いよいよ屋敷にのりこもうとしたとき、わたしには、無理についてこなくてもいいという話がされたが、いくら恐ろしいとは言っても闇の魔力を目の前にして光の魔力保持者がひるんでいるわけにはいかない。
「カタリナ様たちだけをあの屋敷にいかせるわけにはいきません。わたしは光の魔力保持者ですから何かお役に立てるかもしれません。そう考えたら怯えているわけにはいきません。」
そしてわたしは大好きな方の手をしっかりにぎる。
「わたしは、カタリナ様がそばにいてくだされば、どんなことも平気なのです。こうしてカタリナ様といられればどんな敵にも向かっていけます。」
カタリナ様は手を握り返してくださる。
「マリア、ありがとう。よろしくお願いします。」
屋敷には警備の多い表門より、裏門から入ることに決めた。しかし屈強な男たちが3人も見張っている。
「こここらどうするの?」
「ちょっとまっていてください。」
ソラさんがにやりとほほえむ。
ボン、ボンと中庭で鈍い音がしたかと思うと火の手も上がる。
「火事だ。中庭のほうだ。」
3人のうち2人が中庭のほうへ行く。
「どうしたのですか?」
「まあ、ちょっと細工をしたんですよ。さあ、今のうちに行きましょう。」
残った一人にラーナ様が微笑みかける。
何だ、この女はと相手がいぶかっていると風の魔力で男を持ち上げて激しく回転させた。男はのびてしまった。
「これでいっちょあがりだ。」
屋敷の中は御殿という感じで贅沢なつくりだった。
ラーナ様が成金屋敷とおっしゃっていたがそんな感じだ。
わたしたちは迷路のような成金屋敷の廊下を見張りを避けながらジグザグ進むがやはり全員を避けるのは無理で何度か出くわしてしまう。
しかし、ソラさんが鋭い動きで相手の急所を打って声もあげさせず気絶させる。あるときはラーナ様が風魔法で相手を叩きのめしてしまう。
ジオルド様も、剣のみねうちをつかって相手を叩きのめす。
しかし相手も用心棒をまかされてるだけあって、かすり傷を負うこともある。
ジオルド様、ラーナ様の順にかすり傷があるのでわたしが治癒する。
ソラさんはこういう戦い方にはなれているようで相手を巧みに倒していく。
屋敷の奥に行くに従い調度品もますます贅沢なものになる。
たまたまドアが開いて「なんだおまえたちは!」
と叫んだ人物は、ラーナ様やカタリナ様曰く「成金おっさん」といった風体の小太りで、キンキラの派手な服をきていた。「成金おっさん」は背後にいた護衛の屈強そうな男たちに「侵入者だ!捕らえろ!」
と叫ぶ。しかし、ラーナ様、ジオルド様、ソラさんにあっという間にのされてしまった。ソラさんが素早くナイフを取り出し、首筋にあて、
「お前がここの主か?」
とたずねると、「成金おっさん」は、コクコクとうなずく。
「なら、キース・クラエスの居場所も知っているな?」
「キース・クラエスだと?そんな奴は知らん。」
男は青ざめた顔で必死に首を横に振っているように思えた。
「おい、隠し立てしてもなんのいいこともないぞ。吐け!」
ソラさんがナイフの先を首にあて今にも突き刺しそうな感じだ。
「本当に知らん。知らないんだ。」
男の額から冷汗が流れ、恐怖に震えて必死に首を振るだけだった。
「ちょっといいか、カタリナたちはここで待っていてくれ。」
ラーナ様は、ソラさんに男をひきづらせて、男の出てきた部屋に入る。
部屋の中にはキース様はいらっしゃらないようだった。
「どうやら本当に知らないようだ。それにこいつも闇の魔力で操られていたような痕跡がある。」
「??こいつが首謀者じゃないんですか?」
「屋敷の主であるのは確かなようだ。ただキースの誘拐に直接かかわってはいないようだ。むしろ闇の魔力で操られて屋敷を使われていたのではないか?どうだ、マリア?」
「おっしゃる通りかと思います。この男には闇の魔力を使われた気配を感じます。」
「アレクサンダーはキースの居場所はこの先だと指さしている。マリアはどうだ?」
「はい、闇の魔力の濃度は進めば進むほど、ますます濃くなっている感じです。この先に何かあるのでしょう。」
「成金おっさん」の部屋を過ぎるとだんだん調度品は質素になっていく感じだ。廊下自体も暗い感じがする。
「少し吐き気がして背筋が寒くなる感じです。闇の魔力の濃度が強くて圧力のようなものを感じます。」
わたしはおもわず口を押える。口へ入ってくるんじゃないかと思うような不気味さだ。
「これは本当にいや~な感じというか不気味な感じというか、やヴァい感じです。しかし....どれだけの魔力量なんだ。際限がないな。」
「魔力量って?」
「そのままの意味です。皆さんも魔力量も限度があってたくさん使えばなくなるでしょう。」
「だけど時間がたてば回復するけど...。」
「闇の魔力に限っては、使えば使うほどなくなります。回復することはありません。このことは元闇の魔力保持者のラファエルさんにも確認しているので間違いないです。だからこんなに多くの人に使えるというのはかなり恐ろしいことなんです。」
「じゃあここにいる闇の魔力使いは相当凄いやつってこと?」
「わかりません。ただ一人にしては、あまりにも濃すぎる。複数人いるかもしれません。進んでみなければわかりませんが。」
すすんでいくと、行き先が鋼鉄の扉になっている。
アレクサンダー君がここだここだと指をさす。
吐き気がするほどの重圧感を感じる闇の魔力の気配がする。カタリナ様がラーナ様の顔をご覧になると、ラーナ様がうなづいて「マリア、ソラどうだ?」
とわたしたちにおききになった。
「すさまじいばかりの闇の魔力です。重圧感と吐き気がするくらいです。」
「僕もおどろおどろしい力を感じますね。マリアさんのいうとおり重圧感を感じます。」
ラーナ様はジオルド様と顔をみあわせうなづくとジオルド様は剣を抜き、ラーナ様はかまえた。ソラさんとわたしが扉を開ける。
開けてみると普通の客間のように見えるが、おどろおどろしい雰囲気がただよう。奥の方から闇の魔力が漏れているようだ。
部屋の中央には机があり、椅子が並んでいる。部屋に入ってしばらくすると
「ひやあ」とカタリナ様が叫ぶ。入り口から死角の位置に小太りの男が倒れていた。ソラさんが
「おい?」
と声をかけると起き上がり、ぼさぼさの髪、顔には吹き出物が目立つ。殴られたような顔だ。男は、
「うおおおお」とうなり、服が破れ、緑色の皮膚に変わって、牙をはやす。
いつのまにか身長3mの怪物になっている。RPGのオークのボスのようだ。いつのまにか斧をもっている。
ジオルド様が斬りつけるがそのたびに斧で防がれる。それを10数回繰り返す。
それどころかオークの斧の振り方が的確になっていき、ジオルド様の髪が一部切られて飛び散る。肩のほうを斧がすり抜け、次は横腹をすり抜ける。
かろうじてよけているが、切り込まれたら終わりだ。
ジオルド様の額に汗が流れる。剣を飛ばされたら終わりだ。
そのときだった。
ラーナ様が風魔法でオークのボスを竜巻で噴き上げたかと思うと、次の瞬間には地面にたたきつけている。そこをジオルド様が深々とつき刺して倒すとなぜか元の男の姿にもどった。
「キース・クラエスの居場所を知らないか?」
とソラさんが尋ねると
「キースか...あの娼婦の子、化け物め、奴がくたばるところを見てやるんだ。」
とぶつぶつとつぶやく。そして壁際のタンスにふれると、タンスが動いて、扉が現れた。ジオルド様が起き上がろうとする男を剣のつかで強く叩きのめした。
「おそらくキースはこの先にいるんだろう。しかも危険な状態である可能性が高い。みんな突入するぞ。」
ラーナ様が扉を魔法で開ける。ソラさんとジオルド様は武器を構える。
ギイイと音を立てて扉が開いた。