「それでマヤ達に相談に来たってことなのね?マベちん?」
「うん…」
事情を聞いたマヤがそう聞くと、マベちんは心配そうに頷く。
それを見ると、元々冗談とかだとは思っていないけど、本当にマベちんが困ってるんだなってことがマヤにも分かる。だから、できるならマヤも何とかしてあげたいって思うんだけど...
(う~ん、実際マヤにもよくわかんないんだよね…)
そう思いながらマヤは腕を組む。
今日のトレセンの授業が終わった後、マヤとテイオーちゃんは突然マベちんに呼び止められた。
何か話があるってことで、おまけにその内容もネイチャちゃんのことだってことだったから、ネイチャちゃんがいない時に部屋に来てもらってお話を聞いたんだけど...
(う~ん、マヤにも心当たりがないんだよね…)
残念ながら、その話を聞いてもマヤは良い考えが思い浮かばない。
って言うのも、マベちんから聞いたのは、マヤが不思議に思っていたことそのものだったからだ。
…最近ネイチャちゃんの様子がおかしい。
多分ついこの間の休日からだと思うんだけど、なんかネイチャちゃんの様子が変なのだ。
妙にそわそわしてるというか、浮き足だっているっていうか…
かと思うと、いきなりものすごく落ち込んだり、そうかと思えばやたらとテンションが高くなったり…はっきり言ってネイチャちゃんらしくない。
だから、マヤも一体どうしたんだろうって不思議に思ってて、そろそろネイチャちゃん本人に聞いてみようかとも思ってたんだけど…
「...う~ん、もしかしたらアレかな?」
残念ながら、マヤには心当たりがない。
どころか、マベちんにも心当たりがないのなら、本格的にマヤにも分かんない。
そう思っていると、マヤの向かいのベッドに座っていたテイオーちゃんが、何かを思い付いたような顔をする。
「テイオーちゃん、何か心当たりがあるの?」
「うん。
…これ他の人には絶対に言わないでほしいんだけど、実はね…」
そう話し出すテイオーちゃんの話を聞いて、マヤもマーベラスも驚く。
「え!?ネイチャ、トレーナーとデートに行ってたの!?」
「しー!!
声が大きいよ!マーベラス!!」
「あっ、ゴメン」
思わず大きな声を出してしまったマーベラスを、テイオーちゃんが勇める。
けど…
(…う~ん、それならもう絶対そのこと関連で間違いないよね…)
と言うか、そうでないと説明がつかない。
…別にトレーナーと担当ウマ娘が一緒に出かけるってのは珍しいことじゃない。
現に、マヤもトレーナーちゃんが生きてた頃はよく連れ回してたし、他の子も程度の差はあっても、それなりに自分のトレーナーと外出してるはず。
まぁ、トレーナーと担当ウマ娘は一心同体って良く言うしね。
お互いにお互いのことを理解しなきゃいけないから、トレセンも担当ウマ娘とトレーナーが仲良くなることはむしろ推奨してることだし、だからこそ、トレーナーと一緒という理由だと、一人だと少し面倒な外出許可が取りやすいっていうのも事実。
そしてそうでなくても、例えば蹄鉄の買い換えとか、雑誌やテレビの取材なんかの理由で、その道の専門家、あるいは保護者的な立ち位置の担当トレーナーと、ウマ娘が一緒に出かけることは意外と多いのだ。
だから、別にネイチャちゃんがトレーナーと出かけただけだって言うのなら、マヤも何も思わない。
そんなに珍しいことじゃないからね。
でも、デートとなると話は別だ。
…いやまぁ、確かにマヤもトレーナーちゃんをデートだって行って連れ回してたけど…今思えばそれはオトナなオンナに憧れて、その真似がしてみたくて言ってただけだ。本当のデートじゃない。
好きな人がいて、その人と過ごす特別な時間、それがデートだ。
それは、単なるお出かけなんかと一緒にして良いものじゃない。
マヤ達ウマ娘にとって…ううん、すべての女の子にとって、それは掛け替えのない時間であって、同時に勝負の時間でもあるのだから。
だから、もし本当にネイチャちゃんがデートっていう意識をもってトレーナーと出かけたのなら、それは覚悟が違う。
きっと彼女はそこに何らかの思惑を持って臨んだはずなんだ。
だからこそ、もしテイオーちゃんの話が正しいなら、多分そこで何かがあったんだと思う。
そうでなきゃ、普段冷静なネイチャちゃんが、あそこまで取り乱すなんてありえない。
…と言うわけで
「何があったの?ネイチャちゃん?」
「…とりあえずテイオーを絞めてからで良い?」
「ご、ごめんってネイチャ!」
マヤがそう聞くと、話を聞いたネイチャちゃんは、秘密をあっさり漏らしたテイオーちゃんに青筋を立てながらニッコリと微笑む。
それを見たテイオーちゃんは、マヤの後に張り付いてぶるぶる怯えているけど…
「でもでも、今回ばかりは許してよネイチャ!ボクもキミのことが心配だったんだ!!」
そう言われて、ひとまずは矛を納めたネイチャちゃんは、ため息をつく。
そう、ここはマベちんとネイチャちゃんの部屋だ。あの後、結局原因はそれ以外ありえないっていうことになって、マヤがそのまま部屋を飛び出して、ネイチャちゃんの部屋に突撃。ベッドに腰かけて本を読んでいたネイチャちゃんに、彼女が驚くのも無視して事情を話し、今に至る。
部屋は静かだ。マヤの後から慌ててついてきたテイオーちゃんも、一緒についてきたマベちんも、そして今話題の中心にいるネイチャちゃんも喋らない。
前者2人はまぁ、そもそも何を話せば良いのか戸惑ってるんだけど、ネイチャちゃんは悩んでる。自分の悩み事をマヤ達に話すべきか否かを。だから...
「…ねぇ、ネイチャちゃん」
マヤはあえて口を開く
「…前にマヤに言ってくれたよね?友達だからこそ、お話が聞きたいって」
「...」
「それを聞けないほうが、友達として悲しいって」
あぁ、だったら今度は…
「…だからさ、マヤもネイチャちゃんの話が聞きたいな。友達だもん」
「…マヤノ」
「…だめ?」
そう言うと…
「………はぁっ、わかった。
マヤノ、今回はあんたの勝ちね」
そう言ってネイチャちゃんが話してくれたのは…
「…アタシね、トレーナーさんに告白したんだ」
なぜうちのテイオーはこう、
いつも勝手に自らネイチャの逆鱗の上でタップダンスをしに行くのだろうか…
この小説のキャラクターの中で一番勝手に動く確率が高いし、
本当に何なんでしょうね、この子?
???「ワケワカンナイヨー」