アリアパイロット「宿舎にミサイル着弾。
損害不明」
オペレーター「綾音ちゃん、避難できてるよね?」
その問いに答えが返る前に、轟音が空を裂いた。
ミサイルは綾音の宿舎を正確に捉え、爆炎と衝撃波が建物を飲み込む。
綾音は避難経路へ走る途中だった。
???「耐熱耐性、耐爆耐性獲得成功しました」
爆風に吹き飛ばされ、無数の破片が体を貫く。
???「刺突耐性獲得成功しました」
???「続けて、物理攻撃耐性獲得成功しました」
綾音「……痛い。
寒い……」
血が床に広がる感覚が薄れていく。
???「痛覚無効を獲得成功しました。
血液が不要な身体構造を作成します」
???「耐寒耐性獲得成功しました。
耐熱耐性と統合し、熱変動耐性へ進化しました」
医療班1「止血を急げ。
AED準備!」
???「電流耐性、麻痺耐性獲得成功しました」
医療班2「……ダメです。
もう、手遅れです」
医療班1「せめて、記憶のバックアップだけでも」
医療班2「了解しました」
視界が白く霞む中、綾音は微笑った。
綾音「来世では……食べられなかった分も、いっぱい食べよ」
???「ユニークスキル『捕食者』を獲得成功しました」
綾音「カエデと一緒なら……どこでも転生するよ、もう」
???「エクストラスキル『大賢者』を獲得。
転移時アシストAIカエデを付与成功しました」
死亡後転移。
綾音「……あれ。
私、死んだんだよね」
綾音「前に行った天界っぽくないけど……ここ、どこだろ」
カエデ「義眼、起動します」
綾音「……って、洞窟?」
視界に広がるのは岩肌と暗闇。
妙に視点が低い。
綾音「これ草……?
って、目線低すぎじゃない?」
地面に触れた瞬間、草が溶けるように消えた。
綾音「え……何。
溶けた?
この感覚、気持ち悪……」
綾音「私、何に転生したの?!!!」
体を動かすと、ぶよんと弾む。
綾音「……弾力性、高すぎ」
綾音「ってことは……スライム?」
洞窟内の水たまりに姿を映し、綾音は自分の姿を確認した。
納得と諦めが同時に訪れる。
大賢者は即座に世界情報、スキル体系、生存ルールを解析し提示した。
カエデは索敵と危機回避、戦闘補助を黙々とこなす。
試行錯誤の末、水圧を推進力に変えるスキルを獲得する。
動ける。
生きている。
数日後。
ドラゴン「聞こえるか、小さきものよ」
ドラゴン「聞こえるなら返事をしろ」
カエデ「発声器官が存在しないため、体内スピーカーを構築します」
綾音「私は茨波綾音。
つい数日前に転生したばかりですけど、よろしくお願いします」
巨大な影がうねり、洞窟の奥で金色の瞳が輝いた。
ドラゴン「我を見て怖がらぬとは、なかなか肝が据わっておるな」
綾音「まあ、転生前にあなたよりデカい怪物と戦ってたのでw」
ドラゴン「我よりも強い、とな?」
綾音「物理効かないし、ビームとか鞭とか飛んでくるし。
めちゃくちゃ痛かったですよ」
ドラゴン「名乗りが遅れたな。
我が名は暴風竜ヴェルドラ」
ヴェルドラ「この世に四体のみ存在する龍種の一角よ」
突然、ヴェルドラは腹の底から笑い始めた。
ヴェルドラ「お前、とんでもなく稀な生まれだ」
綾音「稀?」
ヴェルドラ「異世界から来る者は多い。
だが転生者は、我が知る限り初めてだ」
ヴェルドラ「魂のみで世界を渡るなど、普通は耐えられん」
カエデ「この世界は、我々のポータル技術なしでも転移が可能なようです」
綾音「じゃあ、転生じゃなく転移してきた人もいるんですね」
ヴェルドラ「そうだ。
異世界人と呼ばれておる」
ヴェルドラ「そういう者たちは、世界を渡る際に特殊な力を授かる」
綾音「なるほど」
綾音「じゃあ、異世界人探してみます」
ヴェルドラ「なんだ、もう行くのか」
綾音「いえ。
もう少しこの世界のこと、ヴェルドラさんから教えてもらいたいです」
綾音「それで、このシールドって何ですか?」
ヴェルドラ「よくぞ聞いた」
ヴェルドラ「三百年前のことだ」
綾音「龍種だと、つい最近の感覚ですよね」
ヴェルドラ「うっかり街を滅ぼしてしまってな」
綾音「うっかりの規模が違う……」
ヴェルドラ「討伐に来た者がおった」
ヴェルドラ「少し、舐めておったのは認めよう」
ヴェルドラ「だが本気を出した。
それでも……負けた」
綾音「そんなに強かったんですか?」
ヴェルドラ「加護を受けた人間の勇者だ」
ヴェルドラ「ユニークスキル『絶対切断』、
そして『無限牢獄』で我を封印した」
綾音「じゃあ、このシールドが無限牢獄なんですね」
ヴェルドラ「そうだ。
召喚者と呼ばれておったな」
綾音「人為的に呼ばれた異世界人……」
ヴェルドラ「兵器としてな」
ヴェルドラ「魂に呪いを刻まれ、召喚主に逆らえぬ」
綾音「……それで、ここにずっと?」
ヴェルドラ「そうだ。
暇で暇でな」
綾音「……よしよし」
綾音「ねえ、私と友達になりませんか?」
ヴェルドラ「スライムの分際で、我と友達だと!!!」
綾音「……嫌だった?」
ヴェルドラ「嫌とは言っておらん」
綾音「じゃあ?」
ヴェルドラ「どうしてもと言うなら、考えてやらんでもない」
綾音「これ、どこかで聞いたな」
綾音「じゃあ決定ね」
ヴェルドラ「仕方あるまい。
貴様と友となってやろう」
綾音「よろしくね」
綾音「さて。
無限牢獄、どうやって解除しようか」
ヴェルドラ「方法があるなら頼みたい。
あと百年で魔力が尽きる」
綾音「だから薬草や鉱石が山ほどあったんだ」
綾音「魔力なくなると?」
ヴェルドラ「朽ちるだけだ」
綾音「あ。
カエデと大賢者に任せればいいんだ」
ヴェルドラ「?」
大賢者「内外両面から解析できれば、解除可能です」
綾音「ナイス!」
綾音「ヴェルドラさん。
内側と外側を解析すればいけるみたい。
私のスキルと大賢者がやるから」
ヴェルドラ「時間はかかるか?」
綾音「数週間かな。
だから……捕食者で体内に入れればいい」
ヴェルドラ「ははははは!」
ヴェルドラ「面白い。
我がすべてを預けよう」
綾音「じゃあさっそく……」
ヴェルドラ「待て。
名を付け合おう」
ヴェルドラ「同格の証だ。
魂に刻まれる加護となる」
綾音「名前、もらえるの嬉しいです」
ヴェルドラ「格好いい名を頼むぞ」
綾音「ヴェルドラさんもね」
綾音「……セリオスとかどうです?」
ヴェルドラ「なにぃ!
ゲヴィターだと!」
ヴェルドラ「最高の響きだ!」
ヴェルドラ「今日から我は、ヴェルドラ・セリオスだ!」
ヴェルドラ「そしてお前には、リムルの名を与える」
綾音「リムル。
いいね」
ヴェルドラ「リムル・セリオスを名乗れ」
綾音「じゃあ、捕食者使うね」
ヴェルドラ「ああ」
リムルは捕食者を発動し、ヴェルドラを取り込んだ。
無限牢獄の解析が始まる。
マルチタスクモードにより、並行して行動可能。
洞窟を探索しながらスキルを獲得していく。
水操作。
毒霧吐息。
熱源感知。
身体装甲。
麻痺吐息。
粘糸・鋼糸。
吸血。
超音波。
数日後、洞窟の出口を発見する。
リムルは、外の世界へと踏み出した。