ドアルゴンとの決闘は、テンペスト郊外の演武場で開始された。
結界を張った立会人は、森の守護者たるドライアド。
風が止み、観測する者すべてが息を潜める。
最初に動いたのはセリオス(綾音)だった。
地面を蹴り、一気に間合いを詰める。
刃が閃き、迷いのない一撃がドアルゴンの喉元を狙う。
だが、重い金属音とともに剣は弾かれた。
ドアルゴンの反撃が即座に返ってくる。
殺気を感じ取り、セリオス(綾音)は半歩身を引いて回避した。
今度はドアルゴンが踏み込む。
大地を割るような威圧とともに剣を振り上げる。
ドアルゴン「朧・地天轟雷」
雷鳴のような衝撃が演武場を揺らす。
圧倒的な質量と魔力を込めた一撃。
それを、セリオス(綾音)は正面から受け止めた。
刃と刃が噛み合い、衝撃波が走る。
一瞬の静寂のあと、ドアルゴンが豪快に笑った。
ドアルゴン「あっはははは」
ドアルゴン「俺の剣を受け止めおったわ」
結界の外で、ドライアドが静かに宣告する。
ドライアド「そこまで。勝者、リムル・セリオス」
ドアルゴンは剣を下ろし、深く息を吐いた。
その眼差しから敵意は消えている。
ドアルゴン「剣を交えて、よく分かった」
ドアルゴン「おまえは邪悪な存在ではない」
ドアルゴン「しかし、よく俺の朧・地天轟雷を受け止めたな」
ドアルゴン「見事だったぞ、リムル」
セリオス(綾音)「いえ」
セリオス(綾音)「よく戦術指導してくれる師匠に、いつも打ちのめされてるだけです」
ドアルゴン「まさか、その師匠というのは」
白狼が一歩前に出て、軽く頭を下げる。
白狼「見事でした、綾音様」
ドアルゴン「綾音?」
セリオス(綾音)「まあ、あだ名みたいなものです」
ドアルゴン「なるほど」
ドアルゴン「名前的には『日本人』という異世界人のような響きだな」
セリオス(綾音)「ええ。そんなところです」
その後、白狼とドアルゴンの間で剣と武の話に花が咲き、場の緊張は完全に解けていった。
夜。
国賓用ホテルの応接室。
落ち着いた灯りの下で、改めて向かい合う。
セリオス(綾音)「なるほど」
セリオス(綾音)「オークロード討伐を成し遂げた魔物集団の調査、というわけだったんですね」
ドアルゴン「ああ」
ドアルゴン「敵か味方か、それを見極めにな」
ドアルゴン「それにしても、あの時のスライムが、ここまでの国を築いているとはな」
ドアルゴン「自由貿易連盟にも劣らぬ技術力だ」
セリオス(綾音)「いえいえ」
セリオス(綾音)「私は技術を教えているだけです」
セリオス(綾音)「実務のほとんどは、カイジンさんたちが担っています」
ドアルゴン「王はそれくらいでいい」
ドアルゴン「仕事を抱えすぎれば、政治にも響くし、威厳も薄れる」
セリオス(綾音)「確かに、そうですね」
ドアルゴン「綾音よ」
ドアルゴン「我が国と盟約を結ぶ気はあるか」
ドアルゴン「これだけの土地を支配できれば、我が国以上の富と資金を得られる」
ドアルゴン「その際、後ろ盾となる国家があれば何かと便利だ」
セリオス(綾音)「いいですけど」
セリオス(綾音)「その場合、反魔物派の国が宣戦布告してくる可能性はありませんか?」
ドアルゴン「それも想定済みだ」
ドアルゴン「だが、我が国にも十分なメリットがある」
セリオス(綾音)「わかりました」
セリオス(綾音)「後日、正式発表の場を設けましょう」
ドアルゴン「それで」
ドアルゴン「おぬしらの国の名は何という?」
セリオス(綾音)「クデュック連合王国です」
リグルド「おお、さすがです。綾音様」
リグルド「この国はクデュック連合王国」
リグルド「そして、この町はリムルといたしましょう」
リグルド「中央都市リムルです」
紫苑「おお、中央都市リムル」
紫苑「これ以外、考えられませんね」
紅丸「うむ」
紅丸「この町にふさわしい名だ」
ドアルゴン「決まりのようだな」
セリオス(綾音)「これから、よろしくお願いします」