ヨウムたちは白狼のもとで徹底的に鍛え上げられた。
生き残るための剣技、恐怖に呑まれぬ精神、仲間を守る判断力。
それらを叩き込まれた彼らは、やがて英雄として名を売るため各地へと旅立っていった。
同時期に、テンペストとブルムンド王国を結ぶ直通道路と直通鉄道が建設されることが決定した。
地下深くを走る真空式高速地下鉄は、魔物と人間の往来を一変させる象徴的な存在となる。
それからしばらくして、森の結界を越え、一人の妖精が現れた。
切迫した魔素を纏い、その表情には明確な焦りが浮かんでいる。
トライア「私はトレイニーの妹、トライアです」
セリオス(綾音)「何か非常事態ですか?」
トライア「ええ。厄災が近づいております」
トライア「カラミティモンスターであるカディブディスが復活いたしました」
トライア「魔王に匹敵する暴威を持つ存在です」
トライア「姉トレイニーが足止めを行っておりますが、まるで歯が立ちません」
トライア「そして、カディブディスの目的はこの地である模様です」
トライア「天空の覇者であるカディブディスに対し、地上戦力は無力。至急、防衛体制を固め、飛行戦力を整える必要があります」
セリオス(綾音)「知らせてくれてありがとう。すぐに対空防衛システムを起動する。非戦闘員の避難も同時に進めよう」
第2種警戒態勢が発令された。
非戦闘員は速やかに地下へ誘導され、主要施設はすべて地下要塞へと退避を完了させる。
地下要塞内、臨時会議所。
集まった者たちの顔には、緊張と覚悟が入り混じっていた。
ヒューズ「カディブディスが復活したとなれば、魔王以上の脅威になります」
ヒューズ「何しろ、魔王と違って話の通じる相手ではありません」
セリオス(綾音)「べスター。現段階の兵器で、対空防衛は可能?」
べスター「正直に言います」
べスター「現行の対空火器では、かすり傷を与えられるかどうかです」
べスター「ICBMの弾頭を爆破魔法を埋め込んだ魔鉱塊に変更したとしても、有効打になるかは不明ですね」
セリオス(綾音)「戦闘機を今から造っても、時間が足りない……」
ミリム「何か大事なことを忘れてはいないか?」
セリオス(綾音)「ミリムは最終手段。最後に思いきり暴れてほしい」
ミリム「がーん……」
ミリムは目に見えて肩を落とし、深く落ち込んだ様子を見せた。
セリオス(綾音)「各戦闘員に通達。対空装備と戦車砲弾はリーサルおよびデストロイに切り替え」
セリオス(綾音)「ICBMは発射直前までシーケンスを完了。弾頭はデストロイで統一」
全員「はっ」
やがて、空が歪む。
巨影が雲を裂き、カディブディスがその全貌を現した。
紅丸の大規模爆破が直撃する。
しかし、鱗一枚すら砕けない。
セリオス(綾音)「ICBM発射!!!」
戦闘班「了解。目標自動追尾、ロック完了」
戦闘班「撃てぇぇぇ!!!!」
セリオス(綾音)「対空ミサイル、撃てぇぇぇ!!!!」
戦闘班「撃ち方、はじめ!!!」
セリオス(綾音)「戦車部隊、撃ち方はじめ」
次の瞬間、空間が裂け、サメ型の魔物が大量に召喚される。
ゴブタ、オークたち、鬼人、ガビルが連携し、次々と撃破していく。
ICBMがカディブディスに着弾する。
だが、与えられたのは、わずかなかすり傷だけだった。
セリオス(綾音)「ICBM、全弾使用を許可」
セリオス(綾音)「同時発射せよ」
戦闘班「了解」
ミリムは我慢しきれず、じっとしていられない様子で地団駄を踏いていた。
カディブディスの鱗マシンガンが火を噴く。
戦車とミサイルポッドが次々と破壊され、被害は甚大だった。
セリオス(綾音)「全戦闘員、退避」
セリオス(綾音)「あとは、私がやる」
全員「了解」
セリオス(綾音)は飛行能力を解放し、単身で空へと舞い上がる。
レーザーと鱗弾が降り注ぐ中、それらを紙一重で回避し続ける。
セリオス(綾音)「カエデ。ミサイルとICBMの発射、残存戦車での攻撃を任せる」
カエデ「分かりました」
セリオス(綾音)「全隊に通達。指揮と制御はカエデに一任。安全距離まで退避して」
その時、カディブディスが空に向かって咆哮した。
叫ばれたのは、ミリムの名だった。
セリオス(綾音)「……やっぱり、この前のやつだね」
セリオス(綾音)「ミリム。攻撃許可。ただし、生かして」
ミリム「わかったのだ」
ミリム「ドラゴバスターーーーーっ!!!」
圧倒的な一撃が放たれ、依り代となっていた存在以外は完全に破壊された。
残ったのは、瀕死のフォビオただ一人。
ミリムはその身体にフルポーションを振りかけ、強制的に治癒させた。