魔盾の魔法使い 作:匿名希望
––––休暇を利用した独自内偵は順調に進んではいる。
『完全なる世界』の構成組織だと思われるマフィアや武器商人を調べながらそれらしいモノへ目星を付け、ある程度纏ったら本格的に絞っていくと言う地道な捜査活動で面白味がないが、かと言って手を抜く訳にも行かない。
金の流れや人の出入りは勿論、取引先や関係組織の洗い出しを徹底しなければ尻尾が掴めない上に、本格的に調査をし始めた途端、面白いくらいすんなり白だと判定される組織も出てくる。そいつらを徹底して洗うと確固たる証拠こそ手に入らないが、状況証拠的にほぼ当たりに違いないと判定できる者も多い。
コレは他のメンツとも相談して出た結論であり、他の黒だとあからさまに出る情報は明確な流れや関係性が見えるが、早々に白判定で弾かれた者達には奇妙なくらいそれらとの関連性が見えない。平時ならそれで良かったろうが、今は戦時下であり、清濁混在する情勢であるほど
「…………と、言うところまでは分かったんだけどなぁ」
公園のベンチに座りながら屋台で買った軽食をもそもそも口に運びながら肩を落とす。
国政に食い込んでいる以上頭を叩かなきゃ意味が無い。だから俺は末端組織だけじゃなく、名義だけの幽霊組織も徹底して洗い出しながら徹夜で繋がりを手繰って行き、漸く『関連疑惑』と言う部分まで漕ぎつけた相手が居る。
それが現在任期中のMM
かなりの大物であり、確証が無い状況で突けば俺達が逆賊として指名手配されかねない。内偵調査は慎重にしなければならないが、徹底した情報秘匿がされている以上小さな証拠一つ手に入れるだけでも一苦労だ。
今もこうして目星を付けた組織の拠点へ張り込みを行なって監視を続けている。出入りの人間の顔と数は一応抑えてるけど、魔法使われたらあまり意味が無い。直接侵入して証拠探しをする手もあったけど、空振りだった場合のリスクが大き過ぎる。
今日で3日目であり、あまり進展が無いからこうして公園でメシ食ってるんだけど、ガトウの方は奴等の行動の真意に迫るファイルを見つけたらしいし、一旦情報共有に戻った方が良いかな?
埒があかない調査に何度目か分からない溜め息を吐いていると、視界の端に見知った顔を見た。
どうやら我らがリーダー様は姫殿下を連れてお忍びデートに洒落込んでいる様子、あの野郎後で覚えとけ? ある事無いことラカンに吹き込んでおちょくってやるからな。
––––––そう、
咄嗟に障壁を展開して威力を抑えつつ爆発系の魔法だった為、爆風が民間人に被害を出さない様に衝撃波そのものを上空へ反射するがなにせ真昼間の公園。昼休みに食事をしに来た人や、子連れの親子が多すぎて反射だけでは細かい破片による被害をカバー出来ない。
仕方ないけど……やるしか無い!!
ざっと見ただけで爆破範囲内には約二十人から三十人の民間人が居る。それだけの人間を守る障壁を個々人に展開すれば俺が内偵している事が完全に割れてしまうが、人命には変えられない。
そう判断し、俺は民間人の前へ壁になる様に障壁を展開すると同時にデート中の二人へ瞬動を使って移動する。
「お二人さん大丈夫か!?」
「キュアヌスか!! サンキュー助かったぜ!! けどこんな街中でデカイ魔法使いやがって!!」
「やはり今のは……」
「奴等の刺客、だろうね。ナギか殿下のどっちを狙ったのかは分からないけど」
こうなったら却って好都合かもしれない。今の行動で俺の存在が割れた以上、尻尾を出した奴等を逃す手は無いだろう。ナギもやる気満々で追跡魔法掛けておいたらしく、乗り込む気だ。
「つー訳で、姫さんは皆のトコ帰ってろ。俺達は奴等の本拠地をぶっ潰し––––」
「––––私も行こう」
そう言ってナギの裾を引くアリカ王女。肝が座ってるとは思ってたけど、まさかの武闘派でしたか。
「あーっと、姫殿下? 不敬かも知れませんが戦えるんです?」
「少なくとも帯刀していない人間よりは戦えるぞ?」
そう言って真っ直ぐに俺を見る姫殿下。言葉に棘はあるけども表情は真面目なので事実なんだろう、捜査の為に変装してるから剣術が使えない俺よりは確かに戦えるかも。
「そもそも、ここに私を一人残しておく方が危険だと分からぬか愚か者。それに私の魔法は役に立つぞ? 忘れたか鳥頭」
「…………ハッ!! いいぜ姫さん、ついてきな!!」
「コイツら、独り身の前でイチャイチャしやがって。俺もファンクラブとか可愛い彼女が欲しいんですけど!?」
「うるさいぞシールドマスター。その様な真似はしておらん」
「
俺千種類も障壁展開出来ねぇってのに……なんでこう一人歩きするのかなぁ。
苦笑いもそこそこにナギの追尾魔法の反応を追いながら街中を走る俺達。民家の壁や屋根を足場にしながら転々としつつ、久々の戦いだからかウキウキしているナギと、同じくどこかやる気に満ちてる姫殿下。後ろから見てるとマジでお似合い、はぁ羨ましい。
「てかキュアヌス。俺止めなくていいのかよ? お前内偵組だろ?」
そう言いながら、当たり前の様に目の前で剣を構えながら待ち伏せをしていた男を裏拳で殴り飛ばすナギ。その問いに対し、俺は左右から放たれる魔法の矢を反射しながら答えを返す。
「確かに止めるべきだろうけどね。直接ナギと姫殿下を狙ったって事は
俺が答えを返すと同時に進行方向にいた魔法使いからまたもデカイ魔法が放たれる。真正面から打ち出されたのは雷の暴風であり、周囲への被害を考えると無思慮に反射は出来ない。
ただし詠唱自体は聞こえていた為、とっておきの切り札が使用できる。俺は迎え撃つ様に新作の障壁を展開し受け止めると同時に雷の暴風をその場から
その光景を見て目を見開く姫殿下と襲撃者。ナギも驚いてたが、口笛を吹きながら感心して放心状態の襲撃者を殴り倒している。こりゃ誤解される前にざっくり説明しなきゃいけないな?
「
「全然違います姫殿下。原理の説明は時間無いから省きますけど、旧世界の陰陽道から五行思想ってのを取り入れて作った障壁で––––ぶっちゃけると対の属性で相剋現象引き起こして無害化してるだけ」
詠春から教わった五行思想を術式に組み込んで作った対魔法への最凶障壁。絶対誤解されるから道中で二人に説明をすると、ざっくり言えば西洋魔法の属性を東洋の五行の属性に無理矢理当て嵌めて五行相剋を発生させる物だ。
正直この世界でこの障壁が普及したら絶対魔法使いが食い扶持無くすから他人には教えられない代物であり、使い方を変えれば味方の放つ魔法の威力を増幅させられる。
「んじゃあなんでさっきの公園で使わなかったんだよ? そうすりゃあお前も楽だったんじゃねーのか?」
「術式がクッッッッッソ複雑でさ。正直作った俺もこれのどこがどう作用して効果を発揮してんのかマジで分からんのと、性質的に相手がぶっ放す魔法が分からなきゃ無効化出来ないんだよ。だから無詠唱で発動させたとしても見てからの反応になるから対処が後手になるから詠唱か術式が見えてるんならともかく、不意打ちには基本対処出来ないんだよ」
「それを差し引いても恐ろしい盾だな、魔法使い殺しと言ってもいい。なるほど、主も紅き翼の一員である以上最強の一角だったか、認識を改めよう」
「お褒めに預かり光栄です。まぁ正直コレ使うよりは普通の障壁の方が早いし燃費が十倍以上良いし、応用効くしであんまり使いたく無い部類なんですけどね」
効率化はしているとは言え、さっきも言った通り作った俺にすらどう言う原理で動いてるのか完全に理解出来ない障壁だ。つまるところ燃費が悪く、魔力量が並の俺だと一日に数えるぐらいにしか展開できない上にそもそもの原理としての相剋現象をどうやって引き起こしてるのかが全く分からん。
後は周りに耳がある以上言わなかった弱点として、あくまで障壁である以上、障壁突破能力を持つ魔法は止められないのも欠点か。
これらの欠点を改善したくても手の入れようがないし、手を入れてコレが普及したら俺は全世界の魔法使いから殺されるだろうから改善する訳にも行かない。
悲しい事実に思わず涙しながらも、本拠地まで辿り着いた俺達はそのまま敵陣に斬り込むのだった。