それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅12 同盟

ドアルゴンとの決闘は、テンペスト郊外の演武場で開始された。

結界を張った立会人は、森の守護者たるドライアド。

風が止み、観測する者すべてが息を潜める。

 

最初に動いたのはセリオス(綾音)だった。

地面を蹴り、一気に間合いを詰める。

刃が閃き、迷いのない一撃がドアルゴンの喉元を狙う。

 

だが、重い金属音とともに剣は弾かれた。

ドアルゴンの反撃が即座に返ってくる。

殺気を感じ取り、セリオス(綾音)は半歩身を引いて回避した。

 

今度はドアルゴンが踏み込む。

大地を割るような威圧とともに剣を振り上げる。

 

ドアルゴン「朧・地天轟雷」

 

雷鳴のような衝撃が演武場を揺らす。

圧倒的な質量と魔力を込めた一撃。

それを、セリオス(綾音)は正面から受け止めた。

 

刃と刃が噛み合い、衝撃波が走る。

一瞬の静寂のあと、ドアルゴンが豪快に笑った。

 

ドアルゴン「あっはははは」

ドアルゴン「俺の剣を受け止めおったわ」

 

結界の外で、ドライアドが静かに宣告する。

 

ドライアド「そこまで。勝者、リムル・セリオス」

 

ドアルゴンは剣を下ろし、深く息を吐いた。

その眼差しから敵意は消えている。

 

ドアルゴン「剣を交えて、よく分かった」

ドアルゴン「おまえは邪悪な存在ではない」

ドアルゴン「しかし、よく俺の朧・地天轟雷を受け止めたな」

ドアルゴン「見事だったぞ、リムル」

 

セリオス(綾音)「いえ」

セリオス(綾音)「よく戦術指導してくれる師匠に、いつも打ちのめされてるだけです」

 

ドアルゴン「まさか、その師匠というのは」

 

白狼が一歩前に出て、軽く頭を下げる。

 

白狼「見事でした、綾音様」

 

ドアルゴン「綾音?」

 

セリオス(綾音)「まあ、あだ名みたいなものです」

 

ドアルゴン「なるほど」

ドアルゴン「名前的には『日本人』という異世界人のような響きだな」

 

セリオス(綾音)「ええ。そんなところです」

 

その後、白狼とドアルゴンの間で剣と武の話に花が咲き、場の緊張は完全に解けていった。

 

夜。

国賓用ホテルの応接室。

落ち着いた灯りの下で、改めて向かい合う。

 

セリオス(綾音)「なるほど」

セリオス(綾音)「オークロード討伐を成し遂げた魔物集団の調査、というわけだったんですね」

 

ドアルゴン「ああ」

ドアルゴン「敵か味方か、それを見極めにな」

 

ドアルゴン「それにしても、あの時のスライムが、ここまでの国を築いているとはな」

ドアルゴン「自由貿易連盟にも劣らぬ技術力だ」

 

セリオス(綾音)「いえいえ」

セリオス(綾音)「私は技術を教えているだけです」

セリオス(綾音)「実務のほとんどは、カイジンさんたちが担っています」

 

ドアルゴン「王はそれくらいでいい」

ドアルゴン「仕事を抱えすぎれば、政治にも響くし、威厳も薄れる」

 

セリオス(綾音)「確かに、そうですね」

 

ドアルゴン「綾音よ」

ドアルゴン「我が国と盟約を結ぶ気はあるか」

 

ドアルゴン「これだけの土地を支配できれば、我が国以上の富と資金を得られる」

ドアルゴン「その際、後ろ盾となる国家があれば何かと便利だ」

 

セリオス(綾音)「いいですけど」

セリオス(綾音)「その場合、反魔物派の国が宣戦布告してくる可能性はありませんか?」

 

ドアルゴン「それも想定済みだ」

ドアルゴン「だが、我が国にも十分なメリットがある」

 

セリオス(綾音)「わかりました」

セリオス(綾音)「後日、正式発表の場を設けましょう」

 

ドアルゴン「それで」

ドアルゴン「おぬしらの国の名は何という?」

 

セリオス(綾音)「クデュック連合王国です」

 

リグルド「おお、さすがです。綾音様」

リグルド「この国はクデュック連合王国」

リグルド「そして、この町はリムルといたしましょう」

リグルド「中央都市リムルです」

 

紫苑「おお、中央都市リムル」

紫苑「これ以外、考えられませんね」

 

紅丸「うむ」

紅丸「この町にふさわしい名だ」

 

ドアルゴン「決まりのようだな」

 

セリオス(綾音)「これから、よろしくお願いします」

 

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