片翼の撃墜王 外伝集   作:DX鶏がらスープ

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薄々感づいている方は多いと思いますが、
今回、次回あたりから空気がシリアス一色に変わっていきます。

ご注意ください。




テイオー様の長い1日!! 決定打

□月▼日

 

最近、■■■■■■■が少しずつ元気になってきている気がする。

 

あの後、ホントに辛そうにしていた■■■■■■■の姿を覚えているだけに、それはとっても嬉しい変化だ

 

■■■■■■■

応援してるからね?

 

 

 

 

□月※日

 

■■■■■■■は多分もう大丈夫だ。

 

一時期の見ていられない程に落ち込んだ様子は、もうすっかり鳴りを潜め、元の明るい■■■■■■■に戻っている。

 

ホントに、ホントに良かったと思う

 

さて、それなら今度久しぶりに遊びにでも誘おうかな?

 

今は次の春のレースに向けて忙しいみたいだから、取り敢えずはそれが終わったらかな?

 

…思えば、最近■■■■■■■とは全然遊びに行ってない。

それは勿論、不幸にも二人の生活リズムと予定が全然合わないっていうのも原因だけど、一番の原因は最近の■■■■■■■があまりにも辛そうだったから。

…教室とかでは普通にしてるけど、こっそり誰もいないところとかでため息ついてたりしてたの、知ってるんだからね?

 

でも、もうその心配もいらない。

■■■■■■■は、きっと大丈夫!

だからこそ、今まであんまり一緒に遊べなかった分、めいっぱい楽しむんだ!

 

あぁ、楽しみだな♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼月★日

 

…え?

■■■■■■■がレースにもう出られない?

 

 

 

 

........................

 

 

 

 

 

.................

 

 

 

 

.........

 

 

 

 

 

「…って感じです」

 

とボクはこれまでの事情を話し終える。すると

 

「はは~ん…そりゃ大変やったな、テイオー」

 

そうタマ先輩は苦笑する。

だからこそ

 

「まぁ、しばらくはあいつらもここには戻って来んやろ。ゆっくりしていき!」

 

そうカラカラと笑うタマ先輩に、

 

「いや、本当にわざわざありがとうございます」

 

とボクは頭を下げる。

 

 

 

 

ぐぅ~…

 

 

 

「…あ」

 

そんな音がお腹から出てしまい、ボクは赤面する。

だけど、タマ先輩は特にそれを気にすることもなく、むしろ

 

「ん?腹減ったのか?

…それならちょうど良い!せっかくだからなんか奢ったるわ!!」

 

なんてことまで言い出す始末だから…

 

「そ、そんな!かくまってもらってだけでもありがたいのに、それに加えて先輩に奢らせるなんて…」

 

とボクは恐縮するけど

 

「ええって、ええって!後輩の面倒見るのも先輩の仕事や!!

それにな…」

 

そう言ってボクを見るタマ先輩の顔は、すごく優しいもので…

 

「…この前の有馬、見たで。

見事なレースやった。

だからこそ…」

 

そう言って微笑むタマ先輩は

 

「…ウチにも祝福させてくれんか?

幻の名ウマ娘、トウカイテイオー、その復活を」

 

どこか、自分のことのように嬉しそうだったから…

 

「…わかりました。

じゃあこのカツ丼で」

 

だからボクも、ありがたくその好意をちょうだいすることにする。

 

「了解や!

それじゃ買ってくるから、そこで待っててな!!」

 

そして、ボクの注文を聞いたタマ先輩は、座っていたテーブル席から厨房の方に歩いていく。それを見ながら思うのは…

 

(ありがとうございます…タマ先輩)

 

そんな感謝の念一択だ。

 

…あの後、またしてもマックイーン達から逃げたボクは、たまたま近くにあった食堂に飛び込んだ。

 

そして、遅れてやってきたマックイーン達に

「テイオーか?それならもうあっちの方に行ったで」

と嘘の情報を教えて、ボクをかくまってくれたのが、このタマモクロス先輩だったというわけだ。

 

「ふぅ~…」

 

ボクは腰かけた椅子に体重を預ける。

 

基本的に、トレセン学園の食堂は土日の昼以外は空いている。

これはトレセン学園が全寮制で、休日でも普通に学内にウマ娘がいるからであるが、それ故に今も普通に食堂が空いている。

流石にまだ食事の時間には少し早いから人は少ないけど、それでも食堂のテーブルには何人かのウマ娘がいて、勉強をしたり友達と話したりしている。

そして、本格的な食事時を前に、食堂の奥では準備が行われているらしい。トントンと包丁で何かを切る音や、恐らく味噌汁のものであろう良い匂いが、すでに漂い始めている。

 

そんな光景を、ボクは椅子に座ったままぼっーと眺める。それは、まさに平和そのものといった光景だけに、朝からの死闘を思い出して、ボクはその落差に少し呆れてしまう。

 

…まぁ、何はともあれこれで少しだけゆっくりできる。

そう思うと、これまで見ないようにしていた疲労がどっと自身の体にのし掛かってくるのが分かるから…

 

(…どうせなら)

 

少し位寝ても良いよね?

 

そう思うと、不思議と目蓋が降りてくるから…

 

(タマ先輩が戻ってくるまで…)

 

それまで、ちょっとだけ…

 

ほんの…ちょっとだけ…

 

 

 

 

 

....................

 

 

 

 

 

.................

 

 

 

 

.........

 

 

 

…気が付くと、ボクは知らないところに立っていた

 

だからこそ、ここはどこなのか、それを周りの皆に聞いてみるんだけど…

 

「ねぇ」

 

「…」

 

「…ちょっと」

 

「…」

 

「……おーい」

 

「…」

 

誰に話しかけても答えてくれない。

マヤノやマーベラス、マックイーン…ボクの大切な友だち達も、何も答えてくれないから…

 

「もう!ここは一体どこなのさ!?」

 

そう思わず叫んでしまった時だった

 

「!!」

 

気が付くと、ボクの周りには皆がいて…

 

気が付くと、靄がかかったように顔を認識できない皆は、人差し指を口の前で立てて…

 

そうして皆が声を揃えて言ったのは…

 

 

 

 

 

「「「テイオーには見つからないように」」」

 

 

 

 

 

.........

 

 

 

 

 

.................

 

 

 

 

 

........................

 

 

 

 

 

「………ん?」

 

「お?起きたんか?思ったより早かったな」

 

気が付くと、ボクはテーブルに突っ伏していた。

そして、それを反対側からタマ先輩が見つめていて…

 

「…え?あれ?」

 

どうしてボクはこんなところに…

 

そう寝起きで頭が回らないボクに、タマ先輩は苦笑する

 

「なんや?自分が今どこにいるかもわからんのか?まぁ、30分も寝てたらそりゃ寝ぼけるかね」

 

なんてことを言ってくるから…

 

「………!?

す、すいません先輩!ボク…」

 

と謝るボクに

 

「なに、別に気にしてないで。

サイキョームテキのテイオー様の、かわいい寝顔なんていう貴重なもんも見れたしな」

 

と先輩はまたカラカラと笑う。

だからこそ、ボクは申し訳なさと恥ずかしさで顔が真っ赤になる。

 

さっきタマ先輩が、ボクは30分位寝ていたと言っていたけど、その間に少しだけ食堂にいる人数が増えている。そして、まだ早いけどそれでもギリギリ夜ご飯の時間帯と言える時間になったからだろう。視界の端に、ほんの数人だがご飯を食べているウマ娘達がちらほらと見える。

だからこそ、ボクもお腹が空いてきたんだけど…

 

「…あぁ、かつ丼のことか?あんたが起きるのを待っとったらすっかり冷めてしまってな。

ついさっき、たまたま通りかかったオグリに暖め直してきてもらえるように、頼んどいたんや。せやから、心配せんでもええで」

 

と、こちらの考えを読んだように言うタマ先輩には、本当に頭が上がらない。だからこそ…

 

「…それで、なんかうなされとったみたいやけど…大丈夫か?」

 

…そう心配そうに訪ねてくるタマ先輩には、本当に敵わない。普段からそこまで付き合いがあるわけでもないのに、それでも親身になってくれるタマ先輩は、本当に先輩の鏡だな、と本気で思ってしまう。

 

…だからだろうか?

 

「…ねぇ、タマ先輩」

 

口をついたのは、ほんの少しの疑いで

 

「もし…タマ先輩が、大切な友人に避けられてるって気付いたら…」

 

普段なら絶対に思いもしないことだったから…

 

「………どうします?」

 

自分が何を言ったのか気付いた瞬間に、ボクはそのことを恥じる。

 

 

 

ボクはなんてことを!大切な友人を信じられないのか!?

 

 

 

そんな良心の声が聞こえる一方で

 

 

 

状況からしてキミが避けられているのは明らかだよ。きっとキミは嫌われているんだ

 

 

 

そんな自分の中の知らない誰かが顔を出す。

だからこそ、ボクはそれ以上言葉を続けることができない。胸の中で、色んな感情が渦巻いて、言葉がでない。

 

それでも、自分が吐いた言葉を信じたくなくて、なかったことにしたかったから…

 

 

「す、すいません、タマ先輩!

やっぱり今のは…――」

 

無しということで

 

そう言いかけた直後だった

 

 

 

「んなもん決まっとるやろ?本人に問いただすんや」

 

 

 

そうはっきりとした声が聞こえてきたから

 

「………え?」

 

思わず見上げたボクを見つめるタマ先輩は、どこか呆れたような顔をしていて…

 

「…そもそもな、例えばオグリが、うちに悪意を持って距離をとるなんてこと出来ると思うか?」

 

そう聞かれて思い浮かべるオグリ先輩は、常にボーッとしている姿しか思い浮かばなかったから

 

「い、いいえ」

 

そう答えると、タマ先輩は続ける

 

「やろ?でも、じゃあ何故そんな解答を出せたんや?

それは少なからず、あんたがオグリの人となりを知っとるからやろ?」

 

「ま、まぁそうですね…」

 

「それならや」

 

とそこでタマ先輩が微笑む

 

「あんたとて、自分の大切な人がどんな人か、それを知っとるやろ?

どうや?そいつらは、何の理由もなしにあんたを虐めるような奴らか?」

 

「そ、それは…」

 

「そんなら聞いてみれば良いんや。赤の他人ならいざ知らず、あんたが大切にしとるような奴らなら、きっとそこには何か意味があるはずや」

 

そう言って笑うタマ先輩に、

ボクは何も言えない。

だけど、少しだけ胸のしこりが取れたような気がする

 

 

…なるほど、確かにどうもネガティブな方向にばかり考えすぎていたようだ。

 

確かに、ボクはまだ直接彼女達の口からボクへの悪感情を聞いたわけではないし、そもそも一体彼女達が何をしようとしているかなんて、ボクは全然知らない。

 

であれば、そんな憶測ばかりの状況で判断を下すのは早計というものではないだろうか?それこそ、本人達にもう少し話を聞いてみるべきではないだろうか?

 

そう思うと、少し胸が軽くなる。

だから

 

「………ありがとうございます、タマ先輩」

 

そう言って頭を下げるボクに、タマ先輩は

 

「ええって、ええって!それより、早くオグリが帰ってくるとええな!!」

 

と朗らかに微笑む。

 

だからこそ

 

 

 

「お~い、タマ」

 

「おっ、噂をすればっちゅう奴やな!それにしても…」

 

 

 

そんな先輩の好意が、ボクには嬉しくて堪らない。

こんな相談にちゃんと乗ってくれた先輩には本当に感謝しかない。

 

 

 

「…ただ飯を暖め直してきてもらうだけにしては、随分と時間がかかったような…?」

 

 

 

そして、そんな先輩がご飯まで奢ってくれると言うのだ。それなら…

 

「ほら、テイオー。カツ丼だ」

 

そう言ってオグリ先輩が机の上に置いたどんぶりにボクは姿勢を正して向き直る。

…そう、それならボクもその心遣いに対して誠意を見せるべきだろう。すなわち、米粒の一つに至るまでしっかりと完食するのが筋というものだろう。

だからこそ…

 

「ありがとうございます、タマ先輩、オグリ先輩!

それじゃあありがたく…」

 

いただきます!

そう言って箸に手を付けようとした瞬間だった

 

 

 

 

 

…そこには、絶望が鎮座していた。

 

目の前には、普通のどんぶりよりも遥かに巨大でかつ、広大などんぶり。

そしてそこには白く、そして穢れなき純白の白米の山々が、まるでかのアルプス山脈のごとき威光を放ち、堅牢にそびえ立っている。

そして、そんな天蓋を支える天頂は、まるで天から降り注ぐ雪化粧のごとく金色の卵により彩られ、その上には更に、まるで草鞋のごとき大きさのトンカツが3枚、これでもかとその身を大胆にさらしている。

 

そう、それは惑うことなきカツ丼。

ただし、そのサイズは明らかにボクらの常識の斜め上を突き抜けるサイズであり…

 

「…」

 

ボクは冷や汗を流しながらゆっくりとタマ先輩を振り向く。

しかし…

 

「…」

 

タマ先輩もまた、この超弩級の物量兵器を前にして絶句している。

と言うか、ボクの視線に気付くと

 

(ウチやない!!)

 

そう言わんばかり、ブンブンと首を横に振る。

だから、後話を聞くべきは一人しかいなくて…

 

 

 

「…?どうしたテイオー?食べないのか?」

 

 

 

そう不思議そうにタマ先輩の横に座ってこちらを見るオグリ先輩しかいなくて…

 

「あ、あのオグリ先輩。これは…?」

 

そう聞いたボクに

 

「…あぁ、これのことか」

 

そう頷くオグリ先輩の笑顔には

 

「タマから聞いたが、このかつ丼はタマの奢りなのだよな。

あの有馬での復活劇、それを祝福した。

それなら…」

 

悪意なんてものは一切なくて、

代わりに

 

「…そう、それなら私も後輩を祝福したいと思ってな。

勝手ながら、タマから預かったカツ丼に、私からも少々色を付けさせてもらったという次第だ。」

 

善意、それしかなかったから…

 

ボクはごくりと生唾を飲み込む

そして、改めて目の前の恐ろしき山脈を見据える。

 

だけど…

 

「代金の方は気にするな。

タマと同じく、これは私の奢りだ。ぜひ楽しんでくれ」

 

アルプス山脈にあるという頂の一つ、モンブラン。

登頂率がわずか2割だというその頂は、まさに死と隣り合わせの美しさを誇る頂だが、目の前のカツ丼は、まさにそれと同じ美しさを誇っていたから...

 

(ど、どうしよう…)

 

次第に顔が青ざめていくのがわかるが、ボクにはそれ以上どうしようもない。

 

そう、確かにボクは先輩方の好意に感動し、それに対して全力で応えなければと決意した。具体的には、ちゃんとしっかり奢ってもらったものを食べきることこそが、それだと思った。

だけど、だからと言ってこれはちょっと予想外だ。いくらウマ娘に健啖家が多いと言っても、流石にこれをボクが食べきるのは不可能だ。

だからこそ…

 

(ホントにどうしよう…)

 

箸が動かない。あまりのそれの存在感に、手を付けることすら容易にできない。

それでも、間違いなく善意から出されたそれに、一切口を付けないというのはあまりにも失礼だろう。

故に、ボクは動けない。どうすれば良いのか本当に分からない。だから…

 

(だ、誰かぁ…)

 

内心ちょっと涙目になりながら、ボクがそう心の中で誰かに助けを求めた時だった

 

 

 

 

 

「ネイチャ~、ターボ疲れた~」

 

「ふふっ、お疲れターボ」

 

 

 

聞こえてきたのはそんな声

 

「それでも、これで粗方準備は終わりましたね、ネイチャさん」

 

「そうね、イクノ。手伝ってくれてありがとね」

 

食堂の調理場、普通ならウマ娘であるボク達が入ることのない場所からなぜか現れたネイチャ達の声

 

「あぁ~!?イクノだけず~る~い!!ターボも!ターボも頑張ったよ!ネイチャ!!」

 

「もう、ターボちゃんったら…」

 

「あはは…ごめんごめん。ターボも、そしてマチタンも、ありがとね」

 

そして、そんな彼女達の様子はとても楽しそうだったから…

 

(…こっちとは天と地の差だ~)

 

ボクは半ば現実逃避気味に、そんな彼女達の様子を眺める。

席の位置的に、恐らくこちらに全く気付いていない様子のネイチャ達の和気藹々とした団欒を、善意の地獄のど真ん中で佇むボクはちょっと涙目で見つめる。

 

…あぁ、だからこそ

 

「でもうまくいって良かったね、ネイチャちゃん。なにせ…」

 

そんな台詞が耳に入るのは

 

「全くよ。テイオーに見つからなくて本当に良かったわ。

マックイーンさんに頼んだかいがあったわね」

 

ある意味当然のことで…

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

その言葉に反射的にボクは振り返る。今の台詞を言った人物の顔を思わず見てしまう。だけど、こちらに気付いていない彼女の言葉が止まる道理なんて、あるはずもなくて...

 

 

 

 

 

「…――本当、テイオーが来なくて助かったわ!台無しになっちゃうところだったからね!!」

 

 

 

 

 





聞かれる前に書いておきますが、うちのゴルシの言動のほとんどはノリと勢いです。
ですから、二つ前の話でやってたマジックショーにも特に意図はありませんし、
そもそもうちの場合はゴルシの奇行の9割に意味はありません。

…9割は…ね?






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