それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅2 ドワルゴンの技術

ドワルゴン王国の正門前。

巨大な石造りの城壁の下に、長い入国待ちの列が伸びている。

鎧を着込んだドワーフ兵が目を光らせ、国境警備の厳しさが一目でわかる。

 

セリオス(綾音)「けっこう長い列ができてるね。国境警備、相当厳しいみたい」

ゴブタ「中に入っちまえば自由なんすけどね」

セリオス(綾音)「なるほど。外でふるいにかけてるわけか」

 

列の脇から、酒と鉄の匂いを纏った人間の男たちが近づいてくる。

視線は露骨で、敵意を隠す気もない。

 

チンピラ1「おいおいおい。魔物がこんなとこにいるぜぇ」

チンピラ2「今なら殺しても問題ねえんじゃね?」

 

ゴブタが一歩引き、歯を食いしばる。

セリオス(綾音)は動じず、静かに相手を見据えた。

 

セリオス(綾音)「あなたたち、教育が足りないみたいですね」

セリオス(綾音)「他者に宣戦布告するという行為の重みを、理解していない」

 

ゴブタ「前に来た時も、同じようなのにボコボコにされたっす」

 

セリオス(綾音)「凶器の所持を確認」

セリオス(綾音)「発言内容からして脅迫罪も成立」

セリオス(綾音)「騒ぎは起こしたくないから、手短にいくね」

 

ゴブタ「さすがリムル様っす」

 

セリオス(綾音)「麻酔弾、発射」

 

淡い光と共に放たれた弾が、男たちに命中する。

次の瞬間、チンピラたちは糸が切れたように倒れ込んだ。

 

だが、周囲がざわめく間もなく、武装したドワーフ兵が一斉に動く。

状況を確認するより早く、セリオス(綾音)たちは取り囲まれていた。

 

そして――。

 

石造りの牢屋。

重い鉄格子の向こうから、ドワーフの兵士が腕を組んで見下ろしている。

 

セリオス(綾音)「えーっと」

セリオス(綾音)「これ、薬事法違反とかで捕まった感じですか?」

 

ドワーフ1「いや、ただの事情聴取だ」

 

セリオス(綾音)「ならよかった」

 

ドワーフ1「証言に矛盾はなかった」

ドワーフ1「おそらく正当防衛だろうと判断された」

ドワーフ1「今回は――」

 

ドワーフ2「大変だぁ!」

ドワーフ2「鉱山にアマサウルスが出た!」

 

ドワーフ1「何だと。討伐隊は?」

 

ドワーフ2「もう向かいました!」

ドワーフ2「ですが、魔鉱石を掘るため深部に入っていたガルムたちが大けがを!」

 

ドワーフ1「回復薬はどうした!」

 

ドワーフ2「戦争準備で在庫が不足しています!」

 

セリオス(綾音)「負傷者の人数は?」

 

ドワーフ1「お前には関係な――」

 

言葉を遮るように、セリオス(綾音)は空間から樽を取り出し、床に並べた。

中には高純度のフルポーションが満たされている。

 

ドワーフ1「……十分すぎる」

ドワーフ1「しかもこれは……高純度品だと?」

 

ドワーフ1「助かった。本当にありがとう」

 

数時間後。

 

ドワーフ3「あんたが薬をくれたって聞いた」

ドワーフ3「助かったぜ」

 

セリオス(綾音)「そんなに貴重なものだったんですか?」

 

ドワーフ1「金貨十枚は下らん」

 

セリオス(綾音)「……すごいね」

 

ドワーフ4「腕がちぎれかけてた」

ドワーフ4「生きて帰れても仕事を失うところだった」

ドワーフ4「感謝する」

 

ドワーフ5「……うう……」

 

セリオス(綾音)は戸惑いながらも、その視線を受け止めた。

 

ドワーフ1「もちろん、釈放だ」

 

休憩所。

炉の熱と酒の香りが満ちる空間で、ドワーフ1が向かいに座る。

 

ドワーフ1「礼と言っちゃなんだが、俺にできることがあれば言ってくれ」

 

セリオス(綾音)「それなら、技術者が欲しいです」

 

ドワーフ1「なるほど」

ドワーフ1「なら、腕のいい鍛冶師を紹介しよう」

 

セリオス(綾音)「魔鉱石を使えば、最強装備や」

セリオス(綾音)「永久機関に近いものも作れそうだね」

 

その後、ドワルゴンの街を歩く。

蒸気機関、滑車、精巧な歯車。

石と鉄で組まれた都市は、力強く脈打っていた。

 

セリオス(綾音)「文明レベルは、産業革命後のイギリスくらいかな」

 

カエデ「ですが魔鉱石と魔法の応用で、現代に近い技術も散見されます」

 

セリオス(綾音)「抑止力として、高威力かつ追尾性のある兵器は欲しいね」

セリオス(綾音)「この世界、物理法則無視はできるけど」

セリオス(綾音)「通常兵器だと弓と剣が主流だし」

 

カエデ「そうですね」

カエデ「ただし、殺傷を目的としないものが望ましいかと」

カエデ「催眠弾やスタン系兵器が最適でしょう」

 

セリオス(綾音)は、静かに街を見上げた。

この国と、自分の国の未来を重ねながら。

 

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