それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅10 悪食

湿地帯の戦場で、ガビルはオークの一撃を受け、血に染まって倒れていた。

必死に立ち上がろうとするが、脚が言うことを聞かない。

 

次の瞬間、鬼人たちが前に出る。

放たれた一撃は、まるで起爆爆弾のような衝撃と閃光を生み、オークの群れを吹き飛ばした。

 

さらにランガが咆哮と共にデスストームを展開する。

渦巻く死の嵐が、進軍していたオークたちを飲み込み、戦線を一気に押し返す。

 

その奥に、異様な存在感を放つ個体が見えた。

オークロードだった。

 

その瞬間、空気が裂ける。

白装束にペストマスクを付けた男が、高速で上空から降下してくる。

 

ゲルミュット「どういうことだ。このゲルミュット様の計画を、台無しにしやがって」

 

セリオス(綾音)「一つ、聞きたいことがあります」

 

ゲルミュット「お前なんかに答えることはないわ!!!」

 

セリオス(綾音)「この計画は、あなたが主導したもので間違いないですね」

 

ゲルミュット「あたりまえだろ」

 

次の瞬間だった。

オークロードの巨大な腕が振り抜かれ、ゲルミュットの首が宙を舞う。

 

悲鳴を上げる間もなく、オークロードはその死体を捕食した。

肉体が膨張し、魔力が暴走する。

オークロードは、オークディザスターへと進化した。

 

セリオス(綾音)「みんな、行くよ」

 

全員「はい」

 

鬼人たちの総攻撃が叩き込まれる。

だが、オークディザスターは即座に再生し、倒れる気配がない。

攻撃するほどに、命を糧として回復しているのが分かった。

 

セリオス(綾音)「……最終手段を使用」

 

セリオス(綾音)「カエデ、捕食者の使用許諾を確認」

 

カエデ「承認します」

 

大賢者「捕食者を使用します」

 

次の瞬間、巨大な捕食の力が発動する。

オークディザスターは抵抗する間もなく飲み込まれ、その存在は完全に消失した。

 

オークロードの侵攻は停止した。

残されたオークの残党は武器を捨て、震えながら膝をつく。

 

その後、ジュラの大森林全体を対象とした会議が、テンペストで開かれた。

 

トレイニー「それでは議長、茨波綾音。議事を開始してください」

 

セリオス(綾音)「はい。まず初めに、私の意見を述べます」

 

セリオス(綾音)「それに対する質問、意見、要望をお聞かせください」

 

セリオス(綾音)「本日決定した条約や議事録の詳細は、後日書面にまとめますので、必ず確認してください」

 

セリオス(綾音)「さて、本題に入ります」

 

セリオス(綾音)「今回の議題は、ご存じのとおり、オークの今後の対応についてです」

 

セリオス(綾音)「私の判断では、オークは心神耗弱状態にあり、正常な判断が不可能でした」

 

セリオス(綾音)「その結果、ゲルミュットに利用され、オークロードへの進化を誘発されたと考えています」

 

セリオス(綾音)「進化の過程で意思があったかどうかは不明ですが、結果として多くの種族に被害をもたらしました」

 

セリオス(綾音)「なお、計画者はオークロード自身の手で処断されています」

 

セリオス(綾音)「よって、首謀者としての罪は消滅したと判断します」

 

会場にざわめきが走る。

 

セリオス(綾音)「ですが、それで被害を受けた種族が納得できないのも当然です」

 

セリオス(綾音)「そこで、オークは私の国で強制労働に従事してもらいます」

 

セリオス(綾音)「ただし、休息は与えます」

 

セリオス(綾音)「労働内容も、各個体の特性やスキルを考慮した上で決定します」

 

セリオス(綾音)「以上の処遇を提案しますが、いかがでしょうか」

 

紅丸「不満がないわけではありません」

 

紅丸「ですが、二度とあのような無様はお見せしません」

 

反対意見はほとんど出なかった。

多くの種族が、この案を受け入れた。

オークたちは涙を流し、何度も頭を下げて感謝を示した。

 

セリオス(綾音)「今回の件は、一つの種族が孤立し、解決策を持てなかったことが原因だと私は考えています」

 

セリオス(綾音)「だからこそ、今後は種族間で協力していきたい」

 

セリオス(綾音)「差別や衝突が起きる可能性は否定しません」

 

セリオス(綾音)「ですが、それを減らすために、条約と私たちの国が機能するべきだと思います」

 

セリオス(綾音)「具体的には、リザードマンからは水源と兵力を」

 

セリオス(綾音)「ゴブリンからは土地を提供してもらいます」

 

セリオス(綾音)「その代わり、私たちの国からは加工品、魔具、兵器、そして技術を提供します」

 

セリオス(綾音)「欲を言えば、他種族国家のような形も理想ですが」

 

セリオス(綾音)「利権や立場の問題もありますし、それはまだ先の話ですね」

 

その後、各種族による合同条約が締結された。

不可侵条約、自由貿易、そして相互安全保障。

 

そしてなぜか。

トレイニーが盟主に指名されることになった。

 

セリオス(綾音)「……え、私じゃないの?」

 

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