それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅16 新たなる問題

ミリムとの雑談の中で、セリオス(綾音)は新兵器の開発を条件に、魔王たちの動きについて話を聞き出していた。

どうやら魔王カリオンを中心に、新たな魔王種を誕生させる計画が進められていたらしい。

そしてその計画は、結果的にセリオス(綾音)の介入によって頓挫した、という認識で広まっているようだった。

 

そんな折、街に戻ってきたゴブタが、なぜか人間の軍隊と妙に打ち解けた様子で帰還した。

しかも帰り道のついでのような顔で、巨大な蜘蛛型魔物まで討伐している。

その一行の中には、かつて縁のあったカバル一行の姿も含まれていた。

 

状況整理も兼ねて、セリオス(綾音)はクデュックサミットの控え室に関係者全員を招集した。

重厚な扉の向こう、簡素ながら威厳ある会議室に、魔物と人間が同席する異様な光景が広がる。

 

セリオス(綾音)「私がクデュック連邦王国の国王、リムル・セリオスです」

 

場の空気が一瞬、張り詰めた。

 

セリオス(綾音)「ただし公式の場以外では、綾音と呼んでいただいて構いません」

 

ブルムンド王国の使者「本当に……スライムが国王なのですか?」

 

疑念と戸惑いが隠せない視線が、セリオス(綾音)に集まる。

 

ガバル「そういえば、以前はいなかった方々がおられるようですが」

 

セリオス(綾音)「ええ。紅丸、蒼影、朱菜、紫苑」

 

それぞれが静かに一礼する。

 

セリオス(綾音)「それから、最近来たミリムです」

 

ミリムは椅子に座ったまま、楽しそうに足を揺らしていた。

 

セリオス(綾音)「ファルムス王国とブルムンド王国からの調査、という認識で間違いありませんね?」

 

ブルムンド王国の使者「われわれは――」

 

ヨウム「というか、なんでスライムがこんなに偉そうなんだ?」

 

ヨウム「なんであんたらは、それで納得してるんだ?」

 

率直すぎる言葉に、場の空気が一気にざわつく。

 

セリオス(綾音)「……最近こういう反応、多いな」

 

小さく息を吐き、表情を改める。

 

セリオス(綾音)「まあいいです。私は人間とも友好関係を築きたいと考えています」

 

セリオス(綾音)「貿易も視野に入れていて、すでにドワルゴンとも盟約を結んでいます」

 

ブルムンド王国の使者「ドワルゴンと!?」

 

驚愕がそのまま声に出る。

 

セリオス(綾音)「ええ」

 

セリオス(綾音)「この地を経由すれば、商人の利便性向上、移動工程の短縮、そして低コスト化が可能になります」

 

ブルムンド王国の使者「ドワルゴン国王が、この魔物の国を承認したと?」

 

べスター「その件なら、私が証明しましょう」

 

ブルムンド王国の使者「べスター大臣!」

 

べスター「いえ、元大臣です」

 

べスター「お久しぶりです、ヒューズ殿」

 

ヒューズ「あなたほどのお方が、なぜこのような場所に?」

 

べスター「リムル様のおっしゃることは事実です」

 

べスター「ガゼル王とリムル様は、正式に盟約を交わしております」

 

ヒューズは深く息を吸い、慎重に言葉を選ぶ。

 

ヒューズ「そういうことでしたら、我々の協力はやぶさかではありません」

 

ヒューズ「ですが、あなたが本当に人間の味方なのか、見極めさせていただきたい。それでもよろしいですか?」

 

セリオス(綾音)「ええ。この世界では人間と魔物の関係が悪いようですし、仕方ありませんね」

 

セリオス(綾音)「それに、滞在しても構いません。こちらから攻めることはありませんから」

 

セリオス(綾音)「ところで、オークロード討伐の情報は一般には流れているのですか?」

 

ヒューズ「いえ。国王と、ごく一部の者のみです」

 

セリオス(綾音)「でしたらヨウムさん。あなたに英雄になっていただきたい」

 

ヨウム「ええっ!」

 

セリオス(綾音)「クデュック連邦王国があなたを援護した、という形にします」

 

セリオス(綾音)「英雄を助けた信用できる魔物の国、そう認識されるでしょう」

 

セリオス(綾音)「力で潰すだけなら抑止力にはなります。でもそれでは人間との関係は築けません」

 

セリオス(綾音)「報酬は、本来のオークロード討伐報酬に加え、クデュック最高水準の装備を用意します」

 

夕方。

話し合いを終えた後、街を見渡せる場所でヨウムが口を開いた。

 

ヨウム「……わかった」

 

ヨウム「にしても、ここは大したところだ」

 

ヨウム「来る前に街の様子を見て、邪悪な魔族じゃないってすぐ分かった」

 

ヨウム「俺たちはずっと傷を抱えてきた人間だ。自由になりたいと思ってた」

 

ヨウム「今回は、途中で死んだことにして、どこか安全な国に行くつもりだった」

 

ヨウム「だから……信用するよ」

 

ヨウム「これからは、リムルの旦那って呼ばせてもらう」

 

セリオス(綾音)「ごめん。できれば綾音でお願い」

 

ヨウム「分かったよ」

 

そう言って、ヨウムは少し照れたように苦笑いした。

 

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