セリオス(綾音)「さてと、スタングレネードある?」
カエデ「ええ、もちろん」
セリオス(綾音)「よし、行けるね」
ヒナタ「自分のスキルと喋ってる余裕があるのね」
セリオス(綾音)「ごめんなさい、眠ってて」
次の瞬間、スタングレネードと麻酔弾が放たれた。
閃光と衝撃が空間を満たし、ヒナタの意識が急速に曖昧になる。
抵抗が止んだのを確認し、綾音は即座に結界の構造を解析、解除した。
そのままクデュック近傍のワープエリアへ転移し、戦場から離脱する。
セリオス(綾音)「大丈夫?」
蒼影「ええ、この程度であれば問題ありません」
セリオス(綾音)「結界の座標に衛星砲での攻撃はできた?」
蒼影「起動前に技術者が全員死亡しています。おそらく内部に侵入されていたかと」
セリオス(綾音)「避難所は?」
蒼影「……完全に不明です」
セリオス(綾音)「たぶん教会側とファルムス王国。黒幕はその線が濃いわね」
セリオス(綾音)「対人、対国家にICBMは使いたくない」
セリオス(綾音)「とりあえず、結界を張っている起点座標は蒼影たちの端末に送った」
セリオス(綾音)「これを無力化して」
蒼影「御意」
セリオス(綾音)「私はアンチマジックエリアを破壊する」
蒼影「了解しました」
蒼影たちは即座に散開し、指定座標へ向かう。
外装結界が次々と解除され、都市を覆っていた圧迫感が薄れていった。
一方、セリオス(綾音)は単独でクデュック内部へ潜入する。
セリオス(綾音)「……すごい被害」
カエデ「内部センサーの断片通信を捕捉。人口の九割が死亡しています」
セリオス(綾音)「……っ」
セリオス(綾音)「フルポーションの残量は?」
カエデ「使用率九九パーセント。ほぼ残っていません」
セリオス(綾音)「これは……!」
視界に入ったのは、無惨に切り捨てられ、積み重なる遺体の山だった。
壁も床も血に染まり、救いの痕跡はどこにもない。
セリオス(綾音)「……酷い」
その時、遠方で大きな爆発が起きた。
魔素の反応から、紅丸だと直感する。
セリオス(綾音)「行くか」
爆心地へ向かうと、紅丸とヨウムが激しく刃を交えていた。
セリオス(綾音)「理由はどうあれ、同士討ちは憲法違反よ」
セリオス(綾音)「まあ非常事態だから即処断はしないけど、それで何があったの?」
紅丸「このアンチマジックエリアの元凶は、そこのミューランという女の魔法結界です」
紅丸「逮捕しようとしたところ、ヨウムと戦闘になりました」
セリオス(綾音)「……やっぱり、何か裏があるわね」
ヨウム「綾音さん、すまねぇ」
ヨウム「あんたを裏切る気はこれっぽっちもねぇ。ただ、このミューランを助けたいんだ」
セリオス(綾音)「わかった」
セリオス(綾音)「とにかく事情聴取したい。官邸まで来てくれる?」
ヨウム「……ああ、分かった」
セリオス(綾音)「人工心臓って、人数分ストックある?」
カエデ「ええ、もちろん」
セリオス(綾音)「……分かった」
官邸。
重苦しい空気が廊下に満ちている。
セリオス(綾音)「ヨウムたちには悪いけど、抑止力になってもらわないといけない」
セリオス(綾音)「うちは、ただの非殺傷国家じゃない」
ヨウムたちは別室に呼び出された。
セリオス(綾音)「あなたたちには申し訳ないけど、ミューランを刑に処すことになった」
ヨウム「……それって、どういう意味だ?」
セリオス(綾音)「落ち着いて。最後まで聞いて」
セリオス(綾音)「私の国では、死刑や残虐な刑罰は禁止してる」
ヨウム「……ああ」
セリオス(綾音)「でも、今回は非常事態」
セリオス(綾音)「被害は人口の九割。規模があまりにも大きすぎる」
ヨウム「……ああ」
セリオス(綾音)「国民感情としては、実行犯を処罰しろという声が圧倒的になる」
セリオス(綾音)「だから、極刑に処すことになった」
ヨウム「嘘だろ!!!!」
ヨウム「嘘だと言ってくれ!!!!」
セリオス(綾音)「……最後の晩餐を済ませて」
セリオス(綾音)「決行は明日」
ヨウム「なあ……本当に、極刑なのか?」
セリオス(綾音)「ええ」