったのだ。
メアリ様が発見してカタリナ様に目配せする。
(あれを取るんですね。踊りながら近づきましょう)
メアリ様の目が語っている。
「キャザリーナ、舞踏会の練習をしましょう。」
「はい、お母様」
アラン様に比較的近い場所に落ちていたため、合図をするのだが、場面に合わせてワルツに変曲したのはいいが、かんじんのセリフのメモをについては、ご理解いただけないようだ。メアリ様とカタリナ様は踊りながらだんだん近づいていく。しかし、もう少しというところで、ひらりと紙が遠くへ行ってしまう。
メアリ様とカタリナ様の表情はくやしそうだ。メアリ様は、舞台袖に入るとソフィア様にセリフの紙がなくてピンチであることを伝える。
急遽幕を下ろすか相談し始めているようだ。そのときなぜかカタリナ様の顔は何か決心したような表情になった。
「そうじひとつできないで、あなたどうしてこの家にいるの?本当に身の程しらずですこと。」
セリフが全然違っているが場面には合っている。わたしは、カタリナ様がアドリブで切り抜けようとしているのを悟る。
「お
「何言っているの?舞踏会にふさわしいのは、わたしのような完璧な令嬢のみ。あなたなんか床にはいつくばっているのがお似合いよ。」
と桶をけとばす。
「ひどいです...。」
継母メザリンドと義姉キャザリーナはさっそうと馬車で舞踏会へ行く。
マリアンヌは一人留守番だ。しかし、農家の青年がドレスをもってくる。
「マリアンヌ、このドレスなんかいいじゃない、みんなで出し合ったんだ。」
「ありがとう。」
「あれ??靴がないね。困ったね。どうしよう。」
農作業用の長靴しかない。
「気にしないで。ドレスの裾に隠れるから問題ないわよ。」
「馬車を借りてきたんだ、これでお城へ行けるね。」
「ありがとう。」
お城の近くまで来るが農家の青年はお城に近づけない。
「この馬車の料金は、10時までしか借りられなかった。村に戻るためには9時に迎えに行かないと間に合わない。それまでにこの場所でね。」
「わかったわ。ありがとう。」
幕がおりて、再び幕が上がる。
お城の舞踏会の場面だ。
令嬢たちが踊っている。
義母と義姉は、マリアンヌの美しさに全く別人だと思い込んで気が付かない。
いよいよ王子役のジオルド様が手を取られる。
「なんとすんだ瞳、美しい髪、あなたの名は?」
「わたしは、一夜限りのプリンセスです。ノーサ(※NSA No strings attached一晩限りの、その時だけの略)とお呼びください。」
「美しいだけではなく、面白い人ですね。」
「いえ、とんでもないです。」
その時、9時の鐘が鳴った。
「王子様、わたしはもう行かなければなりません。魔法が切れるようです。またお会いできることをお祈りしています。」
ノーサことマリアンヌは、巧みに王子との手を放して走り去る。その時にあわてて長靴が脱げるが、構わず馬車に乗り込んだ。
そして義姉と義母のいじめを受ける普段の生活に戻る。しかし、王子は舞踏会で出会ったノーサという娘を探しているとお触れを出した。そしてノーサの落とした長靴を履ける女性を探しているということで長靴が回されてきた。
役人が長靴を履くように義母と義姉にすすめる。
「はいらないわね。そもそもなんでこんな長靴が舞踏会に落ちていたのかしら。」
義母と義姉には合わないことが明らかになり、役人は
「この家にもう女性はいないのですか?」
「いえ、末娘はいますが...」
義母と義姉は、意地悪して舞踏会に行かせていないことがばれたら役人の心証が悪くなると考えて口ごもる。
「つれてきてください。」
「さあ、マリアンヌ。」
内心の不承不承をなんとかかくしながらマリアンヌをつれてくる。
マリアンヌが長靴をはくとそれはぴったりだったのだ。
「王子様がお探しですので。お乗りください」
マリアンヌは王家の馬車に乗せられお城へ連れていかれる。
「そう、ノーサとはマリアンヌでしたか。あなたこそわたしのさがしていた娘だ。」
「王子様、わたしもお慕いしておりました。」
「私の妃として迎えたいのだがよろしいでしょうか。」
「喜んでおうけいたします。」
こうして幕が下り無事に生徒会劇は終わった。