湿地帯の戦場で、ガビルはオークの一撃を受け、血に染まって倒れていた。
必死に立ち上がろうとするが、脚が言うことを聞かない。
次の瞬間、鬼人たちが前に出る。
放たれた一撃は、まるで起爆爆弾のような衝撃と閃光を生み、オークの群れを吹き飛ばした。
さらにランガが咆哮と共にデスストームを展開する。
渦巻く死の嵐が、進軍していたオークたちを飲み込み、戦線を一気に押し返す。
その奥に、異様な存在感を放つ個体が見えた。
オークロードだった。
その瞬間、空気が裂ける。
白装束にペストマスクを付けた男が、高速で上空から降下してくる。
ゲルミュット「どういうことだ。このゲルミュット様の計画を、台無しにしやがって」
セリオス(綾音)「一つ、聞きたいことがあります」
ゲルミュット「お前なんかに答えることはないわ!!!」
セリオス(綾音)「この計画は、あなたが主導したもので間違いないですね」
ゲルミュット「あたりまえだろ」
次の瞬間だった。
オークロードの巨大な腕が振り抜かれ、ゲルミュットの首が宙を舞う。
悲鳴を上げる間もなく、オークロードはその死体を捕食した。
肉体が膨張し、魔力が暴走する。
オークロードは、オークディザスターへと進化した。
セリオス(綾音)「みんな、行くよ」
全員「はい」
鬼人たちの総攻撃が叩き込まれる。
だが、オークディザスターは即座に再生し、倒れる気配がない。
攻撃するほどに、命を糧として回復しているのが分かった。
セリオス(綾音)「……最終手段を使用」
セリオス(綾音)「カエデ、捕食者の使用許諾を確認」
カエデ「承認します」
大賢者「捕食者を使用します」
次の瞬間、巨大な捕食の力が発動する。
オークディザスターは抵抗する間もなく飲み込まれ、その存在は完全に消失した。
オークロードの侵攻は停止した。
残されたオークの残党は武器を捨て、震えながら膝をつく。
その後、ジュラの大森林全体を対象とした会議が、テンペストで開かれた。
トレイニー「それでは議長、茨波綾音。議事を開始してください」
セリオス(綾音)「はい。まず初めに、私の意見を述べます」
セリオス(綾音)「それに対する質問、意見、要望をお聞かせください」
セリオス(綾音)「本日決定した条約や議事録の詳細は、後日書面にまとめますので、必ず確認してください」
セリオス(綾音)「さて、本題に入ります」
セリオス(綾音)「今回の議題は、ご存じのとおり、オークの今後の対応についてです」
セリオス(綾音)「私の判断では、オークは心神耗弱状態にあり、正常な判断が不可能でした」
セリオス(綾音)「その結果、ゲルミュットに利用され、オークロードへの進化を誘発されたと考えています」
セリオス(綾音)「進化の過程で意思があったかどうかは不明ですが、結果として多くの種族に被害をもたらしました」
セリオス(綾音)「なお、計画者はオークロード自身の手で処断されています」
セリオス(綾音)「よって、首謀者としての罪は消滅したと判断します」
会場にざわめきが走る。
セリオス(綾音)「ですが、それで被害を受けた種族が納得できないのも当然です」
セリオス(綾音)「そこで、オークは私の国で強制労働に従事してもらいます」
セリオス(綾音)「ただし、休息は与えます」
セリオス(綾音)「労働内容も、各個体の特性やスキルを考慮した上で決定します」
セリオス(綾音)「以上の処遇を提案しますが、いかがでしょうか」
紅丸「不満がないわけではありません」
紅丸「ですが、二度とあのような無様はお見せしません」
反対意見はほとんど出なかった。
多くの種族が、この案を受け入れた。
オークたちは涙を流し、何度も頭を下げて感謝を示した。
セリオス(綾音)「今回の件は、一つの種族が孤立し、解決策を持てなかったことが原因だと私は考えています」
セリオス(綾音)「だからこそ、今後は種族間で協力していきたい」
セリオス(綾音)「差別や衝突が起きる可能性は否定しません」
セリオス(綾音)「ですが、それを減らすために、条約と私たちの国が機能するべきだと思います」
セリオス(綾音)「具体的には、リザードマンからは水源と兵力を」
セリオス(綾音)「ゴブリンからは土地を提供してもらいます」
セリオス(綾音)「その代わり、私たちの国からは加工品、魔具、兵器、そして技術を提供します」
セリオス(綾音)「欲を言えば、他種族国家のような形も理想ですが」
セリオス(綾音)「利権や立場の問題もありますし、それはまだ先の話ですね」
その後、各種族による合同条約が締結された。
不可侵条約、自由貿易、そして相互安全保障。
そしてなぜか。
トレイニーが盟主に指名されることになった。
セリオス(綾音)「……え、私じゃないの?」