魔法学園の優等生   作:Brahma

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フレイ・ランドール編
第1話 異母姉スザンナ様とわたしの生い立ち


わたしは、フレイ・ランドール。ランドール侯爵の側室の娘として生まれた。父ランドール侯爵は、たくさん女性をめとって生まれた子どもを政略結婚に利用しようと考えるような人物で、正室の次女であった義理の姉、スザンナ様は、魔法書を夢中になって読む以外とりたてて父に逆らわずにおとなしくしていたうえに、幼少のころから優秀で、学年主席が当たり前の方だったことから、15歳の時に第一王子ジェフリー様の婚約者にあてがわれた。お二人がであったとき、ジェフリー様は王位に就くつもりもない、弟たちがかわいいだけだと言い、スザンナ様は、わたしは魔法にしか興味がないとおっしゃったそうだ。

スザンナ様は魔法学園の1年時にはジェフリー様を抑えて学年主席をとって以来、そんな父を嫌う態度をはっきり見せるようになった。魔法学園の先生方とジェフリー様がそんなスザンナ様をかばうし、周囲もあんなに優秀な娘をという意見が多く逆にスザンナ様を庇うことでランドール侯爵の足下を崩そうとする動きすらあって侯爵は歯軋りするばかりのようだ。ちなみに2年次は異例の同点1位だった。

「スザンナ、手を抜いたか」

「生徒会長とかめんどくさいからな」

「でも同点1位だぞ」

スザンナ様は髪をかきわけ

「そうだな。学園からはくじ引きで決めてくれという話だった。」

とつぶやいたそうだ。

「しかたない。職員室へ行くか」

二人は職員室へいき、先生方の前でくじびきをおこなったところジェフリー様にあたったという。

「おめでとう。」

「なんか複雑だな。」

「副会長としてたすけてやるから。」

「優秀な副会長に感謝する。仕事ほっぽり出して魔法に夢中になりそうなのがこわいけどね。」

「ちゃんと自分の分はやるし、手伝うから」

本当にスザンナ様がそのようにしたがどうかあやしい。というのはどこにいるのかわからなかったという話も耳にはいっているからだ。聞くところによると魔法省OBの老人の家に入り浸っていたといううわさも聞く。それでも当時の生徒会もそれなりに上手く運用されていたらしい。

スザンナ様は、ジェフリー様の婚約者なのにパーティ以外でお見けるすることが少ない。そのパーティにも仕事とかで出席しないこともある。ランドール侯爵の魔手を逃れる仕事をしているらしいが何の仕事だろうか、謎すぎる。わたしも貴族令嬢としての立ち居振る舞いをみっちり教育される一方で、ランドール家ですこしでも有利な立場になるように魔法も学問も頑張っていて、魔法学園入学前の貴族の学校では主席を維持していた。15歳の時、魔法学園に入学することになった。

 

入学式のあいさつは、学園長、生徒会長と続き、ジオルド様だった。女生徒の大多数がため息をつきながらみとれているが、わたし自身は話の内容以外は興味はない。

 

さて、最初の中間試験の成績が発表された。なんとわたしは久しぶりに2位になってしまった。1位は、ジンジャー・タッカーという男爵家の側室の娘だという。わたしは驚いた。ジンジャーってどんな娘なんだろうと興味がわいた。生徒会室にいくと小柄でツインの三つ編みで地味目の少女がいた。男爵家の側室ってことは、ほとんど平民と変わらない、まともなドレスなどもってないだろうと予想した通りだった。ジンジャーは、田舎の学校で常に主席だったという。魔法学園に来る数年前は、タッカー家の離れで暮らしていて、することがないから勉強ばかりしていたという。側室の娘で貴族しての立ち居振る舞いがそれほど身につかない状態で、魔法学園に入ってきて、歯に衣を着せないではっきりものをいうので軋轢がたえないようだった。2年の先輩方は、双子の王子様をはじめ、公爵家の跡取りの貴公子、令嬢の中の令嬢で社交界の華、知識の女神で白銀の妖精、選ばれし光の聖女、そして生徒会役員ではないが、慈悲の聖女と呼ばれる方も生徒会室に出入りしている。これら先輩方は分け隔てなく接してくれる方々だが、1年生どうしではそうではない。

「あのジンジャー・タッカーって少しばかり頭がいいからと言って態度が悪いですわよね?」

と同意を求められ、

「ごめんなさい。わたしはあんまり気にならないの」

と返事をし、不思議そうな顔をされた。

 

また、こういうこともあった。

「あなたランドール家のフレイよね。わたしたちのお茶会に来ていただけないかしら。」

マリア先輩をいたぶろうとしたネグラ伯爵令嬢とその仲間の令嬢たちだ。

「すみません。生徒会の仕事が忙しいので。それに、ほらわたしあのジンジャータッカーに負けて2位になってしまったでしょう。次回は負けるわけにはいかないのです。」

と断った。徒党にわたしをいれようというのだろうが、こういった貴族独特の優越意識というか父親を見てきたからくだらないと思うようになっていた。母親の身分が高かろうと娘を政略結婚の駒くらいにしか考えていない、すごくバカらしい。好きでもない人と結婚させられて何が楽しいのだろうか、わたしには理解できない。それにくらべてジンジャーは自分で道を切り開こうとしていて、話していて飽きない。また光の魔力を持ち、生徒会副会長になったマリア先輩は平民だ。家庭教師無しに実力で、学年2位を取り、生徒会の皆さんからも尊敬され、わたしも心から尊敬している。マリア先輩は魔法省へ入ろうと考えているらしい。

ジンジャーが「わたしもマリア先輩のような自立して何でもできる女性になりたい。」

と言っていたがわたしも同感だ。

 

生徒会室には、ジオルド様の婚約者であるカタリナ様が出入り自由になっている。花壇だと言って畑を作っていらっしゃる方だ。貴族令嬢でいるのではなく、いつ国外追放されてもいいように畑を作っているのだという。すばらしいことだ。

「カタリナ様の畑で野菜をいただいたの。」

「どうだった?」

「新鮮でおいしかった。まあメアリ様の指導もはいっているんでしょうし。」

「でも、おいしかったんでしょう。」

「うん。でもカタリナ様って、確かに人を見下さないけど、魔法も得意じゃないし、成績も平均点で、なにも考えていないからだと思う。」

「へえ。そうなの」

しかし、わたしは知っている。

「うなっていてうるさいから」と言っていたが、うなっていないときも勉強を見てあげていることを。


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