魔盾の魔法使い   作:匿名希望

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#1 紅き翼

 

 

 いつの間にか紅き翼の一員になってからはや数日。俺はと言うと、コイツらとめちゃくちゃ馴染んでた。

 

 戦場で何度もやり合ってたし、顔馴染みっちゃ顔馴染みだったけどもまるで昔からの友人とでも言わんばかりに居心地が良い。

 

 一人で生き抜いて来た俺にとって集団生活ってのがあまり慣れない物だったのに、冗談に笑ったりナギやアルにツッコミを入れたりと、戦時中だってのに俺自身信じられないくらい気楽だ。

 

 今も魔法に関して博識なアルとゼクトに講義を受けている。ナギの奴は同い年のくせにあのバグキャラだから話半分に聞いてるが、俺にとって術式の構築能力は生命線と断言出来る物だからお粗末には出来ないからね。

 

 俺の障壁は大別すると大きく四種。衝突時に敢えて破壊させる事で威力を殺す物・威力を殺した際に発生する余波や被害を受け止める物・気と魔力の反発し合う性質を利用した魔法を反射する気の障壁・その反対で気の攻撃を反射する魔力の障壁。

 

 この四つに絞りながら、その状況に合わせて術式を再構築して最適化した障壁を展開するのが俺の戦術。魔力や気の量が一般的な魔法使いと同じ量しか無い人間が戦場で生き残ろうとして生み出した技だからか、確かに硬さは随一なんだけど、致命的な欠点として持久力と耐久力が皆無だ。

 

 一部以外は魔力消費軽減と展開速度を徹底して重要視し、他を削ぎ落とした結果だから仕方ないと思ってたんだけど、こうして二人の講義を聞いてると勉強になる。

 

 

「おーい、できたぞー」

 

 

 メモ帳に二人から教わった新しい術式を書いていると、食事が出来たのか詠春が鍋を持っているのが見えた。確か旧世界の極東に伝わる鍋料理とかなんとか言ってたよな?

 

 ポトフみたいなもんかと思い、野菜やら肉やらを纏めて鍋に突っ込もうとしたら詠春に拳骨を食らった。

 

 

 「バカっ、肉と野菜を適当に突っ込むな!! 火の通る時間差って物がだなぁ!!」

 

 「いいじゃねぇかよ、旨いもんから先でよ。ほらほら」

 

 

 そう言いながらナギが次々と肉を入れていく、なんならゼクトもこっそりとトカゲ肉を鍋に忍ばせている。てかちょっと待てやゼクト。

 

 そんな風に騒いでいると、静かに鍋をつついていたアルが訳知り顔で呟いた。

 

 

 「フフ……詠春。知っていますよ、日本では貴方の様な者を『鍋将軍』と呼び習わすそうですね」

 

 「ナベ・ショーグン……だって!?」

 

 「つ、つよそうじゃな」

 

 

 俺たちはその響きに戦慄し、その後の鍋の指揮を詠春に任せる事になった。あのナギですら素直に敗北を認めるほどの称号だ。妙な緊張感と共に食事をする事になったが、なんだかんだで料理が美味しい事も重なってワイワイと食べる事になった。

 

 

 「しっかし、この鍋って奴は姫子ちゃんにも食わせてやりたいくらいの旨さだな」

 

 「あーオスティアの姫御子の事? 俺は帝国側で傭兵してたから直接の面識ないんだけど、良い子なのか?」

 

 「まぁ、な」

 

 

 含みのあるナギの言い方に、俺はある種戦場の負の一面を感じ、それ以上話題を広げる事なく相槌に止めるだけにした。

 

 一番下の武人には政治は分からないし、その中で行われる非道を正す事も出来ない。ナギですらそれが出来ないのなら、守ることしか能の無い俺には何も言えない。

 

 そんな雰囲気を払拭するかの如く、アルは『戦が終われば彼女を自由にする機会も得られるかもしれない』とフォローをしている。普通なら一集団ができる様な話じゃ無いだろうに、紅き翼なら出来そうで困る。

 

 

 「その戦だが……如何にも不自然に思えてならん」

 

 

 詠春がキノコを口に運びながら、この大分裂戦争に対する違和感を口にしようとした瞬間だった。少し離れた所から何かが投擲された気配を感じ、障壁を展開する。

 

 恐らくは帝国側からの刺客だろう、紅き翼に参加してからはもう慣れてしまったので、特に意識を向けずに弾こうとしたんだけど、ナギの雷の暴風レベルでもなけりゃ突破出来ない障壁を軽々ブチ抜かれてしまった。うそん。

 

 そして飛来物は俺たちの真ん中にある鍋を弾き飛ばす。

 

 障壁が粉砕された事に一瞬驚いたのが致命的な隙となったのか、俺は宙を舞う具材から器用に箸を使って肉を奪う仲間達に反応が出来なかった。お陰で俺の皿には野菜しか無い。

 

 

 「お前ら……襲撃担当がガードミスったんだから少しくらいフォローしてくれたっていいじゃん。肉残せよ肉」

 

 「逆に聞くけどよ、俺が迎撃ミスったらお前肉残したのかよ?」

 

 「鳥頭のナギ君の知能指数を上げるお手伝いの為にそんな事はしません」

 

 「あっはっはっ、ぶん殴るぞ?」

 

 「やれるもんならやってみな?」

 

 などと軽口の応酬をしながら野菜を食ってると、鍋をひっくり返された事にキレた詠春が斬りかかっていった。

 

 ––––瞬動で一気に距離を詰めた瞬間には襲撃者の持つ大剣が断たれている。親父も剣士だったから護身程度には剣術習ってるけど、何が起きたのか付け焼き刃の剣術じゃ全然わかんねーわ。戦場なら殺気とか気配を察知して対応出来るんだけどね。

 

 そんな風に眺めてると詠春の猛攻を余裕で捌いている襲撃者がジャック・ラカンである事に気が付いた、お色気目的の精霊達に詠春がやられてしまった。このむっつりめ。

 

 ただ、詠春とやり合ってるジャック・ラカンを見て闘志に火が付いたのか、『てめぇら、手ェ出すなよ』とか言ってナギが突っ込んで行った。

 

 やる気満々な辺り、周りの地形とかお構い無しなんだろうなぁと察した俺は、環境保護の観点から二人の戦闘の余波が周りを壊さない様に障壁を展開して行く。性質的に秒で壊れるから連続で貼り直さなきゃいけないから飯食えねぇ。

 

 

 「いやぁしかし何度見ても芸が細かいですねぇ、地形だけを守る様に障壁を貼るなんて」

 

 「うむ、ワシも長く生きておるがお前ほど魔法障壁に通じた魔法使いは見た事がない」

 

 「まぁ俺は剣士としても魔法使いとしても三流だからなぁ、戦闘能力が格段に低いから割り切って特化しないと生き残れないんだよ」

 

 

 だからこその防御特化。障壁の持久力・強度を犠牲にしてでも手に入れた連続展開能力と、それによる多重障壁による防御策。欠点が存在する事を理解しながらも可能な限り最速で障壁を展開する事で生き残っている。

 

 まぁ、その分攻撃力が全く無いのが困るんだけどね。

 

 特に紅き翼に入ってからはその非力さを痛感する。俺の戦法は基本的に障壁で威力を削いで反射系の障壁を使って相手へ魔法やら気やらを弾き返す物で、自力で仕掛けるのは三流剣術しか無いから却って返り討ちに合う。障壁無視できる詠春が天敵な理由もそれだ、単純に防御一辺倒になって反撃出来ない。

 

 と、そんな風に肩を落としてると向こうが本格的にノって来たのか、環境保護用に貼ってる障壁の破壊スピードが尋常じゃなくなってきた。と言うか無理。何あいつら人間?突然変異のバケモンじゃねーの?

 

 

「だぁぁぁあ!! もう知るかッ!! 好きに環境破壊してやがれッ!!」

 

「まぁ持った方じゃないですか? あの様子ですとまだ激しくなりそうですし」

 

「バカはバカ同士気が合うんじゃろ、付き合うだけ疲れるだけじゃ」

 

 

 

 叫び声と共に余計なお世話を止めた俺は呆れ混じりにそう話す二人にまた授業をして貰えないかなと思ったんだけど、戦闘の余波が煩くてそれどころじゃ無い。

 

 んで、終わるまで待つかぁとか呑気に構えて詠春に近接戦習ってたら戦闘が終わるまでに13時間経ってた。

 

 ナギはジャック・ラカンが気に入ったのか、そのまま再戦の約束をしている。俺とやり合ってた時見たいに生き生きとした笑顔で啖呵を切ながら。

 

 我らのリーダーに呆れながら、俺たちも追撃はせずにその場を去る。ナギに小言を言うゼクトと、それを見て笑うアル、歩けないナギを背負う詠春。仲間の隊列からほんの少しだけ離れて、俺は後ろを振り返って自分の足であるくジャック・ラカンを見る。

 

 

 「…………アイツも紅き翼に入りそうだなぁ」

 

 

 理由は無いけど、何故か確信があった。俺と同じ様に、敵として出会っても尚、人を惹きつけるナギをきっと奴は気にいるだろう、と。

 

 

 「おーい、何やってんだー!! 置いてくぜー!!」

 

 

 ボロボロで詠春に背負われてる癖に手を振りながらそう叫ぶ我らがリーダー。いつの間にか、と言ってもいいくらい自然に紅き翼に加入したのは、アイツのカリスマに惹かれたんだろうなぁ。

 

 

 「おー。今行くー!!」

 

 

 ––––俺は防御特化で良かった。ナギを、紅き翼を守る盾になれるんだから。

 

 無意識のうちに口元が緩みながら、俺は仲間達の後を追うのだった。

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