数日後。
テンペストの正門前に、異様な圧迫感とともにドアルゴンが姿を現した。
その背には、明らかに人型とわかる大きな袋が担がれている。
セリオス(綾音)「……なんですか、それ?」
ドアルゴン「気にするな」
ドアルゴン「礼の証だ。受け取れ」
セリオス(綾音)「はあ……?」
袋が地面に下ろされ、口が開かれる。
中から転がり出たのは、縛られたままの一人の男だった。
カイジン「……べスターじゃないか」
セリオス(綾音)は一瞬で状況を理解する。
かつてドワルゴンで失脚した研究者。
能力はあるが、使いどころを誤った男。
ドアルゴン「有能な奴を遊ばせておくのは惜しい」
ドアルゴン「だが、俺の国で使うわけにもいかん」
ドアルゴン「好きに使え」
セリオス(綾音)「ありがとうございます」
セリオス(綾音)「ちょうど研究開発者が足りなくて困っていたところです」
べスターは慌てて膝をつき、深く頭を下げた。
べスター「王よ……」
べスター「今度こそ、ご期待に添えるよう精進いたします」
べスター「先日は申し訳ありませんでした」
べスター「許されるなら、ここで働かせてください」
セリオス(綾音)「もちろん」
セリオス(綾音)「給金は月金貨四枚」
セリオス(綾音)「新技術開発が成功したら、追加で二枚」
セリオス(綾音)「それでいい?」
べスター「……そんな大金を?」
セリオス(綾音)「大丈夫」
セリオス(綾音)「お金の錬金術はカエデが得意だから」
セリオス(綾音)「それに、これから忙しくなる予感がするしね」
セリオス(綾音)「よろしく」
べスター「ははぁ……!」
べスター「命を懸けて務めさせていただきます!」
ドアルゴン「では、さらばだ」
セリオス(綾音)「また今度」
ドアルゴンが去った後、テンペストはさらに慌ただしくなった。
ガビルとその一派も正式に仲間に加わり、戦闘班の再編が始まる。
セリオス(綾音)「これ、支給品ね」
ガビル「……なんですか、これは?」
セリオス(綾音)「身体能力を大幅に強化する専用スーツと装備」
セリオス(綾音)「魔法装備でもいいんだけど、これはどんな武器にも対応できるように作ったもの」
セリオス(綾音)「しかも今回は、沼地特化型」
ガビルは目を輝かせ、深く頭を下げた。
ガビル「ありがとうございます!」
部下たちにも名が与えられ、次々とドラゴニュートへと進化していく。
蒼影率いる偵察班には、スニーキングスーツと専用の小型銃、短刀が配備された。
同時に、地下都市では農業用ビルの建設が完了する。
長期戦闘時でも食料供給が途切れない体制が整った。
べスターは薬学の才能を発揮し、ポーションや薬草を応用した催眠ガス兵器の研究へと回される。
そのときだった。
レーダーが異常反応を捉える。
セリオス(綾音)「……超音速物体、捕捉」
セリオス(綾音)「予想到達時刻十五分後」
セリオス(綾音)「第一種戦闘配置」
セリオス(綾音)「対空迎撃準備、非戦闘員は避難開始」
戦闘班「速度が速すぎます! ロックできません!」
セリオス(綾音)「私を狙ってる可能性がある」
セリオス(綾音)「郊外に出る」
セリオス(綾音)「非常時は合図するから、いつでもミサイル撃てるようにして」
戦闘班「了解!」
郊外へ出た瞬間、空が裂ける。
轟音とともに、飛行物体が地面へ激突した。
クレーターの中心から、土煙を払って現れたのは、小柄な少女だった。
ミリム「初めましてなのだぞー!」
ミリム「我はただ一人のドラゴノイド!」
ミリム「デストロイの二つ名を持つ、ミリム・ナーヴァなのだ!」
セリオス(綾音)「……魔王?」
ミリム「お前が一番強そうだったから、あいさつに来てやったのだぞー!」
セリオス(綾音)「知り合ったばかりで悪いんだけど」
セリオス(綾音)「装甲板第一層から第二十層まで、一部損壊してるんだけど……」
ミリム「それはすまなかったんだぞー」
セリオス(綾音)「できれば、このエリア周辺で暴れないでほしい」
セリオス(綾音)「人的被害が出なければ、多少は目をつぶるけど」
ミリム「できるだけ、そうするのだぞー!」
セリオス(綾音)「……って、待って紫苑、攻撃しないで」
紫苑「待てません」
ミリム「ほう?」
ミリム「我と遊びたいのか?」
セリオス(綾音)「蒼影、街を耐核モードに」
蒼影「はっ」
ミリムは周囲を見回し、純粋な興味を浮かべた。
ミリム「なんなのだ、この町は?」
セリオス(綾音)「まあ」
セリオス(綾音)「未来の技術、ってやつです」