白くて、何故かウマ娘のオッスに転生してしまった俺の話 作:沼りぴょい
トウカイテイオーが無敗で皐月賞を取った二週間後、今度は天皇賞春を見に行き、そこでメジロマックイーンが春の盾を獲得した。
どうやらそこで今度はダイヤがマックイーンの走りに惚れたようで、二人が毎日のように「テイオーさんが凄い!」だの、「マックイーンさんが凄い」だのと言い合いをしている。
頼むから、俺を巻き込まないでくれるか? 「ドンナーくんはどっちですか!?」とか聞かれても、俺的にはぶっちゃけその二人は違うんだよな。前世の世代じゃないし。
そうだな……前世の時に俺が走りに惚れた馬はシャフリヤールだな。あの日本ダービーの末脚……あれには震えた。あれを見てからシャフリヤールは必ず応援するようになったし。
話は変わるが、天皇賞春を見に行った時に、何故かメジロマックイーンと視線があったんだが……なんというか、運命的な何かを感じた。別に、胸がドキドキするとか、運命の出会いという恋愛感情では全くないのだが……こう、電波を感じたというか……何故だろうか。
「…………でっかいね」
「うん……」
二人が俺の両隣でそう呟く。俺もこくんと頷く。
現在、俺達がいるのは日本ウマ娘トレーニングセンター学園。略してトレセン学園。
そう、今日はトレセン学園のオープンキャンパスに来ているのだ。
「すごい……かっこいい……」
「王子様……」
「綺麗……」
耳がピクピクっと反応する。むむむ……ウマ娘……いや、俺って娘じゃないから息子か。ウマ息子になってからこうして耳が良くなったからヒソヒソと呟いていても遠くの声が分かる。俺たちと同じようにオープンキャンパスに来ているウマ娘達が、俺の事を見て頬を赤くしているのだ。
そう言われても俺、非常に対応に困るんだけどなマジで……。
この声をどうにか出来ないかとピクピク耳を動かしていると、俺達に近づく二人分の足音が聞こえる。
「ようこそ、トレセン学園オープンキャンパスへ!」
「「……!?」」
声が聞こえた方向に目を向けると、ダイヤとキタが口を両手で抑えた後に俺の背中に隠れた。おいコラ。憧れの存在に対してなんという反応をしているんだ。
耳がピクピクと反応する。視線の先には二人のウマ娘────
「ご案内致しますわ。迷子にならぬよう、ついてきて下さいね?」
────トウカイテイオーと、メジロマックイーンの登場である。
「……ってあら? あなたは────」
「男の子……ってことは、マックイーン! 噂のホワイトドンナーくんだよ!」
名前を呼ばれて尻尾がビクン! と逆立った。一体なぜこの二人が俺の事を! って思ったけど、そう言えば生まれた時は世界的な大ニュースだから知ってて当然だよな。落ち着いた。
「初めまして、トウカイテイオーさん、メジロマックイーンさん。ホワイトドンナーです……あの、噂って?」
「そりゃ! 世界で初めての男のウマ娘でしょ? トレセン学園に来るのかなーって、皆噂してるよ!」
「えぇ、こうしてオープンキャンパスに来るということは、ここに入学するんですか?」
「まぁそうですね。まぁ一番の理由がこの二人が行くからですけど……おいキタ、ダイヤ、そろそろ俺の後ろに隠れてないで挨拶をしろ」
二人の服を掴んでいる手を高速で外して二人の背後に移動。背中を押した。
「わっわ! ちょ、ちょっと待って! ドンナーくん!」
「私、まだ心の準備が────!」
「問答無用。ほら挨拶挨拶」
ぐずる二人を前に出す。俺達のやり取りを見て笑っていたトウカイテイオーとメジロマックイーン。
「さ、君達の名前を教えて?」
パチッ! とトウカイテイオーが華麗にウインクを決めると、キタが息を飲んだ後に、わなわなと口を震わせる。
後ろから、頑張れとエールを送った。
「わ、わたし! キタサンブラックっていいます! トウカイテイオーさんの大大大ファンなんです!!」
体全体で、好き好きオーラを出すキタサンブラックに頬が緩む。何この生き物、可愛いんだけど。
「うええ!? ボクの!?」
「はい! この前のクラシック初戦の皐月賞! すっごくカッコよかったです!」
「クラシックなんてよく知ってるね!」
「はい! ドンナーくんに教えてもらいました!」
「えぇ!? ドンナーくんよく知ってたね!」
「え、えぇ……まぁ……」
トウカイテイオーの「君すごいねぇ!」という視線にバツが悪くなって顔を逸らしてしまう。キタとダイヤに教えてた頃は、クラシックとか常識とか思っていたけど、よくよく考えれば学園の方で教えてたんだよな……。
「無敗でダービーに挑戦するなんて、あのシンボリルドルフさん一緒ですよね! 今度の日本ダービー、絶対勝ってください!」
「わ、私はサトノダイヤモンドです! メジロマックイーンさんが大好きなんですっ!」
「うえっ!?」
キタが最初に言ったことにより、気合を入れたダイヤが、両拳を胸の前でギュッ! と握ってから言った。
「先日の春の天皇賞、おめでとうございます! 素晴らしかったです! 今、トゥインクルシリーズの中で最も輝いていると思います!」
言っている間に勢いが着いたのか、キラキラとした目で気持ち一歩メジロマックイーンに詰め寄るダイヤ、
マズイ、と思った俺は一旦ここで二人の熱を鎮めるために、頭に手を置いて撫でる。今度はここでどっちが凄い論争されては恥ずかしいし……。
「二人とも、一旦落ち着け」
「あう」
「ひう」
「何となく、三人の力関係が見えてきましたわね……」
俺たちの様子を見てメジロマックイーンがそう呟いた。
「トウカイテイオーさん、メジロマックイーンさん、オープンキャンパスの案内よろしくお願いします」
「「よ、よろしくお願いします!!」」
俺が頭を下げると、二人も慌てて頭を下げた。
「よーし! それじゃあ、遅れないでついてきてね!」
と、トウカイテイオーが走り、その後をメジロマックイーンが行く。俺たちは、一度目を合わせ、頷いた後に走って行くのだった。
「ここは、図書室でーす」
まず、俺達が最初に来た場所は図書室である。そういえばスペシャルウィークを案内した時も最初図書室だったよな。なんでだろ……。
それにしても……ここ、いっぱい本があるな。本当にここ図書室?
「ここは、沢山の本があるんだよー。あと、ここでは静かにね────ん?」
チラリ、と横目でトウカイテイオーを見ると、視線がある一点に集中していた。
(…………んおっ!?)
危うく声が出そうになり慌てて口を両手で塞いだ。トウカイテイオーが見つめた先には、スイープトウショウとゼンノロブロイの姿が。
うぉぉぉぉ!! スイープトウショウがいる! アプリ版ウマ娘では大変お世話になりました! 水着サポカはめちゃくちゃ可愛かった!
「……何読んでるの……」
呆れたようにトウカイテイオーが言ったので、じっくりと目を凝らしてみる。
ふむふむ……なになに? 『アンマデナイ奥義書』に『フチュウ除霊術手引書』に『術師アブラオオメの聖魔術書』ね。
…………え、本当に何読んでんのあの人。てかそもそもなんであんな怪しい本が図書室にあるんだよ。
「ここはプールでございまーす!」
次にやってきたのは、スタミナトレーニングでお世話になるプールである。目の前では、スク水姿のウマ娘の皆さんがトレーニングを行っているのだが……なんか俺がいたらダメなような気がする。
「お魚は泳いでないよー」
「逆に泳いでいたらそれはそれでダメなのでは……?」
「でも!」
俺のツッコミをかき消すような大きな声が聞こえる。その方向に目を向けるとヒシアケボノがいた。
うお……こうして見るとマジで身長でかいな……。
あ、後ろにビコーペガサスいた。全然気が付かなかった。
「私はお魚と泳いでも────」
ヒシアケボノが飛び込みの姿勢に入ると同時に、トウカイテイオーが片手で離れろと合図をする。何故かもう片方の手には折りたたみ傘を持っていた。
「────短距離なら、負けないよっ!」
飛び込むと同時に、巨大な水飛沫が上がる。そのことを見越していたのか、トウカイテイオーはすぐ様傘を広げて水飛沫をガードしようとした。しかし、水飛沫が傘の面積よりも多く、ずぶ濡れになってしまった。
先に離れていた俺達と、俊敏な動きで回避したメジロマックイーンは無傷だった。
さ、流石は最強ステイヤー……。
「気持ちいいでーす!」
「あら……」
一通り案内が終わり、校門へと戻るために俺たちは、中庭を突っ切っていた。ここでサラリと俺の走り方を説明するが、簡単に言うなら忍者走り。イメージ的に言うなら、初期の頃のウマ娘PVで出てたディープインパクトらしきウマ娘である。
腕を地面と並行にして伸ばし、姿勢は基本的に前傾姿勢。色んな人に変わった走りと言われるが、俺的にはこれがなんか一番走りやすくて気に入っている。
「ちくしょ────!!!」
「次は中庭でーっす」
木の洞に向かって大声で叫ぶウマ娘がいる。あれは確か……ダイタクヘリオスだったっけ。
「負けた悔しい気持ちは、あそこで叫んで発散」
「気になるぅぅぅ!!」
「ん?」
「あいつのバイブス半端ねぇ!! めっちゃアガルゥゥ!! なんなのこの気持ちぃぃぃ!!」
だがしかし、聞こえてくる声は全く悔しがっていない。一体誰のことを言っているのだろうか。
「あれって、悔しくて叫んでるんですか?」
「あははは……」
苦笑いになってますよ。
「他に行きたいところはある?」
校門前に戻ってきた俺たち。その背後にはあのエアグルーヴがおり、シャッターのライトを向けられて可愛らしい声を上げていた。
「いえ、もう大丈夫です。次は、自分達の足で歩きながら見回りますよ」
「お、もうトレセン学園に受かる気満々なの?」
「えぇ、まぁ」
アニメ最終話でキタとダイヤがトレセン学園の制服来てたし大丈夫っしょ。とは思っている。二人と一緒のことしてれば多分いけるだろ。
「わたし! トレセン学園に入ったらテイオーさんみたいになりたいです!」
「わたしは、マックイーンさんのようになりたいです!」
「あ────」
その言葉を聞いて、トウカイテイオーの動きが一瞬止まった。しかし、直ぐに笑顔を浮かべた。
「それじゃ、頑張ってトレセン学園に入った来てね────もう一度聞こっか。君達の名前は?」
疑問をうかべた二人は、一度顔を合わせると俺に目線を投げかける。俺が頷くと、二人はもう一度名前を言った。
「キタサンブラックです!」
「サトノダイヤモンドです!」
「ホワイトドンナーです」
「よし、覚えておこう!」
「それにしても、ドンナーくんだっけ? すっごいかっこよかったよね~」
「そうですわね……ですが、それと同時に何やら嫌な予感も漂いますわ」
「嫌な予感?」
「えぇ……具体的に言うと、ゴールドシップのような……」
ホワイトドンナーうまむすステータス
白毛のイケメソ。瞳の色はアイスブルー。男の子だけど髪を伸ばしていてひと房にまとめている。ただし、髪の長さがケツまでに伸びると髪を切る。
髪を伸ばしているため、パッと見は女子のように見えるがやっぱりイケメソ。実は街の中でなんども芸能事務所にスカウトされているが、全く持って興味は無いので全て断っている。
ウマ娘の身体能力を生かし、前世からの夢であったうまぴょい伝説を踊ることが可能になり、たまにこっそりと家で歌いながら踊っているが、母親にバレている。なんならキタとダイヤにもバレてる。現在ユメヲカケルを練習中。