それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅23 罪と罰

ヨウム「俺は信じねえぞ」

 

セリオス(綾音)「……本当にごめんなさい」

 

ヨウム「くそっ!」

 

翌日。

官邸前の広場で、ヨウムは一人立っていた。

夜通し考え続けた末、それでも信じるしかなかった。

もし彼女の言葉どおりなら、ミューランは死なない。

 

ヨウム「……来たか」

 

石畳の向こうから、セリオス(綾音)が現れる。

表情は変わらず、時間にも一分の狂いもない。

 

セリオス(綾音)「時間どおりね」

 

ヨウム「ミューランはどこだよ」

 

セリオス(綾音)「今、来るわ」

 

その直後、兵に伴われたミューランがヨウムの前に立った。

拘束はされているが、確かに生きている。

 

ヨウム「……お前、生きてたのか。よかった」

 

セリオス(綾音)「さてと」

 

セリオス(綾音)「ヨウム君も知っての通り、彼女には死んでもらう」

 

ヨウム「ふざけんな!」

 

ヨウム「俺の大切な家族なんだぞ!」

 

セリオス(綾音)「それは分かっているわ」

 

ヨウム「じゃあ、なんで殺すんだよ!」

 

セリオス(綾音)「彼女の罪は、国民の大量虐殺」

 

セリオス(綾音)「そして国家転覆を目論んだこと」

 

ヨウム「そんなの、知らなかっただろ!」

 

セリオス(綾音)「そうかもしれない」

 

セリオス(綾音)「でも彼女は、私利私欲のために多くの人を殺した」

 

ヨウム「それでも……ミューランは家族なんだよ!」

 

セリオス(綾音)「残念だけど、ヨウム君の気持ちだけではどうにもならない」

 

ヨウム「じゃあ他に方法があるだろ!」

 

ヨウム「何か、別のやり方が!」

 

セリオス(綾音)「例えば?」

 

ヨウム「ミューランを釈放するとか……!」

 

セリオス(綾音)「もう遅いわ」

 

ヨウム「頼む……助けてくれ!」

 

セリオス(綾音)「できない」

 

ヨウム「綾音さん……!」

 

セリオス(綾音)「ヨウム君」

 

セリオス(綾音)「さっきから、あなたの言葉は支離滅裂よ」

 

セリオス(綾音)「自分の感情だけを、一方的に押し付けている」

 

ヨウム「……え?」

 

セリオス(綾音)「私は人の意見を聞くのは好き」

 

セリオス(綾音)「でもね、人の命より重い感情なんて存在しない」

 

ヨウム「でも……!」

 

セリオス(綾音)「はっきり言うわ」

 

セリオス(綾音)「今のあなたは、ただのわがままで自分勝手な子供よ」

 

ヨウム「……っ」

 

セリオス(綾音)「ミューランは処刑する」

 

セリオス(綾音)「これは覆らない」

 

ヨウム「ちくしょう……!」

 

セリオス(綾音)「それに、これはあなただけの問題じゃない」

 

セリオス(綾音)「最後に、言いたいことはある?」

 

ヨウム「……ミューラン」

 

ヨウム「今まで、ありがとうな」

 

セリオス(綾音)「それでは、ミューランさん」

 

セリオス(綾音)「刑を執行します」

 

ヨウム「やめろー!!」

 

乾いた音と共に、麻酔弾が放たれた。

ミューランの身体から力が抜け、意識が途切れる。

その瞬間、セリオス(綾音)は手際よく埋め込まれていた人工心臓を摘出し、事前に用意していた新しい人工心臓へと即座に換装した。

動作に迷いは一切なかった。

 

セリオス(綾音)「……ごめんね、ヨウム」

 

ヨウム「……何だ」

 

ヨウム「そういうことだったのか」

 

セリオス(綾音)「ミューランさんの刑は、完了した」

 

ヨウム「綾音さん……」

 

セリオス(綾音)「あとは、ファルムス王国への清算ね」

 

セリオス(綾音)「ヨウム君には、これから頑張ってもらうことになる」

 

ヨウム「ああ……」

 

それから数時間後。

 

セリオス(綾音)「ふぁ……よく寝た」

 

カエデ「おはようございます」

 

セリオス(綾音)「おはよ」

 

カエデ「昨日も遅くまで起きていましたが、大丈夫ですか?」

 

セリオス(綾音)「ええ、大丈夫よ」

 

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