ミリムとの雑談の中で、セリオス(綾音)は新兵器の開発を条件に、魔王たちの動きについて話を聞き出していた。
どうやら魔王カリオンを中心に、新たな魔王種を誕生させる計画が進められていたらしい。
そしてその計画は、結果的にセリオス(綾音)の介入によって頓挫した、という認識で広まっているようだった。
そんな折、街に戻ってきたゴブタが、なぜか人間の軍隊と妙に打ち解けた様子で帰還した。
しかも帰り道のついでのような顔で、巨大な蜘蛛型魔物まで討伐している。
その一行の中には、かつて縁のあったカバル一行の姿も含まれていた。
状況整理も兼ねて、セリオス(綾音)はクデュックサミットの控え室に関係者全員を招集した。
重厚な扉の向こう、簡素ながら威厳ある会議室に、魔物と人間が同席する異様な光景が広がる。
セリオス(綾音)「私がクデュック連邦王国の国王、リムル・セリオスです」
場の空気が一瞬、張り詰めた。
セリオス(綾音)「ただし公式の場以外では、綾音と呼んでいただいて構いません」
ブルムンド王国の使者「本当に……スライムが国王なのですか?」
疑念と戸惑いが隠せない視線が、セリオス(綾音)に集まる。
ガバル「そういえば、以前はいなかった方々がおられるようですが」
セリオス(綾音)「ええ。紅丸、蒼影、朱菜、紫苑」
それぞれが静かに一礼する。
セリオス(綾音)「それから、最近来たミリムです」
ミリムは椅子に座ったまま、楽しそうに足を揺らしていた。
セリオス(綾音)「ファルムス王国とブルムンド王国からの調査、という認識で間違いありませんね?」
ブルムンド王国の使者「われわれは――」
ヨウム「というか、なんでスライムがこんなに偉そうなんだ?」
ヨウム「なんであんたらは、それで納得してるんだ?」
率直すぎる言葉に、場の空気が一気にざわつく。
セリオス(綾音)「……最近こういう反応、多いな」
小さく息を吐き、表情を改める。
セリオス(綾音)「まあいいです。私は人間とも友好関係を築きたいと考えています」
セリオス(綾音)「貿易も視野に入れていて、すでにドワルゴンとも盟約を結んでいます」
ブルムンド王国の使者「ドワルゴンと!?」
驚愕がそのまま声に出る。
セリオス(綾音)「ええ」
セリオス(綾音)「この地を経由すれば、商人の利便性向上、移動工程の短縮、そして低コスト化が可能になります」
ブルムンド王国の使者「ドワルゴン国王が、この魔物の国を承認したと?」
べスター「その件なら、私が証明しましょう」
ブルムンド王国の使者「べスター大臣!」
べスター「いえ、元大臣です」
べスター「お久しぶりです、ヒューズ殿」
ヒューズ「あなたほどのお方が、なぜこのような場所に?」
べスター「リムル様のおっしゃることは事実です」
べスター「ガゼル王とリムル様は、正式に盟約を交わしております」
ヒューズは深く息を吸い、慎重に言葉を選ぶ。
ヒューズ「そういうことでしたら、我々の協力はやぶさかではありません」
ヒューズ「ですが、あなたが本当に人間の味方なのか、見極めさせていただきたい。それでもよろしいですか?」
セリオス(綾音)「ええ。この世界では人間と魔物の関係が悪いようですし、仕方ありませんね」
セリオス(綾音)「それに、滞在しても構いません。こちらから攻めることはありませんから」
セリオス(綾音)「ところで、オークロード討伐の情報は一般には流れているのですか?」
ヒューズ「いえ。国王と、ごく一部の者のみです」
セリオス(綾音)「でしたらヨウムさん。あなたに英雄になっていただきたい」
ヨウム「ええっ!」
セリオス(綾音)「クデュック連邦王国があなたを援護した、という形にします」
セリオス(綾音)「英雄を助けた信用できる魔物の国、そう認識されるでしょう」
セリオス(綾音)「力で潰すだけなら抑止力にはなります。でもそれでは人間との関係は築けません」
セリオス(綾音)「報酬は、本来のオークロード討伐報酬に加え、クデュック最高水準の装備を用意します」
夕方。
話し合いを終えた後、街を見渡せる場所でヨウムが口を開いた。
ヨウム「……わかった」
ヨウム「にしても、ここは大したところだ」
ヨウム「来る前に街の様子を見て、邪悪な魔族じゃないってすぐ分かった」
ヨウム「俺たちはずっと傷を抱えてきた人間だ。自由になりたいと思ってた」
ヨウム「今回は、途中で死んだことにして、どこか安全な国に行くつもりだった」
ヨウム「だから……信用するよ」
ヨウム「これからは、リムルの旦那って呼ばせてもらう」
セリオス(綾音)「ごめん。できれば綾音でお願い」
ヨウム「分かったよ」
そう言って、ヨウムは少し照れたように苦笑いした。