「俺たちが全員あれこれとやたらに用事で呼び出されていたのもおかしい。こんなに重なることはなかったのに...。」
とニコル様がおっしゃれば
「そうですわね...確かに違和感を感じました。まるでカタリナ様を呼び出すためのような...。」
とメアリ様が同意する。皆さんはそういったことをおっしゃりながらも食事を終える。
わたしも闇の魔力が気になりながらも食事を終えた。そして次の教室へ向かう時だった。中庭から生徒会室へ闇の霞が動いていくのを見てしまった。
「あの...皆さん、少しだけ寄っておきたいところがあるので先に教室へ行っていただけないでしょうか?」
「あの、あんなことが起こったばかりですから一緒に行きませんか?」
「マリア、一人で行かない方がいいわ。今回はわたしが標的だったけど、あなたはわたしをかばったから仕返しされたりとか...。」
生徒会の皆さんは心配してくださる。
わたしは笑顔で
「いいえ、大丈夫です。大した用事じゃないですし、令嬢たちに会わないで済みますから。」
「それなら...授業までそんなに時間はないから早めにもどってきてね。」
「はい。」
再び笑顔を作って生徒会室へ行く。
生徒会室には、シリウス会長がいた。
「マリアさん、どうしたんだい。」
わたしは当たってほしくない予感が当たって背筋が寒くなった。会長のまわりには、あの闇の魔力のかすみがただよっている。
「以前、カタリナ様への冷たい視線を感じて...そのときは気のせいかと思ったのですが...会長の周りには黒いかすみのようなものがただよっているのですが...」
「黒いかすみって何を言ってるんだい...。」
そう言いつつもシリウス会長の顔色が変わる。犯罪が判明した人物が焦るような独特の顔。
「そうか...さすがに光の魔力保持者なんだね。わかってしまったのなら仕方がない。そうだよ。僕が仕組んだんだ。あのいまいましい女、カタリナ・クラエス。復讐の邪魔になりそうな女、決意を鈍らせる女を消してさっぱりするためにね。」
「復讐?」
「でも、そんなことは君が知らなくていいことだから。」
会長が歩み寄ってきて、わたしの肩に手をかける。
なにかどす黒い力を一瞬感じたが身体からそれを跳ね返す力がわきでてくる。
「さあマリアさん、もう授業が始まってしまうよ。早くいかなきゃ」
「何をおっしゃっているのですか?まだ話は終わっていません。」
わたしは答える。
会長は一瞬怪訝な顔をした。また一瞬どす黒い力を感じるものの、身体からそれを跳ね返す力がわきでてきてそれを跳ね返す。
「先ほどから何をなさっているのですか?会長、どうしてそこまでカタリナ様を目の敵に...。」
会長は今度はわたしを羽交い絞めにして、カプセルのようなものを取り出し、そこから煙のようなものが出てきた。わたしは強烈な眠気に襲われ、意識を失っていった。
わたしは気が付くと埃っぽい薄暗い部屋にいた。天井に小さな窓が付いているだけの狭い部屋でベッドのみがある。部屋からは脱出できないように足には鎖のついた鋼鉄の足環がつけられていた。
「マリアさん、夕食の時間だ。もってきたよ。気分はどうかな。」
「会長、なぜこんなことをなさるのですか?」
会長はわたしの肩に手を置く。どす黒い力を一瞬感じたが身体からそれを跳ね返す力がわきでてきてそれを跳ね返しているのを感じる。
会長がため息をつく。
「マリアさん、僕は早く闇の魔力のことを忘れてほしいんだ。そうじゃないとここを出すわけにはいかないから。」
「わたしがいなくなれば生徒会の皆さんたちが探すと思います。」
「ふふん。それは大丈夫だよ。見つけられるわけがない。これはディーク公爵家が何十年も前に立てた倉庫だけど人が使わない廃屋にしか見えないし、実際使われていないからね。
さらにここは床で出入口をふさいだ秘密の地下室だ。見つけられるわけがない。」
食事は、朝昼晩、きちんと運ばれてきた。昼間は会長は、学園に行かなければならないため、昼食は同じ召使いの人が運んできた。会長は朝夕わたしの肩に手を置こうとする。
わたしはその意味がわかって避けようとするが足に鎖がついていてどうしても部屋から出られない。会長は闇の魔力を発動するについても紳士であることに徹底していた。乳房などには絶対触れない。触れるとしたら肩や背中などだ。4日目になった。昼間だったが会長がやってきた。後で知ったのだが自習時間だったので昼間でも動けたらしい。青い顔をして刃物を一瞬わたしに向けようとしたが、思い直して床に落として拾って片付けていた。
会長の心の中には葛藤があるに違いなかった。復讐のためにじゃまなわたしやカタリナ様を殺してしまえという気持ちとそれを拒否する気持ちだ。夕方会長がやってきた。
「マリアさん、カタリナさんに魔法をかけたよ。永久に眠り続ける魔法だ。あとは君が闇の魔力のことを忘れてくれればいいだけなんだ。そうすればカタリナさんの魔法を解いてあげられる。どうかな。」
「なんてことをなさるのですか...。」
「僕の復讐の邪魔をするな。人殺しなどしたくないからこうしているんだ。わかってくれ。ね、マリアさん、きれいな心を持っている君なら僕の気持ちがわかるだろう。」
「会長が悲しい気持ちを持っていることはよくわかります。どうして、だれに復讐したいんですか?話してくれませんか?」
会長はいらだちはじめた。
「君には関係ない。君は知らなくていいことだ。」
それから二日たった。一週間わたしは閉じ込められていたことになる。しかしその間食事は運ばれた。カタリナ様に眠りの魔法をかけたという日から三日たった。
なにやらどやどや物音が聞こえる。人が入ってくる気配がする。
「本当にあった!」という声が聞こえた。
それから複数の足音が近づいてきて、入り口の扉ががらりとあけられた。剣をかまえるジオルド様とアラン様、カタリナ様、ソフィア様、メアリ様、キース様...
生徒会の皆さんだ。
「マリア!」といいながらカタリナ様わたしにかけよってくる。
「....カタリナさま....」
わたしはまだ目の前のできごとが信じられなかった。あれほど見つかるはずがないといわれていたのに皆さんは来てくれた。
「マリア、遅くなってごめんなさい。」
カタリナ様に力強く抱きしめられた。かすかな香水の香りがかおってくる。
「私こそ、皆さまにご心配をおかけして申し訳ありませんでした...。」
安心感で緊張で身体に入っていた力が抜けていき、からだが軽くなっていくのを感じた。
「そうじゃないわ。マリアはわたしのために動いてくれていたのでしょう?」
カタリナ様はわかってくださっている。わたしは恥ずかしいやらうれしいやらいろんな気持ちがないまぜになっていたが、小さくうなづいていた。
「ありがとう、マリア」
わたしは、ほおがほてるのを感じつつ、カタリナ様や皆さんが来てくださったうれしさで笑みが自然にもれる。カタリナ様はキリリと表情をひきしめ
「マリア、会長は、シリウス会長は、まだこの近くにいるの?」
「はい。会長はまだここにいます。この部屋の外の廊下の突き当り、あの黒い扉の先に」
カタリナ様も皆さんもディーク家のことをはじめとして何かに気が付いているようだ。でなければここに来ることはできないし、この一言でわたしの救出だけが目的ではないことは明白だった。わたしは思い切って
「カタリナ様は、会長が何を目的でこのようなことをされたのかご存じなのですか?」
と聞いてみることにした。