突然、執務室の扉が乱暴に開いた。
巨躯の男が、楽しげな笑みを浮かべて立っていた。
ヴェルドラ「我の封印を解いてくれてありがとな、リムル・テンペスト」
セリオス(綾音)「えっ、誰?」
ヴェルドラ「我が名はヴェルドラだ」
セリオス(綾音)「あー……あの時の」
セリオス(綾音)「封印、解けたんだ」
カエデ「大賢者がミカエル化した際、処理能力が二百五十六倍に上昇しました」
セリオス(綾音)「なにそれ、完全にチートじゃん」
セリオス(綾音)「じゃあ早速、ファルム王国の再建を頼もうかな。ヴェルドラに」
カエデ「えっ……まさか」
セリオス(綾音)「うん。ファルム王国、魔族国家に作り替えてもらおうと思って」
カエデ「本当に大丈夫なんですか?」
セリオス(綾音)「まあ、なんとかなるでしょ」
カエデ「……そうですね。綾音さんが言うなら」
それから数日後。
セリオス(綾音)は魔王会議、ワルプルギスへの招集を受けた。
セリオス(綾音)「はじめまして。クデュック国王、リムル・セリオスです」
ディアブロ「クフフフフ。これはこれはご丁寧に。私は魔王リムル様の忠実なる僕、悪魔公ディアブロ。以後お見知りおきを」
セリオス(綾音)「は、はぁ」
ベニマル「魔王リムル様配下、紅炎将軍ベニマルだ」
シュナ「魔王リムル様に仕える、巫女シュナです」
ソウエイ「影を司る忍者王、ソウエイ」
ハクロウ「剣聖ハクロウじゃ」
シオン「料理人兼親衛隊長、シオンです」
今回の戦争での功績により、彼らの肩書きは一段引き上げられていた。
その夜。
戦勝とヴェルドラ復活を祝う宴が盛大に開かれた。
街は笑いと音楽に満ちていたが、その裏で、綾音は休む間もなく書類に目を通していた。
ヴェルドラ「おーいリムル。起きろー。暇だぞー」
セリオス(綾音)「うるさいな。こっちは戦後処理で忙しいんだよ」
ヴェルドラ「ふむ。わかっておるが、少しくらい構ってくれてもよかろう?」
セリオス(綾音)「はいはい」
ヴェルドラ「で、何をしておった?」
セリオス(綾音)「同盟国への報告と、敵対国への対応会議」
セリオス(綾音)「戦争は終わっても仕事は終わらないの」
ヴェルドラ「大変そうだな」
セリオス(綾音)「まあね」
ヴェルドラ「我にできることはあるか?」
セリオス(綾音)「特にないけど……強いて言うなら大人しくしてて」
ヴェルドラ「なに!?我は暴れたいのだが!」
セリオス(綾音)「暴れるなら専用闘技場で。核爆弾級対応だから」
セリオス(綾音)「ミリムの通常攻撃くらいなら耐えるよ」
ヴェルドラ「本当か!!ならば必殺技の修行をするぞ!」
セリオス(綾音)「どんな?」
ヴェルドラ「お前がくれたアニメにあったのだ。かめはめ波とかいうやつだ!」
ヴェルドラは意気揚々と闘技場へ向かった。
その後しばらく、綾音は彼に付き合い、束の間の息抜きを得た。
数日後。
セリオス(綾音)「ミリムが魔王カリオンに宣戦布告?」
セリオス(綾音)「獣王国が消失して、避難民がこちらへ?」
セリオス(綾音)「あのバカ……何やってんの!」
セリオス(綾音)「『瞬間移動』」
荒れ果てた大地。
獣王国は瓦礫の山と化していた。
獣王「へへ……もうこの国に残ってる魔族は、あんたらだけだぜ」
ミリム「仕方ないのだ。今こそ真の力を見せる時なのだ」
セリオス(綾音)「バカ……一国消したって自覚ある?」
ミリム「また邪魔が入ったのだ」
セリオス(綾音)「逃げ足だけは早いんだから……」
セリオス(綾音)「カリオンさん」
カリオン「おお、久しぶりだな」
セリオス(綾音)「すみません。うちのバカが……」
カリオン「いや、こちらも対応が遅れた」
セリオス(綾音)「今は争ってる場合じゃないです」
カリオン「……ああ。無駄な犠牲は避けたい」
セリオス(綾音)「復興と仮住居はこちらで用意します」
カリオン「助かる」
カリオン「それにしても……ミリム、操られてるようだった」
セリオス(綾音)「まさか……」
獣王国壊滅の事実は伏せられ、復興が最優先された。
クデュックの技術で、再建は一ヶ月を見込んで進められた。
カリオン「俺は、ミリムに恨まれる覚えはねぇんだがな」
セリオス(綾音)「……ですよね」
カエデ「とりあえず、ご飯にしましょう」
食事を終え、静かな部屋で改めて話し合う。
カエデ「そもそも、なぜミリムさんはカリオンさんを?」
セリオス(綾音)「できるのは……クレイマンくらい」
カリオン「確かに、あいつならやりかねねぇ」
セリオス(綾音)「魔王会議で揺さぶってみる」
カエデ「クレイマン……私は苦手です」
セリオス(綾音)「カエデに嫌われるって相当よ」
カリオン「念のため、ルミナスにも話を通そう」
セリオス(綾音)「そうだね」
一方その頃。
クレイマン「くくく……上手くいっている」
クレイマン「ミリムの支配は、さらに盤石だ」
クレイマン「このまま魔王の頂点に立ってやる」
クレイマンは、暗闇の中で歪んだ笑みを浮かべていた。