魔法学園の優等生   作:Brahma

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第21話 カタリナ様を見守り隊

「失礼する。ひとことカタリナ嬢にお礼とあいさつがしたくておうかがいした。」このようにあいさつされたのはイアン様だ。

「先日は多大なご迷惑をおかけし誠に申し訳けありませんでした。」

セリーナ様が目を伏せ、首を垂れて謝罪される。

「二人は何も悪くないわ。わたしはこの通り元気だし、ご心配なさらないでください。」

あまりにもあけっぴろげで貴族としてはどうかと思うカタリナ様の態度だがほほえましい。しかし、イアン様とセリーナ様はぴったりとくっついておられる。

「わたしは、カタリナ様がおっしゃられた通り、イアン様のお気持ちをおうかがいしたのです。そうしたら...」

「セリーナ!君への気持ちは本物だが婚姻まではしていないのだから人前では...」

あの冷静なイアン様がほおを紅く染めて取り乱しておられる。

「すみません、カタリナ様にきちんとご報告したくて」

ラファエル様のおっしゃる二人の世界とはこういうことなのか...聞いている私まで顔が赤くなりそうだ。

「では、失礼する」とイアン様とセリーナ様は出ていかれた。

 

中断していた、ラファエル様のお話が再開される。

「この間、最強の護衛と言ったのはラーナ様のことです。ラーナ様は変装の名人で、わたしも魔法省の捜査の仕事のためにも変装の技術を身に着けるように指導されています。」

「ラーナ様、考えてみれば、助けていただいただけでなく、身の回りのお世話までしていただいて...」

「いや、ラファエルの闇の魔力を解呪したというカタリナ嬢とは話をしてみたいと思っていたからちょうどよかったよ。楽しかったな。」

「学園祭で話していた上司とは、この方です。」

「私を気に入っているとおっしゃっていましたが、いつかお会いしたことがあったのでしょうか?」

「この姿で会うのは、あの屋敷からだからわからないのも仕方ないな。」

「君は、ほんとうにかわいいね。」

なんと抱きつかれた。メアリ様も私も突然のことで驚いてしまう。

逆の意味で冷静だったのは、女性すら自分の恋敵の可能性があると考えるようになったジオルド様だ。

ラーナ様の肩を持ったかとおもうとラーナ様をカタリナ様からひきはがす。

「カタリナ、大丈夫ですか?」

「?わたしは、なんとも...」

「なにかいやに顔色がいいし、肌につやがありますね。誘拐されて疲れ切っていたのかと思いましたが...。」

「セリーナ様がメイドになったラーナ様を通して三度の食事をきちんと運んでくださったし、メイドのラーナ様がお菓子が欲しいと言われればすぐさま、小説が読みたいと言えばすぐさまもってきてくださったので、誘拐されたとは思えないほど快適だったので...。」

しかし、執事のルーファスさんに押し倒され、眠りの魔法をかけられそうになったところをラーナ様に助けられた、というお話をされたら顔色を変えられた。

「もう待つのはやめました。こんなことだと気が付いたら奪われているかもしれませんね。」

カタリナ様のあごをもったかと思うとキスをされる。私まで顔が赤くなった。もう周囲に動揺が広がっている。わたしまで「カタリナ様ー」と叫んでしまった。もうこれは捨て置けないと思った。仲のいい生徒会がカタリナ様をめぐっては、真っ二つになった瞬間だった。わたしは、メアリ様、ソフィア様と顔をみあわせてうなづく。アラン様、キース様も同調され、そばにいたニコル様も

うなづく。「カタリナ様を見守り隊」が結成された瞬間だ。

授業が終わるとカタリナ様の所へ行く。カタリナ様は過保護だとおっしゃるが、

あんな「危ない」状況に置くわけにはいかない。

生徒会室にいらっしゃっるときはむしろ安心で、見張り役を誰かが担当して、仕事をさっさと終わらせて、お菓子やお茶、ロマンス小説で引き止める。

お茶とお菓子で引き留めていると、カタリナ様が不安になるようで、見張り役にカタリナ様がおたずねになる。見張り役の比率は、お菓子作りがとくいなわたしが2日,みなさんが1日づつだ。わたしが忙しくなったらソフィア様がその分をフォローする。わたしは本当は仕事をしていたいと思う方なのだが、わたしのお菓子はカタリナ様を引き止める武器なので、皆さんから

「マリアさんは2日分」

「そうだな。」

「マリアさん、義姉さんを守ってください。」

「マリアさんが忙しいときはわたしが小説で引き留めますから」

と皆さんによってたかっていわれたらうけるしかない。

皆さんは、魔法学園トップクラスの優等生だから聡明でいらっしゃるので引継ぎも完璧だ。

「マリア、生徒会の仕事は終わったの?」

「もう片付けましたから、大丈夫ですよ。今日のお菓子です。また一工夫してきました。」

「マリアのお菓子はおいしいわね。」

「ソフィア、生徒会の仕事は?」

「大丈夫です。カタリナ様それよりもこの小説はおすすめですよ。」

「この主人公かっこいいわね。」

「そうですね、この盗賊も、実は味方の○○が変装しているのですが...かっこいいです。」

この時期になると1年生にも仕事を引き継いでいってるので、2年生の皆さんの負担も少なくなっているのも確かだ。カタリナ様が宿題でなやんでいると1年主席のタッカーさんが教えている風景も時々見かけるようになった。

最近気になるのは、ジオルド様が、ご自分の仕事以外に生徒会室にいないことだ。あの腹黒王子(メアリ様談)のことだからスキをねらっているのだという話だった。あるときカタリナ様の姿が見えない。

「カタリナ様はどこへいったのでしょうか?」

キース様とメアリ様が顔を見合わせる。お菓子作りと小説が好きなわたしとソフィア様のアンテナにはない感覚だ。

「きっと「花壇」ですわ。」

「花壇」こと、畑へ向かうとカタリナ様の腕をつかんでジオルド様が顔を近づけていらっしゃるのが見えて、メアリ様とキース様を先頭に皆さん一斉に駆け出す。

「ジオルド様、これ以上義姉さんに近づかないでいただけますか?」

キース様が駆け出しながら叫ぶ。

「キース様、バケツが転がっています。」

「キース様、おどきになってください。ここは私が魔法で...」

「メアリ様、ここはわたしが...」

メアリ様とソフィア様が両手のひらをジオルド様に向け、光りはじめる。

確かに捨て置ける状況ではない。

「ソフィア様まで...せめて私の魔法で治る程度になさってください。」

(ジオルド様、治癒はしますがちょっとやりすぎです。ちょっとおしおきが必要です。)

後で言われたのだが、

「マリアさんってふだんはお優しいですが、怖いですね」

と言われた。わたしは苦笑するしかなかった。

 

さて、わたしは、図書館でラーナ様につかまることもあって、魔法省にときどき職場見学にいくようになっている。

今日は魔法道具研究室で先輩方やラーナ様と話している。

「光の魔力と言ってもいまは治癒魔法が主ですね。」

「ふむ、闇の魔力を察知できることはあっても、解呪できないのか。」

「そうです。何か方法があるのかもしれませんが、今のところは...。」

「失われた魔法か....それにしても魔力の少ないカタリナ嬢が解呪したのは驚いたな。」

「はい。またラファエル様のお名前もご存じでしたし。」

「光の魔力も、闇の魔力も謎が多いんだ。まあ、知ってそうな人物に心当たりがないわけではないが...今度機会があったらカタリナ嬢も連れてきてくれないか?ラファエルの解呪の件とか、話が聞きたい。」

「わかりました。」

そしてこのラーナ様の願いは、後日皮肉な形でかなうことになる。


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