「カタリナ様、実はあのひとたちは文学や詩が大好きなのはわかるのですが、わたしたちのサークルに入れると混乱するのが目に見えていたので困っていたのです。カタリナ様のお宅ならやたらなことをしないで文学や詩の話を楽しめるのではないかと思うのです。」
ソフィア様、ナイスフォローです。
「カタリナ様、出会いの場です。」
わたしは強調する。
「それはすばらしいわね。この人たちソフィアのファンであたりさわりなくするのにかなり大変だったからほかの令嬢たちと出会ってもらえればお互いにいいかもしれないわね。うん、じゃあ考えてみる。」
カタリナ様とキース様が出会いの場だとミリディアナ様に強調してクラエス家の2週間後のお茶会は、「小説と詩を楽しむ会」として行うことになった。
さて男性たちがクラエス家に来るのを気にしたジオルド様対策だ。
自分も行くとおっしゃるジオルド様に
「ロマンス小説はお好きですか?」
と尋ねてジオルド様をまず逡巡させる。
「メアリ様の婚約者であるアラン様も来ませんが?」
「アランは、アラン、僕は僕です。」とくいさがるものの
「皆さん、ソフィア様のファンでカタリナ様には関心ないのですが?」
ととどめを刺してシャットアウトできた。
2週間後のクラエス家のお茶会は盛況だった。カタリナ様が調理場の見習いがチェリーのシロップ漬けと果実酒用のチェリーを誤って使ったチェリーケーキをたべて酔っぱらって木に登ってしまった以外は。
ソフィア様の読書サークルの令嬢たちと文学好きの令息たちのカップルも何組か生まれた。いままでソフィア様ばかり見ていた文学青年たちがほかに出会いをさがせたのはよかった。
その後ソフィア様の読書サークルは、メンバーの恋人、婚約者に限ってある程度出入り自由になったがテーマによっては女子同士で楽しみたい場合もあるようでそういう場合はこっそり集まっているようだ。
ジオルド様にこの案件については、まず、カタリナ様に近づく男子はいなかったことを強調して、出会いの場として上手くいったと報告した。
さて、上級生の皆さんの卒業式だ。卒業生代表のジオルド様のあいさつがある。これまでの思い出、卒業後の決意、在校生への励ましが述べられる。例によって大多数の女子生徒たちはほおを赤らめて、上気した表情でジオルド様を見つめている。わたしとジンジャー、上級生の生徒会メンバーは極めて冷静だ。
「最後に、卒業後は、それぞれ、魔法省、役人としてそれぞれの御父上の補佐、跡継ぎとして領地経営、夫人として領地経営の補佐や園遊会の運営などそれぞれ道は異なることになりますが、学園で学んだことをいかしていっそう励む決意ですと申し上げ、結びのことばといたします。ありがとうございました。」
一斉に拍手が起こった。
「それでは、在校生代表フレイ・ランドールさん、卒業生へ贈る言葉をお願いいたします。」
「はい。」
わたしは立ち上がって壇上に昇る。
「在校生代表フレイ・ランドールです。」
わたしも先輩方の思い出や敬意、在校生として勉学や魔法、男性は武術、女性は、いっそうたしなみを向上させること、また職業婦人としての道を歩む場合は研鑽することを述べた。
「先輩方からは、いざというときの決断力を学びました。思い出深いのは上級生の皆さんの生徒会劇「一夜限りのプリンセス」です。この劇は、実はハプニングが多かったのですが、ジオルド様は迅速な決断をされ、それを受けたカタリナ様はセリフを忘れかけても動ぜず、ご自分の役割をどのように果たすかお考えになって見事に義姉の役を演じられました。それを受けたメアリ様やマリア様の対応見事だったことも皆さんよく覚えていらっしゃることと思います。こういった不測な事態は領地経営に起こるものです。領地経営にも突然の日照りや大雨、洪水、火災、その際にどうするのかと言ったことが起こります。魔法学園では、魔法の技術以外に、それに対処するための知識を学問を通じて学びますが、そういった知識を生かす勇気と決断力を先輩の皆さんから学びました。・・・・先輩方の今後の活躍を祈念しつつ贈る言葉といたします。」
拍手が起こった。わたしは一礼して講壇から降りる。
「フレイ、お疲れ様。わたしじゃ口下手であんなあいさつできなかったし、拍手もおこらなかったかも」
ジンジャーがにやにやする。生徒会長になってからこればっかだ。
「ジンジャー、ほんとに手抜きしてないわよね。」
わたしは、ジンジャーをかるくにらむ。
「そんなに私が器用じゃないことはフレイも知ってるでしょ。」
わたしは反論できなくてため息をつく。でもなんかおかしい。なんでわたしは納得しているんだろう。
さて新学期になり、わたしは図書館で調べ物をしているとき、魔法省のあこがれの人ラーナ・スミス様に出会った。
「おっと君はこの本を使うのか?」
「はい、学園の課題で…ってあなたはもしかして?」
「ああ、魔法省に勤務しているラーナ・スミスだ。魔法学園の図書室は、魔法省と
共用だし、魔法省にない本もあるからな。時々来ているんだ。」
「魔力制御とラーナ様の今のお仕事と何か関係があるのですか?」
「ああ、魔力制御は、単純に魔力を制御するだけでなく。どのように魔力を使うかという問題もかかわってくるんだ。魔法道具をつくるうえで重要な要素となる。道具に魔力を吸収させて道具として生かすのは基本だからな。だだその使い方がいろいろあるからどの方法がいいか確かめに来ているんだ。君はもしかして生徒会長のフレイ・ランドール嬢かな?」
「はい。」
「そうか。風のうわさで魔法省志望と聞いているが?」
「そうです。」
「君のような人材を欲しいとは思っているが、一面、君は優秀だからあちこちから話があるんじゃないか?それにお見合い話もたくさん持ち込まれるだろう」
「はい、その通りで困っているのです。わたしはその気はないと言っているのに父はあきらめずに縁談をもってくるのです。」
「そうか。わたしは、そいつとはたもとを分かったんだ。」
「どういうことですか?」
「ここだけの話、わたしの父と君の父は同一人物ということだよ」
「えっ…。」
わたしは一瞬言葉が出なかった。
「私は幼いころ父の友人から紹介された魔法の本を読んだことがきかっけで魔法に夢中になった。魔法学園でジェフリーとトップ争いをした女子生徒の話は聞いているだろう。」
「はい。」
「わたしは、魔法にかかわる仕事をしたかった。強い風の魔力を持ち魔法学園で生徒会に入れる学力があったおかげで魔法省に入れた。ジェフリーと婚約したとき彼は弟以外興味がないから私を自由にすると話してくれた。それ以来仕事上のパートナーだ。ジェフリーは「僕を王位につけるために弟たちに手を出す不届者を始末するんだ。やつらはろくな連中じゃないからね」と言っていたし、実際そうだからな。楽しく協力させてもらっている。」
「そういうことですか。」
「今度うちの職場見学に来るといい。しかし、私が推薦状を書くとランドール家の家系のものということがばれたときまずいからな。うちの部署とマリアの部署を見学に来るといい。知っている人間がいたほうがいいだろう。」
「わかりました。ありがとうございます。あの友人もつれてきていいですか、ジンジャー・タッカーといいますが」
「ああ、大歓迎だ。彼女のことは魔法省で引き抜きたいと思っていたからな。ほかの役所にとられないうちにつばつけて、うん、ちょっと下品か。青田買いしたいとおもっていたからな。」
ラーナ様は微笑んだ。