魔法学園の優等生   作:Brahma

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第9話 明かされる闇の魔力(後編)、四元素戦(四科戦)(その1)

会長の心の声も脳裏に聞こえる。

『復讐は終わりだ。お前の存在はいらない。』

『なんだと...お前の存在をここまで導いてやったのに...裏切り者があああああ...』

わたしは耳を思わず抑えてしまったが、黒い男の絶叫は脳裏に響いているので関係なかった。わたしは男の姿と部屋全体に充満していたどす黒い霧がみるみる晴れていくのを感じた。

「黒いかすみが消えていく.....。」

わたしは思わずつぶやいていた。

 

ラファエル様が正気に戻り生徒会室で皆に一部始終を話すことになった。

「皆さん、すみません。僕はこの学園を去らなければなりませんが、どうかこのようになったいきさつだけはわかっていただきたいのです。」

自分と自分の母親がある日突然さらわれ、自分が闇の魔法でシリウスの器にされそうになった話の段になると、王族であるジオルド様とアラン様の空気が変わった。

「闇の魔力は先代の王位継承争いでも使われたようですが、ディーク家にも伝わったのですか?」

「どうやらそのようです。それによって僕の罪が晴れるわけではありませんが」

ラファエル様は続ける。母親が殺され、シリウスの記憶が自分に移され、シリウスを名乗って生き残るしかなかったこと。母親の敵であるディーク公爵夫人に「おかあさま」というしかなかったこと。わたしは息が詰まりそうだった。わたしもつらかったが会長のつらさはどうだろう。母の敵に対して「お母様」と言い続けなければならない。

「あの黒い男が復讐を言い続け、僕もディーク公爵家憎さにいつか夫人もとろも仇を一掃してディーク公爵家を奪ってやると考えて努力してきました。しかし心の中で全て納得してきたわけではありません。特に生徒会でカタリナさんをとおしてニコルやマリアさんに生き生きした笑顔が見られるようになって、僕の中の心の中で葛藤が大きくなっていきました。復讐してやるという気持ちとそんなことはやめるんだという気持ちがせめぎあって...復讐の邪魔だという気持ちが大きくなるとカタリナさんを思わずにらみつけてしまった。

カタリナさんが邪魔だというあの黒い男に従って僕はあの令嬢たちを使うことにしました。その後は皆さんはどうなったかご存じのとおりです。そのあとは光の魔力をもつマリアさんを閉じ込めて、カタリナさんを永久に眠らせた。僕にはお二人を殺すなどとはとても考えられず、復讐の邪魔をしないでほしいというだけだった。しかしもうすべてが明らかになった今、操られたとはいえ自分の口で一部始終を話すために魔法省に出頭しようと思います。」

一部始終を話したラファエル様に役人に突き出してやろうという気持ちが皆さんのなかで消えていくのを感じた。闇の魔力の話を聞いたときにジオルド様とアラン様の荒い鼻息がが溜息に変わり、母親殺しの話を聞いたときなどメアリ様とソフィア様はすすり泣いたほどだ。わたしは、ラファエル様にされたことに対して一切不問にすることにした。しかもご自分から自首すると言っている。むしろディーク公爵家の罪が明らかになって胸くその悪い話が解決に向かえばと願った。

ラファエル様は、事情が事情だけに退学になった。しかし闇魔法の案件であるがゆえに伏せられて、表向きの名目は体調不良による療養。

「ディーク公爵家に、魔法省の査察がはいったようですよ。ディーク公爵夫人やその配下が魔法省に逮捕、収れんされたようです。」

「闇の魔法やほかの魔法で抵抗されなかったのですか?」

「魔法省の役人には魔法が絡む犯罪への警察権があって、捜査に行く職員は、全員事前に無属性魔法のサイレンスを習得させられます。複数名で逮捕に行き、一人が発動できなくても必ず誰かがサイレンスを発動できる体制をとります。貴族は領主であるうえに魔法持ちが多いですから、領地の警察には任せられませんからね。」

 

この時の話をわたしは魔法省入省後に、ラファエル様と魔法省の魔法道具研究室部署長のラーナ様から聞くことができた。

ラーナ様はジェフリー王子とともに現国王オーウェン・スチュアート陛下即位前の王位継承争いで闇魔法が貴族たちに知れ渡った経路について追っていたが、ディーク公爵家にも知れ渡ったらしいことをおさえていた。しかし裏付けがとれず動けなかったところに、ラファエル様の告白があり、ディーク公爵家とその所有不動産にガサ入れにはいったところ、まず闇魔法道具が発見され、いくつもの隠密施設で闇の魔力のための儀式を行う建物が発見された。また子どもを闇魔法のために養成する施設も発見されたが子どもたちは発見されず殺されたり、逃亡したりしたことが明らかになった。こうして一か月近くの捜査ののち、本丸のディーク公爵家に令状をもった魔法省の役人がやってきた。

「魔法省のラーナ・スミスだ。ディーク公爵夫人、闇魔法使用とキャサリン・ウォルト殺害の容疑で逮捕する。」

「なにを...あのガキはシリウスでなかった。わたしをだました。何で逮捕されないの?」

「その前にお前は闇魔法を得るためにキャサリン・ウォルトを殺害した。また闇魔法を使った男を口封じのために殺している。お前の配下が罪を軽くするために自白したぞ。」

「なにを..わたしは自分の息子をつがせるため、当然の権利を行使したまで。公爵夫人に逆らうとは...。お前たち、こんな小役人やっておしまい。」

配下たちが詠唱しようとする。

「まだわかっていないようだな。サイレンスだ。」

役人たちがサイレンスを素早く詠唱する。

「うう、公爵夫人、魔法が発動できません。」

「観念するんだな。公爵夫人。ああ、言っておくがお前の罪はジェフリー王子も知っているぞ。つれていけ」

こうして魔法省の役人たちはディーク公爵夫人とその配下をあわせて20数名逮捕し、魔法省に連行したという。

 

さて魔法学園では、文化祭(学園祭)と魔法競技祭が1年ごとに交互に行われる。

期末試験の実技試験であるダンジョン探索の訓練も兼ねた競技祭で土魔法、火魔法、風魔法、水魔法の四科対抗戦であるため四元素戦、四科戦とも呼ばれる。

火魔法クラスの人数が少ないのでそれに合わせて競技が行われる。

種目は下記の通りだ。全ての競技で火属性魔法の効果はやけどしないように20分の1に弱くし、最高体感温度は55度までにされているが(つまりやけどはしないが暑さによる退場者を出せれば勝利条件)、エフェクトは通常通りで、ダメージ判定は実際に受けたダメージの20倍に計算される(つまり裏を返せば強力な魔法を気兼ねなく使えるという恐ろしい仕様で5%ダメージの一撃が競技では致命傷になるという)ことになっている。四科戦では、次の五種の競技が行われる。

1.ワンダルングコリダー

ダンジョンに設けられた2kmの通路をいかに早く通過するかを競う競技である。ダンジョンの通路に罠を設け、石を転がしたり、水や火を浴びせたり、風で吹き飛ばしたりなど様々な方法で相手個人や相手グループを妨害して早く出口までたどり着いた方が勝ちという競技だ。

2.クロスカナル  

最大1時間以内でモササウルスのいる水路をいかに安全に早くわたるかを競う競技だ。ただし、相手を水路に落としたら死ぬかもしれないことから失格となる。相手に水路を渡らせないようにする工夫が必要な競技だ。ほとんどが40分程度で勝負がつくが接戦になると1時間で終わらない場合もあり、その場合は引き分けになる。なお万一競技者が落ちそうになった場合、中級冒険者パーティが救出とモササウルス討伐に介入する。彼らにとって決まった収入や経験値稼ぎになるため人気が高く抽選で行われるが、安全第一で2パーティが選ばれる。事故が起こらなければ6割、事故で学生を救出した場合は満額が支払われる。

 

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