魔法学園の優等生   作:Brahma

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第3話 文化祭(後編 生徒会劇、刺繍展示)

さて劇が始まると、マリア先輩の演技は完璧でメアリ様もいじわるな継母そのものだった。しかし、カタリナ様は戸惑う場面があり、メアリ様が一緒におどって舞台袖まで行く場面があった。あんな場面なかったのにとおもって後でお聞きすると、カタリナ様がセリフを書いた紙を落としたのを拾おうとしたらしい。結局それはうまくいかずカタリナ様は何か決心した顔つきになられた。強い口調で,カタリナ様演じる義姉キャザリーナはマリアンヌをののしる。

「そうじひとつできないで、あなたどうしてこの家にいるの?本当に身の程しらずですこと。」

セリフが全然違っているが場面には合っている。さすがマリア先輩はカタリナ様がアドリブで切り抜けようとしているのを悟る。

「義姉様、そうじが終わったら、わたしも舞踏会へ行かせてもらえないでしょうか。」

「何言っているの?舞踏会にふさわしいのは、わたしのような完璧な令嬢のみ。あなたなんか床にはいつくばっているのがお似合いよ。」

と桶をけとばす。

「ひどいです...。」

ここで幕が閉じるが、ソフィア様が創作意欲とブラコンが同時に刺激されたようで、当初なかったニコル様扮する黒仮面の騎士を登場させ、王子と黒仮面の騎士と農家の青年がヒロインをめぐって争う場面になるはずだが、なぜか義姉キャザリーナをめぐって争っているように見える。

舞台の天井裏に控えるわたしはジンジャーに話しかける。

「ジンジャー、やっかいなことになったわね、」

「先輩方は素晴らしい方々だけど、カタリナ様のことになるとムキになるから...。」

「確かに...。」

ソフィア様が予想しなかった展開にひきつっている。

そのときだった。カタリナ様が決心したように私たちをみて指を鳴らした。

わたしたちは、魔法省から備品として預かった火の魔法道具である「すぽっとらいと」をつけて、カタリナ様を照らした。

「黒仮面の騎士はわたしの仲間なの。どこの馬の骨ともわからぬ娘に王子をゆずらせないために呼んだのよ。」

と高らかに叫ぶカタリナ様。無事に幕が閉じてわたしたちは胸をなでおろした。カタリナ様もほっとしたようだった。

その後は生徒会劇は特にトラブルもなく無事に終わった。

 

さて、舞台を照らした「すぽっとらいと」だが演劇をする舞台を効率よく照らす道具があればということで、魔法省で5~6年前にラーナ様によって開発されたものだ。ボタンを押すと魔法の火打石と火打金がこすれて100%の確率で発火する。筒は魔法の金属でできていて熱くならないし溶けない。消すときはまたボタンを押すと筒の中が酸欠になる消火の魔法が働いて消える仕組みだ。

カタリナ様の前世には「でんき」というものがあったようで、まるで劇場の「すぽっとらいと」のようね、ということで「すぽっとらいと」という名前になった。また通信用に開発されたカード状の風の魔法道具は、カタリナ様の提案で「すまほ」という名前になった。

「すまほ」とは、「すまーとふぉん」の略で「ふぉん」というのが遠くでも話ができるという意味合いがあるそうだ。ラーナ様は、カタリナ様の前世の「すまほ」のように画像も送信できるようにしたいらしい。

 

さて文化祭でだいじなもののひとつに、授業の成果の発表がある。ジオルド様たちの魔法応用の発表は、水魔法で虹を作ったり、しゃぼん玉をつくったりと優雅なものであったが、魔法や学問以外にも魔法学園には科目があり、男性も受講可能なものの、女性必修なものとして刺繍の授業がある。

講師がいかにも偉そうでかつ頑迷そうな老婦人で、わたしも刺繍の授業はできれば手を抜きたかったが、厳しい人なので手を抜けない。どっちが学園長なのか区別がつかないかもといった風貌をしている。生徒たちには通称「刺繍ババア」と呼ばれている。

今年は力作が多いと喜んでいたという話の通り、最優秀賞は1点だが優秀賞は5点、佳作は12点、入選17点だった。確かに優秀賞と佳作がふだんの倍だ。

カタリナ様の作品が佳作になっていた。

「猫かしら?かわいいわね。」

目から上が朱色になっている。顔の部分は、鼻から口周りが白、黄色い腹巻のようなものをつけ、尻尾が二つあってその先端は、水色の炎のように見える。

ネグラ伯爵令嬢は佳作だった。有名な画家の花卉絵をそのまま刺繍にしたらしい。令嬢の中の令嬢といわれるメアリ様は、さすがだ。優秀賞。ご自分でご自宅のお庭の花をスケッチして刺繍にしたらしい。マリア先輩は、青を基調としたドレスをきた背の高い女性がうれしそうに走っているデザインで、優秀賞。カタリナ様が恥ずかしがっていたからモデルはカタリナ様だろう。

「なんなの、この動物だかよくわからないデザインは」

「公爵令嬢だと下手でもひいきされて佳作になるのね。この程度で何で私と同じ賞なのかしら。」

「こっちもそうだわ。光の魔力をもっているからってひいきされすぎじゃないの?」

ふだん言えない分こういう場になると嫌味が出るらしい。

カツカツカツと杖を着く音がする。

刺繍ババ...講師の先生だ。細面で、白髪、頑迷そうな眼付き。

「展示室では静かにしなさい。」

「先生、ご質問させていただいてもいいでしょうか?」

「サビーネ・ネグラ伯爵令嬢ですね。質問を許します。」

「受賞の基準は何なのでしょうか。こんな走っている女の刺繍、しかもちっとも美しくない。それに同じ花の絵をデザインしたのにわたしのものは佳作でなぜこちらは優秀賞なのでしょうか?」

「マリア・キャンベルの作品、とある公爵令嬢をあらわしたもののようですが、服の細かいデザインまで高度で丁寧な刺繍がなされています。それにテーマに選んだ人物の表情や躍動感が上手く表現されている。あなたが同じ花の絵のデザインと言ったメアリ・ハントの作品は、本人が丹精込めて育てた庭に咲く花を図案化して刺繍にしたようで、デザインの独創性や花への愛情が感じられる作品です。あなたの花卉絵の作品ももともとの画家の花卉絵を忠実に表現しようと努めた。そのこと自体は称賛に値するものですが、マリア・キャンベルやメアリ・ハントの独創性に及ぶものではない。」

へえ、結構まともなこと言うじゃない、と聞いていた。

「では、このカタリナ・クラエスの作品と私の作品がどうしてわたしと同じ佳作なのですか?」

「カタリナ・クラエスのこの作品は、かわいい妖精でしょうか?猫でしょうか?「じ〇にゃ×」と読めますが、独創性があります。デザイン自体はかわいらしくすばらしい。しかし、残念ながら技術は今一歩というところです。あなたの作品は、たしかに一定の技術はあるし、それはすばらしいのですが、残念ですがそこどまりです。だからあなたの作品もカタリナ・クラエスの作品も優秀賞のレベルではない点では同じです。」

「そんな、こんなものといっしょだなんて。」

「じゃああなたにメアリ・ハント、マリア・キャンベル、カタリナ・クラエスのような発想は生まれたのですか?」

「それはそれ、これはこれですわ。わたしの作品はもっと評価されるべきです。」

「私は、今回の展示で、技術のみだけでなく独創的で意欲的な作品を評価させていただきました。それぞれ自分のもてるものをもてるだけ発揮している。素直に感動し、素直に評価したということです。あなたがマリア・キャンベルより身分が上ということで評価はしないように、カタリナが公爵令嬢だからといって評価していない。それはわかるでしょう。」

会場内に共感の空気がひろがっていった。ネグラ伯爵令嬢もその空気を感じたらしく二の句がつげなくなっていた。(きびしいだけじゃないのね)、とわたしは刺繍ババア、もとい刺繍の先生に好感をもった。

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