ここは日本のど真ん中。東京からも大阪からもほぼ同距離に位置する位置に浜名海兵団なる駆逐艦娘の養成所兼遠州灘警備隊がある。
まあはっきり言って僻地の閑職である。
周りにはコンビニとハンバーガーショップくらいしかないが、こんな僻地にも春は来た。
「白露、何をそんなに買い込んできたんだい?」
「別に買い込んだわけじゃないけど、焼き芋だよ。」
長閑な昼下り。
土曜日ということも有り、候補生も半ドンなので後は待機任務って事で、白露と時雨は日向ぼっこを兼ねて揚場にいた。
「買ったんじゃなければ何さ?」
「司令からのお裾分け…かな?」
「あー、あそこの娘さん園芸好きだしね。」
娘と言っても養女である。もう結構な年齢の司令だが、一応予備役ながら大佐だし余裕もある。
そこで、身寄りが無くなった退役艦娘を引き取っているのである。
「香取さんもコブ付きの中年オヤジによく入れ込むよね。」
「コブ付きと言っても独身なのは確かではあるけとね。」
普通、独身提督が艦娘を引き取るってことは、対外的にはケッコンカッコガチと見なされてるが、なんせ中年男性と駆逐艦であるし、戸籍上は養女である上、しっかりと見た目相応の学校に通わせているしと、色々とダークグレーではある。
こんな僻地で閑職しているのも、半分はやっかみなのかもしれない。
「ところで…」
「なにさ?」
「食べる?」
とおもむろに白露は時雨に焼き芋を差し出す。
「提督いわく、肥料に魚粉を使った逸品らしいよ。」
「鰻の粉末なら、うなぎいもだね。」
うなぎいもとは、この地域で生産されているサツマイモで、肥料にうなぎの骨粉が使われている。
元々砂地ばかりなんでサツマイモと玉ねぎくらいしか育たないし、肥料の魚は山程捕れるので家庭菜園でもそれなりに育つ。
てか、基本的にサツマイモはほっといても育つのだが。
「おいひいよ。」
と白露は頬張りながら言う。
「そんなんだから主食がイモの艦娘って言われるんじゃないのかな?」
サクッと時雨のドライアイスのツッコミが来る。
「ぐぬぬぬ…でもおいひいから気にしない。」
「そのポジティブさが羨ましいよ。」
「ふむ。甘さはうなぎいもには届かないけど、もっちりとしてていい味だね。」
「ホントだ。これふかしてもいけそうだよね。」
「ふかし芋にマーガリン塗ると美味しいよね。」
「ボクはバターかな?」
「バターならジャガイモっしょ。」
「あー、良いねぇ。今年はお祭りに行けるかな?」
「一般市民さんが遊ぶときに任務に就くのがアタシ達でしょ?」
「人が遊ぶときに遊べば三文の損。人が遊ぶときに働かば三文の得ってやつだね。」
「まーた時雨は難しいこと言う。」
「こないだ読んだ本に書いてあったのさ。」
「はいはい、アンタいっつも本読んでるもんね。」
「待機任務中に読んでるだけさ。」
「まあ、スクランブルなんて滅多に無いしね。」
「平和なのは良いことってね。」
「そういう事。さて、口直ししたいな。」
「へへーん、そう思って…じゃじゃーん!」
「ミカンじゃないか。」
「1袋200円!産地の強み!」
「それ、全部食べるのかい?」
「まっさかー!みんなで分けるのよ!」
と白露はミカンを投げると時雨がキャッチした。
「うん、ありがとう!」
ふと、いつまでもこんな日が続けば良いなと時雨は感じていた。
アニメ第二期で、この二人のミカンのやりとりにインスピレーションを得ました。