カエデ「クデュックから方位三三七、距離百キロに武装したアンノウンを捕捉しました。
数は十です。」
セリオス(綾音)「警戒レベル三を発令。
第二種警戒態勢に移行。
各部隊、即応準備。」
カエデ「方位的に、神聖法皇国ルベリオスの進路と一致します。」
クデュック上空の監視網が静かに色を変え、街全体に緊張が走る。
こうして、新たなる戦いへのカウントダウンが始まった。
迎撃と接触の任を任されたのはベニマルだった。
東方平原。
風の匂いと、久しぶりの外気を胸いっぱいに吸い込む。
ベニマル「久々の外は、やっぱり良いものだな。」
武装した一団の前に、炎のような赤髪の男が悠然と立つ。
ベニマル「そこの騎士さんたち。
どこへ行くつもりなんだい?」
騎士1「貴様は何者だ!」
ベニマル「クデュックから、あんたらを警戒しろって言われて来た。
テンペスト幹部、ベニマルだ。」
騎士2「お前が……。
それで、我々に何の用だ?」
ベニマル「どうせ、俺たちが警戒してる通りのことをしに来たんだろ?」
騎士1「……その通りだ。」
ベニマルはため息をつき、肩をすくめる。
ベニマル「なら、ここは引いてくれないか。
正直に言うと、今の綾音様が何をするか、俺にも分からない。」
ベニマル「この世界のどんな国でも、一日あれば滅びる。
それがあんたの国でも、例外じゃない。」
騎士たちの間に動揺が走る。
騎士2「……わ、分かった。
ここは撤退する。」
神聖法皇国ルベリオスの聖騎士団は、恐怖と判断の末に引き返した。
警戒態勢は解除され、クデュックには再び平穏が戻る。
しかし、それで終わりではなかった。
シオン「綾音様に。」
差し出された一通の封書。
セリオス(綾音)「宛名は……ルミナス?」
セリオス(綾音)「本物?」
カエデ「筆跡をデータベースと照合しました。
本人のもので間違いありません。」
セリオス(綾音)「じゃあ、読んでみるか。」
手紙を開いた瞬間、空気が変わる。
この手紙をお主が読んでおるということは、聖騎士を追い払ったということで間違いなかろう。
あやつらには、クデュックと同盟を結べと命じておったのじゃ。
だが、お主の力を見誤ったようじゃな。
さて本題じゃ。
人間側は新たな魔王、いや荒神リムルの誕生に恐怖と疑念を向けておる。
最悪の場合、お主を神殺しとして連合を組み、全面衝突に至る可能性もある。
そこで、ワタシの聖騎士を代理人として再度使者を送る。
和平が結べれば、あとはワタシが何とかしよう。
怒っておるか?
まあそう怒るでない。
お主の国の軍事力は、この世界に比肩する者がおらぬ。
ギィであっても、お主の力なら無力化、最悪殺すことすら可能じゃろう。
だからこそ、正面衝突は愚策。
クデュックと我が国で同盟を結ぶのじゃ。
では、再会を楽しみにしておる。
ルミナスより。
カエデ「どうしますか?」
セリオス(綾音)「……とりあえず、使者の現在位置は?」
カエデ「全行程の三分の一地点です。」
セリオス(綾音)「戦闘用VTOLと、VIP護送用VTOLを用意して。」
カエデ「了解しました。」
セリオス(綾音)「全VTOL発進。
VIP機には護衛をつけて。」
数分後、VTOLは無事に着陸した。
カエデ「着陸完了しました。」
セリオス(綾音)「使者を案内して。」
クデュックVIP会議室。
ヒナタ「まずは、交渉の場を設けてくれたことに感謝するわ。」
セリオス(綾音)「こちらこそ。
武装したままでしたが、素直にVTOLに搭乗してくれて助かりました。」
ヒナタ「ええ。」
ヒナタ「私たちの目的は、ルミナス様の代理として、聖教会とクデュックの関係改善を探ることよ。」
セリオス(綾音)「なるほど。
ありがたい提案ですね。」
カエデは黙って二人の空気を読む。
ヒナタ「とはいえ、人間側はあなたを荒神として恐れている。
未知で、あまりにも圧倒的すぎるから。」
ヒナタ「もし私とあなたが戦えば、勝ち目はない。
そして、あなた自身も、それを望んでいない。」
セリオス(綾音)「……ええ。
私は平和が一番だと思っています。
争いは、できれば避けたい。」
セリオス(綾音)「条件は二つ。
聖教会が神殺し連合に加担しないことを明文化する。
クデュック住民への敵対行動を完全に停止する。」
セリオス(綾音)「これが守れないなら、同盟は結べません。」
ヒナタ「つまり、共通のルールを作りたいということね?」
カエデ「……そういうことになります。」
ヒナタ「分かりました。
詳細は日を改めて協議しましょう。
それまでは、聖教会からの攻撃行動は一切行いません。」
ヒナタ「今日はこれで失礼します。」
カエデ「VIP用VTOLへご案内します。」
その夜。
クデュックと聖教会の間で、正式な同盟に向けた手続きが進み、使者は無事に帰路についた。
世界は、静かに次の局面へと動き始めていた。