ガチャポチ~
「うっらら~♪」(通常ウララ)
作者「違う!そうだけど、そうじゃない!!」
…同じような経験してる人、いません?
□月☆日
今日は■■■■■■■が模擬レースをしてるのを見た!
■■■■■■■はすっごく強いウマ娘だとは聞いてたけど、実はまだ実際に走ってるのを見たことがなかったから、ワクワクした!!
で結果だけど…うん、やっぱり■■■■■■■はすごい!
レース運びといい、走行フォームといい、最終直線の伸びといい、今まで会ってきたウマ娘達の中でも、頭一つ抜けてる!すっごくキラキラしてる!!
ある先輩みたいなウマ娘になるのが夢だって言ってたけど、■■■■■■■ならきっとなれる!応援してるよ♪
□月▼日
今日は■■■■■■■と一緒に遊びに行った!
同室とはいっても、比較的お互いに生活習慣がズレてるから、特に朝の予定があうことが滅多にないんだけど、それでも今日はたまたま朝一緒位の時間に起きて、しかもお互いに予定がなかったから二人で遊びに行った!!
生憎天気が悪かったから、デパートでウィンドウショッピングをした後に、一緒に映画を見ただけだったんだけど、それでもとっても楽しかった!!
また機会があったら二人で遊びに行きたいな♪
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祭りとは何だろうか。
民俗学的なことをいうのならば、それはハレの日だ。
一般的な生活を営む日であるケの日と対照的に、祭事などといった非日常を司る日であるハレの日は、社会生活において、前者で消費されたエネルギーを補充する役割を持つとされる日である。
そして、祭りが基本的には非日常の行事であることを考えるなら、間違いなくそれはハレの日の行事に他ならないだろう。
だが、そんな小難しい説明などなくても、みんな分かってるはずだ。
すなわち、祭りとはカーニバルであり、カーニバルとはバイブスぶち上げて全力で楽しむパーリナイトであることを。
つまり、早い話が祭りとは祭り以外のなにものでもない。
とりあえずテンション振り切って、理性をゴミ箱にシュート!超エキサイティング!!しておけば良く、それこそ祭りの本質であるから…
「さぁ、ここまで盛り上がってきた第一回トレセン学園マジックショー対決!!いよいよ最後のマジックだぁっ!!」
ワァァァアアアアァァァァッッ!!
実況のイナリ先輩の声に合わせて、会場に歓声が響く。
それは、普段のレースの時のものに勝るとも劣らないほどの熱気が込められたものだったから…
(まさかここまで盛り上がるとは…)
一応学園から正式に許可も取ってあるし、相手方ともある程度の打ち合わせをしていたらしいけど、それでも事前告知一切なしのゲリラ開催的に始まったこのマジックショーは、いまや熱狂の渦に包まれている。
その様は、まさに突発的に開催された祭りの空気に、観客達が全力で乗っかっているものそのものであったから…
(行ったことないけど…)
多分渋谷のハロウィンって、ノリと勢いだけで成り立つ生粋の祭りの会場って、きっとこんな感じなんだろうな~、と日本人の祭りにかける情熱に思いをはせていたときだった。
「よしっ!待たせたなテイオー!!ようやくお前の出番だぜ!!」
舞台裏で呑気にハチミー(しばらく出番ないから、と買ってきてくれた。こういうところは本当に律儀)を啜りながらステージを見ていたボクに、最後のマジックの準備が終わったらしいゴルシが声をかけてくる。だから
「OK!サイキョームテキのテイオーさまに任せといて!!」
ボクは立ち上がりゴルシと一緒にステージに上がる。すると、ステージの上ではとあるウマ娘がボク達のことを待ち構えていて…
「ふふっ…いや驚いたよゴールドシップ。まさか君がここまで素晴らしいマジシャンだったとはね。正直感動したよ」
舞台に上がったボクの横にいるゴルシに、ボク達が立っているステージの反対側に立っているウマ娘が声をかける。そして
「だが、だからと言って私も負ける気はない!
さぁ、この私、フジキセキによる奇跡のステージを、キミは上回ることができるかな!?」
そう演技がかった、しかし全く嫌みのない仕草でこちらに問いかけるフジ先輩に
「おうよ!あんたの奇跡のステージを上回る、ゴルシちゃんのスーパーステージを、ここであんたに見せつけてやるぜ!!」
と、ゴルシが応える。そしてその瞬間に、ステージは再び歓声に包まれる。
…そう、ボクは今何故か唐突に始まったゴルシとフジ先輩のマジックショー対決に、ゴルシの助手として参加している。と言うのも…
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「…ん?テイオー?」
開かれた扉の向こうから聞こえてきたのは、想像していたようなマックイーンの声や、注射針が空気を引き裂く音ではなく、そんなのんきな声だったから
「…?」
そっとボクは目を開ける。すると
「………ゴルシ?」
「おう!みんな大好きゴルシちゃんだぜ!!」
そう言いながら、自身の顎の下に指を持ってきてウインクするをするのは、背の高い葦毛のウマ娘。端的に言うとゴールドシップだったから...
「ふぇぇ…びっくりさせないでよ、ゴルシ…」
ボクはその場にヘナヘナと座り込む。対して
「んだよ、テイオー。失礼な奴だなー?アタシはお呼びじゃないってか?」
と、ゴルシはちょっと不満そうな顔で返す。
でも、だからこそこれが夢ではなく現実であること、幸いにもまだボクはマックイーンに見つかったわけではないことに、ボクは一先ず安心する。
そう、ボクはあの後再度の逃亡の末に、この体育倉庫にたどり着いた。
幸い、人目がないところにあったからか、マックイーンには気付かれずにすんだけど、窓などの外の様子を確認するためのものが一切なく、また狭く出入口が一つしかない体育倉庫は、隠れといてなんだけど隠れるにはあまりにも不向きな場所だ。
そして、付近をまだ捜索しているだろうマックイーン達がここを見つけるのも時間の問題。
だからこそ、最初は見つかったと思ったんだけど…
(取り合えずは…)
助かったみたいだ。
そう思ったボクは、そっと胸を撫で下ろす。
だから
「…ところで、ゴルシはこんなところに何の用なの?」
ふと思い浮かんだ疑問を、何気なく聞いてみる。
そう、ここは基本的にあまり使われないためにほとんど忘れられている体育倉庫。だから、よっぽど何か用がない限り、こんなところに来る人なんて、基本的にはいないはず。
…まぁ、今この場所に逃げ込んでいるボクが言っても説得力がないことは分かってるけど、それでもそんな場所故に人が来ること自体が珍しいのは事実だ。
だからこそ、そんな場所にゴルシがわざわざ足を運んだ理由をボクは聞いてみたんだけど…
「ん?…あぁ、アタシはちょっと必要なものがあって取りに来たんだけど…それはお前もじゃね、テイオー?なんでこんなところにいんだ?」
なんて答えが返ってくる。
…まぁ確かに、普段からの奇人変人っぷりが有名なゴルシ、
具体的には、東にぱくぱくお嬢様あれば、飛んでいってショートケーキの最後のいちごをかっさらい、西にアイコピー少女あれば、ゴルシちゃんキック(威力は某○イダーキック並み)を始めとした、ろくでもない知識や技を色々伝授するようなゴルシなら、基本的には何をやっててもおかしくはない。むしろ、誰もが存在を忘れてる体育倉庫に現れるなんて、普段の奇行を考えるとカワイイほうだ。
…実はゴルシは未来人。
その未来は、とある事件により謎の怪物が大量発生して文明が崩壊。
その事件に秘められたある理由をきっかけに、種族として決定的な溝ができてしまったウマ娘と人間が、それでも生き残りを滅ぼそうとする怪物を前に結託しなければならない、いやむしろそうまでしても戦力が足りないという、胃に穴が空きそうな程ギスギスした、それでいてマジで滅びる五秒前みたいな未来で、それを変えるためにタイムスリップしてきた、とか言われても、多分トレセンの人間は誰も驚かないと思う。
だってゴルシだから。
でも、そんなゴルシと比べると、ボクは間違いなく一般的な生徒。
まぁ、レースに限ってはそんなことないんだけど…感性で言えば間違いなくボクは一般人。
だからこそ、そんなボクがこんなところにいるのは不自然なことだ。であるならば、普通は何か理由があるのが当然で…
「え~と、実は…」
と言うわけで、ボクは自分がここにいる理由をゴルシに話す。
別に隠すようなことじゃないから(ボクに限らずウマ娘は多かれ少なかれ注射は嫌いだ)、これまでの顛末をボクはゴルシに話すと…
「ふ~ん…お前も大変だったんだな、テイオー」
なんて一応ゴルシも納得してくれる。
ただ…
「(まったくあいつ…自分の本来の役割忘れてねぇか?…絶対途中でテイオー追い回すのが楽しくなってきてるだろ…)」
「…え?何か言った、ゴルシ?」
「うんにゃ、なんでもねぇ」
ボクの事情を聞いたゴルシは、なぜか珍しく苦虫を噛み潰したよう顔で、何かぶつぶつと独り言を言ってたのが印象的で
(…?)
それに対してボクが首を捻っている時だった。
「…よし!じゃあテイオー!!
お前今からアタシのやること手伝え!!」
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「さぁ!果たして最後は我々にどんな素晴らしいマジックを見せてくれるのか!?
それではゴールドシップによるマジックだぁ!!」
ワァァァアアアァァァァッッ!!
イナリ先輩の実況(ちなみに実は途中参加。一体いつの間に…)と会場の歓声に背中を押されて、一緒に出てきたゴルシがステージの真ん中へと進む。
…結局あの後、ボクはゴルシの手伝いをすることになった。
実際、あのままあそこに隠れているのも手詰まりだったし、何よりゴルシは自分に協力してくれたら、ボクをあの場から安全に移動する手伝いをしてくれると言ってきた。
加えて、他の場所への避難にも力を貸してくれるということなのだから、正直ボクに断る理由はない。
ただ…
ボクは、ちらりとゴルシの方を見つめる。そこでは、ゴルシが大勢の観客達の前で、マイクパフォーマンスに勤しんでいて…
「Hello everyone !!おめぇら盛り上がってっか!?そんじゃあ、本日最後のマジックを始めるぜ!
ゴルシちゃんのスーパースペシャルステージの終焉を、目ん玉かっぽじって刮目しやがれぇ!!」
ワァァァアアァァァァッッ!!
そう啖呵を切ったゴルシに、会場の観客達が熱い歓声を送る。
だからこそ
「よしっ!じゃあ助手のテイオー!!カモン!!」
「はーい!」
そう言われたボクは、あらかじめ頼まれていたものを持って、ゴルシの隣まで歩いていく。だけど…
(…ねぇゴルシ、本当にこの中に入るの?)
(悪いな。でも入ってる時間自体はそう長くないはずだから、我慢してくれ)
(うぅ~…ちょっと嫌だけど、まぁ手伝うって言っちゃったしね…)
(恩に着るぜ)
そう、小声でゴルシと話したボクがその場に置いたのは、薄汚れた、どこにでもあるような一つのロッカーで…
「さぁっ!始めるぜ!!
とは言ってもやることは簡単。
助手のテイオーにこのロッカーに入ってもらってから、扉を閉めて魔法をかけるだけ!
それだけで、次にロッカーの扉を開けたときには、テイオーはもうその場にはいない。要するに脱出マジックだ!だがそれだけじゃねぇ」
そう観衆に途中まで説明すると、ゴルシはわざと一旦言葉を切り、不適に笑う
「ただ人が消えるだけなんてつまらないだろ?だからこそ、次にロッカーを開けたときには、テイオーの代わりに全く違う誰かが出てくる!つまり…」
そこでゴルシは大仰に手を天に掲げて叫ぶ
「このマジックは、密室からの人体交換マジックだ!!」
そう言い切ったゴルシに
ワァァァアアァァァァッッ!!
観客達も再びの歓声で応える。
その熱狂は、普段レースやライブで観客の歓声に慣れているボクでも、ちょっとビックリする位のもので…
「おおっと!
ここでゴールドシップ、定番ながらただの学生が手を出すにはあまりにも難易度が高いマジックを持ち出してきたぞ!!
果たして成功させることができるのか!?」
と言うイナリ先輩の実況に、ボクまでちょっとドキドキしてしまう。
そうなのだ。
ボクがゴルシに手伝いを頼まれたのは、脱出マジックの箱の中に入る役。
流石にこればかりは、ゴルシも他の人の手が必要で困っていたところ、ちょうど良くボクに出会ったという訳なのだ。だけど…
(…本当に成功するのかな?)
とボクはひそかに首を傾げる。
と言うのも…
(ことここに至るまで、このマジックの種について、ボクなにも聞いてないんだけど…)
と、ボクは内心冷や汗を流す。
…そう、実はボク、これから自分が挑むマジックについて、ゴルシからロッカーの中に入ってくれ以外のことを一切聞いてない。
別にボクはマジックに詳しいわけじゃないけど、こういうのは箱の中から華麗に脱出することこそが売りであり、そして尚且つ、こういうのは中の人の協力も大事なはずなのに、である。
ボクはロッカーの傍らからゴルシの方を見る。
そこには定番の、種も仕掛けもありません、という口上を切った後に、なんなら確認してくれと、フジ先輩と、適当に指定して舞台に上がってもらった観客の一人に、件のロッカーを調べさせているゴルシがいたから…
(本当に大丈夫かな…?)
そうちょっとジト目でボクはゴルシをこっそり見つめる。
だけど、それでももうすでにショーは始まってしまってるから…
「待たせたな、テイオー!
それじゃあ約束通り、この中に入ってくれ!!」
検分を終えたロッカーの前に佇むゴルシが、その最後のマジックを始めることを宣言したから
(ええ~い!ままよ!!)
そう覚悟を決めて、ボクもロッカーの中に入って扉を閉める。
すると即座に
「よし!入ったな!!それじゃあいくぜ!!○ンカラホイ!」
なんて、力が抜けるようなゴルシの発言が続き
「…うっし!これで準備は完了だ!!さぁテイオー!出てきてくれ!!」
と言うゴルシの声が聞こえたから…って、待って?
「ええっ!?本当にこれで出て良いの!?」
と流石にボクも反応せざるを得ない。
と言うのも、実際ボクはこのロッカーに入っただけで、本当に何もしてないし、何かが変わった雰囲気も全くないからだ。だからこそ、ボクは慌ててゴルシに確認したんだけど…
「大丈夫だぁ…問題ない!!」
なんて、全く安心できない台詞しか返ってこない。だけど…
ザワザワ…
「おっと!これはマジック失敗か!?」
観客の戸惑いと、イナリ先輩の心配そうな実況が聞こえてくる。それに…
「本当に大丈夫だからテイオー。ほら、ハリーハリー♪」
なんてゴルシに急かされると、居心地が悪くなってきたから…
「あぁ、もう!どうなっても知らないよ!!」
そう言ってボクが扉を開くと、そこは教室だった。
「………は?」
ちなみに今日は午前中しか授業がない日なので、基本的には校舎の中には誰もいない。
だからこそ、教室にも特に誰かがいるということはなく、とても静かだ。
チュンチュン…
どこかで雀でも鳴いてるのか、
窓の外からそんな平和な音が聞こえる。
開け放たれた窓から吹き抜ける風が、白いカーテンをゆっくりと揺らしていて………って
「え?何これ…」
あまりの出来事に脳がフリーズしていたボクだったけど、しばらくすると正常な思考が戻ってくる。
だから…
「ちょっ、ちょっとゴルシ!一体これは――…」
どういうこと!?
そう問おうとして振り向いたボクの目に映ったのは、ステージの上でニヤニヤとこちらを見ながら笑うゴルシ…ではなく、誰もいない校舎の廊下だったから…
「………」
またしても、呆気に取られてしまう。
自分は本当に夢か幻でも見てるのか、と。
ただ…
(…そう言えば)
とふと思い出すのは、ゴルシとの約束。
曰く…
(「もし手伝ってくれたらここから安全に出してやるし、そこからさらに別の場所に避難する手伝いもしてやるよ!どうよ!?」)
そして、それを考えるなら…
「…う~ん」
ボクは腕を組む。
…まぁ、そう考えるなら一応納得できなくはない。
…なるほど、確かにゴルシは約束を守ってくれた。
てっきりボクはあの体育倉庫からステージへの移動を、彼女の言う別の場所への安全な避難だと考えていたのだけれど、それはどうやら違ったらしい。
マジックによる別の場所への転送…
自身の目的を果たしつつも、ボクとの約束も履行できる一挙両得こそが、ゴルシの狙いだったらしい。
とは言え…
(これ…マジックの範疇を越えてるんじゃ…?)
明らかに常識を越えた現象に見舞われたボクは、再び混乱する。
でも…
「………まぁ」
ゴルシだし
…そう思うと不思議とストンと胸の中に落ちるものがある。
だから、自分でも驚くほど素早く気持ちを切り替えることができたボクが、改めてこれからどうしようか、とあたりを見回した時だった。
「…?」
ふと、ボクは足元に何かが落ちていることに気がつく。
「?何これ?」
だから何気なく拾い上げたそれ、何かのメモらしい紙を拾ったボクに、その時特に何か考えがあったわけではないし
「…この字って」
そこに書いてあった字を見て、それがどうやら自身の友人であるマーベラスの書いたものであることに気がついたのも、単なる偶然だ。
ただ…
「『テイオーには見つからないように』?」
何かの買い物リストが書かれたそのメモの端っこ。
そこに書かれていた走り書きを見たボクは、ちょっと眉をひそめる。
そりゃそうだ。
悪口でこそないものの、明らかに自分に対して何か隠し事をされているらしい痕跡を見つけて、怪訝に思わない人間などいないだろう。
それも、その隠し事をしているのが、どうも普段から自分と親しくしている人物らしいなら、それはなおさらのこと。
だからこそ
「…」
ボクはもう一度、今度はしっかりとそのメモに目を通す。
買い物リストであることは、ざっと見ただけでも分かったが、その内容としては主には筆記用具だ。のりや色鉛筆、それらに加えて折り紙や画用紙などのような物品が購入リストとしてまとめられている。
…それから、普段からマーベラスな言動な割に、相変わらず無駄に達筆だ。
でも…
「…」
それでも、逆に言うとそれだけだ。
特にブランドなどにこだわりがあるわけでもないようだし、買う場所の指定なんかもない。本当にただの買う物を忘れないための走り書きらしく、メモには物品の名前が簡潔に書かれているだけだ。
そして、どんな事情か知らないけど、ボクから隠さなければない買い物という割に、それに該当するような怪しい物も特にない。
「う~ん?」
だから、それを見てボクはますます戸惑う。
例えば、ボクに見つかると何か都合が悪いものとか、そういうものが書いてあったならまだ分かる。
わざわざ『テイオーには見つからないように』なんて書くのも納得できるだろう。
だけど、ここに書かれているものは、別になんということはない普通の物品で、特にボクに見つかったとしても、何かあるようなものだとは思えない。
だから…
(…一体)
どうしてマーベラスは、この買い物をボクから隠そうとしたのだろう?
と、ボクが考え始めた時だった。
「...っ!?」
それは恐らく、ウマ娘としてのボクの天性の勘。
レースの天才、そう言われたボクの歴戦の猛者としての危機察知能力。だからこそ
ヒュンッ!!
瞬間的に背筋に走った悪寒に従い、慌ててその場から飛び退いたボクは、さっきまでいたその場所を、何かが高速で横切ったのを、確かにその目で捉えていたから…
「ま、まさか…」
冷や汗を垂らしながら、ギギギッ…という音がしそうな動きで振り向いた廊下の奥から
「...また躱しましたか。
流石はお嬢様のライバルと言うことだけはありますね」
なんて声が、聞こえてくるのも当然のことで..
「あ!また逃げましたわ!!
主治医!!」
「お任せください」
脱兎のごとく、ボクはまた逃げ出す。
当然だ。注射なんてボクは絶対に打たない。あんな悪魔の兵器になんて、ボクは絶対に負けない!
だけど…
(『テイオーには見つからないように』)
「…」
走りながらも、さっきの一文が頭の片隅でどこか引っ掛かっていたから…
ドカァーン!バコォーン!!
「待ちなさいテイオー!!」
「そうです。
痛いのは一瞬、怖いのは…意識しなければ良いだけですから」
「なお悪いよ!?」
マックイーンとその主治医からの逃避行。
午後から始まったそれに全力を尽くすボクの思考は、少しだけそれとは違うことを考えていた。
その後のマジックショー会場
①テイオーの代わりに同じタイミングで教室のドアを開けようとしたマーベラスが転移
↓
②ドアを開けると大勢の観衆に囲まれ、事態が把握できず困惑
↓
③流石に一瞬だけ頭が真っ白になるが、気を取り直して周囲の状況確認を行う
↓
④なんだかよくわからないが、とりあえず周囲の雰囲気にのっておけば大丈夫だろう
という結論を出す
↓
⑤「マーベラス☆」(決めポーズ)
↓
⑥会場大盛り上がり
ちなみに①~⑤までの間、わずか1秒
…あまりこの小説内では出番ありませんが、
彼女なら多分これくらいはやれると思いますよ?