浜名海兵団奮闘記〜しらしぐ日記〜   作:狢(ムジナ)

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登場人物。

白露:一番艦。一番大好きな天然ボケ。

時雨:二番艦。冷静沈着なツッコミ。


しらとしぐ

 ここは日本のど真ん中。

誇張でもなんでもなく日本地図の太平洋側、人間で言うならヘソの辺りに有る汽水湖。その名も浜名湖で有る。

太平洋(正確にはフィリピン海)に面した湖は遠浅の湾を作り、それなりの漁港を有したマリンスポーツのメッカである。

だが近年、深海棲艦なる異生物(と言うよりは怪獣?)の出現により日本近海は脅かされていた。

 そんな中、政府は海上自衛隊と海上保安庁と水産庁を中核に、各地の水上警察や消防等の公的組織、更には民間の海上レスキュー等も巻き込んだ「深海棲艦駆除計画」なるものが立ち上がり、全力を注いだ掃海作戦が展開された。

 

 

案の定、コテンパンのボッコボコにされてしまった…

 

 普通に考えて、大型魚類並みの身体に軍艦並みの戦闘力を持つ「生命体」なんて映画館の中だけにして欲しいのは確かだが、この世界では起きてしまったのだから仕方無い。

けちょんけちょんにされてから「今のはノーカン」なんてのは問屋が卸す訳ないのである。

そして面目丸潰れな内閣は総辞職したのだが、「普通非常時にやるか?」と非難轟々となる。

新しく発足した内閣は、とりあえず世論の矛先を交わすために実戦力を失った海上自衛隊を中核に、海上保安庁と各地の水産庁漁業取締船事務所を再編成し、「対深海棲艦防衛軍」と呼称を新たにする。

 

 そしてそんな中、一つの光明が見え始めた。

 

 深海棲艦の対抗策らしきものがネットにて上がり始めたのである。

それも十代、二十代の女性からと言う共通点が有った。

中には兵器らしき物の設計図等がアップされており、藁にも縋りたかった防衛軍は試作品となる「機関」と「主砲」と「魚雷」を制作し、これを発表した。

 そして数週間のうちに佐世保にある少女が出頭した。

その娘は自身のアカウント証明を見せ、ネットで深海棲艦対策を打ち上げてきていた一人であると名乗る。

少女は試作品の装備の運用を希望してきた。

そして実験は成功する。

少女は防衛軍より「吹雪」のコードネームで呼ばれる事になる。

 

 艦娘の誕生であった。

 

そして、横須賀に「大淀」、呉に「明石」と呼ばれる艦娘が現れた後、全国各地に艦娘たちが出現することになり、5年間の激闘により日本近海は仮初の制海権を獲ることに成功する。

 

 

 そして…

 

「暇だあ!」

と声が上がった。

ここは浜名湖今切口。俗に浜名港とも呼ばれる場所である。

水深が浅いため大型船こそ居ないが船渠施設や漁業取締船事務所もあり、やや奥に行けば港湾警察船も民間レスキューも有り、一通りの施設もある。

そして近隣には航空自衛隊浜松基地や御前崎のレーダーサイトやDO-NET、伊良湖AISセンターも有り、監視システムには充分すぎる立地条件が有る。

その地に艦娘訓練校、通称海兵団の一つが有った。

 その海兵団には駆逐小隊が配備されている。

駆逐艦娘の一人、白露の声が上がったのである。

「ボヤいても仕方ないじゃないか」

と答えたのは時雨。

この二人は白露型駆逐艦娘の一番艦と二番艦である。

二人は何だかんだと深海棲艦相手に五年間戦い続けた古参なのだが、すでに朝潮型、陽炎型、夕雲型、秋月型と配備され、改二にも関わらず海兵団警備の任務に就くこととなったのである。

 形ばかりは横須賀鎮守府直属の地方艦隊の所属となるが、艦隊とは名ばかりで実質的には主力艦隊が動きやすくする様に、旧式駆逐艦や海防艦クラスで構成された「艦娘の窓際族」と言っても過言ではない部隊である。

そして少佐を司令官に二人の艦娘と艦娘を支援する隊本部、総括班、整備小隊、施設警備小隊で構成された地方隊は、各地沿岸域にて様々な任務に就いているのだ。

 

「何か変化欲しいよね。」

と白露がボヤく。

「何もない日常が貴重なんじゃないか。」

と時雨は返した。

白露と時雨の任務は浜名海兵団の支援並びに訓練海域の警備任務である。

海兵団の初期訓練そのものは浜名湖内で行われる為、ほぼ浜名湖から出ることはない。

しかも訓練校とタイムスケジュールが丸かぶりする為、訓練支援日程が無ければ朝イチと夕方の湖内パトロールを除けば、緊急出動以外は待機任務となる。

 早い話、今日は待機の日なのである。

活動的な白露と理性的な時雨のコンビの会話は傍から見たら漫才の様であり、閑職のこの部隊における一服の清涼剤とも言えるが、当の本人(特に白露)からしてみれば、浜名湖今切口西岸に有る老朽化した鉄筋2階建て施設を改装増築しただけの寮付きの施設に住み込み、オフにならなければ行動の自由すら無いのだからフラストレーションも溜まると言う訳だ。

 どのみち近所にはコンビニと競艇場、少し離れても水族館とキャンプ場くらいしか無いが。

「司令みたいに暇の潰し方見つけろと言ってるじゃないか。」

「だぁぁ!あんな風に本読んだり、ぼけーっと釣りするのは私の趣味じゃない!」

と時雨の言葉に白露が即答する。

「別にぼけーっとしてる訳じゃないと思うよ。」

「そうとしか見えないし。」

「なら自主トレでもしたら?」

「時雨さあ、午前中いやと言うほど候補生の訓練に参加させられて、まだやれと?」

「プロアスリートならやってるよ。」

「私はプロアスリートじゃなくて、ごく一般的な女の子です!」

「どこが一般的なんだよ。」

「ひっどい!仮にも姉貴分に当たる私に酷いわ!」

「少し落ち着こう。そのリンゴ半分にしてくれるかい?」

「おっ安い御用よ!」

 

 パコッ!

 

白露はわしづかみにしたリンゴを両側に引っ張り、いとも簡単に真っ二つにした。

「一般的って?」

と時雨がツッコむ。

「白露がイッチバーン!」

 

 

白露は開き直った。

 

        続くかもしんない。

 




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