それでも、誰も殺さないと決めた   作:最上 イズモ

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∅29親善?

 

 

自室。

 

静まり返った室内で、壁面モニターに流れる各国の情勢データを眺めながら、セリオス(綾音)は小さく息を吐いた。

 

セリオス(綾音)「さてと、なんで好戦的だった教会側が急に同盟を?」

 

カエデ「はい。おそらくですが、我が国の圧倒的な技術力。それを欲している可能性が高いかと」

 

セリオス(綾音)「なるほど、そっちの方か。」

 

力を恐れながらも、切り捨てるには惜しい。

人間側の判断としては、極めて合理的だ。

 

〜数週間後〜

 

神聖法皇国ルベリオス主導による小規模な茶会が開かれた。

場所は中立地帯に設けられた静謐な迎賓館。

 

セリオス(綾音)「本日はお招きいただき、ありがとうございます。」

 

ヒナタ「いえ……こちらこそ、ご足労感謝しますわ。」

 

ヒナタ「クデュックとルミナス様が手を組まれた以上、こちらもそれにあやからねばと思いましてね。」

 

柔らかな微笑み。

だが、その言葉の裏にある意図は容易に読めない。

 

セリオス(綾音)「……成る程。そういうことですか。」

 

一拍置いて、綾音は用意していた小箱を差し出した。

 

セリオス(綾音)「とりあえず、手土産を持ってきました。」

 

掌に収まるほどの黒い箱。

そこから伸びる細い線と、小さな耳当て。

 

ヒナタ「これは……?」

 

セリオス(綾音)「この線を耳につけると、オーケストラがすぐそばで演奏しているかのような音が聞こえます。」

 

ヒナタ「ありがとうございます……ですが、その箱には何が?」

 

セリオス(綾音)「電気魔法の応用です。」

 

ヒナタ「電気魔法……?」

 

セリオス(綾音)「簡単に言えば、魔法道具の一種ですね。」

 

セリオス(綾音)「この箱は『音の呪文』を扱います。」

 

セリオス(綾音)「ただし、通常の詠唱ではなく、電気信号という特殊なエネルギーで構成された呪文です。」

 

セリオス(綾音)「音の情報を持った電気信号が内部の魔法陣に流れ込み、空気を震わせます。」

 

セリオス(綾音)「中にはボイスコイルと磁石があり、互いに引き合い反発することで振動板を動かす。」

 

セリオス(綾音)「その振動が空気を揺らし、音波となって耳に届くわけです。」

 

淡々とした説明。

だが、ヒナタの目は次第に見開かれていく。

 

ヒナタ「……これは、すごいですね。」

 

セリオス(綾音)「この道具を、親善の証としてお贈りします。」

 

ヒナタ「ありがとうございます。」

 

セリオス(綾音)「今は一台で数百曲ほどですが、人工衛星という小さな月を大量に空へ打ち上げれば、数億曲を届けることも可能です。」

 

ヒナタ「想像もつかない技術ですわ。」

 

セリオス(綾音)「まあ、クデュックの科学技術は世界一ですから。」

 

ヒナタ「では、また近日中にお会いしましょう。」

 

穏やかな挨拶とともに、茶会は滞りなく終わった。

 

ーお茶会終了後ー

クデュックVIP会議室。

 

無人の会議室で、セリオス(綾音)は椅子に深く腰掛ける。

 

次の一手を考えながら、静かに天井を見上げた。

 

(さてと……どうするのが正解かな。)

 

 

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