個人的には、殿下が実装されたら引きたいな~、
と思っていたのですが、クリスマスマヤちゃんの直後だったために、
石がなくてあえなく轟沈
おのれ〇ィケイドォォォォッ!!(二回目)
無敗の三冠ウマ娘
それがボクの夢だった。
だからこそ…
「トウカイテイオー選手!日本ダービー制覇!!二冠達成!!」
わぁぁぁぁああああぁぁぁっっ!!
観客席の歓声が会場を揺らす。
彼らの熱狂が、喜びが、ターフで二本の指を天に掲げるボクのもとにも、ビリビリと伝わってくる。
そして
(…あぁ)
だからこそ、ボクは胸の内から溢れる歓喜を一旦飲み込む。
緩みそうになる頬を、改めて引き締める。
なぜなら…
(…これで)
これでようやくボクは挑戦権を手に入れたといっても良いから。
無敗の三冠ウマ娘、ようやくそこに至るためのスタートラインに立ったと言えるから。
…もちろん、今までの戦いが温いものだったなんて言わないし、言えるはずもない。
確かに、ボクはこれまで無敗を貫き、ついに日本ダービーをも征した。それでも、そこに至るまでの道のりはとても過酷なものであり、何度も危ないと思った瞬間があった。決してそれは楽な道なんかじゃなかったのだ。それに…
(…)
ボクはちらりと横目でターフの片隅を見る。すると、そこには息を切らす、クリスマスカラーの勝負服を着た一人のウマ娘がいて…
(…)
だからこそボクは気を引き締める。
何度も言うように、ボクはまだようやくスタートラインに立ったばかりなのだ。
三冠最後のレース、菊花賞。
それを取ることで、始めてボクのウマ娘としての人生が始まるんだ。
だから
(…絶対に)
負けるわけにはいかない。
ここからだ。
ここからが、ボクの勝負なんだ。
だからこそ、掲げた腕の先にある空は、どこまでも高く、そして遠くて…
…そこに手を伸ばすことさえ許されなかったボクには、それは文字通り天の果てよりも遠いものだった。
........................
.................
.........
トレセン学園に限らず、普通学校という施設には様々な用途で使用される部屋が数多く存在する。
図書室、理科室、家庭科室、このあたりは流石に、一度も使ったことのない人の方が少ないだろうし、社会科室や放送室なんかは、使ったことがなくても、存在自体は認知しているだろう。
他にも大小様々たくさんの部屋が学校という施設にはあるのだが、その中でも、普通に生活していると本当に縁がない部屋というものはいくつかある。
例えばその一つは、校長室だ。
基本よっぽどのことがない限り、特に教鞭を取るわけでもない校長という種類の人間と、一生徒との交流など滅多にない。その為存在自体は知っていても、普通の生徒は卒業までそこに近寄ることはない。そもそも必要がないからだ。
だからこそ、そんな普通なら近寄る必要のない部屋というものは、場所は知っていても入ることが無い故に、ぱっと学校の地図を頭に思い浮かべた時には見落としがちだ。
つまり、何が言いたいのかというと…
ドドドドドッ!!
「普段入り浸っているボクには避難場所の選択肢として思い浮かぶけど…」
廊下から鳴り響く足音が遠くに行ったのを確認したボクは
「そうでもない主治医さんやマックイーンには、ボクが逃げ込む場所としてはマークされてないってことだよね♪」
そう言いながら、ボクは隠れていたソファーの後ろから顔を出す。
そして、当然そこにあるのは、誰もいない静寂に包まれた生徒会室だ。
そう、ボクはあの後、まるでマシンガンのように高速で注射器を投げ続ける主治医さんと、なんか出る作品間違えてない?って聞きたくなるような、変態的な三次元機動でボクを取り押さえようとするマックイーンの二人から、何とか隙を突いて、この生徒会室に隠れることに成功したのだ。
さっきも言った通り、この部屋は普通の生徒はあまり使うような場所じゃない。そして、たまたま今は誰もいないみたいだけど、この部屋を主に使うのは、カイチョーを筆頭にした生徒会の面々で、要するに学園内の権力者達だ。
だからこそ、例えボクがここにいるのがバレたとしても、そうそう手荒な手段は取れないはずだと踏んで、ここに逃げてきたのだ。
…学園の重要なお客を招くこともあるだけに、この部屋の備品はそこらの安物ではない。
それだけに、誰もいない静かな状況では、それらの高級そうなソファーや、校訓が納められた荘厳な額縁は、この部屋に厳かさを醸し出している。
幸い、マックイーン達はボクがここに隠れたことに気が付かず、そのまま通りすぎて行ったみたいだ。
だけど…
「…これからどうしよっか…」
だからこそ、ボクは腕を組んで考える。
そう、これはあくまでも一時凌ぎ。根本的な問題は解決していない。
であるならば…
(…大人しく注射を打つ?)
いや、それでは本末転倒だ。
そもそもボクは注射が打ちたくなくてここまで逃げてきたのだ。
となると…
(…何とかして、マックイーンを説き伏せるしかないかな~)
そんなことを考えていた時だった。
「うん?」
何となくカイチョーの机に目を向けると、ちょうど一枚の紙切れが机の角から落ちるところだった。
恐らく、少し空いた窓からの風に吹かれたのだろう。
だから
「ほいっ」
特に何も考えずに紙をキャッチする。
そして、これまた、特に何も考えずにその内容にザッと目を通す。
…どうやらキャッチした紙は、空き教室の使用申請の紙だったみたいだ。だからか、普段はあまり使わない、とある空き教室の使用の申請とその為の手続きが記載されていて、そしてどうもそれに対する許可がおりたらしい事が書いてある。
だが重要なのはそこではない。
まず第一に、この使用申請の日が今日の日付であること。つまり、この教室が使われるのが今日であるということ。
そしてもう一つ、これが一番重要だが、それは…
「…マヤノ?」
…そう、一番ビックリしたのは、この空き教室の使用申請を出したのがマヤノだと言うことだ。
マヤノトップガン。
ボクの友達の一人で、同時に同じ部屋で暮らすボクのルームメイト。
でも、まさかその名前をこんなところで見かけるとは思ってなかったボクは少し驚く。
だけど
(…そう言えば)
そう、あれはボクが一年ぶりに有マ記念に挑む少し前からだったろうか?
あのあたりから、少しだけマヤノは寝るのが遅くなった。
それは決して気のせいじゃなくて、
あのあたりから、普段はボクよりもはるかに早く寝る彼女が、ボクが普通に寝る時間くらいまで、何か書き物や調べ物をするようになったのだ。それは今でも続いている。いや、むしろ…
(ボクが有マで優勝してから、さらに寝るのが遅くなってたような?)
それを思うと…
(…もしかしたら)
あの時は、ボクも有マ記念に向けて必死だったから、変なマヤノ、程度にしか思わなかったけど…
(…マヤノのおかしな行動は)
もしかしたら、今日のためなのではないのか。
何をする気か知らないけど、もしかしたら、彼女は今日のために何か準備をしていたのではないか。
そう思ったから…
(…)
好奇心に駆られ、ボクはもう一度紙に目を通す。
空き教室の使用申請をするなら、手続き上そこには使用目的も書かれているはずだ。それなら…
(…あ、これかな?)
お目当ての項目を見つけたボクは、ちょっと躊躇うけど、それでも好奇心に負け、その項目に目を通そうとして…
「…ん?テイオー?」
「うひゃぁっ!?」
背後からかけられた声に慌てて振り向くと
「やれやれ、また勝手に入り込んだのかい?
本当にこりないな、キミも」
なんて苦笑するカイチョーがいて
「あ、あはは…ごめんねカイチョー!」
それを見ていると、何だかさっきやりかけた事が、とっても罪深いものの気がしたから、カイチョーに気付かれないように、ボクは後ろ手にそっと拾った紙をカイチョーの机に戻す。
と
「あれ?カイチョー、その本は?」
そんなことをこっそりカイチョーを見ながらしていると、ボクはふとカイチョーの持つ本に目が止まる。
それは何だかやけにケバケバしい色をした怪しさ満点の本だったからで…
「うん?…あぁ、これか。
実はつい昨日、本屋で偶然見つけてね」
そう言いながら、珍しくウキウキしたような顔でその表紙をこちらに見せてくるカイチョーとは対照的に、ボクは頬をひきつらせる。
なぜなら…
「休み時間にでも読もう、と思って持ってきたのだが…ふむ、折角だ。
テイオー、君も一緒にどうだい?」
その本は、目が痛くなるようなレインボーの表紙に、抱腹絶倒!とか、これであなたも人気者!、とかいうクソダサフォントがデカデカと張ってある本で…
「...『だじゃれを言うのは誰じゃ!完成版おもしろだじゃれ100選!!~今日のネタはこれで決まり!!~』…」
「そうだ。なかなかに興味深いとは思わないか?」
そんな、いかにもなトンデモ本を手に、とっても楽しそうに微笑むカイチョーに、ボクはさっきまでの命の危険とは、また違った危険を感じたから...
「………あぁ、そうだカイチョー!ボク実は、この後やらなきゃいけない用事があったんダッター!」
そう言って、ボクはさりげな~く、カイチョーの横をすり抜けて…
「…まぁまぁ、そんなに急ぐこともないだろう。
ここに遊びに来たということは、一緒に少しおしゃべりをするくらいの時間はあるのだろう?」
そう言ってカイチョーは、ドアの方に向かうボクの前に立ちふさがる。
そして…
「思えば、いつも忙しくて、あまりキミに構ってあげられなかったからね…
ちょうど今は私も時間があるし、
せっかくだから、二人で存分に楽しもうじゃないか!」
なんて、善意100%の笑顔で微笑んでくるから…
「………ウン、ソウダネカイチョー」
ボクは絶望する
なぜならカイチョーがあまりにも楽しそうだったから。表情にはあまり出さないようにしてるけど、それでもワクワクしてるのが隠しきれてないから。
よく見ると、珍しくしっぽがちょっと揺れてるし、耳もピョコピョコ動いている。基本的にそんな風に感情が外に漏れないように気を付けてる
カイチョーが、そんなことを無意識でもやってる時点で、カイチョーがどれだけこの時間を楽しみにしてるのかがよく分かるから。
だから…
(だ、ダメだ!ボクにはこんなカイチョーの頼みを断れない!!)
そんな自身の良心に負けて、
カイチョーの提案に了承の意を返すと、カイチョーはそれこそ花の咲くような笑顔になる。
「ほ、本当かい!テイオー!!」
「…ウン、ソウダネカイチョー」
それを見ながら…
(…わぁー、カイチョースッゴい良い笑顔ー)
…できるなら、もっと別の場所で見たかったなー、と内心号泣するボクを尻目に、事態は進行していく。
「そ、それならまずはこのページから行こう!37ページの、仏像がぶつぞう!!いや、実に秀逸だとは思わないかテイオー!言葉遊びとしてのレベルもさることながら、そもそも仏教において、他者をぶつ、すなわち他者を傷つけるということは、不殺生戒において禁止されている。まぁ、それなら仏法に従わない者に直接武力で介入する不動尊とかはどうなるのか、という話にはなるが…一般的に日本で仏像というと、そう言った特殊な神性ではなく、ストレートに釈迦如来や阿弥陀如来などといった教義的にメジャー仏達をさす傾向にある。であるならば、この場合の仏像というのは、そう言った最上位の仏達にあたると解釈するべきだが、そうなるとこのダジャレはある意味では冒涜的だ。と言うのも、仏法における最高位の仏達に自らこの戒律を破らせているからだ。だが、ここで考えるべき点は二つあって、一つはこれがダジャレであること、もう一つはこのダジャレの文言そのものだ。まず、そもそも笑いとは何かということを考えると、その原点は滑稽さだ。ではそもそも何がそれを引き起こすのかというと、それは矛盾だ。自分の常識とギャグの常識が食い違っている、この部分がそもそもの笑いの原点だ。それを考えたときに、不殺生戒により他者を傷つけられないはずの仏が何かをぶつ、というのは相当な矛盾だ。そして、世界三大宗教の一つにも数えられる程の宗教である仏教は、それだけに有名であり、無論そうであるからこそ、その戒律も細かいものはともかく、不殺生戒位は誰でも知っている。分かるか?つまり、このダジャレはそう言う意味で、世界中の人々が笑いの核に気付くことができうるグローバルなダジャレなんだ!そしてもう一つ、このダジャレの文言にも注目すべきだ。なるほど、確かにさっきから言う通り、宗教における最大のシンボルに自らその戒律を破らせる図など、不敬極まりない。ものによっては処刑も辞さないだろう。だが待って欲しい。確かにこのダジャレは一見それを犯しているように見えるが…仏像がぶつぞう…ぶつぞう…ぶつぞ…打つぞ…そう、つまりはこれは直接的な行為を描写しているのではなく、あくまでもそれをするという宣言でしかないんだ!ほら、良い子にしてないと鬼が来るよ、なんて小さい子供をしかる場合なんかがあるだろう?それと同じで、あくまでも仄めかしであって、それをしてはいない。だからこそ、これはセーフなんだよ!そもそもこれがアウトなら、仏の顔も三度、という慣用句も使えなくなるからね。つまり、このダジャレは高度な言葉遊びでありながらも、かつ万人に理解することができ、かつ宗教という扱いが難しいものをネタにしていながらも、そちら方面に対する配慮が完璧であるために、どこでも使えるダジャレということなんだよ!!素晴らしいとは思わないか、テイオー!!でだ、それを踏まえた上で、改めて言語学的、歴史学的にこのダジャレの発生経緯と、当時それを産み出したであろう人達の職業、文化的背景などから改めてこのダジャレを考察すると…」
「…」
チュンチュン
生徒会室の外はとっても良い天気でだ。
だからこそ、そこにはとてものどかな光景が広がっている。
空を飛ぶ鳥になりたい、
たまに現実に疲れた人がこういうことを言うけど、それも今なら分かるような気がする。
だって…
「…それで、キリスト教における偶像崇拝とイコンの関係性、そこから導きだされる聖書の記述と現実の祭祀の兼ね合いを踏まえた上で、同種のダジャレがキリスト教文化圏で発生しうるのか、それについて元々の聖書の言語であったヘブライ語、そして後にそれを翻訳したギリシャ語などの聖書言語の言語的特徴を考えながら考察すると、元々のキリスト教言語のヘブライ語という言語は、母音の記述がされないという特徴があって...」
地獄のように静まり返った空間に、
朗々とカイチョーのダジャレと、それについての詳細な解説、そして多方面からの考察、仮説の提唱が響く。
そして、それを聞いてるボクはもうどんな顔して良いのか分からなかったから…
(…お、お願い…)
はやく…はやく終わって…
恐ろしく寒いオヤジギャグによる精神的暴力と、それを懇切丁寧にありとあらゆる角度から分析した上での、独自の考察や仮説なんかによる学術的暴力が同居するとかいう、カオスとしか言いようがない無茶苦茶な状況に、ボクの心が折れそうになった瞬間だった
「そもそも、量子力学的に考える神の実在論と、それを踏まえた上でのこのダジャレの成立問題というのは問題そのものの前提が…うん?」
これまで実に楽しそうにダジャレについて語っていたカイチョーの言葉が止まる。
そして、それに気がついてボクがカイチョーの見ている方向を見た瞬間だった
パリーン!!
生徒会室の奥の窓が割れると共に、
二人の人物が窓から飛び込んでくる。そして
「ようやく見つけましたわ!テイオー!!」
それは息を切らしたマックイーンと
「大丈夫。痛いのは一瞬です。主治医ですから」
さっきよりも威圧感を増した主治医さんだったから…
「ぴえっ!?」
状況を察したボクは、
即座にその場から立ち上がる。
そして
「ごめん!カイチョー!!
続きはまた後で!!」
そう言って一目散に逃げ出したから…
「…え?あ、ちょっと…」
「逃がしませんわ!主治医!!」
「かしこまりました、お嬢様」
流石に何が起こったのか分からないカイチョーは、慌ててボクを呼び戻そうとするけど、その脇をすり抜けて、二人が疾駆する。
だからこそ
ドカァァーン!バコォォーン!!
「ぴゃぁぁぁぁああっっ!!」
ボクはまた、終わりなき逃避行へと身を投じるのだった…
その後の生徒会室
エアグルーヴ「さて、大体外での仕事も終わったかな?後は生徒会室で書類整理を…って何だこれは!?か、会長!ご無事ですか!?」
シンボリルドルフ「(´・ω・`)」
会長がダジャレ好きなのは公式設定ですし、よく使われるネタでもあるのですが、
いざそれを自分で書こうとすると難しい…
日常パートにさりげなく混ぜるくらいならともかく、
本気で彼女がダジャレについて語り合うならどうするだろうかと考えると、
作者はこういう感じでしか想像できませんでした。
※もちろん例のごとく、会長のダジャレ論は3秒で考えた適当理論です。
あてにしないでください。
…むしろこんなダジャレ文化論みたいな話をしてくれる人がいたら作者が聞いてみたいくらいですよ…