セリオス(綾音)「シズさんが……シズさんが……」
声にならない嗚咽が漏れ、綾音はその場に崩れ落ちた。
胸の奥が締め付けられ、涙が止まらない。
守れると思っていた。
救えると信じていた。
ガバル「……逝っちまったのか」
重い沈黙が流れる。
ギド「本当に、綾音さんなんでやんすか……」
リグルド「間違いありません。綾音様です」
エレン「……シズさんを、食べたの?
イフリートみたいに……」
セリオス(綾音)「違う……」
セリオス(綾音)「私は、治してあげるつもりだった。回復薬も、他の方法も……」
セリオス(綾音)「でも……シズさんが、そう望んだの。最後は、私の中で眠りたいって」
セリオス(綾音)「だから……あれは葬送だった」
セリオス(綾音)「でも……みんなに相談できなかった。
それは、本当にごめんなさい」
ガバル「……シズさん自身が望んだなら、仕方ねえ」
セリオス(綾音)「ごめんね、エレン。
簡単に割り切れないよね」
エレン「……ううん」
エレン「ただ……最後に、お別れの言葉を言いたかったなって」
セリオス(綾音)「……うん」
セリオス(綾音)「危なっかしいところもあったけど……」
セリオス(綾音)「みんなとの旅、楽しかったみたいだよ」
ガバル「……危なっかしいのは、確かだな」
その一言をきっかけに、いつもの口げんかが始まる。
泣きながら、怒りながら、笑いながら。
それは、彼女を失った現実を受け止めるための、不器用な時間だった。
翌朝。
旅立ちの準備が整い、村の入口に全員が集まる。
ガバル「そろそろ、おいとまするよ」
セリオス(綾音)「そっか。
また近くに来たら、寄ってね」
ギド「そうでやんすな。
それでは、また」
ガバル「……最後に、一つお願いがあるんだけど」
セリオス(綾音)「なに?」
ガバル「もう一度、人の姿になってほしい」
セリオス(綾音)「……分かった」
綾音の身体が変形し、人型へと姿を変える。
旅人全員「シズさん、お世話になりました」
ガバル「俺……あんたに心配されないような、リーダーになります」
ギド「あなたと冒険できたこと、一生の宝でやんす」
エレン「……ありがとう」
エレンは堪えきれず、綾音に抱きついた。
エレン「お姉ちゃんみたいだって……思ってました」
そのまま声を上げて泣き出す。
セリオス(綾音)「……うん」
胸に抱く温もりを感じながら、静かに思う。
よかったね、シズさん。
セリオス(綾音)「そうだ。せっかくだし、装備を新調していかない?」
全員に装備品が手渡される。
ガバル「うわ……憧れのスケールメイルじゃねえか!」
ギド「こ、こんな……あっしにはもったいない代物でやんす。
しかも牙狼の毛皮まで使われてる……」
エレン「このローブ……軽いのに、すごく丈夫。
それに、綺麗……」
セリオス(綾音)「うちの職人たちの力作だからね」
セリオス(綾音)「でも、まだまだ進化するよ」
セリオス(綾音)「ほら、この装備を作った人たち」
セリオス(綾音)「おーい」
カイジン「へっへっへ。力作っつっても、まだ試作品だがな」
ドルド「着心地はどうだい?」
ガルム「細工は流々ってやつよ」
ミルド「うんうん」
セリオス(綾音)「カイジン。それから、ガルム、ミルド、ドルド」
ガバル「カイジン!?あのカイジンかよ!!」
エレン「腕利きで超有名な……!」
ガバル「それに、ガルム、ミルド、ドルドって……伝説のドワーフ三兄弟じゃねえか!」
ガバル「家宝にします!
本当にありがとうございます!!」
エレン「うれしいです……!」
ギド「夢みたいでやんす……」
セリオス(綾音)「……すごいな」
カイジンたちの仕事を見て、改めてそう思う。
その後、ガバル一行は元の国へと帰っていった。
しばらくして、村の外れに小さな墓が建てられる。
そこに、シズの名が刻まれた。
セリオス(綾音)「……待っててね、シズさん」
セリオス(綾音)「必ず、レオン・クロムウェルに……あなたの遺志、伝えてみせるから」