皆様元気にしておられたでしょうか?
それでは本日から『片翼の撃墜王』の短編集の開始です!
いつまで続くかわかりませんが、
どうぞお楽しみください!!
諸君は小説や漫画などを読んでいる時に、こんな言葉に出会ったことはないだろうか?
「女は戦場に出てくるな!!」
これはまぁ言ってみれば、ロマン史上主義の男性という生き物の見栄がつまった言葉であり、要するに
「俺はお前達より強いんだ!だからお前達は素直に守られていろ!バカ!!」
というツンデレめいた意味でも解釈できる言葉なのだが…まぁ現実的な意味で説得力がないわけでもない。
実際女性と男性の身体構造を比較した時に、前者よりも後者の方が筋肉量が上というのは事実であるし、故に肉体的な頑強さという面では、女性よりも男性の方が強い傾向にあるというのは事実だ。
だからこそ、古来より身体能力的な面で有利な男が、狩りのような物理的な命のやり取りをしていたという歴史があり、そこから転じて古来よりの男の聖域を犯すなという言説にはある程度説得力がある。
要するに、戦場に足手まといになるような弱い人間は不要なのだ。
だが、一口に戦場と言ってもその種類は千差万別だ。
何も鉄風雷火の吹きすさぶ場所だけが戦場と言うわけではない。
例えば料理人という種類の人間にとって、戦場とは乱れ飛ぶ客の注文にその都度対応し、その場に合わせて自らの技量を適切かつ全力で振るわなければならないキッチンのことをさすだろう。
また、どこぞの関西弁の葦毛のウマ娘にとって、戦場とは走る西松屋、でちゅねの悪魔からの逃避行の中にこそあるだろう…。
(「?どうしたタマ?顔が真っ青だぞ?」
「なんか今、おぞましいことが聞こえた気がしてな…」)
つまり、この言葉は一見正しいようで、実は正しくない。
男であれ女であれ、人は皆何かしらの戦場で戦っている。
料理人にとっての戦場、タマモクロスにとっての戦場…それらに本来なら優劣はない
(「大有りや、このどあほぅ!」
「ホントにどうしたんだ?タマ?今度は虚空に向かって喋りだして…」)
故に、先の言葉は決して不変の真理にはなりえない。
男だけではない、女が戦わなければならない戦場もある。個々人にとっての各々の戦場があるならば、逆に言うとそこに不相応な者が割り込むことこそが、無粋なのだ。
「はぁっ、はぁっ…」
だとしたら…
突如として閃光が走る。周囲の空間が爆発し、爆風がアタシを襲う。
「くっ!?」
そしてそれにアタシが足を止めた一瞬の隙を狙い、一つの影がアタシへ向けて疾走する。
「もらったぁぁぁぁぁっっっ!!」
神速の踏み込みと共に放たれる必殺の一撃に、アタシは反応できない。
(しまった!!)
己の不覚を呪うと共に、アタシが目を閉じた瞬間だった。
ドォォォォオオオオオオオッッッッ!!
目の前を轟音と共に、大質量の何かが通りすぎる
「なっ!?」
「ちぃっ!新手かい!!」
それは目の前の空間を凪払い、アタシの窮地を救ったが、相手もさるもの。ギリギリのところで不意打ちを察知し、回避に徹することで何とかその攻撃を裁ききる。
だがそれでも、それは他ならぬこのアタシの目の前で、一瞬でも無防備な姿を晒してしまったということで…
「!!しまっ…」
「遅い!」
相手は目を見開くが、もう遅い!
さっきとは逆に、今度はアタシが大地を踏み砕く震脚と共に、相手の懐に飛び込む。
そしてそこから放たれるのは天地鳴動の一撃。
振り絞られたアタシの拳に込められた、超新星爆発並みのエネルギーが一気に指向性を持って解き放たれ…
「吹き飛べぇぇぇえええ!!」
「がはぁぁぁあああっっっ!!」
相手の体に炸裂する。
そして、それをまともに喰らった襲撃者は、耐えきれずに衝撃で遥か彼方へと飛んでいく。
「はぁっ、はぁっ…」
息を整える。
流石にあの程度で倒したとは思っていない。これでもこの場所に集う猛者の1人だ。しばらくの間は動けないだろうが、時を置けばまたすぐに襲ってくるだろう。
そう、ここは世に言う魔界の一丁目。商店街のスーパーのバーゲンセール。特売の品を求めて海千山千の歴戦のおばちゃん達が跳梁跋扈する、まさに女の戦場。そんな地獄の戦場の片隅でアタシが息を整えていると…
「ちょっと、大丈夫?ネイチャ?」
「先輩…」
駆けてきたのはアタシのトレセン学園の先輩にして、このバーゲンセールの常連のアイネスフウジン先輩だ。
「どうしたのネイチャ?いつものキレがないよ?」
そう問う先輩に…
「たはは、すいません助けていただいて…」
と礼を言う。
そう、この先輩はこの戦場の常連で、アタシも何度かお世話になっている。
さっき助けてくれたのもこの先輩だろう。だからこそ、アタシはお礼を言ったのだが…
「…ねぇ、ネイチャ?何か悩み事があるなら聞くよ?」
この先輩はそれを一向に介さずこちらの心配をしてくる。
「…ここだけじゃなくて、トレセンでも最近元気ないよね?一体どうしたの?」
そう親身になって問いかけてくる先輩に…
「…いえ、大丈夫です。先輩」
そう答え、アタシは前に一歩進み出す。
今日のバーゲンセールもすでに佳境だ。卵にトイレットペーパーに、牛乳、粗方の品の争奪戦はすでに終わりかけている。であるならば残るは…
「…!」
そこまで考えた瞬間に、スーパーの店内放送が始まる。それはつまり、今日の特売の目玉がついに姿を現すということで…
「…幸いにも今日は、町内会の旅行で強者がほとんど出払っています。残っている実力者は、黄金の田中さんと灰塵の山田さん、無限の鈴木さん位でしょう」
そう言いつつ、アタシは全身に力を張り巡らせる。
「…であれば、全力で取りに行くべきです。ここまでのチャンスは滅多にありませんから…」
「…ネイチャ」
…心配そうな顔でこちらを見てくる先輩の顔をあえて見ないようにしながら、アタシはその時を待つ。
気が付くと、さっきまであれだけの激闘が繰り広げられていたスーパーの中は、すっかり静まり返っている。それはまるで、嵐の前の静けさのような、緊張感を孕んだもので…
(…すいません、先輩)
そんな張り詰めた糸のように緊迫した空気の中で、アタシは先輩に謝る。
(…だってこれは、流石に先輩に相談できませんよ…)
なぜなら…
その瞬間
「それでは今日の最後のタイムセールです!!」
「!!」
その言葉に、スーパーの中の全ての人間が反応する。そして
「本日の目玉、食器用洗剤!お一人様2個まで!」
その言葉と共に…
「はぁぁぁぁああぁぁぁっっ!!」
「おおおおおおおぉぉぉぉおおっっ!!」
おばちゃん達が一斉に飛び出す。
だれよりも早く目玉商品をゲットしようと、電光石火のごとき速さで飛び出したから…
「っ!!」
アタシも飛び出す。
近くにいた先輩もまた、かつての日本ダービーの時のスタートダッシュに勝るとも劣らない、最高のスタートダッシュを決めて走り出す。
そして始まる本日最後の戦場。
今日の目玉の食器用洗剤(一個102円)
の並ぶブースへと飛び出しながら…
(…言えない…言えるわけがない)
アタシは…
(最近トレーナーさんとの仲がギクシャクしてるなんて、言えるわけがないよぉぉぉっっっ!!)
心の中で絶叫しながら、渾身の拳を放つのだった。
…これウマ娘だよね?
ちなみに
黄金の田中さん:なんかすごい槍の聖〇物っぽいもので、世界を破壊しだすおばちゃん
最近の趣味は浅漬けで、アボカドを漬けようとして家族に止められた
灰燼の山田さん:なんかすごい残〇の太刀っぽいもので、世界を燃やし出すおばちゃん
最近の趣味は書道で、そろそろ何かの大会に作品を出そうかしらと画策している
無限の鈴木さん:なんかすごい無限の〇製っぽいもので、世界を塗りつぶし出すおばちゃん
最近の趣味は陶芸で、ちょっと前にかなり良いものができたのでご満悦
うん、皆さん幸せそうで何よりです(白目)