カエデ「……いいえ。本当に大丈夫ですか?」
執務室の朝は静かだった。
淡い光が差し込む中、セリオス(綾音)は椅子に腰掛けたまま、わずかに視線を伏せている。
セリオス(綾音)「はい。大丈夫ですよ。ただ、少し疲れているだけです」
カエデ「……それが一番心配です」
カエデは一歩近づき、声を落とす。
カエデ「綾音さんは、いつも限界まで頑張りすぎている気がします」
セリオス(綾音)「……そうかもしれませんね」
セリオス(綾音)「でも、私にはやるべきことがたくさんありますから」
その言葉には迷いはなかったが、わずかな疲労が滲んでいた。
カエデ「分かっています」
カエデ「ですが、ご自身の体を大切にしなければ、守れるものも守れません」
セリオス(綾音)「……そうですね」
セリオス(綾音)「今度からは、もう少し休む時間を作るようにします」
カエデ「それを聞いて安心しました」
カエデ「では、朝食を用意しますね」
セリオス(綾音)「ありがとう、カエデ」
セリオス(綾音)「君のおかげで、助かっていることが本当に多い」
カエデ「いえ。お世話になっている身ですから、当然のことです」
セリオス(綾音)「……私も、君のことを大切な仲間だと思っています」
一瞬、カエデの表情が柔らぐ。
カエデ「ありがとうございます、綾音さん」
カエデ「これからも、お互い支え合っていきましょう」
セリオス(綾音)「ええ。一緒に頑張ろう」
数時間後。
官邸の会議室には、張り詰めた空気が満ちていた。
セリオス(綾音)「これより、反転攻勢のための会議を始めます」
全員の視線が、一斉に彼女へ向けられる。
セリオス(綾音)「ファルムス王国への反転攻勢に先立ち、まず宣戦布告を行います」
セリオス(綾音)「衛星レーザーによる警告照射を実施」
セリオス(綾音)「同時に、上空からモニターを投下し、我々の存在と意思を示します」
カエデ「衛星レーザーによる照射と、モニター投下ですね」
カエデ「迅速に声明を出すことで、敵軍に強い動揺を与えられます」
セリオス(綾音)「その通りです」
セリオス(綾音)「敵が混乱している間に、侵攻中の部隊へ報復攻撃を行う」
セリオス(綾音)「こちらが主導権を握る、最初で最大の好機です」
カエデ「確かに、有効です」
カエデ「では、その後の戦術は?」
セリオス(綾音)「……私は条件を満たすことで、魔王になることができます」
会議室が静まり返る。
セリオス(綾音)「魔王の力を行使し、敵軍を圧倒する」
セリオス(綾音)「戦況は、一気にこちらへ傾くでしょう」
カエデ「魔王化……」
カエデ「それによる影響は?」
セリオス(綾音)「副産物として」
セリオス(綾音)「クデュックの国民として亡くなった者たちを、蘇生できます」
息を呑む気配が広がる。
セリオス(綾音)「民は希望を取り戻し、士気は最大まで高まる」
セリオス(綾音)「同時に、敵には絶望を与えることになる」
カエデ「……素晴らしい効果です」
カエデ「敵に致命的な打撃を与えながら、自軍を立て直せます」
セリオス(綾音)「ええ」
セリオス(綾音)「この計画を知った敵は、恐怖に震えるでしょう」
セリオス(綾音)「そして、降伏以外の選択肢を失う」
カエデ「敵軍の降伏が成立すれば、勝利は決定的ですね」
セリオス(綾音)「その通り」
セリオス(綾音)「では、細部を詰めましょう」
セリオス(綾音)「ファルムス王国への反転攻勢を成功させ、必ず勝利を掴む」
カエデ「はい」
カエデ「全力でサポートします」
カエデ「我々の絆と戦術で、必ず成し遂げましょう」