片翼の撃墜王 外伝集   作:DX鶏がらスープ

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ウマ娘のキャラクターは全員好きですが、
それでも作者は基本マヤちゃん推しなので、
新しいウマ娘が出てもあまり積極的に引きに行くタイプではないです。

だから、その分石を貯めて、
アニバーサリーなどのイベントや、
いつか来るであろうマヤちゃんのSSRに備えているのですが…

メジロブライト…良いですよね…
デザインから性格から、作者の性癖にぶっ刺さりまくりです。



…(出たら貯金崩して引――…「作者ちゃん?」…――くわけないじゃないですかマヤちゃん!!作者はマヤちゃん一筋ですよ!!(冷や汗だらだら)








…とか言ってたら、マジでマヤちゃんのSSR来ましたね(なお、上の文章書いたのはちょうど3日くらい前)。
全く予想してなかったので、流石にびっくりしましたし、
おかげで前書きも再編集です(白目)

…え?それで結局引けたのかって?





???「当然正位置ぃぃぃぃぃっっっ!!」(60連)





…やはり祈禱力、祈禱力はすべてを解決する!!




王宮の黎明 丘の上で

 

 

ピーヒョロロロロロロロロ…

 

 

 

見上げた空を、鳶が飛んでいく。

 

都会で見かけることのない種類のその鳥は、田舎特有の広すぎるほどに広い空を、気持ち良さそうに飛んでいく。

 

…それを見て思うのは、この鳥はきっとこの空でしか生きられないのだろうということだ。

 

別にそれ自体は珍しいことじゃない。淡水魚が海では生きられないように、人間が空気のない宇宙では生きられないように、どんな生物にだって、生きられる限界の領域というものは存在する。

それを考えるなら、ろくなエサのない都会の狭い空で、この鳥が生き抜くことが出来ないだろう、という予想は別に奇異なものではないだろう。

 

それにきっと、この鳥にとってもその方が幸せであることなど、言うまでもない。どうしてわざわざ、好き好んで自分が暮らしにくいところで暮らさなければいけないのだろうか?そんな誰も幸せにならない選択をするくらいなら、最初から自分が

一番幸せになれる場所にいるという選択をする方が、ずっと賢い選択だ。

 

 

 

井の中の蛙大海を知らず。

 

 

 

世間の人々は、あまり外に出ない人に、どうしてもっと外に出ない、挑戦しなければ幸福にはなれないと、さも真理の如く言うが…この言葉には実は続きがある。

 

 

 

井の中の蛙大海を知らず。

 

…然れど、空の青さを知る。

 

 

 

成る程、確かに挑戦がなければその先の幸福には至れないというのは真理ではあるだろう。だが忘れてはいけないのは、幸福というものは単一のものではなく、個々人に見合った様々な形があるということである。

 

であるならば、挑戦こそが至高であるというのは、物事の一面しか見ていない言葉である。

いやむしろ、例えばライト兄弟に至るまでに人類が積み上げてきた、空中飛行の試みの屍の山の数を見るのなら、それすら疑わしい。

 

…忘れられがちだが、挑戦というもののには失敗がつきものだ。そして、その挑戦が無謀なものであればあるほど、それに失敗した時に自分に跳ね返ってくる代償は大きくなる。

地球は丸い、かつてそう言った人間が、何人その尊い命を処刑台の上で散らしていっただろうか?

 

そう考えるなら、今目の前を飛ぶ鳶は、ここで満足するべきなのだ。

 

このどこまでも広い空の下で、どこまでも果てなく、好きなだけ飛び、やがて番を作り、幸福の内にその生を閉じる。次代に自身の生きた証を託し、自身の生に満足して死んでいく…そんな普通で、平凡で、ありきたりで…それでも本人にとってはこれ以上ないほどに満ち足りた生を、一体誰が否定できるというのだろうか?

 

(…それでも)

 

わたしは天を舞う鳥に手を伸ばす

 

(……それでも、都会に住みたいと)

 

自分に合わない、けれどもここではない空を飛びたいと、仮にあの鳥がそう願ったのなら…

 

そこまで考えたときだった。

 

 

 

 

「…――もう!聞いてるの!?」

 

「!!」

 

唐突に隣から聞こえた声に、ビクッとしながら振り向くと…

 

「何だかんだ言っても、やっぱり色々手伝ってくれてありがとうって、お礼を言ってるのに!

無視するのは流石にひどいんじゃないかな!!」

 

そうぷりぷり怒るマヤノがこっちを睨んでいたから…

 

「ご、ごめんっ!わ、わざとじゃなくて!!」

 

そう言ってわたしは慌ててマヤノに謝罪する。

そして、「そんな意地悪するなら、マヤももう、なんにもしゃべってあ~げない!!」なんて言いながらつーんとそっぽを向くマヤノの機嫌を、なんとかわたしが宥めようとしているのを尻目に、我が生涯のライバルは、わたしの膝の上であくびをしている。

 

気がつけば、さっきの鳶はもうどこかに飛び去ったみたいで、空はただただ青く、そしてどこまでも広がっている。

そして、同じく地平線の彼方まで広がる田園地帯には、穏やかな風が吹き抜け、葉がスレ合いさわさわと音を立てている。そんなのんびりとした情景を一望できる小高い丘の上で、すねるマヤノにわたしは必死に謝罪をする。

 

…そう、ここはとあるお寺の裏手の墓地。あの後、お坊さんと出会って少し話した後、そこの一角にわたしを連れてきたマヤノは、そこに並ぶ墓石の一つを、自身のトレーナーが眠る場所だと紹介した。

そして、そのまま自身の怪我もかえりみず、墓石の掃除を始めようとしたものだから、慌ててわたしがマヤノを止め、花の交換やお線香を供えるような作業以外を、全部わたしが代わりにやったのだ。

 

まぁ、ここにつくまでもマヤノの荷物を預かっていたから、その延長線みたいなものだったし、流石に松葉杖をつかなきゃいけないような状態の人間が、それでも怪我を庇いながらも膝立ちになって、一生懸命墓石を拭いているのを棒立ちで黙って見ていられる程、わたしは薄情な人間ではないつもりだ。

 

だからこそ、これは自分の仕事だと言い張るマヤノに、それでも無理を言って、一部の立ち歩かなくても大丈夫な作業以外を全部わたしが代行し、それに対して少し複雑そうにしながらも、それでもマヤノはちゃんとわたしにお礼を言ってくれていたみたいなんだけど…

 

「ふーんだ!」

 

作業が終わり、マヤノのお墓参りも終わって、近くの草むらにハンカチをひいて昼御飯、というところでなんとなくぼーっとしてしまったわたしは、うっかりそんなマヤノのお礼を聞き流してしまい、今に至るというわけなのだ。

 

「にゃ~ん…」

 

そんなわたしとマヤノのちょっとした修羅場をものともせず、我が生涯のライバルは、わたしの膝の上で、のんびりと午睡にふける。その様は実にリラックスしたもので、マヤノの機嫌をとろうと必死になっている今のわたしからしたら、正直涙目な光景だ。

 

…こ、この子は!…人の気持ちも知らないで…!!

 

思わずそんなことを考えて、少しイラッとしてしまう。

 

…でも、この子がそんなにも穏やかに昼寝できるのも、考えてみれば当然の話だ。

 

どこまでも広がる空と、田園地帯を一望できるこの場所は、この辺で一番高い(と言っても、丘だからたかが知れているが)ところだからか、気持ちの良い風が吹き抜ける。

そして、昼下がりの暖かな陽気と、人口の音が一切しない静かな空間。

正直わたしも、こういう状況でなければ、ちょっと眠くなってしまう程だ。

 

だから…

 

「…それにしても、良い場所だね?ここ」

 

なんとか機嫌を直してくれたマヤノにそう言ってみると、マヤノも少し目を細めて彼方を眺めながら返してくれる

 

「…でしょ?もともとトレーナーちゃんがお墓の権利を持っていた場所なんだって」

 

そう言いつつ、マヤノは少しおかしそうに笑う

 

「まったく…

まだ20代だったのに、一体どうやってこんなところ良いところ見つけてきてたんだろうね?」

 

こんなところにまで、かっこつけなくても良いのにね?

 

なんて、どこか彼女が愛おしそうに言うから…

 

「…どんな人だったの?」

 

そうわたしが聞くと

 

「…バカな人だね♡」

 

そんなヒドイことを、それでも楽しそうに彼女は語り出す

 

「とってもカッコつけで、それでも絶望的にセンスがなくて、やることなすこと全部空回り。

おまけに実はできる人なのに、詰めが甘いせいで、いつもちょっとしたことで失敗する。

 

…本人的にはハードボイルドな良いオトコの人を目指してたみたいだけど、全然そんな風にはなりきれない、そんな残念な人だったよ」

 

でもね…

 

「…それでも、本当はとっても優しい人。

ウマ娘の、そしてマヤのことをいつも一番に考えてくれてる人」

 

そう続ける彼女の目は

 

「何度失敗しても、いつでも楽しそうにしてる、いつでも前を向いている…そんな人だったよ」

 

先の言葉とは正反対に、

とても優しいものだったから…

 

「…大切な人だったんだね?」

 

言葉の端々から溢れ出す、

マヤノの、自身のトレーナーへの暖かな親愛の情に、思わずそんなことを聞くと

 

「………うん、そうだよ」

 

マヤノはそう静かに言うと

 

「…マヤはね、トレーナーちゃんのことが大好きなの!」

 

そう言って立ち上がる

 

「だからね、約束したんだ!マヤは絶対に自分の夢を叶えるって!キラキラしたオトナのウマ娘になって、マヤを応援してくれるみんなもキラキラさせるって!!」

 

そう言って松葉杖を手に、彼女のトレーナーの墓石の前まで歩いていったマヤノは振り返る。

そして、振り返った彼女の顔には…

 

「そうやって、マヤはいつかトレーナーちゃんの前で胸を張るんだ!

キミの愛バはこんなにもスゴいんだぞって!マヤはもうこどもじゃなくて、立派なオトナのウマ娘なんだぞ、って!!」

 

…とってもかわいらしい満面の笑顔が浮かんでいて…

 

「だから、マヤは走り続けるんだ!

いつかまた、トレーナーちゃんに会えるその時まで!!」

 

そして、その言葉からは間違いなく、かつてわたしが憧れた片翼の撃墜王、その本物の覚悟と決意を感じとることができたから…

 

「………強いんだね、マヤノは」

 

そのあまりにもキラキラした姿を、

わたしは直視できない。

思わず少しだけ目をそらしてしまう。

 

だけど

 

「…ううん、マヤは別に強くないよ」

 

わたしの言葉を聞いたマヤノは、首を横に振る

 

「皆がいたから、マヤはもう一度立ち上がることができた。

皆がいたから、マヤはここまで歩いてこれた。

…一人だったら、とっくに潰れちゃってるよ

 

…だからね?」

 

わたしの言葉を、皆がいたからこそだ、と彼女は否定する。

 

そして次に彼女が言ったのは…

 

「...ねぇ?キミもマヤに話してみない?」

 

そんな思いもよらない言葉で…

 

「………え、えっと…何のこと?」

 

突然のことにわたしは意味がわからず、

思わずそう聞き返すが

 

「別に隠さなくても良いんだよ?ここにはマヤとトレーナーちゃんしかいない。

他の誰も聞いてないよ」

 

そうマヤノは言うと

 

「…何か、悩んでることがあるんでしょ?」

 

そんな誰にも言ってないはずのことを、あっさりと口にしたものだから

 

「…ど、どうして?」

 

否定すれば良いものを、

わたしはバカ正直にその理由を聞いてしまう。

それでなにがどうなるわけでもないのに、それでも驚きのあまり、わたしは思わずそんな言葉を口に出してしまう。

 

…そう、わたしは自分の悩みを誰にも話していない。

寮の同室の子はもちろん、

トレーナーや親兄弟に至るまで、

わたしの知り合いには誰一人として、そんなことを匂わせたことすらない。

それは当然マヤノに対してでもそうだし、ましてまだこの子とは出会って1日も経っていない。

それなのに、なぜ?

 

そう困惑するわたしにマヤノはしかし、

 

「…ごめんね?でもなんか、わか・・っちゃって…具体的な内容までは分からないけど、キミが何かについて悩んでるのが、一緒にいるとなぜかわか・・っちゃって…」

 

そう申し訳なさそうに言うマヤノに、わたしは絶句する。

…確かに、彼女が天才だというのは有名な話だったけど、まさかこんな短時間で、詳細までは掴めずとも悩みがあることを見抜かれるなんて思わなかった。

 

だけど…

 

「…でもね?それについては謝るけど、やっぱり悩みを一人で抱え込んだままにするのは、良くないと思うんだ」

 

そう言って心配そうな顔をするマヤノは

 

「さっきも言ったとおり、ここにはマヤとトレーナーちゃんしかいない。

他の人に聞かれる心配はないよ。

それにね…」

 

まだ会って数時間程度でしかない仲のはずなのに

 

「会ってからまだ少ししか経ってないけど、それでもキミはずっとマヤのことを手伝ってくれた。

…そりゃ、今の状況だとキミにはマヤしか頼れる人がいないってのは事実だろうけど、それでもわざわざマヤを手伝う必要はないよね?特にさっきのお墓の掃除なんて、ただ見てるだけでもマヤは別に怒らなかったよ?」

 

本気でわたしのことを心配してくれているのがわかったから

 

だからこそ、わたしの心は揺らぐ。

ほとんど初対面にも関わらず、こんなにもわたしのことを心配してくれるこの人になら、打ち明けても良いのではないかって思えてくる。

 

…それに

 

「だから、マヤはそんなキミの優しさに、何か恩返しがしたい。

マヤに出来ることなんてなんにもないけど、せめてキミの中にある悩みを聞いてあげたい。その痛みを、苦しみを、共有することで軽くしてあげたい。

…そして、何より…」

 

…そう、何より

 

「…なんでかな?本当に不思議なんだけど、何故かキミとは他人の気がしない。なんだか放っておけないんだよ!」

 

…あぁ、そうだ。それはわたしも同じなのだ。

初めて会った瞬間からわたしも思っていた。この人は、わたしにとって他人じゃない。血の繋がりなんてまったくないはずなのに、それでも何か運命的なものを感じずにはいられないのだ。

 

風が吹く。

私たち以外誰もいない墓地には、

当然の如く、静寂が満ちている。

 

だがしかし

 

「にゃ~ん…」

 

ふと気付くと、わたしの膝の上で寝ていたはずの猫が、わたしを見つめている。その綺麗な瞳には、どこかわたしを案じるような光が宿っていて...

 

「…」

 

だからわたしも覚悟を決める。

 

…正直、ものすごく不安である。

マヤノが人の悩みを嗤うような人間でないことは、直接触れ合って良く分かっている。恐らく、彼女は本当に真摯にわたしの話を聞いてくれるだろう。

 

だけど、だからこそ不安だ。

さっきの話を聞いて、マヤノにとってどれだけ自身のトレーナーが大事な人だったのかは痛いほどに分かった。

そして、それ故にそれを失った時の絶望と悲しみもまた、どれだけのものだったかは察するに余りある。

だから、そんな恐ろしく過酷な試練を乗り越えたのであろう彼女に、それに比べれば確実に低次元のものであろう自分の悩みなんかを、打ち明けても良いのだろうか、と思ってしまう。

 

そもそも、人に悩みを打ち明ける、その行為自体が不安で不安で仕方がないのだ。

 

でも…

 

(この人なら…)

 

そう、この人なら、いきなりタイムスリップしてしまったわたしの話をまったく疑わず、あまつこちらの心配さえしてくれる、そんな優しいこの人になら、話してみても良いかもしれない。頼ってみても良いかもしれない。

 

(それに…)

 

わたしの勘が言ってるのだ。

この人に話せと、悪いことにはならないから、と。

 

であるのならば…

 

「…それじゃあ、聞いてもらっても良いかな?マヤノ?」

 

そうわたしが言うと

 

「…!!

うん!マヤに任せて!何でも聞いちゃうよ!!」

 

嬉しそうにマヤノはこっちに戻ってきて隣に座る。

だからわたしは…

 

「…あのね…」

 

高く、高く広がる空の果てを眺める。もうそこにはさっきの鳶はいない。だけど…

 

(きっと…)

 

それでもきっと…

たとえ見えなくても、

あの鳥はきっと、まだ同じ空を飛んでいるって思ったから…

 

わたしは自らの悩みを切り出し始めるのだった。

 

 

 




…ちなみに、流石に普通なら、いくらマヤちゃんでも、
会って数時間程度の人間が深刻な悩みを抱えているなんて看破できません。

???「これも全て、ウマソウルって奴の仕業なんだ!!」


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