それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅9 新体制テンペストサミット

テンペストの中央評議場。

簡素だが堅牢な造りの空間に、リグルド、鬼人衆、カイジンだけが集められていた。

形式は最低限に改められ、今は戦時会議そのものだった。

 

蒼影「二十万のオーク、その本隊が大河に沿って北上しています」

 

蒼影は即座に地図を展開し、指先で進路を示す。

 

蒼影「本隊と別働隊の動きを分析した結果、予測される合流地点は、ここより東の湿地帯です」

 

セリオス(綾音)「それって、さっき来たリザードマンの……」

 

蒼影「支配地域です」

 

一瞬、空気が張り詰める。

偶然では済まされない位置関係だった。

 

セリオス(綾音)「二十万か。数的には、かなりの規模だね」

 

カイジン「オークは元々、知能の高い魔物じゃねぇ」

 

カイジン「この侵攻に本能以外の目的があるとすりゃ、裏で指示してる存在がいるはずだ」

 

セリオス(綾音)「ボスがいるなら、これまでの戦法から見て、そこを叩けば一気に瓦解する」

 

セリオス(綾音)「でも、ボスだと思っていたのが中堅で、さらに上がいるなら、戦いは長引くね」

 

紅丸「最低でも、オークロードが出現している可能性は高いでしょう」

 

セリオス(綾音)「オークを統制できる、数百年に一度のユニークモンスターだよね」

 

紅丸「ええ。二十万の軍勢を統率できる存在は、オークロード以外に考えられません」

 

蒼影が一歩前に出る。

その声音には、いつもよりわずかな緊張が混じっていた。

 

蒼影「綾音様にお取り次ぎ願いたいと、分身体に接触してきた者がいます」

 

蒼影「相手は、大変珍しい……ドライアドです」

 

セリオス(綾音)「わかった。呼んできてくれる?」

 

蒼影「はっ」

 

ほどなくして、森の気配を纏った女性が姿を現す。

その存在自体が、自然の意思を宿しているかのようだった。

 

トレイニー「魔物を統べる方、並びにその儒者の皆様。突然の訪問、失礼いたします」

 

トレイニー「わたくしはドライアドのトレイニーと申します」

 

トレイニー「以後、お見知りおきを」

 

セリオス(綾音)「私はリムル・セリオス。できれば綾音って呼んでほしいです」

 

セリオス(綾音)「よろしくお願いします、トレイニーさん」

 

セリオス(綾音)「それで、今回はどのようなご用件で?」

 

トレイニー「あるお願いをしに参りました」

 

トレイニー「綾音さん、あなたにオークロードの討伐を依頼したいのです」

 

その言葉に、会議場の視線が一斉に集まる。

 

セリオス(綾音)「私は構いませんよ」

 

セリオス(綾音)「ただのオークロードではなさそうですし」

 

トレイニー「ありがとうございます」

 

セリオス(綾音)「ただし、国のシステム上、現時点では非常事態指定ではありません」

 

セリオス(綾音)「国民投票にかけさせてもらいますが、それでいいですか?」

 

トレイニー「ええ。問題ありません」

 

翌日。

トレイニーから詳細な情報を聞き出し、それを基に国民投票が行われた。

結果は賛成多数。

テンペストは正式に、オークロード討伐を決定する。

 

同時に、蒼影はリザードマンの首領との交渉へ向かっていた。

 

東方湿地帯。

霧と湿泥が視界と足を奪う、最悪の戦場。

 

参加戦力は紅丸、紫苑、白老、蒼影、ヴォルフ、ランガ。

加えてゴブリン戦闘班、そして義体を得たカエデ。

 

セリオス(綾音)「全員、戦闘態勢。目標は、蒼影と交戦中のオーク部隊」

 

全員「了解」

 

激戦の中で蒼影と合流し、倒れていた要救助者にフルポーションを振りかける。

傷は瞬く間に癒え、意識が戻った。

 

救助されたのは、ガビルの妹だった。

震える声で語られたのは、ガビルが謀反を起こしたという事実。

 

状況は急速に動く。

同盟が結ばれ、蒼影は首領救出へ。

その間に、テンペスト軍は進軍を開始した。

 

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