個性「インキュベーター」のTS転生者、AFOに個性を奪われ気絶してたらいつの間にか倒してたので、モキュとして平和にヒーロー目指す 作:選ばれざるオタクⅡ
えぇ…?本垢の方で書いてるマギレコ小説のトータルUAをあっという間に追い越したんだが?
これがヒロアカの力か………
軽くショック受けたので失踪します。
子供達の笑い声が響き渡る公園
ブランコを漕ぎ、滑り台を滑り、友達と鬼ごっこをする。
個性が当たり前に存在する超常社会であろうとも変わらない平和な光景だ。
そんな公園のジャングルジムの上
不安定な足場の上にあぐらをかいてピクリとも動かない無表情で公園を見下ろしている幼女が一人
その髪と肌は雪のように白く、瞳は少し時間が経って中途半端に酸化した血溜まりのように紅く暗い。
身体はとても小さく、公園で遊んでいる同い年の子供達と比べて頭ひとつ分小さいどころか、まだベビーカーに乗っている年齢に見える程だ。
そんな子が何故ジャングルジムの上なんていう場所であぐらをかいているのか
それは………その幼女こそがこのボク。個性「インキュベーター」を持つ
やぁ、読者諸君おはよう。
こうやって地の文ごっこをするのはなかなかに楽しいぞ。
自分のゴミクズレベルの文章力が多少なりともマシになっていく感覚がするな。
それはともかくとして、病院での一件から既に一年程経っている。
つまり四歳だな。立派な幼稚園年中組さんである。
ウチは3歳からの年小組からでは無く、年中組から入園した。
元々ウチのマミーは専業主婦だから3歳の間はまだ家で色々教えたかったらしい。
そこらへんは流石のボクでも前世で子供なんて持ったことないからわからない。
そんなもんなんやな〜程度に思っている。
ちなみに個性はしっかりと「インキュベーター」で登録した。
このロリボディは自分の意思表示をするのが中々に大変だったが、なんとか両親に「なんとなく名前が思い浮かんできた」「成長すれば使い方もわかってくるかもしれない」と話して、そのまま登録してもらったのだ。
医者は相変わらず首を傾げていたが、「何かあったらまた来るように」と言われて終わった。
勿論、前回の宣言通りにあのハゲ頭は人目につかない物陰でひっぱたいておいた。完全ステルス成功でランクはSだ。しかし、儀式を織り込む時間は無かったのでARU民が湧いてくれるかどうかはわからないが……
さて、今現在ジャングルジムの上でナニやってんだっつーと、契約できそうな魔法少女候補探しだ。
前回判明したとおり、契約しないとボク自身もエネルギー不足で死ぬからな!!
生き残る為には契約をしないといけないんだ……全く嫌になっちゃうよね。
まぁ?あのクソクソファッキン白タヌキ淫獣に啖呵切った手前、奴らとは違う、最高最善のインキュベーターになるため(ジオウ感)
契約内容の事前説明は必須なんだけれども……この世界には『魔女』がいないのがキツイんだよなぁ…
だって、考えても見てよ
「キミが望めば願い事を一つ、何でも叶えてあげるよ?」
「でもその代わりキミは魔法少女となって、その魂はソウルジェムという宝石に変わってしまう。」
「ソウルジェムが無事な限り、死ぬことは無いが、逆にソウルジェムが砕かれたら一瞬で死んでしまう。キミ自身の命だからね」
「また、魔法を使いすぎたり絶望したりしてソウルジェムが濁りきってしまうと、絶望を振りまく魔女という化け物になってしまうんだ。」
「魔女は魔法少女にしか見えないから、誰かが魔女になったら他の誰かが魔法少女になって倒さないといけないよ」
「今の所、この世界には魔女がいないから、キミが初めての魔女になるかもしれないね」
誰が契約するんだこんなの……
特に、『今は魔女が居ない』って点と『魔女は魔法少女じゃないと見えない』って点が不味すぎる。
既に魔女がいて倒さなければならないのならまだしも、別に魔法少女になる大義名分が全くないからね。
契約の理由が私利私欲を満たす為以外に存在しない。
更にキツイことに、この世界は個性社会だ。
大抵の子供は生まれ持った個性という超能力を振りかざして「ボクはヒーローになる」と口を揃えて言う世の中で、将来的にそのヒーローでは対処出来ない怪物に成り果ててしまう契約をするなんているわけが無い。
こんな説明で契約してくれるのはそれこそヴィランぐらいだろう。
あれ?コレ人生詰んだ?
さて、そんなお先真っ暗なボクだが幸運なことに既に候補となる人物は一人だけ見つかっている。
「あっ久兵衛ちゃん!そんな所にいたら危ないよ!!」
今現在ジャングルジムの下でボクの身を案じてくれている、そばかすが目立つワカメ髪の少女……いや、四歳児だから幼女か……幼女だ。
彼女と会ったのはちょうど数ヶ月前。
契約者探しにこの公園を訪れたときにベンチで死にそうな顔をしていたのがこの幼女だ。
話を聞いてみると、どうやら彼女はオールマイトを始めとするヒーローの大ファンで、将来はヒーローになりたいという至って普通の幼女だったのだが、先日病院で無個性と診断されたらしく自分ではヒーローになれない事が判明して絶望していたらしいのだ。
うん。そばかすワカメ髪にヒーローファンに無個性。
もうほぼほぼ答えのようなモノなのだが、一応、万が一という可能性にかけて名前も聞いてみた。
帰ってきた答えは「
はい、そうです。
デク君じゃなくてデクちゃんです。
ま、まぁ……ね?
緑谷女体化とか、爆豪女体化とか、轟女体化はハーメルンでも人気のジャンルでしたし?
そりゃあこの世界で起きててもおかしくは無いよな。
この世界が本当にハーメルンの小説なのかはわからないけど…
んで、とりあえずこのままにしておくのも何だったから適当にメンタルケアしてやったら……案の定なついちゃったという訳だ。
いや、本当にどうすんのコレ。
アレか?雄英高校に入学しろっていう天からの導きという名の強制か?
まぁ、一応主人公なんだから彼女の中に莫大な因果律が渦巻いているのがインキュベーターの身体だとヒシヒシと伝わってくるのだけれども……
それはあくまでもOFAを成長させてAFOを倒す為に使われるべき因果であって、それをボクが横から掠め取ってしまうのは……駄目だろ。
だから、もし契約するとしても他にどうにもならなくなった時の最終手段だ。
そんな事を考えながら、ボクは足元のデクちゃんの元へと飛び降りる。
着地は勿論猫みたいなアレ。並の三歳児では怪我をするような高さだとしても、インキュベーターであるボクならば無傷で着地出来る。だって、アイツらしょっちゅうピョンピョン飛び廻ってるし……
「あぁもう!!怖いから飛び降りるのは止めてよ!!
そ、そりゃあ久兵衛ちゃんなら大丈夫なんだろうけどさ……
やっぱりなんかあったら心配だよ!」
「やれやれ、大丈夫だって言ってるのに……
キミは随分と心配症だね。出久」
「当たり前だよ!!久兵衛ちゃんの身に何かあったらどうするのさ!!」
さて、そんな事を耳元でキャンキャン喚いているデクちゃんを適当に宥めて遊びに誘う。
彼女は将来の主人公なのだ。少しでも身体を鍛えさせておけばOFAも身体になじませるのが早くなるだろう。
それに、なんやかんや言っても実はこの身体、まだこの個性「インキュベーター」が馴染んでいない。
つまるところ、現在生きるのに必要な魔力は微々たるモノなのだ。
この程度ならば自分自身の感情から生み出したエネルギーや、それこそ食べ物から得られるエネルギーだけでもなんとか食いつないでいく事は出来ている。
そもそも魔法少女が生み出すエネルギーというものは本来宇宙の熱的死を防ぐために使われている。
つまり、たとえ魔法少女一人でも、普通に考えたら他のエネルギー源とは比べ物にならない程膨大なエネルギーが得られるのだ。
あんの
かなりカツカツに切り詰めた場合だが、日々の生活や戦闘での魔力消費の際に出た穢れ(=負の感情エネルギー)を定期的に回収していれば、なんとか生き存える事は出来るだろう……というのが奴らが出した回答だった。
勿論、魔法少女の感情エネルギーというモノはそもそも第二次性徴期の少女特有の不安定さから得られる連続的なエネルギーの正負の切り替わりによるモノなので、魔法少女が成長していけば行くほどそこから得られるエネルギーは少なくなってしまう。
マギレコでのベテラン組…というよりもみっふが陥っていた症状だね。(やっちゃんはまだしも十七夜さんは一体……あの人って割と限界突破してるよね。第二部でもすごかったし…)
魔法少女はソウルジェムが本体の関係上、その身体を動かし維持する分の魔力エネルギーが一定量必要なので、このままでは自分一人で魔力を生産出来なくなって魔女化してしまう。
この件についても奴らに問い詰めたところ、どうやら外部から魔力を補給してやれば普通に生きれるらしい。
と、いうのも原作を知っているボクらは『いや、グリーフシードは魔女からじゃないと手に入らないやん』と考えてしまうのだが、それこそが奴らの罠だ。
なんと!魔力の回復方法は何もグリーフシードだけでは無いらしい!!
どうやらインキュベーターから魔法少女へと魔力を移して上げる事も出来る模様
まぁコチラとしても魔法少女として契約してもらった人に関しては周りの人間達と同じぐらいの時を生きていて欲しいし、何より奴らみたいな存在にはなりたくないからね。
そりゃあ彼女達が生きていく為だったら余剰分の魔力もあげちゃう所存だ。
つまり、原作インキュベーターとは違って、ボクの場合は一度に二人程契約して、日々彼女達の穢れから感情エネルギーを回収しつつ、魔法少女としての引退後は新しい魔法少女とでも契約して魔力を補給してあげて、いい感じの年齢になったら自然死させてあげる……って感じの新魔法少女サイクルで行こうと思う。
まぁ正直宇宙の熱的死とかいうのはぶっちゃけコッチの世界の個性でなんとか出来そうな感じがしなくもないから、原作程エネルギーは必要無い故の方法だよね。
だいたいそんな感じだから、じゃけんそこまで急がないとイケナイ問題でも無いのじゃ。
最悪の場合、小学生の間ぐらいだったらドカ食いフードファイターになればやり過ごせなくは無いし、石油とかの化石燃料直のみでも結構イケそう。
とか、頭のなかで考えながらデクちゃんと鬼ごっこをしていたら夕立が降ってきた。
身体中を打ちつける冷たい雨粒から慌てて二人で避難して公園の東屋に逃げ込む。
「はぁ……全く、この時期の天気予報というモノはアテにならないね………
降水確率ゼロ%だなんてデタラメもいい所じゃないか
この位の予知も個性とやらでどうにかならないモンかね?」
「うーん…まぁ未来予知系の個性は貴重だからね。
だいたいがヒーローになってるし、そこに天気予報のお仕事まで入るとキツイんじゃないかなぁ?」
「それは違いない。少なくともそんな貴重な人材を過労死させる訳にはいかないだろう。
コレばっかりは技術の進歩を待つしかないだろうねぇ。」
そんな他愛もない事をデクちゃんと喋りながら東屋のベンチに座って雨が止むのを待つ。
この公園に遊びに行っている事はお互いの親が知っているから、しばらくすれば夕立に気づいた迎えが来るだろう。
「…でも、それまではボクと久兵衛ちゃんの二人っきり、だね?」
それにしても、デクちゃんがこの年齢で既に魔法少女になれる程に精神が不安定なのは一体全体どういう事なのだろうか?
隣に住んでいるという爆轟君とも関わろうともせず、幼稚園では隅の方で本を読んでいるばかり。
それだけに普段は負の感情が大きいのだが、ボクが関わるとトンデモナイ上がり幅で正の感情に振り切れる。
それに、こういった日常に潜むちょっとした密室に入り込むとだんだんと視線や仕草、表情に言動がどことなくしっとりとしてくる。
心なしか、セリフの最後に♡が付きそうなトーンで話してくるから心臓に悪い。
いや、まさか。四歳だぞ?
流石にこの年齢でヤンデレは無いだろう。
そもそも、四歳というのは幼稚園という社会を知って、まだ少ししかたっていない時期のハズなのだ。
依存はあってもヤンデレは無い。せいぜいが独占欲程度だろう。
腐っても、ボクの前世は童貞だ。
童貞に、夕立で人気の無い公園の東屋での雨宿り…なんていう薄い本のようなシチュエーションは毒にしかならない。
いや、確かに、TS転生したと言ってもボクの恋愛対象は♀ですし?
なんなら、いちゃらぶロリ百合えっちとか大好物ですけどね??
自分でやるのは…ちょっと、まだ覚悟が決まってない。
とかなんとか内心ドギマギしている内に(なお、顔は無表情で固定されている。)迎えが来たようだ。
デクちゃんはむすーっとしている。
こういう所はまだ年相応でかわいいのにな。
膨れた頬を突っついてやると口からぷすーっと空気が抜けてしぼんだ。かわいい。
そんな感じで、常に悩みのタネは尽きない状態だがボクはデクちゃんと楽しく過ごしていた。
……そして一年がすぎた頃、事件が起こった。
「いい?きゅべたん、出久ちゃん。あなた達はココで隠れてて。
私達がなんとかヒーローが来るまで時間をかせぐから。
絶対に、何があっても音を出したりしちゃ駄目よ?いい?」
どうしてこうなったんだろう。
ボクはただ、久兵衛ちゃんのお家にお泊りに来ただけなのに……
「ここから先は一歩も通さん!!確かにオレはヒーロー免許は取れなかったが…それでもヒーロー科卒業生なんだ!!家族の命がかかっている以上、私は全力でお前を倒す!!」
「ほう……?俺様を倒せるってのか?カッハハハ!!!ソイツぁ傑作だなぁ……ま、せいぜい楽しませてもらおうじゃあないか……」
しばらく、久兵衛ちゃんのお父さんとお母さんが戦っている音が聞こえていた。
でも、それも既に途絶えていて……何かをくちゃくちゃする音だけが聞こえてくる。
ボクの隣には久兵衛ちゃんがいる。いつもと同じ表情でじっと閉ざされた扉の向こうを見ている。
そんな久兵衛ちゃんの手を握る。いつもはそれだけで安心できる筈なのに……
この恐怖はいつまで経っても消えてくれない。
久兵衛ちゃんのお父さん達はどうなったの?今、ヴィランは何をやっているの?
わからない。いつのまにかボクは久兵衛ちゃんに抱きついていた。
こんな緊急事態なのに、久兵衛ちゃんの鼓動はいつもと変わらない。
すこし、ほっとする。
「さて、まだガキがいるなぁ?オイ!出てこいよ!!俺様と遊ぼうぜぇ?」
嘘…なんで……なんでバレたの?
久兵衛ちゃんのお母さんの個性は隠蔽……音までは消せないけど、ソレ以外は完璧に消せるハズなのに……
ボクは一層久兵衛ちゃんを抱きしめる。彼女の鼓動をもっと感じたい。じゃないと、怖くて今にも吐き出しそうだ。
……うん?鼓動?
そうか!奴はボク達の心臓の音を聞いているのか!!
『出てこないんならよぉ……』
グシャッ
「ヒッ……」
大きなナタが壁を貫いて飛んできた。
もう少し横にずれていたらボク達は今頃………
そんな想像をしてしまい、身体から血の気が引いていく。
外側から温度が消えていって、視界が暗くなっていって……
『出久、聞こえるかい?』
そんな時に、頭の中に声が響いた。
身体内側から、熱が戻ってくる。
視界も次第にハッキリしてきて、ボクの目の前には大好きな久兵衛ちゃんがすぐ近くにいた。
『えっと……うん。聞こえるよ…?』
とりあえず心のなかで返事をしてみる。
コレはなんなのだろうか?でも多分久兵衛ちゃんの個性なんだと思う。
これまでずっと久兵衛ちゃんは教えてくれなかったからわからないけど、テレパシーなのかな?
『ゴメン……最初に謝る。
その上で、どうしても話さないといけない事があるんだ。』
久兵衛ちゃんのその表情は変わらないけれど、いつもよりも真剣なのがわかる。
ボクは黙ってコクコクとうなずく。
すると、久兵衛ちゃんは思いがけない事を言った。
『ボクと契約して、魔法少女になってくれないか?』
『うん。わかった』
『いや、即断即決はしないでもらえないかな!?』
よくわからないけど、久兵衛ちゃんが言う事だ。きっと、この状況をどうにかする為には必要なんだろう。
2つ目のナタが飛んできた。幸いにも今回もハズレた。
『……えっとね、魔法少女になるためには《願い》が必要なんだ。
ボクの個性は人の願いを叶える代わりにその人は魔法少女になるっていう契約を結ぶ個性だ。』
『願い……』
『でも、魔法少女になる事には色々と注意しないといけない要素があって……』
久兵衛ちゃんの話を遮るように3つ目のナタが飛んできて…久兵衛ちゃんの頭に掠った。
最近久兵衛ちゃんの頭に生え始めた白銀のケモミミとそこから伸びる副腕が宙を舞う。
続けざまに4つ目のナタが飛んでくる。私は、なんとか久兵衛ちゃんの前に出ようとしたけど……
それよりも、久兵衛ちゃんの身体にナタがたどり着くのが速くて……
ボクが見た時には
既に久兵衛ちゃんの胴体は
上下に別れてしまっていた…
「おうおう……テキトーに投げたが、まさか当たっているとはなぁ……それもこれも遊んでくれないテメーらが悪いんだぜ?」
ヴィランが扉を開け放ってこちらに歩いてくる。
そんな事はどうでも良い。
今、コイツはなんて言った…?
「久兵衛ちゃんがこうなったのは、ボクのせい…?」
「おう、そうだとも。テメーがすぐに俺様の前まできて、戦ってくれれば、少なくともソイツはこうならなかったぜ」
それって、ボクが無個性だから、久兵衛ちゃんが死んだってこと……?
そんな、
だって、、
、でも
え?
いや、 ありえない
しょうがないじゃないか
無個性でどうやれっていうんだよ
ボクに個性があったら……
わかっている。いつも妄想していた事だ。
炎が出せたら、ナタを焼き払えただろう。
氷が出せたら、壁を作れただろう。
重力を重くしてナタを落としてしまうのも良い。
なんなら空中でナタをバラバラに分解してしまうのも有効だろう。
あの個性があれば。
その個性があれば。
ボクに個性があれば。
そう考えなかった日は無い。
そうだ。
ボクに個性があったら
オールマイトみたいに、全部を救えたんだ
『いいや、まだ諦めちゃ駄目だ。
キミの願いは一体なんだい?』
おかしいな…久兵衛ちゃんの声が聞こえるや。
いや、コレは、ボクの妄想の声だ。
願い……そんなもの、決まってる。
「ゴメンね久兵衛ちゃん。
キミをたすけられなかったボクだけど……聞いて欲しい。
ボクの願いは久兵衛ちゃんを助ける事。それが出来る、ヒーローになる事。
だから、そのために……
オールマイトのように、
……それが、ボクの願いだ。」
「……あん?いきなり何言って…」
半ばヤケクソで言い放った言葉。
それは確かにボクの”願い”だった。
でも、願うだけでは叶うことは無い。
ましてやこんな目の前にヴィランがいるような状況で、都合よく個性が発言するなんて夢物語だ。
でも、次の瞬間、視界が光に包まれて……
「おめでとう、キミの願いは今、たしかにエントロピーを凌駕した」
あれ?おかしいな……目の前の久兵衛ちゃんの怪我が急速に治っていく。
まるで世界が
よく見てみると、ボクの服もさっきまでの部屋着じゃなくて、やたらフリルがついた露出が高くてかっこかわいい服になってるし……あと、なんか胸元に大きな緑色の宝石のブローチがついてる。
コレが……魔法、少女?
「ッ!!なんだかよくわからんが……喰らえ!!」
さっきまで放心状態だったヴィランはまた久兵衛ちゃんに向かってナタを投げてきた。
咄嗟に久兵衛ちゃんの前に出る。
今度は間に合った。
…というか、こんなにナタって飛んでくるの遅かったっけ?
取りあえず、このままだとボクもナタで真っ二つになってしまうので軌道修正を……
「フッ!!」
「はぁ!?嘘だろ…!?」
そう思ってナタの側面に拳を叩き込んだらナタが粉々に砕けた。
ヴィランが両目を限界以上にまで開いて驚いているが、正直ボクも同じぐらい驚いてる。
「そう、それが魔法少女の素の身体能力だ。でも、コレはあくまでオマケ。その内なる力はそんなモノでは無いはずだよ。さぁキミの力を解き放ってごらん」
久兵衛ちゃんに言われたとおりに、念じる。
この力を解き放つ。
すると、緑色の光が集まって片手に収まるサイズの小さな弓になった。
弓なんて触ったこともないけれど…なんとなく、使い方はわかる。
未だにあっけにとられているヴィランに向けて弓の弦を引くと、何も持ってなかった左手に緑色の光の矢が生成される。
それと共に弓から緑色の光の帯が広がっていって、ヴィランを拘束した。
矢に意識して力を込めると、どんどんとその光の量は強くなっていって……
最大まで溜まった所で…解き放つ。
Thorny Sagittarius SMASH
その一撃は、ヴィランの半身を一瞬で溶かし尽くし、久兵衛ちゃんの家の壁に半径三メートルほどの大穴を開けた。
地上50階層のタワーマンションの30階だったから他に被害は出なかったものの……あの一瞬でこんな事が出来るなんて恐ろしい火力だ。
ヴィランの身体は左腕と左足が消し飛んでいるが、その切断面は高温で焼き固められているおかげで血が出るような事はない。どうやら、大量出血で死ぬなんて事はなさそうだ。
最後、すこし照準をズラしていなかったら跡形も残らず消えていただろう。
危ない危ない。彼にはしっかりと罪を償ってもらわなければ…
「まさか…これほどの威力とは……
さっきのが最大チャージだとしてティロ・フィナーレ三発分程度の火力か?
契約したばかりなのに…?
いやはや……流石は主人公………矢が魔力エネルギーの塊なあたり、タルトみたいな公式チートに育ちそうだ。」
だけど、そんな事はどうでもいい。ヴィランとか、この力とか、穴が空いたこの家の中だとか
そんな事はどうでも良いんだ。
それだけで、ボクは…ボクは……もう。
幸い、ここにはボクと久兵衛ちゃん以外、誰も居ない。
何も我慢する必要は無いのだ。
「……ッき゛ゅ゛う゛へ゛ぇ゛ぇ゛「私が来たッ!!君たちさっき凄い光が出てたけど大丈夫か…い……って…コレはどういう状況なんだい…?」
…………邪魔が入った。
ムカついたので一発ぶん殴った。
身構えもしていなかったオールマイトは割と簡単に吹っ飛んで、壁の大穴から外へと落ちていった。
その後、気絶してたヴィランは戻ってきたオールマイトによって捕縛され、ボク達は保護された。(久兵衛ちゃんが止めてなかったら危うく私もヴィランとして捕まる所だった。危ない危ない……)
血だらけになって倒れていた久兵衛ちゃんのお母さん達はオールマイトによると、幸いどれも致命的な怪我は無かったみたい。
だけど、失血が酷くてあと数分ももたないらしい。
でも、久兵衛ちゃんの言うとおりに『固有魔法』ってのを使ってみたら生き返らせることが出来た。
ボクの『固有魔法』は『逆行』というモノなんだとか。
ヴィランにやられて真っ二つになった久兵衛ちゃんや体中が中途半端に傷つけられて失血死しそうになっていたお母さん達を生き返らせる事が出来たのは、今にも死にゆく身体を『逆行』させて生へと向かわせたかららしい。
その光景にオールマイトはすっごい驚いてた。
で、警察に事情聴取されたりだとか、(主に壁の穴について。最終的には個性が招いた不幸な事故ということで片付けてもらった。)そのまま個性の事を警察病院で調べ直してもらったとか(検査の結果、『個性』は『無個性』のままで病院が騒然とした。)
まぁなんやかんやかんやなんや色々とバタバタしたけれど、なんとか日常に戻る事が出来た。
しかも!!なんとお隣に久兵衛ちゃんが引っ越してきた!!(まぁ普通に考えてあんな大穴空いたマンションじゃあもう住めないもんね…)
もう嬉しくて嬉しくて……ボクが意地でも久兵衛ちゃんを離さないからその日は久兵衛ちゃんがボクの家に泊まることになった。
自分でもワガママだと思うけど、ハッキリ言って、この欲望を制御する事なんて出来ない。
本当に、お母さん達には感謝しかないね。
久兵衛ちゃんの匂いに包まれて眠ると凄い良い夢が見られるだろう。
そしてその日の夜。ボクは久兵衛ちゃんからあの時言いかけてた『魔法少女のデメリット』について教えてもらった。
うん。まぁ別に……
特に気にする事でもないかな?
久兵衛ちゃんは何回も『説明不足になってしまってゴメン』って謝ってたけど、ボクにとってはあの場ですぐに契約していなかったら久兵衛ちゃんを生き返らせる事も、ヴィランを倒す事も出来なかったんだ。
あの選択に後悔はしていないし、無個性のボクがこんな力を使えるようになっただけで、そんなデメリットなんて消し飛んでしまうくらいのメリットだ。
それに、ボク自身がこのソウルジェム…?っていう宝石に変わったんならソレむしろメリットなんじゃないかな?
だってコレさえ無事なら死なないんでしょ?
別にゾンビみたいなモノって言っても……異形型の個性と比べれば全然人間らしいし………
あとは何だっけ…?
あぁ、そうそう。魔力を使いすぎるとソウルジェムに穢れが溜まって魔女っていう化け物になっちゃうんだっけ?
でも久兵衛ちゃんがその穢れってのを回収してくれるんでしょ?
なら、ボクとしては何も問題はないかな。
え?とりあえずこれまでで溜まった分の穢れを回収する?
うん。わかった。
うん?ね、ねぇ…なんか顔が近いんじゃ…
って、んにゃむっ…ッ!?!?!??!!!??!?????!?!!?!??!?!!!??
………ップハッ
ハァ……ハァ………はふぇ……?
こ、これが…穢れの回収……
久兵衛ちゃんの中は、想像していたモノよりも甘かった。
結局、その後は二人共一睡もする事が出来なかった。
でも目の下のクマと引き換えに、私達はこれまでとは全く違う、決して切れない確固たる繋がりで結ばれる事になった。
あぁ、ボクは……いや、私はなんて幸せなのだろう。
陰久兵衛、ついにやってしまった(二重の意味で)
次回、「雄英入学」
追記 11/5(金)
スミマセン、誤入力です。
まだ入学しません
次回は「二人目の魔法少女」もしくは「爆豪勝己という漢」になります
どちらになるかはまだ未定ですが、もう少し本編前にお付き合い下さい
(なお、今の所爆豪君や轟君は女体化させる予定はありません)