テンペストの中央評議場。
簡素だが堅牢な造りの空間に、リグルド、鬼人衆、カイジンだけが集められていた。
形式は最低限に改められ、今は戦時会議そのものだった。
蒼影「二十万のオーク、その本隊が大河に沿って北上しています」
蒼影は即座に地図を展開し、指先で進路を示す。
蒼影「本隊と別働隊の動きを分析した結果、予測される合流地点は、ここより東の湿地帯です」
セリオス(綾音)「それって、さっき来たリザードマンの……」
蒼影「支配地域です」
一瞬、空気が張り詰める。
偶然では済まされない位置関係だった。
セリオス(綾音)「二十万か。数的には、かなりの規模だね」
カイジン「オークは元々、知能の高い魔物じゃねぇ」
カイジン「この侵攻に本能以外の目的があるとすりゃ、裏で指示してる存在がいるはずだ」
セリオス(綾音)「ボスがいるなら、これまでの戦法から見て、そこを叩けば一気に瓦解する」
セリオス(綾音)「でも、ボスだと思っていたのが中堅で、さらに上がいるなら、戦いは長引くね」
紅丸「最低でも、オークロードが出現している可能性は高いでしょう」
セリオス(綾音)「オークを統制できる、数百年に一度のユニークモンスターだよね」
紅丸「ええ。二十万の軍勢を統率できる存在は、オークロード以外に考えられません」
蒼影が一歩前に出る。
その声音には、いつもよりわずかな緊張が混じっていた。
蒼影「綾音様にお取り次ぎ願いたいと、分身体に接触してきた者がいます」
蒼影「相手は、大変珍しい……ドライアドです」
セリオス(綾音)「わかった。呼んできてくれる?」
蒼影「はっ」
ほどなくして、森の気配を纏った女性が姿を現す。
その存在自体が、自然の意思を宿しているかのようだった。
トレイニー「魔物を統べる方、並びにその儒者の皆様。突然の訪問、失礼いたします」
トレイニー「わたくしはドライアドのトレイニーと申します」
トレイニー「以後、お見知りおきを」
セリオス(綾音)「私はリムル・セリオス。できれば綾音って呼んでほしいです」
セリオス(綾音)「よろしくお願いします、トレイニーさん」
セリオス(綾音)「それで、今回はどのようなご用件で?」
トレイニー「あるお願いをしに参りました」
トレイニー「綾音さん、あなたにオークロードの討伐を依頼したいのです」
その言葉に、会議場の視線が一斉に集まる。
セリオス(綾音)「私は構いませんよ」
セリオス(綾音)「ただのオークロードではなさそうですし」
トレイニー「ありがとうございます」
セリオス(綾音)「ただし、国のシステム上、現時点では非常事態指定ではありません」
セリオス(綾音)「国民投票にかけさせてもらいますが、それでいいですか?」
トレイニー「ええ。問題ありません」
翌日。
トレイニーから詳細な情報を聞き出し、それを基に国民投票が行われた。
結果は賛成多数。
テンペストは正式に、オークロード討伐を決定する。
同時に、蒼影はリザードマンの首領との交渉へ向かっていた。
東方湿地帯。
霧と湿泥が視界と足を奪う、最悪の戦場。
参加戦力は紅丸、紫苑、白老、蒼影、ヴォルフ、ランガ。
加えてゴブリン戦闘班、そして義体を得たカエデ。
セリオス(綾音)「全員、戦闘態勢。目標は、蒼影と交戦中のオーク部隊」
全員「了解」
激戦の中で蒼影と合流し、倒れていた要救助者にフルポーションを振りかける。
傷は瞬く間に癒え、意識が戻った。
救助されたのは、ガビルの妹だった。
震える声で語られたのは、ガビルが謀反を起こしたという事実。
状況は急速に動く。
同盟が結ばれ、蒼影は首領救出へ。
その間に、テンペスト軍は進軍を開始した。