魔盾の魔法使い 作:匿名希望
––––敵の追跡と共にその本拠点に乗り込んだ俺はナギと姫殿下のサポートに徹しながらひたすら証拠集めを行ってた。
威力偵察となった以上、証拠を隠滅される前に確保しなくてはならず、是が非でも実になる情報を入手しなければならなかったが、正直言って二人の制圧力が凄まじ過ぎて戦闘自体は直ぐに終わってしまい、必要な証拠集めを終える方が時間が掛かるとは思わなかった。つか、なんなら俺要らなかったよ。
しかしお陰で決定的な証拠を発見した。それは要調査対象となっていた執政官とこの組織との繋がりを示す手紙と、その関連書類。
ざっと目を通しただけで俺たちが目を付けていた組織や、要調査対象との繋がりが薄らと感じられる。流石に流し読みだけでは情報精査までは難しいけど、ガトウに渡せば数日で裏を取る事は可能だろう。
ナギの運命力が引き寄せたのかと思うほど今の俺たちが必要としていた物であり、思わずナギとハイタッチしてしまった。
とりあえずは戦争を終わらせる事が出来る鍵を手に入れた為、騒ぎを聞いて駆けつけて来た警察からの事情聴取を終えて帰ってきたんだけど、姫殿下は一昼夜暴れ回って機嫌が良かったのか、廊下ですれ違ったゼクトとタカミチ君に笑いかけている。
その光景をガトウへの報告帰りに見た俺はきっと悪くない。てかあんだけ暴れたら鉄面皮も剥がれるわな。
んな事を思いつつも、俺は大量に手に入れた情報を整理する為に破壊担当以外の面子と共に情報精査をしようとしたんだけど、ナギや姫殿下狙いの大魔法がポンポン飛んでくるから周りの被害を抑える為に頑張り過ぎたのか、数時間もしない内に疲労感からの眠気に襲われて頭が回らない。
何度も船を漕いでいた俺の様子を見かねたのか、ガトウから『情報の内容次第ではマクギル議員との面会で証人としてナギと共に会ってもらう事になるから寝ておけ』と言われ一足先に寝させて貰い、マクギル議員との面会に体調を整える事になった。
–––––そして仮眠を取らせて貰った後、体調が万全な事を確認してからナギ・ラカン・ガトウと一緒にマクギル議員の元へと向かう事となった。
姫殿下は俺が寝ている間に帝国の第三皇女と接触しに行ったらしく面子には居ない。
正直同中にもう一度仕掛けてくるかとも考えたけど、不思議と妨害も追跡も無く、その順調さに言いようの無い胸騒ぎを感じるのは何故だろうか?
思わず発動媒体の指輪を付けた手を握るが、胸騒ぎを疑問として口に出そうとする前にマクギル議員の待つ部屋へと到着する。
中へと入り、ガトウが窓際に立つ議員に向かって声を掛けたんだけど……様子がおかしい。
––––
「マクギル元老院議員」
「御苦労、証拠品はオリジナルだろうね?」
「ハッ……
「……法務官は来られぬ事となった」
その言葉に疑問を抱くガトウ。それは俺も同感であり、何故今更こんな事を言い出すのだろうか?
仮眠によって回復した思考が思わず回る。マクギル議員は張り詰めた……いや、ナイフの様に鋭い緊張感を出す様な人だったか? いや、そんな人じゃ無かった筈。
ガトウの影に隠れながら議員の言葉を聞き流しつつもそのように考え、胸騒ぎが焦燥感に変化した瞬間––––ナギがいきなり議員へ魔法を放った。
会話の流れに意識を割いていなかった為、思わず驚いてしまったが、それが却って良かったのかナギに声を掛けようとする前に複数人の気配を感じ、臨戦体制を取る。
「ちょっ!? ナギおまっ……何やってんだよッ!? 元老院議員の頭いきなり燃やしておまっ!?」
「バーカ、よく見てみなおっさん」
ガトウの困惑を制する様にナギが鋭い口調でそう言い放ち、目の前の男を睨む。
「––––よく分かったね、千の呪文の男。こんなに簡単に見破られるとは、もう少し研究が必要なようだ」
そう言って爆炎の中から一人の少年が姿を現す。
白髪の無表情に近い同年代に見える男、一見無防備に見えるが少なくとも俺じゃ不意を突いたとしても一太刀入れられるか怪しいほど隙がない。……月並みな言葉だけどただ者じゃない。
「本物のマクギル元老院議員は残念ながら、既にメガロ湾の底だよ」
安い挑発だが、直情家のナギを激昂させるには充分な言葉であり、その挑発に乗って殴りかかりに行ってしまった。
しかしその特攻は炎と水を操る男に止められる。俺はナギの援護をしたかったが、目的が俺らじゃなく
幸い政治家では無く生身の戦闘の方がやり易いと張り切るラカンと、居合い拳の達人であるガトウが前衛を貼ってくれている、やるしかない!!
「イス・アス・アイギス・イージス!!
障壁構築へ特化した弊害で初歩的な呪文である魔法の射手すら無詠唱で使えない自分に焦りながらも、彼が変声魔法を使用する寸前で呪文を唱え終わり、11本の光の矢を撃ち込もうとした。
しかしその瞬間、部屋の窓を突き破って大量の水が流れ込み、俺の光弾を飲み込んで行く。鼻を突くような潮の匂いから察するに、メガロ湾の海水だろう。そして、盛大にぶち開けた風穴からまた新手が侵入してくる。
「––––––
「水も滴る良い女……って言うには無表情過ぎない? もう少し表情柔らかくしていこうぜ?」
思わずそんな軽口が口を突いて出てしまう。海水を浴びたのか多少身体が濡れている彼女はマクギル元老院議員に変装していた男に何処か似ている上に、彼と同じように膨大な魔力量による
ただし体捌き的には彼よりはどうにかなる感じはするけど……問題は相性が悪いって事だ。
俺自身が障壁を自分に合わせた形に最適化し、状況に応じて特化した盾を作り出す事でこの防御力を維持している。それが魔力量の足りない俺の生きる術だったけど、その反面
何故なら障壁で一方向のみを防いだとしても、水流操作を行われれば障壁を起点に二つに裂けた流体に挟み討ちにされる。かと言って全方位を囲ったとしても、人間一人丸呑みに出来る水量を操る術者との魔力量勝負になってジリ貧になり、最終的に押し潰されるのがオチだ。
「……抵抗は無意味です、千の盾を極めた男。貴方では私に勝てません。大人しく死になさい」
「ハッ!! 生憎、俺の人生のスケジュールは埋まっててね!! 美人の嫁さん貰って孫に囲まれて大往生するって決めてんだよ!!」
そう言って紅蓮を抜き放ちながらセクストゥムと名乗った少女へと斬りかかる。瞬動の入りに合わせ、足元に反射障壁を展開する事でその反発を利用した加速を斬撃に乗せて放ったが、水流操作によって作った水の壁により阻まれ、まんまと反逆者として通報されてしまう。
そして目の前の水壁が形を変えて大量の鞭となって俺に襲い掛かる。相剋障壁を使いたいが、あくまでも海水は実体を持つ液体、本職ならいざ知らず、聞き齧った原理だけを利用しているあの障壁じゃ到底捌けないだろう。
自分の周囲に反射障壁を大量展開しながら、それを足場に空中機動を行い、水流操作の隙間を縫って背後に周り、首筋を一閃する。
しかし、俺の放った一撃は曼陀羅の障壁によって阻まれ、首を落とすどころか皮一枚斬る事が出来ない。…………やっぱ詠春の奴ずりぃ。
––––けど、だ。一太刀実際に振った事で一つだけ分かった。この女、俺の動きを
「っ!? 私の背後を!?」
「おいおい、俺程度の動きを見切れないってのは良く無いぜ
「こ、のッ!!」
挑発に乗った彼女は無表情ながらも若干の苛立ち混じりに俺の周囲に水の箱を形成し、その内に閉じ込めてようとするが、その程度じゃ相性不利は簡単に覆せる。
四方を囲うように障壁を展開し、水の檻の中で一定の空間を作り出しながら瞬間的に術式へ別の術式を加え直して気と魔力を同時に流し込む。
そして、その反発を起爆剤替わりにしつつ爆発によって水流を派手に吹き飛ばすと同時に瞬動で間合いを詰め、刀へ気を込めて一気に斬り裂く。
「虎影斬!!」
虎の様に俊敏且つ鋭い一撃を放つこの技は単純な剛剣に加えてもう一つ能力があり、それこそが障壁や鎧を破壊する装甲破壊の技だ。
「障壁がッ!?」
「よーく覚えておきな
俺は振り抜いた刀の刃を反転させ、胴体目掛けて逆袈裟に振り抜き、その場から彼女を吹き飛ばす。
そしてトドメを刺そうとした瞬間、床から巨大な石の柱が隆起し、周囲ごと全て吹き飛ばされた。
その衝撃に便乗し、メガロ湾に飛び込んだ俺達は闇夜に紛れながら逃走する事となるのだった。
「昨日までの英雄呼ばわりが一転、反逆者か。ヌッフフ、いいねぇ人生は波瀾万丈でなくっちゃな」
「タカミチ君達は脱出出来たかな……」
「……姫さんがやべぇな」
「まっ、とっととトンズラしようぜ?」
そんな風にため息を吐きながら、俺達は警備が手薄な場所目指して泳ぐのだった。
セクストゥムちゃんがフライング登場。作中でも語られてましたが、対主人公にかんしての相性が非常に良いので彼を倒すために予定より大幅に早く起動しました。
その為、フェイトの様なデフォルト状態に近いです。