それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅28 新たなる火種

 

 

カエデ「クデュックから方位三三七、距離百キロに武装したアンノウンを捕捉しました。

数は十です。」

 

セリオス(綾音)「警戒レベル三を発令。

第二種警戒態勢に移行。

各部隊、即応準備。」

 

カエデ「方位的に、神聖法皇国ルベリオスの進路と一致します。」

 

クデュック上空の監視網が静かに色を変え、街全体に緊張が走る。

 

こうして、新たなる戦いへのカウントダウンが始まった。

 

迎撃と接触の任を任されたのはベニマルだった。

 

東方平原。

 

風の匂いと、久しぶりの外気を胸いっぱいに吸い込む。

 

ベニマル「久々の外は、やっぱり良いものだな。」

 

武装した一団の前に、炎のような赤髪の男が悠然と立つ。

 

ベニマル「そこの騎士さんたち。

どこへ行くつもりなんだい?」

 

騎士1「貴様は何者だ!」

 

ベニマル「クデュックから、あんたらを警戒しろって言われて来た。

テンペスト幹部、ベニマルだ。」

 

騎士2「お前が……。

それで、我々に何の用だ?」

 

ベニマル「どうせ、俺たちが警戒してる通りのことをしに来たんだろ?」

 

騎士1「……その通りだ。」

 

ベニマルはため息をつき、肩をすくめる。

 

ベニマル「なら、ここは引いてくれないか。

正直に言うと、今の綾音様が何をするか、俺にも分からない。」

 

ベニマル「この世界のどんな国でも、一日あれば滅びる。

それがあんたの国でも、例外じゃない。」

 

騎士たちの間に動揺が走る。

 

騎士2「……わ、分かった。

ここは撤退する。」

 

神聖法皇国ルベリオスの聖騎士団は、恐怖と判断の末に引き返した。

 

警戒態勢は解除され、クデュックには再び平穏が戻る。

 

しかし、それで終わりではなかった。

 

シオン「綾音様に。」

 

差し出された一通の封書。

 

セリオス(綾音)「宛名は……ルミナス?」

 

セリオス(綾音)「本物?」

 

カエデ「筆跡をデータベースと照合しました。

本人のもので間違いありません。」

 

セリオス(綾音)「じゃあ、読んでみるか。」

 

手紙を開いた瞬間、空気が変わる。

 

この手紙をお主が読んでおるということは、聖騎士を追い払ったということで間違いなかろう。

あやつらには、クデュックと同盟を結べと命じておったのじゃ。

だが、お主の力を見誤ったようじゃな。

 

さて本題じゃ。

人間側は新たな魔王、いや荒神リムルの誕生に恐怖と疑念を向けておる。

最悪の場合、お主を神殺しとして連合を組み、全面衝突に至る可能性もある。

 

そこで、ワタシの聖騎士を代理人として再度使者を送る。

和平が結べれば、あとはワタシが何とかしよう。

 

怒っておるか?

まあそう怒るでない。

 

お主の国の軍事力は、この世界に比肩する者がおらぬ。

ギィであっても、お主の力なら無力化、最悪殺すことすら可能じゃろう。

 

だからこそ、正面衝突は愚策。

クデュックと我が国で同盟を結ぶのじゃ。

 

では、再会を楽しみにしておる。

 

ルミナスより。

 

カエデ「どうしますか?」

 

セリオス(綾音)「……とりあえず、使者の現在位置は?」

 

カエデ「全行程の三分の一地点です。」

 

セリオス(綾音)「戦闘用VTOLと、VIP護送用VTOLを用意して。」

 

カエデ「了解しました。」

 

セリオス(綾音)「全VTOL発進。

VIP機には護衛をつけて。」

 

数分後、VTOLは無事に着陸した。

 

カエデ「着陸完了しました。」

 

セリオス(綾音)「使者を案内して。」

 

クデュックVIP会議室。

 

ヒナタ「まずは、交渉の場を設けてくれたことに感謝するわ。」

 

セリオス(綾音)「こちらこそ。

武装したままでしたが、素直にVTOLに搭乗してくれて助かりました。」

 

ヒナタ「ええ。」

 

ヒナタ「私たちの目的は、ルミナス様の代理として、聖教会とクデュックの関係改善を探ることよ。」

 

セリオス(綾音)「なるほど。

ありがたい提案ですね。」

 

カエデは黙って二人の空気を読む。

 

ヒナタ「とはいえ、人間側はあなたを荒神として恐れている。

未知で、あまりにも圧倒的すぎるから。」

 

ヒナタ「もし私とあなたが戦えば、勝ち目はない。

そして、あなた自身も、それを望んでいない。」

 

セリオス(綾音)「……ええ。

私は平和が一番だと思っています。

争いは、できれば避けたい。」

 

セリオス(綾音)「条件は二つ。

聖教会が神殺し連合に加担しないことを明文化する。

クデュック住民への敵対行動を完全に停止する。」

 

セリオス(綾音)「これが守れないなら、同盟は結べません。」

 

ヒナタ「つまり、共通のルールを作りたいということね?」

 

カエデ「……そういうことになります。」

 

ヒナタ「分かりました。

詳細は日を改めて協議しましょう。

それまでは、聖教会からの攻撃行動は一切行いません。」

 

ヒナタ「今日はこれで失礼します。」

 

カエデ「VIP用VTOLへご案内します。」

 

その夜。

 

クデュックと聖教会の間で、正式な同盟に向けた手続きが進み、使者は無事に帰路についた。

 

世界は、静かに次の局面へと動き始めていた。

 

 

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