わたしとジンジャーは授業や生徒会の仕事が手すきなときに魔法省へやってきた。
「あら、フレイじゃない。ジンジャーも。お久しぶり」
「カタリナ様、お久しぶりです。その荷物は?」
「魔法生物研究室へもっていく資材よ。あそこはサルやら叫ぶ花やら大変なんだから。」
「叫ぶ花ですか?」
「そうなのよ。サルがちょっかい出して、わたしが医務室に運ばれるくらい花がすさまじい叫び声上げたんだから」
「そうですか…」
「あっといけない。そんなこんなで、いろいろ生き物が暴れて壊れる資材があるからたいへんなのよ。」
「そうなんですか?」
「でもフレイとジンジャーは頭がいいからこういう雑用はやらなくて済むから安心して」
どうやら不安そうな顔になっていたようだ。
「最初はわたしとソラのいる魔法道具研究室ね。こっちよ。」
案内された部屋に来ると、
「こんにちは?魔法学園の学生さんかな?」
「はい。そうです。」
そこで出会った男性は、キザな感じの方でわたしはめんくらった。服装がきらひらひらひらしていて金ボタンやかざりがつけられていて「どこの王子様?」という感じ。前髪の片側が長く伸びて片目が隠れている。
カタリナ様やラーナ様をみていて(制服があるはずなのに)とおもったがよく見たら制服を改造しているのがわかる。
「ああ、ぼくはニックス・コーニッシュだよ。今日は職場見学かな?ようこそ。」
「あんまり学生さんを驚かせたらだめじゃない。ああ、わたしは、リサ・ノーマンよ。」
とノーマン先輩の片手のあらいぐまのぬいぐるみがしゃべる。
コーニッシュ先輩のように片目を青みがかった髪で隠しているが、キザさは全く感じず、ミステリアスな雰囲気の青年が自己紹介する。
「僕は、ソラ・スミスです。」
しばらくするとラーナ様が現れた。
「ああ、よく来たな。フレイ、ジンジャー。」
ラーナ様に続き、赤い髪の好青年が声をかけてくれる。
「こんにちは。副部署長のラファエル・ウォルトです。」
「あの…生徒会にいらっしゃったと聞きましたが…。」
「事件があって、学園を卒業できなかったけれど、ラーナ様に引き取っていただいたんだ。」
「わたしは優秀な人材はのがさないんだ。うちの文書事務を中心的に担ってくれている。この魔法道具研究室では、書類事務と魔法道具の製作を行っている。いま作っているのは、「すまほ」の完全版と人探し用のぬいぐるみだ。」
見せられたのは青い犬型のぬいぐるみ。
「かわいいだろう。スキピオっていうんだ。名前もかっこいいだろう」
「青い犬狼の紋章を持つ軍勢を率いた昔の英雄、テーチス海をかこむ沿岸周辺を征服した2千年前の伝説の国ドゥーマ帝国の将軍の名前だ。」
「犬型にしたのは、あらゆる嗅覚に優れた犬の形にすることによって嗅覚という魔法の属性や力が強化されるからだ。」
「なぜ人探しの魔法道具が必要なんですか?」
「昨年キース・クラエス卿が誘拐されたのは二人とも知ってるだろう。」
「はい。」
「そのときにクマ型のぬいぐるみの魔法道具をつくったのだが….クラエス卿を探している段階で、マリアになついてしまって本来の依頼主に引き渡すことができなくなってしまったのだ。」
「その依頼主ってだれですか?」
「弟好きの変態だ。その部屋には弟たちの巨大な絵がカーテンに隠されている。」
「巨大な絵をカーテンに隠せる方って大貴族なんですか?」
「彼の弟たちの名は、イアン、ジオルド、アランという。」
「わかりました。」
わたしたちは苦笑する。
「そのクマのぬいぐるみは、古代マケドラキア帝国の大王アレクサンダーの名前をとっていたので、ラーナ様は気を使われてマケドラキアにまさるとも劣らない大帝国ドゥーマの立役者の一人スキピオにしたというわけなんだ。」
「そうですか。ところで「すまほ」の完全版というのは?」
「ここに小さい穴の開いた箱があるだろう。覗いてくれ。」
「?向こう側の風景が逆さに見えます。」
「これをハイド爺とマリアの光の魔力の協力で紙に画像を写し取れる箱にしたんだ。ここから紙をいれてみてくれ。」
わたしは、紙をいれてみた。そしたらラーナ様がボタンを押す。
カシャっという音がして、紙が出てくる。
「風景が写し取れました。この箱は上下逆だったのに風景通りです。」
「この箱には、鏡が入っていて上下逆を反転させるんだ。わたしは、この箱をフォト・オブスクーラと名付けたが、このボタンについては、カタリナ嬢が「しゃったーみたい」といったので「しゃったー」と名付けることにした。とりあえずこの「フォト・オブスクーラ」と「すまほ」をつなげて音を送る風の魔力の応用で信号にして画像を送ることには成功したんだが、受け手は「すまほ」にフォト・オブスクーラをつなげないと画像が印刷できないんだ。わたしは、これを「すまほ」単体で、フォト・オブスクーラを兼ねることができないか考えている。紙は大きさがあるから仕方ないが、フォト・オブクスラのような大きな箱は持ち運びが不便だからな。」
「面白そうですね。」
「ああ、それから魔法省には貴族がらみの魔法に関連した犯罪の捜査案件が持ち込まれてくる。魔法がからむ犯罪は、貴族がらみだったり、領地をまたぐものが多いから各領地の警察・保安機関では手に負えないんだ。これもおもしろいぞ。」
「ラーナ様は捜査になると夢中になって出張にいってしまうか魔法道具の開発にも夢中になってラボにこもりっきりになるから決裁案件がたまってしまうのです。まあ、道具の開発のほうがまだましなのでいろんな道具のアイディアや依頼を募集してすこしでも省内にいてもらおうとしているのです。」
「人聞きが悪いな。捜査も魔法道具の開発も大事な仕事だぞ。」
「そのとおりですけど、もうちょつと文書事務をやってくれないと新人さんが耐えられなくなってやめてしまいます。第一去年の入省者でここに配属された人はかろ…」
「まあ、うちの部署ではこういう仕事をしているということだ。さて、次はサイラスのところへ行ってみるか?魔力・魔法研究室だ。ジンジャーはともかく、フレイは推薦状を書いてもらわなければならないからな。マリアにも会えるぞ。」
「はい。」
廊下に魔力・魔法研究室の札が出ている。
「サイラス、魔法省志望の学園の2年生だ。」
「フレイ・ランドールと申します。」
「ジンジャー・タッカーです。」
「ああ、よく来てくれた。今は、光の契約の書のありかや手がかりについて調査中なのだ。」
「フレイさん、ジンジャーさんお久し振りです。」
「マリア先輩、お久し振りです。結構難しそうなもの読んでいらっしゃるんですね。」
「はい。古字で書かれているものや学術的に深く追及しているもの、理論書などがあって結構大変です。ただ学園で学んだことが直接生かせるのでそれはよかったと思っています。」
「そうですね。光の魔力は、治癒魔法だけではなく、光を使って画像を何らかの媒体に写すこともできるんですね。」
「はい。画家の方が模写用に使うフォト・オブスクラについても書かれています。」
「あ、さっき魔法道具研究室で見てきました。」
「ラーナ様が紙に画像を写せるよう改造したものをお作りになっています。」
「わたしが手伝うように言われたので協力しました。実際に本に書かれているものを作れたので楽しかったです。」
「ああ、フォト・オブスクラならここにもある。」
マリア先輩が楽しげにお話になり、サイラス様がお応えになった。
わたしは、
「あ~おっしゃるとおりですね。」
とお二人への同意の気持ちをお伝えした。