ヨウム「俺は信じねえぞ」
セリオス(綾音)「……本当にごめんなさい」
ヨウム「くそっ!」
翌日。
官邸前の広場で、ヨウムは一人立っていた。
夜通し考え続けた末、それでも信じるしかなかった。
もし彼女の言葉どおりなら、ミューランは死なない。
ヨウム「……来たか」
石畳の向こうから、セリオス(綾音)が現れる。
表情は変わらず、時間にも一分の狂いもない。
セリオス(綾音)「時間どおりね」
ヨウム「ミューランはどこだよ」
セリオス(綾音)「今、来るわ」
その直後、兵に伴われたミューランがヨウムの前に立った。
拘束はされているが、確かに生きている。
ヨウム「……お前、生きてたのか。よかった」
セリオス(綾音)「さてと」
セリオス(綾音)「ヨウム君も知っての通り、彼女には死んでもらう」
ヨウム「ふざけんな!」
ヨウム「俺の大切な家族なんだぞ!」
セリオス(綾音)「それは分かっているわ」
ヨウム「じゃあ、なんで殺すんだよ!」
セリオス(綾音)「彼女の罪は、国民の大量虐殺」
セリオス(綾音)「そして国家転覆を目論んだこと」
ヨウム「そんなの、知らなかっただろ!」
セリオス(綾音)「そうかもしれない」
セリオス(綾音)「でも彼女は、私利私欲のために多くの人を殺した」
ヨウム「それでも……ミューランは家族なんだよ!」
セリオス(綾音)「残念だけど、ヨウム君の気持ちだけではどうにもならない」
ヨウム「じゃあ他に方法があるだろ!」
ヨウム「何か、別のやり方が!」
セリオス(綾音)「例えば?」
ヨウム「ミューランを釈放するとか……!」
セリオス(綾音)「もう遅いわ」
ヨウム「頼む……助けてくれ!」
セリオス(綾音)「できない」
ヨウム「綾音さん……!」
セリオス(綾音)「ヨウム君」
セリオス(綾音)「さっきから、あなたの言葉は支離滅裂よ」
セリオス(綾音)「自分の感情だけを、一方的に押し付けている」
ヨウム「……え?」
セリオス(綾音)「私は人の意見を聞くのは好き」
セリオス(綾音)「でもね、人の命より重い感情なんて存在しない」
ヨウム「でも……!」
セリオス(綾音)「はっきり言うわ」
セリオス(綾音)「今のあなたは、ただのわがままで自分勝手な子供よ」
ヨウム「……っ」
セリオス(綾音)「ミューランは処刑する」
セリオス(綾音)「これは覆らない」
ヨウム「ちくしょう……!」
セリオス(綾音)「それに、これはあなただけの問題じゃない」
セリオス(綾音)「最後に、言いたいことはある?」
ヨウム「……ミューラン」
ヨウム「今まで、ありがとうな」
セリオス(綾音)「それでは、ミューランさん」
セリオス(綾音)「刑を執行します」
ヨウム「やめろー!!」
乾いた音と共に、麻酔弾が放たれた。
ミューランの身体から力が抜け、意識が途切れる。
その瞬間、セリオス(綾音)は手際よく埋め込まれていた人工心臓を摘出し、事前に用意していた新しい人工心臓へと即座に換装した。
動作に迷いは一切なかった。
セリオス(綾音)「……ごめんね、ヨウム」
ヨウム「……何だ」
ヨウム「そういうことだったのか」
セリオス(綾音)「ミューランさんの刑は、完了した」
ヨウム「綾音さん……」
セリオス(綾音)「あとは、ファルムス王国への清算ね」
セリオス(綾音)「ヨウム君には、これから頑張ってもらうことになる」
ヨウム「ああ……」
それから数時間後。
セリオス(綾音)「ふぁ……よく寝た」
カエデ「おはようございます」
セリオス(綾音)「おはよ」
カエデ「昨日も遅くまで起きていましたが、大丈夫ですか?」
セリオス(綾音)「ええ、大丈夫よ」