ここは日本のど真ん中。
太平洋側のヘソみたいな場所に、浜名湖がある。
浜名湖の冬は雪もなく、さほど気温も下がらないので過ごしやすい…
と思ったら甘い。
平均風速10m/sの西の風と、湾内でも1.0m前後になる波に毎日のようにさらされるのである。
属に言う「遠州の空っ風」。でも、これが無ければ浜名湖の冬ではない。
「ぬぁぁぁ!寒い!」
浜名湖の西岸にある小さな漁港。
その一角を接収して作られた浜名海兵団より大きな声が上がる。
「白露、今更寒がってどうするんだい?」
と時雨が答えた。
浜名海兵団の看板(?)艦娘、白露と時雨である。
「何年配属されてようとも寒いものは寒い!」
「少しは慣れようよ。」
大声立てながら部屋で身体を動かす白露を、本を読んでた時雨が窘めた。
部屋と言っても待機任務中なので、船渠施設の一角にあるこじんまりとした部屋である。
せいぜい6人くらいしか入れそうもないトコだが、何だかんだと湯沸かし器付きの流しもあるし、冷蔵庫もテレビもある。
そして何よりもエアコンがある。
しかしエアコンの恩恵より、やたらだだっ広い船渠の扉が開放されている為、空っ風が吹き抜けるので隙間風が凄いのである。
中には人間の整備班か艤装の手入れし、艤装妖精さんが走り回ってるが、ただ待機してるだけの二人には堪えるってわけだ。
「あー、暴れたら暖かくなるんだけどな。」
「今日は実習も哨戒も無いから諦めなよ。」
と時雨は据付のフリードリンク機から、温かいカフェ・オ・レを二杯淹れて白露に差し出した。
「サンキュー♪」
と白露は受け取るとチビリと飲む。
口の中から胸までジワリと温かさが伝わった。
「はぁー、生き返るわ♪」
「ホットドリンクがフリーなのは助かるよね。」
「冬はホットで、夏はアイスで♪」
「はいストップ。」
「何でよ?」
「そんな古いネタ、誰が分かるのさ。」
「んにゃろ。」
等と何時もの漫才を続けてる内に昼になり、正■丸でお馴染みの喇叭が鳴る。
昼は外出できないので給食になる。4人しか居ない訓練生も昼や休みとなるので、教員も兼ねた香取以外の提督(大佐だが)と白露と時雨は後組となり、他のスタッフも役職に準じた順番で食事を取るので割と慌ただしい。
「では頂きます♪」
「はい、頂きます。」
と二人は手を合わせる。
給食は地元の弁当屋である。かなりシュールなCMを流すが、味は至って普通。
「パフパフ♪」
「はいそこまで。」
白露が何かリアクションしようとすると時雨が止めた。
「何よ?」
「CMソングは色々と不味いの。」
なかなかメタいツッコミをされると、白露は不貞腐れた。
食事を終えたら軽い運動。
滅多に出撃がないとは言え、やはり身体が資本であるし、何だかんだと艦娘なのである。
二人は制服のまま施設内にあるグランドの外周を30分程走り、その後に念入りにストレッチをする。
そして、軽く徒手空拳の組手。
装備が有るとはいえ、やはり徒手空拳は習う。
当身して、捕まえて、転ばせる。
弾薬が尽きても身を守る技術はやはり必要。
この辺は白露と時雨の特徴が出るもので、当身は白露、組技は時雨が上手い。
あと、どうしても白露は詰めが甘いので時雨が僅差で勝つ。
「だああ!今に見てなさいよ!」
「残念だったね。」
と二人の昼休みは終わる。
また午後の待機。
据付のドリンクを飲みながら、今度はカードだ。
待機中だから長丁場になるのより、短時間で決着が着くものが好まれるのか、二人はブラックジャックをやっている。
一般ピープルから見たらサボりだと騒ぎそうだが、監視班が別にいるスクランブル待機ってのはこんなものである。
「ぐぬぬ。」
「また僕の勝ちだね。」
表情が出る分、白露は分が悪い。
要するに勢いは有るが、駆け引きが下手なのである。
しかし、粘り強いのは流石に古参では有るが。
やがて1700となり、候補生が教室のある棟から出てくる。
彼女たちは一旦寮に戻り、そこからまた夕食や風呂などを済ませるのだ。
同時刻に軍属の方々もあがり、待機所を兼ねた船渠には、整備班長のおっちゃん(一応曹長)と妖精さん達だけとなる。
冬なだけにもう暗い。
教室のある棟は、衛兵伍長が二人の部下と巡回を済ませて施錠し、ゲートの詰所に戻っていった。
やがて1900になり、待機任務終了。
基本的に、大王崎にいる部隊の補佐的な二人なので特に引き継ぎもなく(要は他に香取しか艦娘がいない)、提督室に日報を届けながら報告し終了である。
提督と香取に敬礼しつつ、二人は寮に戻り夕食と風呂をしてようやく非番時間帯に入る。
2200まで、候補生の質問に答えたりして過ごすわけだ。
候補生になんだかんだと世話を焼く白露を見ながら、退屈な日常も良いよねと時雨は感じていた。
アニメ見て、やはり白露と時雨の日常を書きたくなり、話を差し替えしました。
やはり、しらしぐは尊い。