白くて、何故かウマ娘のオッスに転生してしまった俺の話 作:沼りぴょい
4月14日、日曜日は皐月賞の日である。
キタとダイヤに誘われたその日に、アーモンドアイにも「行くか?」と聞いたところ、「行きますわ! 兄さまとデートですね!」と食い気味に了承してくれた。
後、デートって小学二年生が使う言葉じゃなくない? それとも何? 俺が知らない間に現代日本が進んでいたということなのか?
とまぁ真相は分からないが、とりあえずデートではないということは伝えておいた。だってキタとダイヤいるしね。
それをアーモンドアイに伝えたら、無言で尻尾でペシペシされた。解せぬ。
まぁ色々とあったが、俺達は現在四人で中山レース場へと参上していた。やはり、無敗のまま皐月賞に挑むのだ。嫌でも、人は意識をせざるを得ないだろう。
あの、シンボリルドルフだけが成し遂げた、無敗でクラシック三冠を制覇するということに。
……しかし、なんだろうか。こうも周りに人が多いいと、何故か急に立ち上がりたくなる。別にお前既に二足歩行じゃん? というツッコミは今は置いて欲しい。お願い。
こう……なんて言うか精神的にだよ。俺、と言うよりはこのホワイトドンナーの魂がうずうずしているというか……あぁクソっ。上手く言語化出来ねぇ……!
脱線したな。無敗とはいかなくても、クラシック三冠を取ったウマ娘なら他にもセントライトやミスターシービー。ナリタブライアンやシンザンといったウマ娘達が名前を連ねる。
前世の地球だったのなら、そこにディープインパクトやオルフェーヴル、コントレイルも加わってくるが、今までの競馬史で、まだ八頭しか達成できていないのだ。それが、このクラシック三冠を取る事がどれほど難しいのか物語っている。
あのゴルシでさえ二冠だしな。
史実通りなら、トウカイテイオーは日本ダービーで骨折する。だがしかし、ここはウマ娘の世界である。もしかしたら、ゲーム時空なように「おめぇ絶対無敗でクラシック三冠取らせたるからな!」と、前世の俺のようにトレーナ────この場合は沖野トレーナーになるのだろうか────が、頑張ってくれている可能性も無きにしも非ず。まだここがアニメ時空かゲーム時空かすらも分かってないもんね!
なお、もしここがゲーム時空だった時、レオターバンではなく、レオナタールの被害は考えないものとする。
「ドンナーくん!」
「おはようございます、ドンナーくん」
待ち合わせの駅に行くと、既にキタとダイヤが待っていた。
「おう、おはよう。キタ、ダイヤ、幼馴染のアーモンドアイだ」
「アーモンドアイです。初めまして姉さま方」
俺の手を握ったまま、アーモンドアイがペコリと頭を下げると、キタの耳がピーン! となった。
「ね、姉さま!?」
「気にするなキタ。そのうち慣れる」
それより早く移動しない? ごめんけど、俺のせいで人目集めまくっててめちゃくちゃ居づらい。今ではだいぶ沈静化はしてるけど、やっぱり男のウマ娘のことは皆覚えてるらしいから、すっごい見られてるのよ。
「それでは、移動しましょうか。アーモンドアイさん、私とも手を繋ぎませんか?」
ダイヤがアーモンドアイと目線を合わせて手を差し出す。すると、アーモンドアイは嬉しそうにダイヤの手を握った。
「フフ……ドンナーくん。これはまるで家族のようですね」
「あ!? ダイヤちゃんずるい!」
さて、俺は何も考えない。考えないぞー! 。
あ、ちなみに、今日の日付は4月13日の土曜日である。
何が言いたいかと言うと、前日から皐月賞を見るために中山レース場に並びに行くのである。アニメで見たやつだよなぁこれ……。
翌日。中山レース場が解放され、ウマ娘としての性能を存分に生かし、レースを見れるのに一番いいホームストレッチのど真ん中を確保することができた。なお、アーモンドアイは俺がおんぶしている。
このレースの目玉は当然、現在無敗のトウカイテイオー一番人気である。うわぁ……生テイオーだよ生テイオー。
「兄さま兄さま。まだ始まらないのですか?」
「もう少し待っててな」
退屈だからって俺の髪弄るのやめてな。これ、手入れ大変なのよ。
背中におぶっているアーモンドアイを一度下ろしてからもう一度抱き上げる。ほら、そろそろ始まるからな。
前では着々とゲート入りが行われている。
『最後に18番、トウカイテイオーゲートに収まりました。さぁクラシックの桜の花を咲かすのはいったいどのウマ娘か! 皐月賞今────スタートしました。イブキマイカグラ、トウカイテイオー共に好スタートをを見せています。外からビッグファイト、ビッグファイトが出を伺いました。レガシーオブゼルダ、間からはイイデサターンが飛び出していきます! 最ウチにコースをとったアフターミーが果敢に行きました! アフターミー、アフターミーレガシーオブゼルダ、押して押してカネハボマイも上がっていった! この三頭の先頭争いで第一コーナに向かいます』
観客の応援が大きな声となって中山を震わせる。あまりの大きさに耳をぺたんと折るがそれでもまだ声が聞こえてくる。
『後は二バ身差、ビッグファイトが四番手、その後ろは二バ身開いてウチにイイデサターンがコースをとりました! イイデサターン、あるいはヤングシゲオー第一コーナへ向かいます。シンホリスキーはその後ろ。アサキチホクセイシプレー、或いはヴァイスシーダー、トウカイテイオーがこの五番手集団にまで上がっていきまして一、二コーナーの中間に入りました。後はヴァイスシーダーの後ろ、二バ身控えて10番のダンスダンスダンス! これを躱すようにサクラヤマトオーが続きました! 二バ身差で、外を回ってイイデセゾン。ちょっと引っかかっているのか内を回るイブキマイカグラは後方の定位置!』
向こう側にいるはずなのに、皆の熱気が伝わってくる。腕に抱いているアーモンドアイや、隣にいるキタサトコンビも、呆気にとられてレースを見つめる。
すごい。ただ、この一言に尽きる。
『バックストレッチにこれから入ります。それから二バ身差、後方は三人で六番のブリザード、二バ身控えて後方はシャコーグレイド、さらにイイデシビアと二人行っています! 向こう正面中間に入って残り千メートルを切りました! さぁ先頭に変わったのは依然として、依然としてアフターミー二バ身のリード! 二番手にはレガシーオブゼルダがつけています。後は内からビッグファイト、外カネハボマイが並んでいますが、カネハボマイが二番手に並んでいきました! さらにシンホリスキーが上がっていくこれをマークするように一番人気、トウカイテイオーはその後ろ! 間に入ってアサキチもおりまして第三コーナーをカーブしていきました!』
ここから、トウカイテイオーの姿勢が変わり、徐々に順位を上げていく。
『さぁ、これから勝負所、三コーナーカーブして600切りました! 後方二番人気、イブキマイカグラはまだ中団! 中団バ群の中に突っ込んでいく! サクラヤマトオーが、中団から先団を狙って上がっていきまして四コーナカーブに入りました!』
ここから、一気に観客の声が一際大きくなり、応援しているウマ娘の名前を叫ぶ。もちろん俺は────最初から最後までトウカイテイオーしか見ていない!
「行け! 行けトウカイテイオー!」
「頑張って! トウカイテイオーさん!」
自然と俺にも熱が入り、声に出して応援をする。隣ではキタもトウカイテイオーの走りに魅了されたのか、必死に応援をする。
『さぁ先頭は横一線になってカネハボマイ、トウカイテイオーシンホリスキー! 内粘るレガシーオブゼルダ、四コーナカーブから直線に向かってアサキチが間に突っ込んだ! 最内はヤングシゲオー! 大外からはシャコーグレイドサクラヤマトオーが突っ込んでくる────トウカイテイオー先頭! さぁ一番人気トウカイテイオー堂々の先頭! シャコーグレイド! シャコーグレイドが二番手に上がって来るのか! 内からヤングシゲオー、ダンスダンスダンスが突っ込んできた! さぁシャコーグレイドがトウカイテイオーに迫るがトウカイテイオー抜かせない! トウカイテイオー強いっ! トウカイテイオーゴールイン!! 』
その瞬間、爆発するように歓声が響く。その勝利に、だれもかれも称賛の拍手を送った。
『あのシンボリルドルフが成し遂げた無敗の皐月賞制覇! トウカイテイオーもその軌跡を辿ってみせました!』
そして、トウカイテイオーは俺たちに見せつけるかのように、指を大きく一本掲げるのだった。
競走馬 ホワイトドンナー
父:ステイゴールド
母:ホワイトインラブ(架)
母父:メジロマックイーン
主戦騎手:岳那由多(ごめんよ、エアスピネル)
皐月賞、ダービーと二冠をとったが惜しくも菊花賞でサトノダイヤモンドに敗れ二着。しかし、その後の有馬記念ではサトノダイヤモンドや、キタサンブラック等の古馬を蹴散らし堂々の一着。四歳は凱旋門賞制覇を目標に、サトノダイヤモンドとフランスで共に過ごす。
得意策は追い込み。大外から一気にぶち抜くのが快感。これをやらせないと、レース後にジョッキーを振り落とすため「やはりステゴ産駒か」といわれる。
二つ名は雷鳴の貴公子。香港表記は募集します