自室。
静まり返った室内で、壁面モニターに流れる各国の情勢データを眺めながら、セリオス(綾音)は小さく息を吐いた。
セリオス(綾音)「さてと、なんで好戦的だった教会側が急に同盟を?」
カエデ「はい。おそらくですが、我が国の圧倒的な技術力。それを欲している可能性が高いかと」
セリオス(綾音)「なるほど、そっちの方か。」
力を恐れながらも、切り捨てるには惜しい。
人間側の判断としては、極めて合理的だ。
〜数週間後〜
神聖法皇国ルベリオス主導による小規模な茶会が開かれた。
場所は中立地帯に設けられた静謐な迎賓館。
セリオス(綾音)「本日はお招きいただき、ありがとうございます。」
ヒナタ「いえ……こちらこそ、ご足労感謝しますわ。」
ヒナタ「クデュックとルミナス様が手を組まれた以上、こちらもそれにあやからねばと思いましてね。」
柔らかな微笑み。
だが、その言葉の裏にある意図は容易に読めない。
セリオス(綾音)「……成る程。そういうことですか。」
一拍置いて、綾音は用意していた小箱を差し出した。
セリオス(綾音)「とりあえず、手土産を持ってきました。」
掌に収まるほどの黒い箱。
そこから伸びる細い線と、小さな耳当て。
ヒナタ「これは……?」
セリオス(綾音)「この線を耳につけると、オーケストラがすぐそばで演奏しているかのような音が聞こえます。」
ヒナタ「ありがとうございます……ですが、その箱には何が?」
セリオス(綾音)「電気魔法の応用です。」
ヒナタ「電気魔法……?」
セリオス(綾音)「簡単に言えば、魔法道具の一種ですね。」
セリオス(綾音)「この箱は『音の呪文』を扱います。」
セリオス(綾音)「ただし、通常の詠唱ではなく、電気信号という特殊なエネルギーで構成された呪文です。」
セリオス(綾音)「音の情報を持った電気信号が内部の魔法陣に流れ込み、空気を震わせます。」
セリオス(綾音)「中にはボイスコイルと磁石があり、互いに引き合い反発することで振動板を動かす。」
セリオス(綾音)「その振動が空気を揺らし、音波となって耳に届くわけです。」
淡々とした説明。
だが、ヒナタの目は次第に見開かれていく。
ヒナタ「……これは、すごいですね。」
セリオス(綾音)「この道具を、親善の証としてお贈りします。」
ヒナタ「ありがとうございます。」
セリオス(綾音)「今は一台で数百曲ほどですが、人工衛星という小さな月を大量に空へ打ち上げれば、数億曲を届けることも可能です。」
ヒナタ「想像もつかない技術ですわ。」
セリオス(綾音)「まあ、クデュックの科学技術は世界一ですから。」
ヒナタ「では、また近日中にお会いしましょう。」
穏やかな挨拶とともに、茶会は滞りなく終わった。
ーお茶会終了後ー
クデュックVIP会議室。
無人の会議室で、セリオス(綾音)は椅子に深く腰掛ける。
次の一手を考えながら、静かに天井を見上げた。
(さてと……どうするのが正解かな。)